Coolier - 新生・東方創想話

虹にかけた夢は叶う。Ⅳ

2010/11/15 00:04:31
最終更新
サイズ
5.29KB
ページ数
1
閲覧数
580
評価数
1/8
POINT
390
Rate
9.22

分類タグ

続き物です。
































「―――とりあえず、応急処置は施しておいたわ。」
簡単な医療器具を片付けながら彼女――――八意永琳はあきれながら言った。
「それにしても、すごい怪我だったわよ。この子。
 擦り傷が12箇所。切り傷が8箇所で、特に深いのが3箇所ね。
 もうすこし発見が遅れていたら危なかったわよ。」

そんなに危険な状態だったとは。
予想をしていただけに、上をいく結果を聞いて血の気が引くのがわかった。

「もう、そんな顔しないの。
 あんまり辛気臭い顔してると、良くなるものも良くならないわよ。
 もう、大丈夫だから。
 この子をよく見つけてくれたわね。
 この子が知らない子だとしても、医者として礼を言うわ。見つけてくれてありがとう」

「いえ、そんな……お礼を言うのは私のほうです。助けてくださり本当にありがとうございます」
本当に良かった。
出会ってからずっと気にかかっていた少女が、再開した瞬間に別れる事にならなくて。
私が初めて求めたもの。それが何なのかを知りたい。この子のことが知りたい。
話してみたい。触れ合ってみたい。

私の立場を考えると、関わらないほうがいいのかもしれない。
いや、関わらないほうがいいに決まっている。
でも、私はこの気持ちを静める方法を知らない。
行うことで、どんなことがおきても。
彼女に―――――何があっても?

こんなことを考えていても仕方がない。

「それで、この子はいつぐらいに目覚めるのですか?」
「脳には異常はないみたいだから目覚める、というのは断定できるんだけど、
 いつになるかというとわからないわ。」
「そう…ですか。今日はどうもありがとうございました。」
「医者として当然のことをしたまでよ。
 あっ、そうそう。この子のことなんだけれど、」
「なんですか?」
「この子、あなたも見てわかるとおり河童なんだけれど。その…頭の皿がないの。
 河童は普段このくらいの年になると皿をはずして生活するの。だけど、頭には皿がつくべき場所、 
 痕のようなものがくっきりと残るのね。基本的に髪の模様みたいになってそのことは知られていないのだけれ  ど。この子にはその痕がない。いいえ。皿があった痕跡はすべて、何もかもないのよ」
「…え?」
「元から皿がないということです。
 すなわち、河童の中にいてもこの子は孤立してしまのでしょう。
 たぶん、人目を避けて暮らしてきたんでしょうね。
 この子を知っているものはほとんどいないと思うわ。
 私が言いたかったのはこれだけ。目が覚めたら永遠亭にでも来なさい。見るぐらいならできるわ。
 お大事に」



言いたいことだけ言って帰っていってしまった。
この子にそんなことがあっただなんて知らなかった。
あったのではない。今、現在進行形で進んでいることか。
似たもの同士…という事になるのかな。
私も人里では忌み嫌われる存在だから。
そう考えると、嫌なことはずなのに、とても嬉しいことに感じる。

この気持ちがわからない。
そのことを考えるだけで、口角がつりあがって、顔に血が上るのが感じられる。
全身の筋肉がむずむずして、体をくねらせてしまって傍から見たら気持ち悪いことこの上ないと思う。
自分の顔もだいぶひどいことになっていると思う。


永琳が窓から出て行ったのを知ったのはそれから1時間後だった。

ひとしきり悶えた後、いつもどおり厄を集めに行くことにした。
集めては流し、集めては流し、繰り返される単調な作業。
想うのは人の幸せな笑顔と人の幸せな未来。

上流から流れてくるのは色とりどりの紙の人形。
中には布のものなどさまざまな種類がある。

流し雛に乗った思いは私に届けられ、記憶が私に入ってくる。
でもそれは、知識としてしか吸収されなくて、流れてくるのは悲しい思いやつらい思い出。
だから、人とのかかわりを持ったことのない私はあの子への気持ちがわからない。

あれ…?何で今あの子のことが出てくるんだろう。
まぁいいか。仕事も大方終わったし夕食の支度でもして帰ろう。
あの子がおきたら何を食べるかな?食べやすいものがいいよね…。
きゅうり?とりあえずお粥の用意もしておこう。いつ起きてもいいように。















大体の食材はそろったかな?
厄が絶対に移らないようにして頑張ってる自作農園(プチ)から収穫した野菜と
週に一回お供えがしてもらえるのでそれを使って食事をいつもはしている。
でも考えたら今週はお米着てないんだった…

仕方がない。私と同じスープでいいかな。いいよね。


あの子を寝かせている居間のほうから何か物音がする。
もしかして起きたかもしれない。

身に着けていたエプロンをほっぽりだして狭い家の中を走った。
本当はすっごい短いのに、トイレに行くときよりも長く感じられる距離。


その先にはあの子がいて、包帯に巻かれた姿だけどあの子がいて。
前とは違って、動いていて。
痛みに顔をしかめながらも、起き上がろうとしていて。

あの子が生きていているということが再確認できて。
それだけ。たったそれだけで、私は。
とてもうれしくなって、涙が出てきて、腰が抜けてしまった。

そして、唐突に理解した。
これが『嬉しい』なんだ。
これが、『安堵』なんだ。

なんていい気持ちだろう。
人を助けたときに起こる喜びでもなく、
こけそうな子供を見てこけなかったときの安心でもなくて。

自分より大切な宝物が壊されそうになって、
身を挺してかばおうとしたときに、壊されなかったときのような気持ちだと思う。
実際、そんな経験を見たことも聞いたことも体験したこともないけれど、
自分がもし、あの子がそんな場面に出くわしたらそういう行動を起こすだろうなっていうぐらい。

そこまであの子が、私の中に大切な存在として存在することが
喜ばしかった。嬉しかった。怖かった。
私の知らない感情が知らないところで築かれていくのが怖かった。
私にそんな大切に思える人ができたことが嬉しかった。

そこで、また私の心が新たな欲求を起こす。
それはとても傲慢で、我侭で、一方的なこと。
あの子がほしい、とかじゃなくて。
あのこと友達になりたいとかすっとばして。

順番とか一切無視してしまっているけれど、
どうしようもなくあの子が愛しく感じるからこそ、出てきた望みなんじゃないのかな。



ただ、



あの子の大切な人になりたい――――――――――――
1週間に1回投稿出来る様になりたいな。
とか思ってるけど、絶対文量がすごいことになると思うのでやめておきます(少ないほうに

読んでくださりありがとうございました。
前回よりはうまくいったのではないかな。と思ったりしていますがいかがでしょう?



またお目にかかれることを。
х桜星х
[email protected]
簡易評価

点数のボタンをクリックしコメントなしで評価します。

コメント



0.290簡易評価
3.100名前が無い程度の能力削除
良かったです