「どうしよう・・・迷ったわ・・・」
パチュリーは魔法の森で彷徨っていた。
空を飛べばいいじゃん、と思うだろうがそうはいかなかった。
話は3時間前に遡る。
パチュリーはいつものように図書館で紅茶を飲みながら読書を満喫していた。
そこにレミリアがやって来てパチュリーにこう言ったのだ
「パチェ、今日は散歩に出るといいわ。きっと良いことがあるわよ」
と。
そして一つだけ条件があり、それは空を飛んではいけないということであった。
正直面倒くさかったパチュリーだが、レミリアの言う「良いこと」に興味があったので散歩に出ることにしたのだった。
そして今に至る。
いま思えば、あのとき小悪魔の言うことを少しは聞いておくんだった。
散歩に出る際、小悪魔が心配して色々言ってきた。喘息の薬は持ったかだとか、コンパスはちゃんと持ったかだとか。
流石に馬鹿にされていると思い、小悪魔の言うことを一切無視して出てきてしまった。
「薬とコンパスは必要だったかも・・・っていうか、何で魔法の森に来た自分!」
普段引きこもっている自分が急に外に、それも魔法の森に入ったらどうなるか少し考えたら分かりそうなものである。
しかし、パチュリーが魔法の森に来たのには訳があった。
それは、「良いこと」がアリス絡みだとパチュリーは思ったからである。
アリスを愛してやまないパチュリーは「良いこと」がアリス絡みであると確信していた。
「はぁはぁ、もう諦めようかしら・・・」
喘息の調子も悪くなってきた。アリスとのイベントを諦めて空を飛んでしまおうか。
諦めかけたそのとき、パチュリーの目に一軒の家屋が飛び込んできた。
これも何かの縁だろうと思ったパチュリーは家屋に立ち寄ってみることにきめた。
近づいてみて分かったのだが、この家屋は何かの店らしく、大きな看板が屋根の上に付いている。そして店の前には白いベンチがあり、そこに一人の女の子が腰掛けていた。
女の子の背中には朱色の翼があり、一目で何かしらの妖怪であることが見て取れた。女の子はベンチに腰掛け、分厚い本を楽しそうに読んでいる。
それを見たパチュリーの胸は躍った。
そして悟った。
彼女との出会いが「良いこと」なのだと。
幻想郷では何かあるとすぐに弾幕勝負を始める脳筋(脳が筋肉)共ばかりで、本を好んで読む者は少なかった。それがパチュリーには不満だった。
もっと本についての理解者が欲しい。
パチュリーが常日頃から願っていたことであった。
それがいま叶おうとしている。
早速パチュリーは女の子と仲良くなるために話しかけることにした。
朱鷺娘は上機嫌で本を読んでいた。
今日は天気も良く、時折優しく撫でてくるそよ風が心地よい。
絶好の読書日和だ。
そんな中、奴は現れた。
「はぁはぁ、何読んでるの?」
息を荒くし、熱い眼差しでこちらを見つめる女。
間違いない、コイツは痴女だ。
着ている服もネグリジェのような寝巻きに見える。
私をベッドに連れて行こうというつもりだろう。冗談ではない、私はノンケだ。
朱鷺子は無言でベンチの端へと移動し、本を読み直す。
こういう輩は無視して拒絶の姿勢を見せるのが大事なのである。
このシャイガールめ。
女の子は気恥ずかしいのか、ベンチの端へと移動してしまった。
やはりここは人生経験豊富な自分がリードするしかないだろう。
パチュリーは女の子の隣へと座り、再び女の子に話かける。
どうしてこうなった・・・。
空気の読めない痴女が私の隣に座ってしまった。
「はぁはぁ、ねえ、お姉さんにちょっと見せてくれるかしら」
見せる?何を見せろというのだろうか。
もう嫌だ、誰か助けて・・・誰か・・・。
「むきゅッッッッ!!」
突然パチュリーの頭部に強い衝撃が襲った。
パチュリーの目の前はだんだん暗くなり、意識を失ってしまう。
目を覚ますとベッドの上にいた。
「良かった、気が付いたのね」
こちらを心配そうに覗き込む人形のように美しい少女。
「アリス?」
見間違えるはずもない、愛すべきアリスであった。
「気が付いて良かったわ。あなた倒れていたのよ」
倒れていた?そうだ、あの女の子と一緒にいて――
ズキリ。
倒れたことを思い出した途端頭痛がし始める。
「大丈夫?まだ頭が痛いの?」
「・・・ええ、でも大丈夫。直に良くなるわ。それよりもここはアリスの家?」
「ええそうよ、倒れたあなたを私の家に運んだの」
そうか、アリスが私を運んでくれたのか。しかし、あの女の子はどうしたろう。私はどこで倒れていたのだろう。やはりあのベンチで倒れていたのだろうか。
「ありがとうアリス。ねえアリス、私はどこで――」
「そうだ、リンゴ食べる?今取ってくるわ」
アリスはこちらの話しを遮り、奥へと消えていった。
アリスは何か知っているようだったが、まあいいだろう。それよりも今はアリスの部屋に入れた幸せを噛み締めたい。
そういえば喘息も治まっている。アリスが何かしてくれたのだろうか。
「お待たせ」
しばらくしてアリスがお皿にリンゴとナイフを載せてやってきた。
アリスはベッドの横に置かれた椅子に座ると手慣れた手つきでリンゴの皮を剥いていく。
これはあれだ、リンゴをあ~んして食べさせてくれるやつだ。
あの女の子と仲良くなれなかったのは残念だが、リンゴあ~んがあるから良しとしよう。
ありがとうレミィ、散歩に出てよかったわ。
「ねえ、パチュリー」
「なに?アリス」
「一緒にいたあの女は何?」
いつの間にか、リンゴを剥いていたはずのアリスの手にはナイフしか握られていなかった。
もちろん作者の表現の自由ですが、個人的に気に障るので。
もう少し練ればもっと良い物が出来たと思います
ここまで災難続きじゃねーかw
>>22様
少しネタバレになりますが、実はレミリアはパチュリーが散歩に出た後の運命が全く見えていません。
では何故パチュリーを散歩にけしかけたのかは次回作で詳しく書かせていただこうと思います。
>>21様
Exactly
(そのとおりでございます)
すいません、答えになっていませんでした。これもネタバレになりますが、「良いこと」とはパチュリーを散歩にけしかける為にレミリアがついた嘘です。
朱鷺パチェに期待を込めて。
すいません、次回作はこの続きからではなく、アリスの視点での作品となります。この後どうなるかは読者の皆様におまかせしたいので・・・。
パチュリーと朱鷺子の作品は後で必ず投稿させて頂きますので、よろしかったら見てください。