※この物語に登場するユウゲンマガンは原作のユウゲンマガンとのイメージを壊してしまう恐れがありますので、ユウゲンマガンのイメージに譲れない信念がある方ややっぱりユウゲンマガンなんて知らない方は今すぐお逃げください。ユウゲンマガンのテーマ曲は天使伝説だと即答できる方、次回作はユウゲンマガンの自機化を希望している方、魔界在住の方はそのまま進んでください。
一応続編なんですけど、あんまり問題ないはず……です?
「パチュリー様、何してるんですか?」
「対魔理沙用に新しく契約を結ぼうと思って」
図書館の少し広いスペースで魔導書を開いているパチュリーに、小悪魔が問い掛ける。
「どのようなのを?」
「ユウゲンマガンと言って、無数の眼で様々なものを監視するらしいわ。でも、召喚された例がほとんど無い。それだけ強力なのかしら……?」
「何事も挑戦ですよ。きっと大丈夫ですって。悪魔だってこんなのがいますし」
小悪魔は自分を指差して笑う。
「そうね……やれるだけやってみましょう」
パチュリーは小さく笑った後、本をめくり、呪文を唱えはじめる。
「我が呼びかけに応じ、その姿を現せ……ユウゲンマガン……」
パチュリーの目の前に魔法陣が表れ、激しく光る。
小悪魔は目を細め、その光景を見守る。
やがて光が収まると、魔法陣の中心に人影が現れていた。
「主か、我を呼んだのは」
魔法陣の中心に現れたのは、小さな可愛らしい少女。目を閉じたその少女は姿に似合わぬ話し方をする。
「我を呼んだと言うならば、何かの監視、又は捜索と言う所か?」
「え、えぇ……」
呆然としていたパチュリーは我に帰ったように返す。
「しかしながら、誰かに召喚されたのは何年ぶりだろうか……。我を必要とする者など……」
そこで少女は初めて目を開く。
するとこちらを驚いたように見ている二人を確認し、それから自分の体を触って、辺りを見回す。
そして急に顔を真っ赤にした。
「お、おめめ忘れてきたぁ!」
顔を真っ赤にした少女は顔を両手で隠しながら走り出し、本棚に衝突してひっくり返る。
その光景を見て、パチュリーと小悪魔は顔を見合わせた。
本棚にぶつかった後、少女はパチュリーに、「戻ってきますから、一回おうち帰らせてくださぃ」と懇願し、再び帰っていった。
「…………召喚するの、間違えたかしら?」
「召喚されて、帰らせてなんて言うの聞いたの初めてです……」
二人で囁きあっていると、再び魔法陣が現れる。
「……先程はあのような姿で失礼した。今度は無礼の無いよう、与えられた命令に尽力するのでどうかよろしく頼む」
再び現れたのは宙に浮く五つの眼。
「……成功、かしら?」
「みたいですね……」
再び顔を見合わせる二人。
「それで、我を呼び出した用と言うのは?」
「え?あぁ、そうだったわね。……用件はこの図書館の本の防衛。敵は魔法使い一名」
「己の力を過信する訳では無いが、一人の為にに我を召喚するとは……余程の実力らしいな」
五つの眼はすうっと細まる。
「恥ずかしい話、正面から戦っても私達に勝ち目は無い。だから先手を打っていくしか無いのよ」
「数だけではどうにもならないですしね……」
小悪魔は苦笑する。
「つまり奇襲をかけ、先に仕留めてしまおう、と?」
さらっと恐い事を言う。
「仕留めるまでは行かなくていいの。ただ追い返せれば」
「ふむ、そうなると少し難度が上昇するが、いいだろう」
パチュリーはどの眼を見れば良いのか分からず、とりあえず真ん中の眼を見て言う。
「それで、貴方に案があるなら聞かせてもらいたいの」
「……この図書館の見取り図はあるか?」
「はい」
すかさず小悪魔が五つの眼の前に見取り図を置いた。
「すまない」
眼は何かを考えながら、見取り図を色んな角度から見ている。
「ちなみに、今回はこの辺の本を狙ってくると思うわ」
パチュリーの話を聞き、まだふわふわと宙を漂う。
やがてまたまとまって、一斉にパチュリーを見た。
「この見取り図に線を描いても問題無いか?」
「別に構わないわ。どうせまだあるし」
「ならば、何か書くものを貸していただきたい」
「どうぞ」
その言葉にも、小悪魔はすかさずペンを取り出した。
「すまない……」
「でも……貴方、ペン持てるの?」
「………………」
しばしの無言。
「むぅ……致し方ない」
そう言った直後、真ん中の眼の裏からぴょんと人影が降りてくる。
「あ、あの……ペン、借りていいですか?」
その人影は初めて出て来た時の小さな少女で、おずおずと小悪魔に問い掛ける。
「あ、はい……」
呆気に取られる小悪魔からペンを受け取る。
「あ、一応自己紹介を……わた、私、ユウゲンマガンです。っていうのは分かってますよね……。えっとえっと……な、長いですから。ま、マガンと読んで、下さい?」
少女、マガンは言葉の最後を疑問形にして俯いた。
「……貴方もユウゲンマガンなの?」
少ししてやっとパチュリーが口を開く。
「あ、は、はい……。や、やっぱり変ですか?」
「変では無いけど……」
「可愛くていいじゃないですか~」
パチュリーの言葉を遮って、小悪魔がマガンを後ろから抱きしめた。
「ふ、ふえぇ!」
顔を真っ赤にしてマガンはうろたえる。
「可愛い~。よしよし」
しかし小悪魔に頭を撫でられると、気持ち良さそうに眼を細めた。
「……それで、案の事だけど」
話が進まないと感じたパチュリーは口を開く。
「はっ!そうでした!き、気持ち良くて寝ちゃう所でした……」
小悪魔の腕の中でマガンは眼を開く。
それから腕の中から出て、見取り図に向かう。
そしてマガンはペンのキャップを外そうと必死に引っ張るが、外せなくて小悪魔に外してもらう。
「え、えっとですね……。ここが入り口ですから……」
話ながらマガン見取り図に書き込みをしていく。
「……と、こんな感じでどうでしょうか?」
マガンはそう言ってペンにキャップをはめようとするが、出来なくて小悪魔にはめてもらう。
「うん、悪くないわ」
パチュリーは満足げに頷く。
「それで……作戦開始日時は……?」
「……悪いんだけど、今日にでも来るわね……」
「え、えぇ!?ほ、本当ですか!?」
マガンは大きな動きで驚く。
「魔理沙さん、そろそろ来る頃ですね……」
小悪魔も苦笑。
「な、な、なら、早く準備しないと……」
テンパるマガンはわたわたと背後の眼と共に動く。
「……大丈夫ですかね?」
「……案は死角が無くて完璧だったけど、どうかしら?」
「あ、えっと……お二人は中心辺りに待機していて下さい」
二人は何も無い所で転んだマガンを見て、心配そうな顔をする。
「うっす、パチュリー。また来てやったぜ」
図書館の扉が勢いよく開かれ、魔理沙が入って来た。
「っと……留守か?」
きょろきょろと辺りを見回す魔理沙。
「ちょうどいい、奥の方に借りたい本があったんだ。今のうちに借りてくぜ」
独り言だろうか。それにしては随分大きな声だが。
それはともかく、魔理沙は奥へと歩を進める。
その頭上には、音も無く浮かぶ一つの眼。
魔理沙はそれに気付くこと無く進んでいく。
「目標確認」
「それで、ここからどうするんですか?」
「ひとまず狭い場所に移動するのを待ちます。そこで勝負です」
「本当に大丈夫なの?」
「あ、改めて言われると……」
「……まぁ、どうせいつも盗られてるんだから失敗したって変わらないわ。駄目元でもいいからよろしく頼むわ」
「は、はいっ!頑張ります!」
「え、えと……目標は……」
マガンは先程追跡させていた眼で様子を伺おうとしたが、すでに魔理沙の姿は見えなくなっていた。
「え、え?こんな短時間でどこに……?」
「ここだぜ」
後ろから聞こえた声にマガンはびくりと体を震わせる。
「パチュリーのヤツ、遂に外部から助っ人を呼ぶようになったか。ちょっと面倒だな……」
魔理沙はひょいっとマガンを片手でつまみ上げる。
マガンもバタバタと抵抗するが、完全に無駄な抵抗のようである。
「ま、こんなへなちょこで助かったぜ」
「へ、へなちょこじゃないです……!」
涙目になりながらも抗議するが、魔理沙は聞く耳を持たない。
「おっと、あの眼で攻撃しようなんて考えるなよ。不審な動きをすればドライアイにするぜ」
魔理沙の後ろに音も無く近付いていた眼が動きを止めた。
「ど、ドライアイ……怖いです……」
どのようにしてドライアイにするのかは疑問だが、マガンの眼の自由を封じるのには充分だったらしい。
「さて、じゃあお前を人質にして本を借りるとするかな」
勝利を確信した魔理沙はマガンをつまみ上げたまま、一歩を踏み出す。
「あっ!」
「ん、どうした?」
マガンの声に、魔理沙はマガンの方を見る。
「えいっ!マガンフラッシュ!」
と、マガンの瞳がまばゆく光る。
光ったのは一瞬だが、魔理沙の目潰しには充分効果があった。
「なっ……!くそっ!」
魔理沙は目を擦るが、それで視力が早く回復するはずもない。
その間、魔理沙の腕から抜け出したマガンは先程からの弱々しさを感じさせない程素早いバックステップで魔理沙から距離をとる。
それから先程魔理沙の後ろに回り込んでいた眼を自らの後ろ、ちょうど頭の上くらいに操作して設置する。
そして、魔理沙を真っすぐ指差す。
「行きますっ!マガンビーム!」
後方の眼から電撃を纏った光線を放つ。
視界を奪われている魔理沙に避ける術も無く、直撃した。
どさっと魔理沙が倒れる音。
「だ、騙し討ちだけどいい……よね?」
「ありがとう、貴方のおかげで助かったわ」
「魔理沙さん、動かないで下さいよ~」
「縛られてんだから動きたくても動けないぜ……いたたっ!染みる!染みる!」
お礼を言うパチュリーの後ろでは、椅子に縛られた魔理沙が小悪魔に治療を受けている。
「や、やりすぎでしたか……?」
「いいのよ。あれくらい痛い目にあえば少しは懲り……魔理沙だからそれは無いかもしれないけど」
溜め息をつくパチュリーに合わせ、マガンはくすりと笑う。
「ま、今回は今までの本をまとめて帰してもらわないと……。そうだ、魔力はあれで充分?もっと必要なのであれば構わないわよ?」
「そ、そんな……それでも貰い過ぎなくらいです……」
「謙虚ね……まあそれが貴方らしさなのだろうけど」
小さく微笑むと、パチュリーは何やら魔法を呟く。
するとマガンの足元に魔法陣が現れる。
「それじゃ、名残惜しいけど……」
「あ、あのっ!良かったら……その……ま、また喚んで下さい!」
「ええ、貴方とは一度ゆっくり話したいわね」
そう言うパチュリーの後ろ、小悪魔は大きく手を振って、魔理沙は次は負けないなどと言っている。
マガンは最後に小さく手を振った。
「あ、あのね……今日は久しぶりに召喚されたの……」
「へぇ、マガンも召喚されたりするんだ」
「う、うん。だって、私……始めはサリエル様に召喚されたんだよ……?」
「え?マジで!?知られざるマガンの過去じゃん!」
「エリスにはまだ言ってませんでしたね。あと、お箸をしゃぶらない」
「私と会う前の二人は何があったの?」
「い、色々……」
「マガン、あの頃はかっこよかったんですよ。今もですけどね。エリス、お箸で茶碗を寄せない」
「さ……さ、サリエル様も……か、かわ、かわい……かわいかった……です……」
「今は?」
「き、きれ……きれい……」
「まぁ、照れますね」
「なんだこのおのろけは~。一体過去に何があったの!?」
「そ、それはまた今度……」
「えぇ、また今度です」
「えええぇ~……私だけ仲間外れ~……?」
「い、いつか話すよ……」
一応続編なんですけど、あんまり問題ないはず……です?
「パチュリー様、何してるんですか?」
「対魔理沙用に新しく契約を結ぼうと思って」
図書館の少し広いスペースで魔導書を開いているパチュリーに、小悪魔が問い掛ける。
「どのようなのを?」
「ユウゲンマガンと言って、無数の眼で様々なものを監視するらしいわ。でも、召喚された例がほとんど無い。それだけ強力なのかしら……?」
「何事も挑戦ですよ。きっと大丈夫ですって。悪魔だってこんなのがいますし」
小悪魔は自分を指差して笑う。
「そうね……やれるだけやってみましょう」
パチュリーは小さく笑った後、本をめくり、呪文を唱えはじめる。
「我が呼びかけに応じ、その姿を現せ……ユウゲンマガン……」
パチュリーの目の前に魔法陣が表れ、激しく光る。
小悪魔は目を細め、その光景を見守る。
やがて光が収まると、魔法陣の中心に人影が現れていた。
「主か、我を呼んだのは」
魔法陣の中心に現れたのは、小さな可愛らしい少女。目を閉じたその少女は姿に似合わぬ話し方をする。
「我を呼んだと言うならば、何かの監視、又は捜索と言う所か?」
「え、えぇ……」
呆然としていたパチュリーは我に帰ったように返す。
「しかしながら、誰かに召喚されたのは何年ぶりだろうか……。我を必要とする者など……」
そこで少女は初めて目を開く。
するとこちらを驚いたように見ている二人を確認し、それから自分の体を触って、辺りを見回す。
そして急に顔を真っ赤にした。
「お、おめめ忘れてきたぁ!」
顔を真っ赤にした少女は顔を両手で隠しながら走り出し、本棚に衝突してひっくり返る。
その光景を見て、パチュリーと小悪魔は顔を見合わせた。
本棚にぶつかった後、少女はパチュリーに、「戻ってきますから、一回おうち帰らせてくださぃ」と懇願し、再び帰っていった。
「…………召喚するの、間違えたかしら?」
「召喚されて、帰らせてなんて言うの聞いたの初めてです……」
二人で囁きあっていると、再び魔法陣が現れる。
「……先程はあのような姿で失礼した。今度は無礼の無いよう、与えられた命令に尽力するのでどうかよろしく頼む」
再び現れたのは宙に浮く五つの眼。
「……成功、かしら?」
「みたいですね……」
再び顔を見合わせる二人。
「それで、我を呼び出した用と言うのは?」
「え?あぁ、そうだったわね。……用件はこの図書館の本の防衛。敵は魔法使い一名」
「己の力を過信する訳では無いが、一人の為にに我を召喚するとは……余程の実力らしいな」
五つの眼はすうっと細まる。
「恥ずかしい話、正面から戦っても私達に勝ち目は無い。だから先手を打っていくしか無いのよ」
「数だけではどうにもならないですしね……」
小悪魔は苦笑する。
「つまり奇襲をかけ、先に仕留めてしまおう、と?」
さらっと恐い事を言う。
「仕留めるまでは行かなくていいの。ただ追い返せれば」
「ふむ、そうなると少し難度が上昇するが、いいだろう」
パチュリーはどの眼を見れば良いのか分からず、とりあえず真ん中の眼を見て言う。
「それで、貴方に案があるなら聞かせてもらいたいの」
「……この図書館の見取り図はあるか?」
「はい」
すかさず小悪魔が五つの眼の前に見取り図を置いた。
「すまない」
眼は何かを考えながら、見取り図を色んな角度から見ている。
「ちなみに、今回はこの辺の本を狙ってくると思うわ」
パチュリーの話を聞き、まだふわふわと宙を漂う。
やがてまたまとまって、一斉にパチュリーを見た。
「この見取り図に線を描いても問題無いか?」
「別に構わないわ。どうせまだあるし」
「ならば、何か書くものを貸していただきたい」
「どうぞ」
その言葉にも、小悪魔はすかさずペンを取り出した。
「すまない……」
「でも……貴方、ペン持てるの?」
「………………」
しばしの無言。
「むぅ……致し方ない」
そう言った直後、真ん中の眼の裏からぴょんと人影が降りてくる。
「あ、あの……ペン、借りていいですか?」
その人影は初めて出て来た時の小さな少女で、おずおずと小悪魔に問い掛ける。
「あ、はい……」
呆気に取られる小悪魔からペンを受け取る。
「あ、一応自己紹介を……わた、私、ユウゲンマガンです。っていうのは分かってますよね……。えっとえっと……な、長いですから。ま、マガンと読んで、下さい?」
少女、マガンは言葉の最後を疑問形にして俯いた。
「……貴方もユウゲンマガンなの?」
少ししてやっとパチュリーが口を開く。
「あ、は、はい……。や、やっぱり変ですか?」
「変では無いけど……」
「可愛くていいじゃないですか~」
パチュリーの言葉を遮って、小悪魔がマガンを後ろから抱きしめた。
「ふ、ふえぇ!」
顔を真っ赤にしてマガンはうろたえる。
「可愛い~。よしよし」
しかし小悪魔に頭を撫でられると、気持ち良さそうに眼を細めた。
「……それで、案の事だけど」
話が進まないと感じたパチュリーは口を開く。
「はっ!そうでした!き、気持ち良くて寝ちゃう所でした……」
小悪魔の腕の中でマガンは眼を開く。
それから腕の中から出て、見取り図に向かう。
そしてマガンはペンのキャップを外そうと必死に引っ張るが、外せなくて小悪魔に外してもらう。
「え、えっとですね……。ここが入り口ですから……」
話ながらマガン見取り図に書き込みをしていく。
「……と、こんな感じでどうでしょうか?」
マガンはそう言ってペンにキャップをはめようとするが、出来なくて小悪魔にはめてもらう。
「うん、悪くないわ」
パチュリーは満足げに頷く。
「それで……作戦開始日時は……?」
「……悪いんだけど、今日にでも来るわね……」
「え、えぇ!?ほ、本当ですか!?」
マガンは大きな動きで驚く。
「魔理沙さん、そろそろ来る頃ですね……」
小悪魔も苦笑。
「な、な、なら、早く準備しないと……」
テンパるマガンはわたわたと背後の眼と共に動く。
「……大丈夫ですかね?」
「……案は死角が無くて完璧だったけど、どうかしら?」
「あ、えっと……お二人は中心辺りに待機していて下さい」
二人は何も無い所で転んだマガンを見て、心配そうな顔をする。
「うっす、パチュリー。また来てやったぜ」
図書館の扉が勢いよく開かれ、魔理沙が入って来た。
「っと……留守か?」
きょろきょろと辺りを見回す魔理沙。
「ちょうどいい、奥の方に借りたい本があったんだ。今のうちに借りてくぜ」
独り言だろうか。それにしては随分大きな声だが。
それはともかく、魔理沙は奥へと歩を進める。
その頭上には、音も無く浮かぶ一つの眼。
魔理沙はそれに気付くこと無く進んでいく。
「目標確認」
「それで、ここからどうするんですか?」
「ひとまず狭い場所に移動するのを待ちます。そこで勝負です」
「本当に大丈夫なの?」
「あ、改めて言われると……」
「……まぁ、どうせいつも盗られてるんだから失敗したって変わらないわ。駄目元でもいいからよろしく頼むわ」
「は、はいっ!頑張ります!」
「え、えと……目標は……」
マガンは先程追跡させていた眼で様子を伺おうとしたが、すでに魔理沙の姿は見えなくなっていた。
「え、え?こんな短時間でどこに……?」
「ここだぜ」
後ろから聞こえた声にマガンはびくりと体を震わせる。
「パチュリーのヤツ、遂に外部から助っ人を呼ぶようになったか。ちょっと面倒だな……」
魔理沙はひょいっとマガンを片手でつまみ上げる。
マガンもバタバタと抵抗するが、完全に無駄な抵抗のようである。
「ま、こんなへなちょこで助かったぜ」
「へ、へなちょこじゃないです……!」
涙目になりながらも抗議するが、魔理沙は聞く耳を持たない。
「おっと、あの眼で攻撃しようなんて考えるなよ。不審な動きをすればドライアイにするぜ」
魔理沙の後ろに音も無く近付いていた眼が動きを止めた。
「ど、ドライアイ……怖いです……」
どのようにしてドライアイにするのかは疑問だが、マガンの眼の自由を封じるのには充分だったらしい。
「さて、じゃあお前を人質にして本を借りるとするかな」
勝利を確信した魔理沙はマガンをつまみ上げたまま、一歩を踏み出す。
「あっ!」
「ん、どうした?」
マガンの声に、魔理沙はマガンの方を見る。
「えいっ!マガンフラッシュ!」
と、マガンの瞳がまばゆく光る。
光ったのは一瞬だが、魔理沙の目潰しには充分効果があった。
「なっ……!くそっ!」
魔理沙は目を擦るが、それで視力が早く回復するはずもない。
その間、魔理沙の腕から抜け出したマガンは先程からの弱々しさを感じさせない程素早いバックステップで魔理沙から距離をとる。
それから先程魔理沙の後ろに回り込んでいた眼を自らの後ろ、ちょうど頭の上くらいに操作して設置する。
そして、魔理沙を真っすぐ指差す。
「行きますっ!マガンビーム!」
後方の眼から電撃を纏った光線を放つ。
視界を奪われている魔理沙に避ける術も無く、直撃した。
どさっと魔理沙が倒れる音。
「だ、騙し討ちだけどいい……よね?」
「ありがとう、貴方のおかげで助かったわ」
「魔理沙さん、動かないで下さいよ~」
「縛られてんだから動きたくても動けないぜ……いたたっ!染みる!染みる!」
お礼を言うパチュリーの後ろでは、椅子に縛られた魔理沙が小悪魔に治療を受けている。
「や、やりすぎでしたか……?」
「いいのよ。あれくらい痛い目にあえば少しは懲り……魔理沙だからそれは無いかもしれないけど」
溜め息をつくパチュリーに合わせ、マガンはくすりと笑う。
「ま、今回は今までの本をまとめて帰してもらわないと……。そうだ、魔力はあれで充分?もっと必要なのであれば構わないわよ?」
「そ、そんな……それでも貰い過ぎなくらいです……」
「謙虚ね……まあそれが貴方らしさなのだろうけど」
小さく微笑むと、パチュリーは何やら魔法を呟く。
するとマガンの足元に魔法陣が現れる。
「それじゃ、名残惜しいけど……」
「あ、あのっ!良かったら……その……ま、また喚んで下さい!」
「ええ、貴方とは一度ゆっくり話したいわね」
そう言うパチュリーの後ろ、小悪魔は大きく手を振って、魔理沙は次は負けないなどと言っている。
マガンは最後に小さく手を振った。
「あ、あのね……今日は久しぶりに召喚されたの……」
「へぇ、マガンも召喚されたりするんだ」
「う、うん。だって、私……始めはサリエル様に召喚されたんだよ……?」
「え?マジで!?知られざるマガンの過去じゃん!」
「エリスにはまだ言ってませんでしたね。あと、お箸をしゃぶらない」
「私と会う前の二人は何があったの?」
「い、色々……」
「マガン、あの頃はかっこよかったんですよ。今もですけどね。エリス、お箸で茶碗を寄せない」
「さ……さ、サリエル様も……か、かわ、かわい……かわいかった……です……」
「今は?」
「き、きれ……きれい……」
「まぁ、照れますね」
「なんだこのおのろけは~。一体過去に何があったの!?」
「そ、それはまた今度……」
「えぇ、また今度です」
「えええぇ~……私だけ仲間外れ~……?」
「い、いつか話すよ……」
本体と五つ眼は有線で繋がっているようで。