Coolier - 新生・東方創想話

えすとえぬとえっくす(後編)

2010/11/09 13:06:52
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「で、どうして此処なのよ?」
訪れたは博麗神社。
案内も何も此処は因縁深い場所であることくらい知っているだろうに。
巫女も花の大妖と天人の組み合わせに若干不機嫌そうにしている。
と言うよりはお茶の時間なのがまずかったのか。
そんなに睨むな、しけた煎餅に興味は無い。
「幻想郷と言えばまずは此処でしょう?」
花の大妖、風見幽香は巫女の視線も無視して平然とそんな事を言う。
「……帰るわ。」
ろくな事になりそうに無い。私の直感が告げる。
そもそも此処はスキマのテリトリーではないか。
抹殺される前に離れたいのが普通の感情であろう。
「じゃあね、巫女によろしく。」
そう言って背を向けるとがっしりと肩を掴まれた。
「……何処に……行くのかしら?」
――思い出した。
隣に居るのが誰であるかを。
握られた肩がギリギリと圧迫される。
血が止まり、骨が砕ける前に私は振り返り、諦める事にした。
と、言っても此処に来た時点でほとほと諦めてはいたが。
「冗談よ……で、此処の何を教えてくれるのかしら?」
「どうせこの場所の事は軽く知っているんだろうから、巫女について。」
私の問いかけは意外な形で返された。
私に巫女の何が関係するのか、私にソレを教えてどうする気なのか。
疑問は疑問を呼び覚ますばかりだが、悶々とする私をよそに幽香は語り始める。

「ねえ、博麗霊夢って、何だと思う?」
突拍子も無い問いかけ。答えなど誰でも知っている。
「人間、巫女。博麗の巫女が正解かしら。」
幽香は「その通りね」なんて薄く笑みを浮かべながら肯定する。
一体何なのか、真意が読み取れない。
更に幽香は続ける
「じゃあ、博麗の巫女って、何なのかしら?」
簡単な問いかけ、私でも知っている。
「この幻想郷の大結界を護る者……コレで満足かしら?」
「詰まらないわね。本当に。」
幽香は何処か呆れた様に呟いては私に微笑み尋ねた。
「じゃあ、博麗霊夢……あの少女の存在意義は其処に集約される。
貴女の言う、結界の守護者。なら、貴女は天界の総領娘。生まれた意義は?」
「……何が言いたいのよ」
博麗霊夢には列記とした役目が有る。
私にはソレ程特別な何かは背負わされては居ない。
全く不愉快で不可解、私を小娘と馬鹿にしたいのか。
私がジト目で睨もうと幽香は動じない。
ただニコニコと笑ったまま私に一言。
「貴女も同じね。」
そう一言呟いた。
たった一言。そのたった一言が私を抉る。
ソレは私が気付けたからであって、その一言に特別な意味は無い。
「貴女は博麗霊夢を、博麗霊夢とは答えなかった。
ならば、比那名居天子を比那名居天子と答えない者が居ても可笑しくない。」
その通りだ。
「天人を天人としか見ず、妖怪を妖怪としか見ず。
人間を人間としか見ず、貴女を貴女として見ろと叫び、暴れ、駄々をこねる。」
その通り……私も結局は奴等と同じモノの見方をしていたのだと気付く。
そう……比那名居天子はモノの解っていないただの小娘であったと。
解っていても止められなかったのかも知れない。
誰だって悲劇のヒロインは心地よく。
自己の生い立ちに陶酔し、逃げ込むのは最適な位置なのである。
でも気付いてしまったのだ。
そんなモノに意味も未来も何も無い事に。
ならば……。
ならば、どうすれば良いのだろう。
解らない、けれどもこのままではいけない。
「……どうしろって言うのよ?」
恥を承知で聞いてみる。
「知らないわ。」
だけども答えはそれだけで、何を聞いても答えは来ない。
幽香も答えは知らない、それだけは解った。
「何だか疲れた……もう帰るわよ?」
私は幽香にそう口にして、巫女の方へと歩いていく。
「邪魔したわ……博麗霊夢」
一言だけ挨拶。
その間も、
巫女は只微笑んでいて、只茶を啜っていて。
少し呆れながら飛び上がると、
「――霊夢で良いわ。」
そう聞こえた気がした。


―――――――――――――――――

「衣玖~、衣玖ぅ~っ!」
天界に帰って来るなり、聞こえてくる声。
全く……今度は何用でしょうか?
「私、磁石になるわ。」
「……は?」
どこかで頭でもぶつけたのでしょうか?
全く、お客様が来ていると言うのに……。
「総領娘様、ご冗談は程々になさってください。
―――お客様も見えていますので。」

―――――――――――――――――

「私、磁石になるわ。」
「……は?」
私の宣言に返ってきたのは疑念と呆れに満ちた視線だった。
ソレもそうか、コレだけじゃ解らないわよね。
でも敢えて言わない。
私もまだ方法だって良く解らないから。
相容れぬ存在。
反発しあう磁石の様な、そんな存在。
えすとえす、えぬとえぬを。
打ち解けさせるえっくす。
そんなものあるのか知らないけど、私はそう在りたい。
そんな理想、そんな夢。
そして、えすとえぬ、どちらでも在りたいと言う私のわがまま。
だけど―――
「―――冗談も程々になさってください。
お客様も見えていますので。」
衣玖の言葉に気付いてふと顔を上げる、其処には小鬼。
「ははっ、今日も遊びに来たよ。さ、今日こそ呑もうじゃないか。
―――ん?何だか今日は良い顔してない?」
毎日の様に入り浸ってる小鬼。
ああ、これか。
こんな近くに在ったんだと再認識する。
私はやっぱり磁石になりたい。
「気のせいよ。――それより、今からありったけ萃められない?
人も、酒も、色々と。どうせ呑むなら盛大に行こうじゃない。」
えすもえぬもえっくすも。
いつか萃めてみせると。
そう夢に想う。――この緋き天界の剣に誓って。

この天人が何を起こすのか。
それはまた別のお話。
巫女と妖怪が縁側に佇む
「ねえ、あんたは私を何だと思ってるの?」
天人を見送った巫女がそう尋ねる
「博麗の巫女だと思うなら、不用意に近づかないわ。」
花の大妖がそう答えると――
きゅっ……とスカートにしわが寄る。
「紫に怒られちゃうわね。」
満更でも無さそうに微笑んではそんな事を呟いた。


はい、遅くなり申し訳ありません。くーです。
終わり方に無理や文句が在るかもしれませんが、仕様でございます。
ごめんなさい、開き直りました。
でも今回は何だか楽しくかけたような気がします。
読み手の皆さまにも楽しんでいただける作品であったら……
切にそう願います。
最後となりましたが、呼んでくださった方々誠にありがとうございます。
短い作品で満足頂け無かったかもしれませんが、これからも精進いたしますので……
生暖かい目で見守ってやってくださると幸いです。
くー
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コメント



0.270簡易評価
5.60名前が無い程度の能力削除
仕様じゃしょうがないな


>シリアルなのか?

もしかして: シリアス