ほうきで掃く、境内を、この行為に特に意味はないのだ。
けれど、今日は少し楽しいおもいをした。
いつもは一人で掃いていたけれど、今日は違う。
ほうきで境内を掃く人影は二人、いつもより一人増えて。
一人は私、もう一人は友人の魔理沙だ。
私たちは境内を掃き続ける、お互いに言葉を交わすことなく。
掃除は毎日しているもので、特に意味はないのだけれど。
ときおり魔理沙がいるであろう方向からドンドンと聞こえるのは気のせいだろうか。
魔理沙のことだ、おとなしくしていることなど出来はしないのだろう。
「霊夢、こっちは掃き終わったぜ」
「そう、ならたき火でもしましょうか」
こっちも掃き終わったところだ、ちょうど。
丁度肌寒くなってきた季節模様なのだから丁度いいだろう。
だけど、別に今は寒くもないのだから特に意味はないのだけれど。
掃いて纏まった落ち葉が少ない方を多い方に移動させる。
私はため息をつく、なんというか、魔理沙の集めた落ち葉の量が多すぎて。
「…魔理沙」
さっき聞こえていたドンドンという音はわざと枯れ葉を木から落としていたのだろう。
私はため息をついた、魔理沙は色々と自重しない魔女だ。
まあ、それが魔理沙らしいといえば魔理沙らしい。
こういう時、次に魔理沙が何をするかなんて決まりきっている。
私の感は結構当たる、多分というか絶対、今回も、別に当てても特に意味はないけれど。
だからと言って私に魔理沙を止めることなど出来るはずもない。
「焼き芋だ、落ち葉のたき火には焼き芋、それが常識なんだぜ」
「いくら秋だからって食い意地張りすぎじゃないかしら?」
「秋だからこそだぜ、旨いものは旨い時に旨い食べ方で食べるのが一番だ」
それは確かに、うん、美味しそうだ。
魔理沙がどこからともなく取りだした芋を落ち葉の中に入れ火をつける。
パチパチ、パチパチ、たき火の音。
火にあたるわけではないが、私はたき火の火をずっと見ていた。
それは魔理沙も同じだったようで、私たちは互いに言葉を交わすこともなかった、火を観ているときは。
ただ、ゆったりとした時間が流れていた、特に意味はないのだろうけど。
「よし、そろそろいいだろ、芋の焼け具合はどうかなっと」
魔理沙がちょろちょろと燃える火を残すのみとなったたき火をかき分ける。
どうやら苦戦しているようだ、私はため息をついた。
焼き芋ならのどが渇くだろう、どうしたって。
私はお茶を用意することにした、魔理沙が探し終える頃には戻れるだろう。
まぁ、芋が全部炭になっていたら、お茶を入れることに特に意味はないのだろうけれど。
「霊夢! 焼き芋が出来たぜ!」
お茶を入れて帰ってくるなり魔理沙はそう言う。
まだ熱いのか、手で焼き芋をお手玉をしていた、その数は一つ。
確か火をつける前に入れるときは四つほど入れていたけれど、そこで気づく。
たき火の跡の横にまっくろ焦げな三つの塊、あれは失敗ということね。
魔理沙に視点を戻せば、残った一つの焼き芋を半分に割っているところだった。
私はそれに構わずきゅうすから湯呑みにお茶を注ぐ、魔理沙の分も入れてあげよう。
どうせお茶がほしい時には勝手につぐので、特に意味はないのだけれど。
「ほら、霊夢の分だぜ」
魔理沙から半分個になった焼き芋の片方を渡される。
ほかほか、あつあつ、ゆげ、そしてにおいが食欲をそそる。
魔理沙はと見れば、既に「あっつ、あちぃ、だけどこれがいいんだぜ」と言いながらすでに食べ始めている。
思わず、笑みがこぼれ出る、特に意味はないだろうけど。
「これは暇つぶしを掃除と言う奉仕で補った私へのご褒美よね、いただきます」
横から「それはないと思うぜ」という声が聞こえたが無視する。
発した言葉は特に意味がないものだったから。