いままでのあらすじ
過去の私は人生に栄光を求めた。
私の母親はその力の無さのせいでずっと虐げられて来たのだ。
その姿を見た私は母親のようにはなりたくないと心に誓った。
…例え料理が上手く、私にはいつも優しくしてくれ、大好きだったとしても
私は母親のようにはなりたくなかったのだ。
しかし私には花を操ることしか出来ない。
妖力は下の下、いや妖怪という種族な分だけ下の中はあるだろう。
身体能力は人間よりあるが、妖怪として見るとやはり下の中。
だが私は信じた。
素質がゼロでも修行し続けたら、最強の妖怪になれると信じて。
これはそんな実際弱小妖怪、自称中級妖怪、通称幻想郷最強の妖怪の風見幽香の日常を描く物語である。
時は昔。
幻想郷がまだ出来立てで、妖怪にとっての理想郷などという夢も浪漫も無くただ血で血を争う戦乱の時代。
私は人間世界の放浪を止め、幻想郷に住み着いた。
そして一瞬で挫折して身の危険を感じ、流されて流された結果。
自分より格上の格上の格上の妖怪が家族になり
幻想郷の支配者に脅迫され作ったお花畑に襲い掛かってくる妖怪達と戦う日々。
救いなんて無い。
でも生きてるだけマシかも知れない。
どちらか悩みつつ、なんとか生き延びていた。
あはははははははははははははははは
うふふふふふふふふふふふふふふふふ
どうしてこうなった、どうしてこうなった
あばばばばばばばば
現在の心境を語るとこんな気分である。
その理由は簡単。
同居人のミスティアのせいだ。
私の家は元々
能力を使い伐採した木、気分を落ち着かせるための花、旅先で買った古風な皿、数々の調理器具に自作調味料。
簡単に言うと乙女チックな家になっていた。
といっても私自身がかなりの武器好きで、武器防具が仕舞われた殺風景な部屋もあるのだが。
今回それはあまり関係が無い。
しかしミスティアが来てから私の家は変わった。
家中に漂う血生臭い匂いに、赤黒い壁、皿として使われてる妖怪の骨、部屋の片隅には言葉に出したくないピンク色の何か。
簡単に言うと拷問部屋のような家になっていた。
何しろ今私が住む幻想郷は戦争中だ。
世界各地の妖怪が強制的に集められてのバトルロワイアル。
そのため、私が住んでいるこの花畑にひっきり無しで敵が攻めてくるのだ。
解体好きの化け物がいるとも知らずに。
もう止めよう。
考えても無駄だ。
そう考え私は日課である、朝の剣の素振りを続ける。
家の中から血生臭い香りが漂ってくるが無視する。
これはきっと晩御飯の料理の仕込みでもしてるのだろう。
絶対に食わないけど。
私は野菜が好きなのよ、肉なんてあんなの見てたら食べる気が起きない。
剣を振る。
家の中から悲鳴や絶叫が聞こえてくるが無視する。
きっと耳なりとか幻聴とか独り言だろう。
家に入りたくない。
家の光景を見ていたくない。
剣を振る。
楽しそうな、楽しそうな笑い声が聞こえてくる。
何か面白いことがあったのだろう。
私にはきっと理解できない面白い出来事なんだろうけど。
面白いことと言ったらやはり音楽よね、私は琴とかが得意よ。
剣を振る。
…匂わない、聞こえない、聞こえない。
私は何も見ていない。
恨むなら運の無い自分達を恨みなさい。
お願いだから私に化けてでないで。
精神を落ち着かせ剣を振る。
どうしてこうなった、どうしてこうなった。
剣を振る。
またこのお花畑に侵入者の妖気がする。
長年の修行のせいか、気配にだけは敏感になったのだ。
あっミスティアが迎撃に出て…気配が消えた、早っ。
「幽香おねーちゃん」
唐突に後ろから声をかけられるが、慌てず落ち着いて返事をする。
「なにかしら」
「朝ご飯できたよー」
血しぶき浴びたまま満面の笑みだ。
でもね朝ご飯ってその右手で引きずってる妖怪のこと?
嫌よ、絶対に、嫌。
「ごめんなさい、今日は断食の日なのよ」
「えー、こいつそこそこ美味そうなのにー」
妖怪は肉食が多いらしいが、私には無理だ。
自分と同じ人型の肉なんて食べる気が起きない。
「貴方がとった獲物でしょ、貴方が食べていいわよ」
「本当!ありがとー、おねーちゃんは優しいね」
優しいも何も妖怪なんて食べたくないわよ。
共食いじゃないそれ。
死体はちゃんと葬らないと化けてで…いやミスティアなら幽霊も喜んで解体しそうね…。
「おいしいー」
「それはよかったわね」
引きずっていた妖怪を頭から齧り始めるミスティア。
初めの頃は吐きかけたけど、今なら目線を逸らしながらなら見れるようになった。
やめてくれぇ、くちゃくちゃ、ぎゃぁぁぁぁぁ、ごきゅごきゅ、ぁぁぁぁぁぁ、がじがじ、……
なんか色々音が聞こえるが見てみぬ振りをする。
私は何も見なかった。
私は何も見なかった。
私は何も見なかった。
自分に何度も言い聞かせる。
「ごちそうさま、やっぱり動物の妖怪は美味しいね」
「そう…」
無視して素振りを続ける。
精神集中すればこんな現実も見なかったことにできる。
手に握る剣のことだけを考え素振りをする。
何も無かった、私は何も見なかった。
「幽香おねーちゃん」
手に持っていたはずの何かが消えてこちらに話しかけてくるミスティア
無視すると後が怖いので即座に返答する。
この時、声が震えても怯えてもいけない。
獲物側に私はなりたくないのだ。
「なにかしら」
「おねーちゃんはどうして剣なんて使ってるの?」
…見てわからないのかしら。
私みたいな碌に身体能力も妖力も無い妖怪が強くなる方法なんて
武器を持つか、契約するかぐらいなのに。
「強くなるためよ」
「そんなに強いんだから、武器なんて使わなくてもいいと思うんだけど」
強い?
この私が?
ハハハ、そんなこと絶対にありえないわよ。
妖怪の種族の力的にも、戦闘技術にしても、格下もいいところよ。
何言ってるのかしら。
「私は全然強くない」
「雑魚の振りか、確かにその状態ならただの人間並だものね」
「そうよ、だから剣で貴方に勝てるぐらいになるのよ」
「そうか、そういうことか…おねーちゃんはハンデをあげてるのか…」
ミスティアは何かが納得したように呟き頷いている。
残念ながら耳はそこまでよくないので聞き取れなかった。
剣を持ってても私は弱い。
しかし弱小妖怪の私は武器でも使わないと強くなれない。
だから強くなれることを信じて剣の修行を続ける。
「じゃあさ、何か技見せてよ」
「突然ね」
今まで私の剣の修行風景なんて見向きもしなかったのに。
「おねーちゃんの技が見てみたいの」
「まあいいけど…」
素振りを止め剣を腰に仕舞い、精神を集中させる。
さて、どんな技をしようかしら…
世界各地放浪して色々習ったから、技のレパートリーだけは多いのよ。
全然強くないけど。
いや待て。
口を開いてから気が付いた、下手な技をすると私が死ぬ、と
例えばここで熟練の剣舞でも見せよう、それで手合わせしてとか言われて、
私が立ち向かえるはずが無い、無理だ、引き分けすら狙えない。何しろミスティアが本気になったら気配も姿も見えないのだ、
そんな相手と戦えるはずが無い。
いやそれは流石に考えすぎか、ミスティアはそんな子では…
考えるのを止め、前に立つミスティアを見る
全身妖怪の血まみれだった。
どう考えてもそういう娘です。
嫌、食べられるのは嫌、私は死にたくない。
生きてても辛いことしかなかったけど。 幸せには程遠い生活だけど。
…ああやっぱり人間社会は良かった
こんな私でも人間に混ざれば一流の剣士だったのに
英雄とか救世主とか言われてたのに!
妖怪の世界でも最強、余裕よ余裕とか考えなければこんなところに来なかったのに
「お姉ちゃん、どうしたの?」
「何でも無い」
首をかしげ不思議そうにこちらを尋ねてくる。
ああもう可愛いわね、普段あんだけ恐ろしいのが嘘みたいよ。
やるしか、無いの?
やらないと機嫌悪くなるかも知れないし、機嫌良すぎるのも問題だけどね。
「少し離れて、当たると死ぬわよ」
私が。
「うん!」
ミスティアが機嫌良くしない、なおかつ機嫌が悪くならない技。
地味な技しかないわね。
いやでもあまりに地味だと機嫌悪くなりそうだし…
強そうな技だとあとが大変そう。
ああもう一か八かよ!
派手さと実用性の無さならこの技しかない。
技の目標となる木を二十メートル先程に生やす。
そうして助走を付け勢いよく飛び、剣を背中に張り付くぐらいまで振りかぶる。
靴と靴の間に挟み、前方に飛び、剣を溜め勢いよく振り落としその勢いで身体を回転させる。
「風見流奥義!風車ァ!」
目標の木に向けて勢い良く回転しながら、飛ぶ。
目が回る
目が回る
吐きそうだ。
あうあうあー
そうして木を粉砕し、剣を縦向きから横向きにし回転を抑えようとした瞬間、何かが切れた感触と共に私は落下していた。
ポスンッ
落下したというのに気の抜けた音と、柔らかい感触がする。 頭がぐるぐるする。
まるで世界がこんがらがったようだ、あれだけ回転すれば目を回すのも当たり前だけど。
気が付くと私の身体が誰かに受け止められた。
背中になんだか腕の感触がするし、それにしても目が回る。
目の前に誰かがいるのはわかるが目がぐーるぐーるしてよく見えない。
「うわっ弱そう…」
ひどい一言が聞こえた。
そんなことは私が一番よく知ってるし、抱きかかえられてる者の妖気も大して感じられない
精々私の数倍ぐらいであり、弱小妖怪の部類だ。
「うるさいわね、貴方だって大して強く無いじゃ…えっ?」
「そんなこと知ってるわよ…多分世界中の誰よりも…」
私と同じ緑色の髪に
白のカッターシャツ
赤色のチェック型のスカートとベスト
私愛用の仕込み傘とそっくり傘。
「笑顔が怖いだの、友好度最悪だの、最強だの、赤色の服を着てるのは返り血を浴びていいようにとか色々言われてるけど
中身はただの中級妖怪よ…、くそっ私なんかよりよっぽど化け物ばかりの癖して何が最強よ」
「貴方もしかして…」
「第一、魔界神に人間の癖にとか言われるぐらい妖力少ないのに、なんで最強呼ばわりなのよ
でも今更言えない、絶対に言えない、うふふふあははははは」
私の声が聞こえてないのか、突然不気味な笑いをあげ始めた。
正直怖い。
「あの…」
「ああごめんなさい、ちょっと愚痴りたくなっただけよ」
「もしかして貴方は私…?」
「こんにちは、過去の私。ようこそ未来へ」
「はい?」
沈黙が生まれる
まったく持って意味がわからない。
さっき私はミスティアに技を見せた、気の向かって飛んだ、未来にいた。
意味がわからない。
まったくもってわからない。
何よ未来って、いつのまにそんなことになったのよ。
ああもう誰か助けて!
イヤッホォウ!
頑張れゆうかりん♪
このゆうかりんは阿求さんに色々書かれた頃のか。
この期待のやり場はあなたにある。否、あなたにしか無いのだ!
我々は続きを所望している!我々は作品に飢え乾いている!
例えどんな結末が来ようとも、例え結末が見えぬ、幾億に分割された作品に成り、果てようとも!
我々は物語を咀嚼し、飲み干すだろう!
憶する事はない。貴方は投稿した勇気を持っている!
恥ずかしがる事は無い!なぜなら、
こんな文を垂れ流した私が一番恥ずかしい!!
私を超える辱めはそうそうないだろう!
さぁ!私に構わず続けるんだ!!
幽香の秘密を垂れ流す作業に戻るんだ!!
続きも楽しみにしてます
この背中がかゆくなる感覚がいいんです。
やっぱりへたれ幽香ちゃんはかわいい
でもミスティアが言うには、動物の妖怪はおいしい……
なんて無粋なコメントは絶対にしないぜ!
幽香りんかわいいぜ!
次行ってきます!