Coolier - 新生・東方創想話

ある休日

2010/11/16 19:53:17
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 リリリリ……。
 目覚ましが鳴っている。
 木々の葉は落ち、日によっては朝布団から出る事が重労働になりつつある季節。
 反応というよりは反射のように、布団の中から手だけを伸ばし目覚ましを止めた。
 ゆったりと体が目覚めていく。


 薄く目を開く。
 視線だけをずらしベッド脇の窓を見れば、カーテンの隙間から光が差し込んでいた。
 耳に入ってくる外の音はまだ小さく、まだ街全体が動き始めるにはもう少しの猶予があるようだ。
 学校までの距離を考えれば早起きに入る起床時間。

 通学距離が短いと寝坊ができていいと言うが、それだけで住む家や学校を決める者は結局距離が短いという油断から逆に寝坊が増える。
 そんな何十年も前からの通説にあっさりと引っかかっている相棒のために、少しだけ早起き。


 視線を窓から枕元に落とせば、読みかけの本があった。
 寝る前に読んでいた本。読みながら寝た本。何時まで読んでいたっけか。あれ、どこまで読んだろ。栞が挟まってない。
 のんびりのんびりと動く思考。
 布団に入ったときに目に入ったカレンダーの記憶から頭の中で今日の日付を確認する。

 休みの日だった。

 明日は休みだからと夜遅くまで本を読み、目覚ましを解除するのを忘れそのまま寝入る。
 たまにやる失態。

 朝起きること自体はそこまで苦にしないといいつつも、寒くなりつつある季節でこれをやるのは、ちょっと、何というか。
 悔しい。



 布団をかぶりなおしながらこのまま二度寝をするか起きるかを考える。
 考える時点で大抵は二度寝が既定路線なのだけど、今日は珍しく違った。

 ベッドの側、窓の反対側からなにかの気配を感じた。
 目が覚めている状態ならば不安と焦りと恐怖とともに顔を向けるか悲鳴をあげたのかもしれないが、その時はまだ半分寝ていたので動きも思考も緩慢だった。
 ゴロンと寝返りをうち、気配の方向に向き直る。
 境界でもなく、幽霊でもなく、妖怪でもなく。
 人。





「おはよう、メリー」

 秘封倶楽部の片割れで、親友の宇佐見蓮子がそこに。



   ◆   ◆   ◆




 なんで一人暮らしの私の家に朝からあなたが。
 というかどうしてこんな時間に部屋の入口に立っているの。
 昨日は夕方に別れたから飲んでいたわけでもないのに。
 
 思考回路は色々とセリフを発していたが、急にたたき起こされた体がなんとか発することができたのは
「な……え?……おは、よう」
 この程度だった。


 混乱する私を眺めながら蓮子は黙ってニヤニヤしていた。
 部屋の入口に立つ蓮子と私の視線が絡み合ったまま時が流れる。
 さすがに一分近くもだんだんと思考が冴えてきて、疑問がわいた。
 今度はちゃんと口から言葉が出た。

「ねぇ蓮子、なんであなたは私の部屋にいるの?」
「それはねメリィ。わたしがメリィの家の鍵を持っているからだよぅ」

 何故か昔話に出てくるおじいさんのような間延びした喋り方をする蓮子。
 ここでノッてしまうとコレが延々と続く。切り替えよう。
 一呼吸してから体を起こし、ベッドに腰掛ける体制に。
 蓮子は立ったままなのでまだ見上げる形ではあるが、少し距離が近づいた。
 頭もほぼ普段どおりに働く。
 よし、闘える。

「そう、なら鍵を変えなくちゃね」
「非道いなぁ。なんで私が鍵を持っているのかは気にならないの?」
「聞いたら教えてくれるのかしら?」
「メリーの寝顔見れて気分がいいから教えてあげよう。それはね、私がメリーの家の鍵を拾ったからなのだ!」
「ちょっと待って。私昨日は帰宅したときに自分で鍵を開けたわ。それはどこで拾ったの?」

 スペアの鍵はガスメーターの裏と玄関に置いてあるだけで、普段持ち歩いてる鍵はひとつだ。
 私の疑問に蓮子はふふーん、と得意げに答える。

「ガスメーターの裏に落ちてた!」
「あらそう」

 それはたぶん落ちてたとは言わないんじゃないかな。
 突っ込む気にもならない。

「あんなとこに鍵置いておくなんて無用心だよ。だから私が回収してあげたのだ」
「……ねぇ、蓮子」
「なぁに、メリー」
「友達やめていいかしら」

 ぽかん、とした顔。
 しまった。泣くか。
 嘘泣きをやめさせるのはめんどくさいな、と思っていると。

「…………………えへへ」
「そこで笑うの!?」

 十秒固まったと思ったら照れながら笑った。
 日本語はマスターしてるつもりだし日本人の感覚もそこらの若者より身に付いてる自信はあるけど、蓮子の頭の中だけは読めない。
 どちらかと言えば読もうとも思わない。

「だって、友達じゃなくなるんでしょ?」
「そうよ。……嫌じゃないの?」
「だってやっとメリーが恋人になるんだよ。ランクアップだよ。そりゃ嬉しいよ」
「黙りなさい変人。だからとりあえず部屋から出ていって。着替えるから」
「はい、これ着替えだしといたよ」
「……」

 いつも変だとは思っていたが、今日は何か異常だ。
 言ったらそれは恋だよ愛だよと言われる気がしたので黙って受け取った。



 ~マエリベリーの貴重なお着替えシーン~



   ◆   ◆   ◆




 何故か今日の私の気分にぴったしの服装に着換え部屋の扉を開ける。
 すると着換え中からも扉の向こうから聞こえてきた鼻歌の正体が判明する。
 匂いはしていたからまさか、とは思ったんだけど。


 実は一人暮らしでは初めての経験だった。
 ほんとはこう、優しいカレが、とか。
 ……そっち方面はずっと日照りだからしょうがないか。うん。泣かない。
 でもやはりコレはいい。ちょっとクルものがある。





 起きたら朝食が出来ている!





 大学へ入る前の私へ言ってやりたい。
 毎朝まともに朝食を作るのは暇人かよっぽどの料理好きだけ。
 おしゃれな朝食なんて幻想は捨てろ。
 前の日の夜のおかず?そんなもんは一人暮らしではでない。
 むしろ前の日の夜におかずを食べていない。
 人間は日光と朝刊の記事をおかずに白米を食べる事ができる。
 パンを焼くのはめんどくさい。そのうえパンくずは片付けするのもめんどくさい。


 いけない。
 蓮子のハイテンションに引きずられて調子がおかしい。
 深く呼吸をして気持ちを落ち着ける。

 すー
   はー



 よし。
 改めてテーブルを見る。
 ザ朝食。和食ではないけど私は朝は洋食派なので歓迎だ。

「トーストサラダにコーヒー。ハムエッグ。一応他人の家なのによくもまぁ」
「起きてご飯があると嬉しいでしょ?がんばったよー」
「うーん、いい子いい子」
「ふふーん。ほら座って座って」
「はいはい」

 向かい合うように座る。テーブルと椅子のセットを置くほど広い家ではない。

 いただきます。



   ◆   ◆   ◆





 もぐモグ、モグもぐ。
 メニューが質素(作るのが楽かどうかは別の話)なので味の良し悪しなどが話題になるわけではない。
 見れば「私が普段使っている食器」を蓮子が使い、「メリーが我が家に来たとき使っている食器」を私が使っているが、突っ込むほどではないだろう。
 突っ込んだら五月蝿いし。
 静かに、食べる。
「あーおいしいなぁこのハムエッグ。作るとき卵の殻入って取るの大変だったなー」

 静かに、食べたい。

「パンの焼き加減が素晴らしい。さすが私」

 目的を達成するためにあえて遠回りすることも必要だ。急がば回れ?
 コーヒーを一口飲み口を開く。

「作ってくれてありがとう蓮子。おいしいわ」
「よろしい」
「でもなんで急に。別に鍵がどうこうならいつでもいいじゃない」
「いやー寝顔見たくなっちゃってさ、メリーの」
「お互いの家に泊まったり旅行のとき見てるじゃないそんなの」
「自宅で気持よく寝てる顔がみたくなったのさ、急に」
「それで休みの早朝から私の家に侵入ってわけ?あなたのその行動力の原動力はなんなのよ……」
「愛かな」
「ッ」

 いつも直球勝負な蓮子はちょっとズルい。
 冗談でも言われたらそのちょっと嬉しいとか嬉しくないとか顔がにやけそうとかああああ蓮子察してすげぇニヤニヤしてるよいやいやいやいや。
 なんかいおうなんかいってごまかそうごまかさないと。
 れいせいに、れいせいなふうに。

「……好きに、すれば?」
「ねぇ蓮子が私のこと好きだって!式場予約しといて!」

 くそっ。逆効果か。
 だが相手がこうもテンションが高いとこちらは逆に冷静になる。覚めるというか冷めるというか。
 ならばまだ手はある。

「お願い蓮子、壁に向かってしゃべらないで。しかもその壁の向こうは家じゃなくて外よ」
「壁には耳があるっていうよ。障子にはメアリーさん」
「誰よそれ。ついでにそれは壁の向こうに誰かさんの耳があるってことよ」
「そうとも言うね」
「しかも私の家は一階じゃないのよ。誰が聴いてるのよ」
「空を飛ぶってロマンがあるじゃない?」
「あなたの頭の中身のがよっぽどロマンよ」
「ロマンはどこだ?それはここだ!」
「過去の名著を汚すのはやめなさい」

 二人だとどちらかが癇癪を起こすというが、今のところ銀行強盗を起こす気はないし問題はない。



   ◆   ◆   ◆




 それにしても……。
 いくらなんでも今日の蓮子はテンションが高すぎる。
 しかも早朝から。
 普段ならまだ私の対熟睡蓮子奥義、逆エビ固めの出番ですらまだだ。
 残りのハムエッグを飲み込んでから口を開く。

「ねぇ蓮子。今日はほんとにこんな早くからどうしたの?普段ならやっとフライングニードロップの時間よ?」
「女子大生が時間をプロレス技でカウントするのはどうなんでしょうか」
「質問に答えるのとコブラツイストはどちらが好き?」
「実は一人でお酒飲みながら徹夜してました」

 何故か人間徹夜明けはテンションが高い。
 アルコールが入っていればさらに。しかも蓮子は普段からテンションが高めなのでなおさらだ。
 こういう時に一度眠気がやってくるとかなり辛いのだけれど、今日は休みなので問題はないか。
 ……お酒が絡むと妙に判定が甘い気もする、私。

「それで何で徹夜になったのよ。なんかおもしろいネタでもあった?」
「ネタといえばネタかなぁ」

 ネタ、つまり秘封倶楽部の活動方針。
 どちらかが出すか二人で話題になったものをその日のテーマにし活動する。
 二人という最小構成とお互いの守備範囲が若干違うからこそのフットワークが私たちの強みだ。
 弱みはどうしても出来る事が小さくなりがちなことと、結果が付いてこないことだろうか。
 過程を楽しめるので問題はないのだけれど。

「それで?何について調べてたの?」
「いやー調べてたというよりおもしろい本読んでたってだけなんだよね」
「へぇ、どんな本?」
「えーとね、この前の古本市で見かけて買っといた奴なんだ。ほらこれこれ」

 蓮子がカバンから取り出した数冊のシリーズ物の文庫本のタイトルには、私にも見覚えがあった。
 陰陽師と、実直な人なのに笛の天才という男の二人が怪異を解決していくお話。
 たしか出た当時はそこそこのブームになったはず。

「あー、それね。電子版で読んだ事あるわ。おもしろかったわ」
「うん。話はほとんどワンパターンなのに飽きないんだよね。私はね、彼が好き。メリーはどうせもう片方でしょ」
「まぁね。人間味があるもの」

 蓮子は異能や異質な存在に強く惹かれる。出来る事が大したことないからと蓮子は言う。
 私は人間味あふれる明るい存在に惹かれる。異質なモノを見る事ができてしまうからバランスをとってるんだよと蓮子は言う。
 そのままお互いの特徴にも当てはまるね、と笑いあったのは出会ってすぐのこと。
 今じゃ恥ずかしくて笑えないかもしれない。
 だって、こんなにも。

 まぁそれはまた別の話。今は陰陽師。


「じゃあ今日は……陰陽師について?」
「それもいいけど、調べるなら歴史上の人物よりも鬼とか妖怪についての方がおもしろそうじゃない?」
「その本がきっかけならそれもいいわね。といっても鬼、ねぇ」
「丑の刻参りとかしてみる?鬼が出てくるか鬼になれるかも」
「その前に前科者ね。オススメはできないわ」
「だよね」

 コーヒーの残りを飲み込み、ごちそうさまと手をあわせる。
 蓮子はひとつ頷いてから二枚目のトーストに齧り付いた
 徹夜明けでよく食べる。それで太らないんだからうらめ……うらやましい。
 立ち上がり食器を流しへ運ぶ。

「それじゃ蓮子、残り食べ終えたら食器持ってきてね」
「もうこれだけだから持ってってー」
「はいはい」





   ◆   ◆   ◆







 二人分の食器を食洗機に入れテーブルへ戻ると、蓮子は大の字になりお腹をさすっていた。
 目も閉じて気持よさそうだ。

「ねぇそこのタヌキさん、もしかして眠い?」
「今眠気がどんどん加速してる感じ……タヌ」

 言いながらなんとか目は開いたが、途端ふあぁ、とあくびが出ている。
 もうしばらくすれば意思とは関係なく眠りに落ちてしまうだろう。

「寝る前に今日の活動方針だけ決めておきましょうよ」
「んー、そうだね。がんばる」

 言いながらむくり、と上半身だけ起こした。
 目付きが若干トロンとしている。
 ゴシゴシと目をこすってからこちらへ顔を向けた。

「細かい調べ物は始めたらどうせ寝ちゃうだろうから任せていい?」
「しょうがないわね、三時間くらい経ったら起こすわよ」
「十分でございます。ありがとうございます」
「よろしい。それじゃあ、と」
「始める前に十秒ちょうだい」
「はいはい」

 紙とペンを用意して二人でひたすらテーマにそって思いついたままに喋る。
 課題抽出とか集団発想法とか言うずいぶん昔に考案された手法が元だけど私達は二人なのでもっと気軽だ。
 ほんとに思いついたまま喋るだけ。

「蓮子、準備できた?」
「あいよー」
「それじゃあ、鬼」
「赤鬼、青鬼」
「人を食べる?」
「食べないのもいるっけ?えーと、退治される。童話で」
「桃太郎」
「こぶ取り爺さんにも出てきた。あと橋姫も鬼だったっけ?」
「一寸法師も鬼退治ね」
「棍棒持ってる。鬼に金棒」
「角が生えてるのもいるわね」

 ここで一旦メモを取るために小休止。
 こうして貯めたメモのキーワードを掘り下げていって、その中で二人が強く興味を惹かれた物か会話が膨らんだ物についてより詳しく実地で調査。
 というのが私たちの基本パターンだ。
 幸い京の都には多数の伝説や伝承があるので「実地」には困らない。

「それじゃー私から再開。鬼退治で有名なのは大江山だっけ」
「京都や江戸の鬼門封じも結構有名ね。それでなくても未だに鬼門には水場がない家が多い」
「鬼がついた言葉も多いね。鬼人だとか殺人鬼だとか鬼嫁、鬼姑」
「ネガティブなイメージが多いわね。畏怖の対象?」
「ポジティブなのだとなんかもの凄いスキル持った人をなんとかの鬼とかいうね」
「そういう場合は神とも言われるわね」
「神と鬼の同一視?もっと軽いノリな気がする。あ、オニゴッコ!これは比較的ポジティブというか子供の遊び」
「かくれんぼとかにも出てくるわね、鬼。どちらかというとカタカナでオニかしら?」
「はぶかれはじかれ、追う者がオニかぁ。情報が伝達しない時代だと自分と違う文化圏の人は鬼にみえたんじゃないかな」

 あくまで意見を出すだけなので話はあっちへフラフラ、こっちへふらふら。
 メモを取るのは結構大変だけれど、蓮子に任せると解読不明になるのでこの役目はいつも私。
 最近ではどの程度メモが貯まれば良いかというのもお互いの感覚で分かるようになってきたので、終わりが近づくと自然と話題がそれる事も増えている。
 この後私一人で調べる事を考えればそろそろ十分だ。
 目配せすると、蓮子も頷いた。

「鬼女ってのは若い女が恨みで鬼になったのだっけ」
「年取ってるのは鬼婆ね。オニババア。もしくは山姥。……言われたくないワードのトップだわ」
「私が一番言われたくないのは貧にゅ……ぐっ」
「墓穴掘ってどうするの」
「メメメリーだってそんなルックスの割に大したことないじゃん!並じゃん!」
「うるさいわね!これくらいがちょうどいいの!」
「メリーのお母さんはあんなにすごかったのになんで?ねぇなんで?」
「これからよ!」
「ほーらほらほら現状に納得してないってことじゃない。あ、でも待てよ……」
「なによ。隠し子とかじゃないわよ」
「腕で前を隠しながら『私顔とか髪の毛こうだけど、胸は普通なの。がっかりさせて、ごめんね……』とか上目遣い!イイ!」

 くねんくねんと体をひねる蓮子。
 見方によっては魅力的なのかもしれないが、今の蓮子の動きは蛇か質の悪い酔っ払いでしかない。

「黙れ変態」
「ほら目をうるませて!頬は染めげふぅ」

 頭にチョップを叩き下ろした。
 もう一度振りかぶる。

「おかわりはいかが?」
「ごめんなさい。その手を下ろしていただけると蓮子、うれしいなっ」
「反省してる気配はないけど、まぁいいわ……」
「へへぇ。ありがとうごぜぇす」

 手を下ろし、メモをした紙を二人で確認しする。
 ま、このくらいネタがあれば何とかなるだろう。

「こんなもんかしらね。追加、補足しておきたいこととか希望があれば聞いとくわよ」
「んー。鬼の基本的な要素とかよりも鬼がどういうとこにいたとか、何をしてたかとかが知りたいなぁ」
「ふぅん?」
「ほら、あの本でも童謡でも、鬼って約束は守るじゃない。負けたから財宝返すし、食わないと決めたらその人は食わない。現代人よりよっぽど人間臭い」
「たしかにね。鬼のいた時代だって今のように人間は階級と権力闘争だったし、そういう存在が逆に人間味を持っていても面白いかも」
「ただそれを三時間は無理よね」
「無理ね」

 さすがにこれを調べ上げるには丸一日図書館に篭る必要があるだろう。
 それに結構おもしろそうなので平日のうち何日かを使いじっくりやりたい。
 蓮子も同じように考えているようで、とりあえず今日何をやろうかなぁ、と呟いていた。

「ま、何をするかは起きてからでいいんじゃない?」
「そだね。それじゃよろしくね」
「はいはい、やれる範囲で頑張るわ」
「どうせ時間余るだろうからこれ読んでいいよ」
「そうね、せっかくだし読んでおこうかしら」

 さきほど鞄から取り出していた数冊の文庫本を受け取る。
 シリーズ物だが全て読んだわけではないので楽しみだ。
 蓮子はといえばそろそろ眠気が限界なようで、大きくあくびをしている。
 こちらにもあくびが伝染しそうだ。

「ふああぁぁあぁ。それじゃおやすみメリー。ベッド借りるよ」
「はいどうぞ。おやすみなさい」

 蓮子は後ろ向きに右手をひらひらさせながら私の寝室に消えていった。
 一瞬部屋を漁るのでは、と思ったがベッドに倒れこむ音がしてすぐ静かになった。ちゃんと寝たようだ。
 手に目を落とせば本。
 テーブルに目をやればメモ書き。
 瞬き数回分考えて、文庫本のうちの一冊を開いた。





   ◆   ◆   ◆






 端末の情報を眺めていると扉が開く音がした。

「んあー。おはようメリー」
「あら、起こす前に起きちゃったの?おはよう」

 時計を見れば蓮子が寝室に消えてから二時間と少ししかたっていない。
 徹夜明けでは睡眠時間が足らないのではないかと思ったが、顔はすっきりとしている。

「んー、寝足りない気はするんだけどこれ以上寝たら二日酔いで頭痛くなりそうだし。とりあえずの眠気は取れた感じ。ただ起きて本読んでただけだしね」
「そ。あぁ、本一冊読ませてもらったわ。読んだことのない巻だから楽しかったわ」
「それはよかった。顔洗ってくるー」
「はいはい」

 蓮子が顔を洗いに行っている間に集めた情報をプリントアウトする。
 といっても量は少ない。
 ふたり分の紅茶を淹れテーブルに戻ると、さっぱりした顔の蓮子がプリントを手にとっていた。

「あんまし調べてないでしょメリー。あ、これも辞典の内容だし」
「本読んでたら思ったより時間経っちゃったし、あなたが起きてくるのも思ったより早かったのよ」

 しょうがないしょうがないと言い訳する。
 蓮子は自分で調べるのは進んでやらないくせに他人には文句をいい、いざやれば私よりも優秀だからちょっとめんどくさい。
 ふんふん言いながら読み進めていた蓮子の視線が止まる。
 文字列の一部分を指差して見せながらこちらへ顔を向ける。

「これはそのままさるがつじ、でいいの?」
「えぇ。京都御所の鬼門封じね。鬼門関連で調べたら出てきたわ」
「……結構近いね」
「観に行きたい?」
「うん。おもしろそう」

 猿ヶ辻。
 京都御所の東北の堀がへこんでいる部分のことで、そこには木彫りの猿がいる。
 夜のうちに逃げ出さないように金網をかけられたその猿は、京の都の鬼門の守りを担当する比叡山のふもとの猿を使いとする日吉神社のお使いで、御所の鬼門を守っている。
 難関が去る(猿)とも、神の猿と書いて「まさる」と勝るをかけているとも言われているようだ。
 歴史オタクの人向けの観光名所でもある。
 そういえば私も見に行ったことはない。ちょうどいいか。

「それじゃあ今日はとりあえず猿ヶ辻へ行きましょうか」
「うん。ちょっと距離があるけど歩きながらメリーが調べたこのメモについてでも話してればちょうどいいんじゃないかな」
「そうね。深く調べてない代わりにネタの数は多いから時間つぶしにはちょうどいいわ」
「鬼の話をしながら歩いてたら鬼が出てくるかもしれないしね」
「鬼さんこちら、手の鳴る方へ?」
「そうそう」

 そうそう言い終わると、蓮子はまだ熱の残る紅茶を飲み干してからメモを自分の鞄に突っ込み始めた。
 私も部屋へ戻り財布、時計、小型端末を手に取る。
 ついでに鏡を覗いて手ぐしで神を整える。
 特に寝ぐせもない。顔色も悪くないし化粧をするほどでもないか。
 一応薄く口紅だけは塗ったが、そういえば蓮子はそれすらしていなかったような。

 上着を羽織り部屋をでれば既に蓮子は玄関で待機していた。
 顔を見ればやはりすっぴん。
 まぁ目も肌色も子供のように綺麗な蓮子はそのままでも十分だ。

「顔になんかついてる?」
「ついてないのに整ってるから恨みの視線」
「メリーだってほとんど化粧してないけど」
「休みの日だし、めんどくさいもの」
「私はいっつもめんどくさーい」
「はいはい」

 距離があるので歩きやすい靴を選び、履いた。
 蓮子もスニーカーだった。蓮子がヒールなんて履いたら……想像しただけで顔の筋肉が緩む。

「なんか失礼なオーラ感じた!」
「気のせいよ」
「むー」
「それよりも蓮子、鍵返して」
「あぁはいはい。もう落としちゃだめだよ」
「あなた分かってやってるでしょ」
「うん」

 悪びれもしなかった。
 次の隠し場所はどこにしようか。
 考えていると蓮子が何かを思いついたように「あ」と言い手を叩いた。
 私が顔を向けると、にやついた顔。

「うむ」
「いきなりなによ、うむ。て」
「メリー」
「なあに」
「ゆくか」
「は、はい?」

 いきなり何を。
 はてな顔の私に対して蓮子はもう一度と「ゆくか」と繰り返した。説明する気はないらしい。


 あぁ。
 少し考えて意図に気付く。
 笑顔で一つ頷くと、蓮子も笑っていた。

「ゆくか」
「おう」
「ゆこう」
「ゆこう」

 そういうことになった。





   ◆   ◆   ◆





 蓮子と並び歩く。
 地図は蓮子に渡しているが、まだ自分の行ったことのある範囲なので困ってはいない。
 知らない地域に入ったら早めに地図を回収しないとどこへ辿り着くかわからなくなるけれど。

「おーにさんこーちら、手のなーるほーへ」
「蓮子やめて。視線が痛い」

 人ごみの中で手拍子付きでいきなり歌い始めるのはやめてほしい。
 恥ずかしい。

「でもこうしたら鬼くるかもよ?」
「こんなアホに近づいてくるのは警官だけよ」

 快晴の休日だが、道は地元の人ばかりが使う道なので余り混んではいない。
 たまにいるきょろきょろしてる人が観光客だろう。
 地面は舗装され、街並みは近代的になっているとはいえ碁盤目状の街だ。
 地図を見ながら歩いていればあっという間に現在地を見失う。
 東京出身の蓮子も最初はずいぶん迷ったようだが、最近はだいぶましになったようだ。
 あとは遅刻癖を無くして欲しいと思うのだが、先は長い。


 いつのまにかジッと蓮子を眺めていたようだ。
 蓮子が体をひねる。

「そんなにジト目で見つめられたら……照れちゃう」
「……」
「瞳から光が消えてるよ!?それはダメだよ!」
「……」
「ごめんなさい」
「よろしい」

 さすがに真昼間に外で、しかも往来でじゃれあう気にはならない。
 蓮子は場所と時間を選ばずエンジン全開で、たまに困る。
 そして切り替えも早い。これもたまについていけない。
 今もまた、急にしんみりとした表情になっていた。
 
「ねぇ、昔はここにも鬼がいたのよね」
「本当にいたかどうかはわからないけど、少なくともいると思ってる人が大半だったんじゃないかしら」
「人が思えばそういう存在が生まれるとすれば、その時代にはいたんだろうなぁ」
「そうかもしれないわね。でも人間は技術と教養の進歩で闇や鬼達を恐怖としなくなった」
「恐れられる対象でもなくなり、存在すらも否定された鬼達はどこへいったんだろ」
「鬼や闇があればこそ活躍できた英雄や、それこそ陰陽師もね。もし今安倍晴明がいても仕事はないわ」

 世界の理が変わったわけじゃない、人間がより深く世界を理解しただけ。
 世の中という水瓶の形は人間の都合で形が変わっても、注ぐ水は同じ。
 鬼という存在は居なくなったかもしれないけれど、人の恐怖が消えたわけじゃない。
 今でも京都の片隅には鬼がいるのだろうか。

 前を行く蓮子が地図を確かめながら角を曲がる。それに続く。
 地図から目を上げた蓮子がまた喋り出す。

「ねぇ、鬼はどこへいったのかな」
「人の心の中にでも逃げ込んだんじゃないのかしら」
「夢がないなぁ。どこかの山とかにいて欲しいよやっぱり」
「それはそうだけど。もしかしたら何かに化けて普通に生活してるんじゃないかしら?ほら、狸とか狐みたいに」

 人間に化けた鬼は、やはり人を殺すのだろうか。
 人からモノを奪うのだろうか。
 それじゃあの政治家も、あの猟奇殺人犯も鬼なのだろうか。
 それならそれで……興味深い。

 少し前を行く蓮子が曲がり角をまたひとつ曲がる。




   ◆   ◆   ◆




 少し喉が乾いたので自動販売機で飲み物を二本買う。
 私はお茶。蓮子は炭酸飲料。
 自動販売機の側で立ったままお茶を一口飲む。蓮子はグビグビ飲む。
 私は三分の一ほど飲んで蓋を締め鞄にいれたが、蓮子はそのまま飲み干してしまった。
 その手にある空になった容器を回収箱に向かって投げる。外れた。
 もー、と言いながら近づいて拾い入れ、視線はゴミ箱へ向けたまま呟いた。

「ねぇメリー。銃とか兵器とかの武器は、現代の鬼なのかな」

 質問自体は突然。
 それでも蓮子は普段なら飲み物を交換をしたり、容器を投げるなんてことはしない。
 何か考えているときによくするその行動を見ていたので、質問に答える体制は出来ていた。

「それは存在としての鬼?恐怖の対象という意味の鬼?」
「りょーほー」
「おもしろい仮定ね。でも私は武器は鬼ではないと思うわ」
「なんで?」
「銃を引けば誰でも人は殺せてしまう。引き金を引いてしまえば、本人の意志とは関係無しにね。それは鬼といえるのかしら?」
「むむ。ややこしいな。なりたくなくてもなってしまうものは鬼じゃないってこと?」
「三十点。なりたくなかったのに嫉妬や復讐で鬼と化す人間はいるけど、それは全てじゃない。もちろん武器だけじゃ人は殺せない。武器はあくまで人間が鬼になるための道具じゃないかしら?」
「あー。武器は丑の刻参りにおける藁人形や釘ってこと?」
「そういうこと。武器を持った上で意図を持って引き金を引く。もしくは鬼と化すために武器を持つ。そしてその時人間は鬼と化す。だからさっき鬼は人間の心の中にいるんじゃないかと言ったのよ」
「メリーらしい考えだね。でも私はやっぱり鬼には存在していて欲しい。結界の向こう側とかにいるよきっと」
「向こう側ね……。そうね。あそこなら何が居てもおかしくないわね」
「境目の隙間から鬼が顔出してる事とかないの?」
「あったら言ってるわよさすがに。あと逃げてる」

 そりゃそうだ、と笑いながら蓮子は再び歩き出した。私も続く。




   ◆   ◆   ◆




 そうして何度かの交差点を渡り、角を曲がりしているうちに違和感に気付く。
 目的地の猿ヶ辻へ行った事がないので気付くのが遅れたが、何故か蓮子は遠回りをしている。
 真っ直ぐに行けば良いところをわざわざ一度横道にそれ、何区画から進むと元の道へ戻るといったような事を繰り返している。
 何か買い物や見るべきものがあるのかといえば、そういうわけでもない。
 今もまた目的地からは一本それた道へ行こうとしている。
 もう一本、つまり最短距離からは二本それたところに最近ちょっと話題になっている洋菓子店があったはず。
 そこで軽食を取ろうと思っていたのを思い出し、蓮子に声をかける。

「ねぇ蓮子、なんで脇道にばかりそれようとするの?」
「あ、気づいた?」

 半笑い、といったような顔をしながら振り返った。
 悪戯に気づかれた子供の顔だ。

「そりゃこんだけ曲がってれば気付くわよ。碁盤目状の街なんだから最短距離行けば直進ばかりになるでしょう」
「まーねー。さてそれでは問題です。この寄り道の理由はなんでしょうか?」

 人通りが多いか少ないかで言うと……元からそれほど多い道ではない。
 何かめぼしいお店は、と言われても二人のどちらかが特に惹かれるようなお店はなかったように思う。
 道にふられた番地の番号等にも共通点は見受けられない。
 ぐるりと回りを見たが、境界が見えるわけでもなかった。そもそも蓮子にはコレは見えない。
 ……降参だ。
 肩をすくめる。

「わからないわね」
「あきらめはっやーい。わかんないかな、ヒントは……朝の本だ!」

 あの陰陽師の本。
 京の都。
 道を曲がる?

「あ」
「お?気づいたかな?」
「えぇ、まぁ。ひとつ確認させてもらうわ。何か理由があっての道順なの?」
「てきとー!」
「やっぱり……」

 蓮子の寄り道の理由は、本に出てきたあるシーンの再現だった。
 牛車で京の道をあっちへ曲がり、こっちへ曲がり。
 気づけば周りの景色は百鬼夜行のセカイに、というシーンだ。
 元となっているのは当時の風習、方違えだろう。
 南東に行く時その方向が鬼門ならば一度南へ行ってから東へ行く、といった具合。
 当時は風水が重要視され、街や家の設計でも大切な要素だったことは朝の調査結果としてメモをしてある。
 蓮子はその方違えによる異界への道を開くことを再現しようと街をあっちへこっちへいってみたのだろう。

「まったく。それくらいで結界を越えるなら迷子常習犯のあなたは何度迷い込んでるのよ」
「だってさー、おもしろそうだったし。どっちみちこの道だけは譲れないよ」
「ん?何かあるの?」
「おいしいお団子屋さん!ほら、この前紹介した子に教えてもらったの」
「あぁ、あの」

 苗字にも名前にもレイが入ってた、という印象が強くてフルネームが思い出せないが、顔は思い出した。
 私とは対極の純和風で綺麗な黒髪の一見物静かな女の子。
 何でこんな娘が蓮子と、と思ったが話して見ると納得した。
 物の見方、倫理観のような物が私達とはまったく違う。
 それでいて嫌味でも不快でもなく、どこか懐かしさを感じた。
 そんなとても興味の惹かれる女の子だった。
 たしかお茶には目がないと言っていたので、お茶に合うおいしいお団子屋も知っていたのだろう。

「でも蓮子、もう一本奥の道へ行くとおいしいシュークリームのお店があるわよ」
「なぬ」

 あの子が教えてくれたお店ならまずおいしいだろう。
 正直お団子もそそられる。手持ちの飲み物もお茶だし相性はいい。
 だがシュークリームは捨てられない。

「そうね、ここは手分けしてお互いの分を買ってその先で合流するというのはどうかしら?」
「さんせー!」

 蓮子もあっさり同意してくれたので、別れてもう一本奥の道へと向かう。
 角を回ったところで気付く、私の分はなに団子だろう。みたらしが食べたい気分だ。

 大事なようで大事じゃない連絡のためにカバンの中から携帯を探す。
 そのまま携帯の画面でメールを打ちながら歩く。
 幸い空いている道のようで、向こうから人が来る気配も足音もない。
 砂利を踏む自分の音だけが聞こえる。

 じゃり、じゃり。


「ん?」

 違和感。
 砂利?じゃり?

「きゃっ」

 視線をあげる前に前方から来た人にぶつかった。
 さっきまで足音はなかったのに、と思いつつも謝ろうと顔を上げる。


 口が半開きで固定された。




「ん?あんた人間か?」


 角が見えた。





   ◆   ◆   ◆





「ッ――」

 悲鳴をあげる前、そして相手の顔を見る前に目と口を手でふさがれた。
 手の大きさが違うので二人のようだ。
 と思ったら両脇を抱えられた。三人いるようだ。

 体が引きずられていく。

 あらら。どうなるのかしら。
 蓮子のせいかもしれないけど、蓮子には悪い事したなぁ。羨ましがるだろう。
 それにしてもすべすべな手だ。いい匂いもするような。舐めてやろうか。
 なんて呆けた事を考えていると女性の声が聞こえた。

「店主さんちょっと今から休業にしな!奥引っ込んでていいぞ!」
「え……ちょっといくら鬼の姉さん達でもそれは……」
「あぁん?」
「わ、わかったよ。代金は置いてけよ!」
「おう。悪いな」

 声の距離からして眼と口を塞いでいるどちらかの手の持ち主の声だろう。
 ずいぶん威勢のよい女性のようだ。
 しかも鬼と言っていた。そうか、鬼女に捕まったのか私は。
 相変わらず変に冷静なままでいると椅子か何かにそっと座らされた。
 その丁寧な扱いが料理人が食材に向ける物でないことを心から祈る。
 すると先ほどの鬼女とは違う声が話しかけてきた。

「ねぇ人間。今からこの目と耳を塞いでいる手をどかすけど、叫ばないでくれる?」

 口が塞がれているので頷いて同意を示す。
 そろそろ鼻呼吸だけじゃ窒息しそうなのでぜひとも離して欲しい。
 す、と手が離れる。


 目を開けると、やっぱり鬼がいた。

 鬼その一、ダイナマイトな体。一本角。
 鬼その二、ちっちゃい。サイドから角。
 鬼その三、目付きが悪い。角なし。あれ、鬼なのか?
 三人をじろじろを眺めていると、鬼その二が口を開いた。

「ずいぶん冷静だなー。というかあんた……あれ?人間の匂いなのに?もしかしてまた境界いじって悪戯中?」

 ちっちゃい鬼にじろじろと眺められた。
 ……質問の意味はわからないけどこの鬼結構可愛い。目がイイ。

「その割に最初の反応は人間臭かったけど。演技?まったくめんどくさい」

 ため息しつつ鬼三が漏らす。
 ジト、という目付きで見てきたので出来るだけ親愛を込めた目で見つめ返す。
 何秒もしないうちにフン、と視線を外されてしまった。残念。
 別の方向から視線を感じたので顔を向けると、ダイナマイト鬼一と目が合う。

「んー、とりあえずだ。あんた、名前は?」
「え、えーと」
「おっと、鬼に問われて名前を言うとロクなことにならないぞ?」
「――!」

 口をふさぐ。
 鬼一は意に介さず鬼二へと顔を向けていた。

「おいスイカ、こんな自然な反応できるほど演技派か、アレは」
「いんや、無理だねぇ。てことはだ」
「"前"か"後"か。まったくの別物の可能性も一応残しておくかね」
「どっちみち普通の人間だろう、いい目は持ってるみたいだけど」
「だな。……あぁお嬢さん、名前くらいでどうこうしようとは思ってないから安心してくれ」
「でもあそこで黙るってことは私達の事詳しいんじゃない?嬉しいねぇ」
「うむ。それに敬意を表してこちらから名乗ろうか。私は星熊勇儀」
「私は伊吹萃香。あっちで向こう向いてるのは」
「水橋パルスィよ。ちなみに私は橋姫だから鬼に近い妖怪であって鬼じゃないわ。お酒でも出すからそっちで話は進めてて」
「さ、こっちは名乗ったぞ。どうだい、名乗ってみる度胸はあるかい」

 よく分からないうちに話が進んでいる。
 ダイナマイト鬼一改め星熊勇儀、チビロリ鬼二改め伊吹萃香。
 本名を名乗るか、思いついた名前を名乗るか。
 一瞬頭の中にショウジ・メアリーという名前が浮かんだがすぐ消した。
 目の前の鬼にはきっと嘘は通用しない。
 それでいてあえて名乗るかを問う理由は。
 遊んでいる。好意的に見れば、試されている。


「マエリベリー・ハーンと言います。十八歳です」
「はいダウト」
「肌年齢です」
「はっは。まぁよしとしよう」
「合格点をあげよう」

 心のなかで小さくガッツポーズ。
 鬼に認められた肌だと自慢してやろう。蓮子に。

「で、あんたどこから来たんだ?急に目の前に出てきたように見えたが」

 星熊勇儀に言われてはっとする。
 ここはどこだろう。
 今いるのはどこか和風な居酒屋のようなところのようだが……。
 閉まった扉の隙間から外へと目をやろうとすると、厨房から水橋パルスィの声がかかる。

「あんまし外は見ない方がいいわよ。せっかく人払いしたのに人間の姿見られたら、食われるわよ」
「またパルスィはそう脅す。ここらの妖怪くらいからなら守ってやるよ。ちなみにここは旧地獄だ」
「きゅう……じごく……?」

 食われるだの妖怪だの地獄だの言われて頭がオーバーヒート。
 混乱したまま気づけば酒の入ったコップを握っていた。
 水橋パルスィが運んで来たようだ。見れば三人ともコップを持っている。

「とりあえず、乾杯だ」
「だな、状況説明はその後だ」
「なんでもいいわ」
「あんたいけるクチかい?いけなくてもこっちは勝手に飲むけど」
「は、はい。お酒は大丈夫です」
「それじゃ。良き出会いに」
「良き酒に」

 かんぱーい

 コップを上げ、一口飲む。

「……おいしい」
「お、この味が分かるなら本物だねぇ」
「この状況で味が楽しめるって時点で大物じゃないの」
「す、すいません」
「気にすんな。ほら、パルスィは橋姫だからこの状況で酒を楽しめるあんたに嫉妬してんだよ」
「そんなことは!」
「はいはいはーい」
「んがー!」
「とまぁあんな風にパルスィは勇儀に任せておけばいいから」
「あ、えっと。はい」



   ◆   ◆   ◆




 お酒はおいしいが、さすがに進まない。
 ちびちび飲んでいると橋姫と一本角の鬼の喧嘩も収まったようで二人とも座った。
 三人分の視線が私に集まる。
 私もやっと落ち着いてきたので、状況を確認することにする。

「えっと、私は京都の街を歩いてたんですが……。ここにはどうして来てしまったのか、どこなのかもわかりません」
「んー?京都?あーもしかして」
「それなら私達の前に出てきたことも分かるねぇ」
「あなた、鬼のことについて調べたりしてた?」

 三人は何かに思いたったようだ。
 私にはさっぱりなので大人しく質問に答える。

「えっと、友達と鬼について調べて、京都の猿ヶ辻を見にいきながら鬼についての話をしてました」
「その友達は一緒じゃないね」
「曲がり角で一旦別れたところだったんです」
「なるほどね。そして道中は色々左とか右に曲がってた?」
「はい。友達が小説に出てきた方違えを利用して異界へ行く真似事を」
「やっぱしそうか。面白いことする奴もいるもんだな、外にも」
「というか正しい道順で鬼のこと調べながらなんて凄い運ね。何かが導いたのかしら」
「誰かがなにかしてるのかもね。それこそアイツとか」
「かもしれないねぇ」

 私には何の話かまったくもって分からない。
 頭の周りにクエスチョンマークを浮かべながらキョロキョロとしていると、伊吹萃香が気付いてくれた。

「あぁ、あんたには説明しないとね」
「そうしていただけると助かります」
「まずあなたとその友達が通った道順は昔ある法術に優れた人間が地獄へと辿ったのと同じ道順だったのよ。だから地獄へ辿りついた」

 なんてこった。すごいじゃないか蓮子。
 でも本人は最後の最後でミスをしてしまった。
 もしくは、蓮子も今この世界のどこかにいるのだろうか。

「そうなんですか……。意識したわけではなかったのですが」
「文献とかにも道順までは残ってないだろうからね、運がよかったのか誰かにサソワレたのかもね」
「ま、それでコッチにこれたわけだ。そしてなんで私達鬼の前に出てきたか、といえばそれは簡単だ」

 それについては私も一つの答えを持っていた。

「私達が鬼について興味を持って、それについて話していた、から……?」
「正解。でも嬉しいね。今でも鬼の事を思ってくれる人間が二人もいたなんて」
「うん。感謝するよ、人間」
「は、はい」

 鬼について蓮子に偉そうに自説を語っていた事は絶対に喋らない。喋れない。
 結局蓮子が正しかった。鬼は実在している。
 山に隠れているのではなく地獄の居酒屋で酒を飲んでいるが。
 あ。
 ひとつ疑問が浮かぶ。

「あの、ここはどこなんでしょうか?」
「ここは旧地獄さ」
「地理的には地底の底だな」
「地底の……底……」
「あ、言っておくけどあなたが普段いるセカイの地下とはまた違う地底の底よ」

 もしかしたらここは以前夢で見た竹林と同じ世界なのだろうか。
 外を見る事はできないし、前とは環境が全く違うけれど。
 そう考えると漂う空気が私の記憶に少し近い気がしてくる。

「どうした?」
「あ、いえ。少し考え事を」
「なやめなやめー」
「茶化してどうするのよ」

 また疑問が浮かぶ。
 今はいったいイツなのだろうか。
 以前の夢ではなんとなくタイムスリップしたような印象を受けたが、ここではそういう感覚はない。
 ただ、もし年号を聞いて過去か未来であったら。
 怖いのでこれは聞けない。

「あぁもしかして、帰り方とか考えてる?」
「え、はい。そうですね。どうやったら帰れるんでしょうか」
「巫女に頼むのが早いけど、それじゃ京からは遠いねぇ。ま、京から来たのならその場所に戻してあげられるよ」
「元の場所に戻れるのですか?」
「おう。『諸々含めて』元の場所だ」
「!……ありがとうございます」
「どういたしまして、はまだ後だな」

 笑いながら勇儀はあっさりと私の不安を吹き飛ばした。
 快活で、正直で。
 鬼に対する恐怖は残っていたが、私の胸の大半を占めるのはこの三人に対する安心と好感だ。
 私こそお礼をしなくては、と思うが何も思いつかないままコップの酒を飲み干した。

「お、飲む気になったかい、ほれおかわりだ」
「ありがとうございます。あ、お酌します」
「おーととと。ありがとよ」
「私にもー」
「はい。どうぞ」
「んー、ありがとーう」
「パルスィさんも、いかがですか?」
「ん」

 お酌をしつつ、自分も少しずつ飲んでいく。
 さすがに三人のペースについていったらあっという間に潰されてしまいそうだ。
 飲みながら三人は私の外での生活について聞いてきた。
 人間の生活に興味津々な様子で、蓮子のエピソードも楽しんでくれた。



   ◆   ◆   ◆




「へえ、結界を探して、ね」
「そのレンコって子はおもしろいね。いつかそいつとも飲んでみたいねぇ」
「はい、蓮子もきっと喜ぶと思います」
「そういう人間がもっと多ければいいんだけどね」

 萃香さんは少し遠い目をしていた。
 何秒間かそのままの体制で固まった後、お?という声が漏らした。
 視線を戻す。

「ねぇ。もしかしてあなた達は鬼になろうとして鬼について調べてたの?」
「いえ、ただの興味からですね。……やっぱり、鬼は人間がナルものなんでしょうか」
「さぁ、どうだかねぇ」
「とりあえず、鬼はやめときな。楽しいけどね」
「楽しいけど、人間のがもっと楽しいからな」
「そう、なんでしょうか」

 この実直な人達となら、毎日がとても楽しそうなのに。
 人間のがよっぽど汚いんじゃないかと思わず口にしそうになったが、彼女たちの表情を見ると言えなかった。

 楽しげに笑う顔の中に。
 少しだけの寂しさと、少しの悲しみが混ざっていた。

 とても深い心の傷を持っている者の表情だった。

 誰が漏らしたのだろう、ポツリと。


「鬼はそう、酒を飲まないとやってられないくらいだからね」





   ◆   ◆   ◆





 話しながらお酒を飲んでいるうちに、結構な時間が経過した気がする。
 時計は見ていないが、二時間ほどは経ったのではないか。
 そんなに酔った感じはしないが、待っているかもしれない蓮子が心配になってくる。

「あの、そろそろおいとましようかなとか……」
「ん、あぁ。そうだね、そろそろ戻してあげようかね」
「あんまし隠し続けたら人攫いになっちゃうしねー」
「それじゃほら、立って」
「はい」

 立ち上がる。

「っとおぅうおおぉう」

 ふらついてしまった。
 思ったよりもお酒を飲み過ぎたようだ。
 まずい、ほとんど泥酔状態だ。
 鬼達はあらら、と言ったような顔で笑っている。
 アルコール以外で理由で顔が赤くなる。

「あ、あの、だいじょうぶですから。えと、もどしてくらさい」
「全然ダメだなこりゃ」
「あなた達があんまし飲ませるから……」
「だってさー」
「ねー」
「ねーじゃないわよ。千鳥足じゃどこに落っこちるか分かったもんじゃないし」
「そうだねぇ。どうしようか」
「あ、だからだいじょぶですからぁああ」
「あーあー転ぶ転ぶ」

 勇儀に抱き抱えられるような形になる。
 そのまま座敷のようなところに寝かされた。
 眠気がドッと襲ってくる。

「すひはせん……」
「いいっていいって。ちょっと寝てお酒抜きな」
「はひ」

 しばらく三人が話す声をBGMにしていたが、いつのまにか意識が途切れた。




   ◆   ◆   ◆




「ふがっ」

 目が覚める。
 ここはどこだ。起き上がって見渡す。
 
「おはよう、メリー」
「お目覚めか」

 夢ではなかったようだ。

「す、すいません酔いつぶれて……」
「いやいや、鬼に付き合った人間は大抵こうなるよ。ほら、お水」
「ありがとうございます」
「ま、こっちも寝顔を肴にしてたからな」
「え?」
「いやさー。あんたそっくりなのよ。私達の知り合いでものすごーい胡散臭い妖怪に」
「そんなに、似てるんですか?」
「瓜二つね」

 私にそっくりなんて、どんな美少女妖怪だおい。
 水を飲みながらちょっと興味が湧いた。

「酔いは少しは抜けた?」

 立ち上がってみる。
 今度は大丈夫そうだ。
 鬼達も頷く。

「うし、それなら戻れそうだね」
「はい。えっと、私どのくらい寝てたんでしょうか……」
「一時間からそこらじゃないかな?」
「蓮子、ずっと待ってるのかな……」

 待っている蓮子を想像する。
 さすがに心配しているだろう。
 それなのに私は酒飲んで……あぁ。
 ため息をする私を見ながら鬼は若干にやけていた。

「その辺はまぁ……。いや、お楽しみだな」
「だねー」
「どうせ私達は見れないけどね」
「えっと、何のおはなしを?」
「気にすんな、こっちの話さ」
「はぁ」

 今は分からないことは気にしない。
 この旧地獄のある世界がどこなのか、どんな妖怪がいるかなど鬼達はもったいぶって結局教えてくれなかった。
 見たいなら自分でいつか確かめろとでも言いたげに。
 いつか見てやろうと思う。もちろん、横には蓮子だ。

「それじゃ、目を閉じて」
「はい」
「これから言うとおりに動いてね。それから目も開けちゃだめ」
「はい」

 目を閉じる。
 ガララ、と今までいたお店の扉が開く音がした。

「それじゃ、右へ三つ」

「次はそのまま前へ五つ」

 いくつかの指示に従った後、よしと言われたところで止まる。
 最初のうちは鬼以外の声が周りに聞こえていたのだが、今は聞こえない。
 もう元の世界なのだろうか。それとも鬼が黙らせたのか。
 鼻をひくつかせてみるが、匂いも消えていた。
 まるで、暗闇の中で一人で立っているようだ。

 鬼達から声がかかる。三人のうちだれの声なのかどの方向からの声なのかも分からないが、はっきりと耳には届いていた。

「さてメリー、後は一歩ふみ出せば元の場所だ」
「耳に聴き慣れた音が届いてから目を開けてね」
「はい。ありがとう、ございました」
「いえいえ、こちらこそ」
「……久々に、人間と飲めて楽しかったわ」
「私達は普通の人間と飲む機会なんてもうないと思って諦めていた時期もあった」
「それでも最近はマシになった。そして今日はなんと外から私達を訪ねてくる人間と飲めた。なんて幸運だ」
「言わなかったけど、私達ほんとに嬉しかったのよ。勇儀と萃香なんて人間だと分かった時は体が震えてたんだから」
「言うなよー。ま、そういうことさ」」
「そう、なんですか。私もとても楽しかった。鬼と話せるなんて」
「そりゃよかった」

 本当に鬼達は楽しんでくれたようだ。
 私も楽しかった。
 お礼になるかはわからないけど、何かを残したかった。

「聞いてもいいですか?」
「なんだい」
「今日私が通った道順をなぞれば、またこれるんでしょうか」
「まず、無理だね」
「ここはあんたらの世界からは遠い。簡単に繋がっていい場所でもない。結界の管理者に気づかれたらあっという間に塞がれてしまうだろう」
「そう、ですか……」

 肩を落とす。
 それでも、それでも。
 出来ることはないかと考えて。

「あの、鬼って約束は必ず守ろうとするんですよね」
「おう」
「それじゃ、えっと」

 一息ついてから、交わす。

「また、必ず会いましょう。その時は蓮子も一緒です」

 約束を。

 星熊勇儀が言葉を噛み締めるように答えてくれた。

「……ほんとに、あんたはいい人間だ」

 残りの二人の頷く気配もした。

「伊吹萃香の名に誓う。また会おう」
「星熊勇儀。また会おう。蓮子も一緒だ」
「水橋パルスィ。その時は外のお酒をね」

 これできっとまた会える。
 目を閉じたまま微笑む。
 鬼達もきっと、あの明るい笑顔をしているはずだ。


「それじゃ、行きますね」
「おう」
「良い旅を」
「行ってらっしゃい」


 一歩、踏み出した。





   ◆   ◆   ◆






 人が舗装された道を歩く音。車の音。
 喧騒が聞こえてくる。
 清浄化されているけれど、自然の山や先程までいた場所とは何かが違う空気の匂い。

 目をゆっくりと開ける。


 元の場所に戻ってこれたようだ。

 目の前には、何時間か前に行くはずだった洋菓子店。
 日差しはまだ高い。
 いつのまにか手に握られていた携帯で時間を確認すると、最後に携帯を見た時間から何分も経っていなかった。

 夢だったとは思わない。疑わない。
 何故かって。








 口が酒臭い。






 はぁ、と息を吐いて自分で気づいた。
 酒臭い。相当に。

 酔い自体はほぼ抜けているとはいえ多分顔はまだ若干赤い。
 というか休日の昼時に酒臭い女って……いやぁ。
 頭を抱え歩道の端にうずくまる。

 通りすがる人からの視線を感じる。
 中には声をかけようとした男もいたが、酒の匂いを感じたのか離れていった。
 それを感じてさらに自己嫌悪。

 あーだのうーだの唸っていたが、品の良いご婦人に心配そうに声をかけられたのがきっかけで立ち上がる。

 匂いがなんだ。酒がなんだ。
 私は鬼にあったんだ!
 開き直る。

「大丈夫です、心配してくれてありがとうございます」

 いえいえ、と微笑むご婦人の笑顔を背に、大股で洋菓子店へと突入した。





   ◆   ◆   ◆





 前方から蓮子が駆け寄ってくる。

「ごめんねメリー。お団子屋さん混んでてさーって酒くさー!」
「うるさいわね。自覚してるわよ」
「自覚してれば臭くてもいいのかなぁ」
「……」
「で、何があったのさメリー。こんな短時間でそんな酒臭くなるなんて」
「ま、色々よ」
「もしかしてまた結界関連?ズルいズルい」

 鬼と会ったと言えば大喜びするだろうか。

「ねぇ蓮子。猿ヶ辻はもうすぐだしそこのベンチで座ってお団子とシュークリーム食べない?」
「ん、話聞かせてくれるんだね。いいよいいよー、シュークリームいいよー」

 勿体ぶるのは知っている者の特権だ。
 せっかくだからじらしながら、鬼との出会いを話してやろう。

 蓮子はどんな反応をするだろうか。
 目を輝かせるだろうか。
 羨ましがるだろうか。
 一つ確実な事。
 それは私の話を楽しんでくれることだ。
 鬼達と同じように。



「あ、メリーがにやにやしてるー」
「ふふ」




 日はまだ高い。
 まずは、読んで頂いてありがとうございました。
 ご感想やご意見等いただけたら幸いです。

 以下はあとがきという補足や蛇足。
 思いついたままたらたらと。


 作中に出てきたネタや、蓮子が持ってきた本は夢枕獏の陰陽師シリーズからです。
 彼のようにあとがきで「この物語は、絶対におもしろい」と言えるくらい自信を持って作品を送り出せるようになりたいなぁ。
 出発点はそんなとこでした。

 前回の投稿から二ヶ月ほど開いた三作目(ジェネ含めれば四)で、ほとんどの方が初見だとおもいます。
 前作で名前を覚えてくれた人がもしいたのなら嬉しいです。ありがとう。
 ほんとは前作投稿後も定期的に投稿しようと何作かを並行して書いていたのですが……HDDごと吹っ飛びました。
 バックアップはとりましょう。
 その中で唯一生き残ったのがこの作品の下地だったので、なんとか仕上げました。

 たまたまなんでしょうが、ちょうど執筆開始くらいからそそわで秘封倶楽部の作品が増え、いい刺激を受けてすいすい書けました。
 皆さんの作品で感じた二人の会話の楽しげな雰囲気がちょびっとでも出せてればいいなぁ。
 自分の作品ではなんだか蓮子が若干変態ですが、表に出さない分メリーのがタチは悪いです。たぶん。

 そんなメリーが終盤辿りついた幻想郷は、霊夢たちが活躍する時代なのか、蓮子たちの生きている時代なのか。もっと前なのか後なのか。
 あえてはっきりさせませんでした。『苗字と名前にレイがつく人』はそのおまけです。
 おなじ学内にたぶん『苗字にも名前にも夜がつく人』もいるはず。

 HDDから吹き飛んだネタ含め、ちょこちょこと書いていきたいと思います。

 また次にお会いできれば。


 *11/20追記
 コメントありがとうございます。次もがんばります。
 
 >>20さん
 ヒドイミスでした。訂正しました。
ねもい
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コメント



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9.100名前が無い程度の能力削除
とても楽しめた。日常パートがダラダラ長いと感じる人もいるかもしれないが私はこのくらいがちょうど好きかな。二人の会話もその後の展開もスルスル読めて後味がスッキリしている。季節はずれだけど上手い素麺みたいな?感じのssですね。
紙とペンを用意して二人でひたすら~のとこの会話がそれらしくて一番好き。原作はそっけないけど賢そうな二人だけど、このssだと親しげで賢そうな2人が見れていいね。
鬼の話は少し切なくなったけど書き方のおかげかそんなに気が重くならず軽く読めてしまった。だから作者氏が書けるのならばドシリアスで重い秘封倶楽部のサークル活動も見てみたいもんです。
11.90名前が無い程度の能力削除
この作品の二人の掛け合いがとても好きです また読みたいです
ちょっと長かったかもしれませんね
16.100名前が無い程度の能力削除
蓮子のテンション高いなwいいコンビだと思いますw
ストーリーも演出も面白かったけどこれだけ長く書けるなら鬼以外に別の要素も盛り込めた気はする
盛り込まなかったから良かったのかもしれんけどこれは好みだなあw
20.80名前が無い程度の能力削除
秘封と鬼三人の組み合わせは珍しいですね。
なかなか良い雰囲気でした。

胡椒臭い→胡散臭いかと。
25.100名前が無い程度の能力削除
いい!