「妖夢さんは」
「はい?」
ある日、博麗神社で開かれた宴の席で。
不意に声をかけられた魂魄妖夢は、立ち止まって声のした方を振り向いた。その拍子に、主人の元へ運ぼうとしていた料理の大皿を取り落としかけ、慌ててたたらを踏む。
あわやという所で失態を免れた安堵に息をつき、彼女は改めて視線を上げた。
そこにいたのは腋であった。もとい、腋の出た巫女であった。ただし色は紅白ではなく、緑色。
東風谷早苗。妖怪の山の上にある、守矢神社の「風祝」である――妖夢を含む幻想郷の住人にとって、神社で腋を出している者はすべて「巫女」と認識されるのだが、彼女自身は頑なに、然に非ずと主張し続けている。
ともあれ緑の腋は、料理を抱えた妖夢を見つめて首を傾げた。
「半人半霊、なんですよね?」
「そうですけど」
頷く代わりに、妖夢は傍らに浮いていた白い雲のようなものをふよふよと旋回させて見せた。
この白いものは「半霊」――人間と幽霊の狭間に生きる彼女の、霊的な存在である部分だ。触ればひんやりと心地良く、もちもちふっくらした感触には定評があり、しばしば腹を空かした主人が醤油をつけて喰っている。痛いので本当にやめて欲しい。
「ええと。それで……なにか?」
興味深そうに半霊を眺めている守矢の巫女に、なんとなくサービスで二回転捻り飛びなど披露しながら、妖夢は困惑気味に訊ねる。
早く料理を持ってゆかねば主人が拗ねるので、ずっとこうしているわけにもいかない。
……ああ、幽々子様。もう向こうで竜宮の使いを剥いておられる。さっきの夜雀じゃ足りませんか? 足りませんか。知ってました。
飛び散る電撃と悲鳴を他人事の心持ちで眺めていると、不意に早苗がぽつりと呟くのが聞こえた。
至極当然の疑問だという風に、軽く投げかけられたその問いは。
「――――どうして、私には半神様とかついてないんでしょう」
えー。
『半人、半○ ~The Halfman Blues~』
「だって私、現人神ですよ? もっと神様的な部分がはみ出しててもいいじゃないですか」
「『いいじゃないですか』言われても。……あ、どうも」
いつの間にか持たされていた盃に酒を注がれ、妖夢は慌てて早苗に返杯する。
宴の一画へ適当に陣取り、早苗は熱弁を振るっていた。妖夢が抱えていた大皿の料理は、そのまま酒の肴に変わっている。
――幽々子様、ごめんなさい。まだ秋神様とか竹林の兎とかいるし、もうちょっと保ちますよね。
割と薄情に結論し、妖夢は早苗の話につき合ってやることにする。
「というか、そもそも現人神ってそういうことなんですか?」
「昔、神奈子様にそう教わりました。お前は半分は神様なんだよ、って」
「うーん」
それは幼い早苗にも分かりやすいよう砕いて説明しただけなのか、それとも額面通りの意味なのか。
八坂神奈子――守矢神社に祀られる二柱の一、乾の神である彼女の考えは推し量れぬと、妖夢は腕組みして唸る。
「仮にあなたの言うとおりだとして、その……何ですか。半神様? とやらが無いと、何か大事があるんでしょうか」
「可愛いじゃないですか。もちもちふっくら、私も欲しいです」
「……そうですか」
捕獲した半霊を抱きしめて言い切る早苗の目は、完全に据わっていた。
そういえば、山の巫女は下戸だと聞いたような。
思えば最初に話しかけられた時、吐息に微かな酒の香が混じっていた気もする。
静かに酔っ払っていたらしい。
(……でも、うん。まあ)
自分自身とも呼べる半霊を気に入って貰えるのは、正直、悪い気はしない。
こういう席で自分は、いつも酔客の介抱や料理の準備などに従事している。誰かに頼まれたわけではないが、そういう役回りは嫌いではないのだ。
今回のことも、いつもなら適当にあしらってしまう所だが……今は自分も酒を入れてしまっている。
たまには立場を離れ、戯れ言で論議するくらいの遊びに興じても罰は当たらないのではあるまいか。
遠くで幽々子様と宵闇妖怪が、互いを喰らってやろうとじりじり間合いを計っているのが見えたが、まあ、うん。それはそれで。遠いし。
盃を干して座り直すと、妖夢は改めて早苗の目を見る。
「私の半霊は生まれつきのものですから。出したり引っ込めたり出来るものでもないですし」
「うう。いいなぁ」
「奇跡の力で、分身を生み出せたりしないんですか?」
「できなくはないですけど」
その提案に、むむー、と眉間に皺を寄せる巫女。
そのまましばらく見ていると、てけてん、と人をバカにしたような白煙が立ち上る。
煙が晴れると、彼女が抱えていた半霊が早苗そっくりの姿になっていた。ちょっと待て。
「自分の姿じゃいくらなんでも抱き心地がよくないよね、と」
「ていうか勝手に変身させないでくれませんか」
「ときどき妖夢さんの姿になってましたし、いーのかなって」
「よくないです」
「おっぱい大きいですよ? ふふん」
「うわぁ腹立つ」
これ見よがしに胸を張る早苗の頭を、彼女の姿と化した半霊にチョップさせる。
みぎゃあと悲鳴を上げる早苗の、早苗を叩いた半霊の、それぞれの胸で揺れる二重弾幕おっぱい。
翻って、我が身。
…………。
いつの日か。いつの日か。
「とにかく、もっとマスコットっぽいのがいいんですよぅ」
「しかし半神様というからには、半分はあなた自身なわけで。似ない道理もないでしょうっていうか、まずそれ戻してください」
自分自身の姿をした半霊とチークを踊りながら悩む早苗に、半眼で告げてやる。本当に悩んでいるのかこの腋は。
溜め息をついたその時、妖夢の肩にぽん、と手が置かれた。
振り返る。
指が頬に刺さった。ぅむあ、つっかい棒。
「ふっふっふ。話は聞かせて貰ったよ、魂魄の」
「どっから湧いたんですか。あとなにするんですか」
「意味はない。だが言うならば、ほっぺはもちもちしていた」
満面の笑みが浮かぶ訪問者の顔を、とりあえずつつき返しておく。ぐーで。
きゃん、と悲鳴を上げて仰け反った訪問者――赤毛の死神、小野塚小町を見下ろし、妖夢はげんなり肩を落とした。
「彼岸の死神ともあろう方が、なんと子供じみた振る舞いをされるのか」
「なあに、興味深い話をしてるようなんでね。混ぜて貰おうとやってきたって寸法だい」
人好きのする笑みを浮かべると、小町は妖夢の隣の席を指して、いいかい、と訊いてくる。
どのみち戯れ言、与太話。喚く口が多くて困ることはない。
身体を引いて場所を空け、妖夢は徳利を取り上げる。
「どうぞ」
「すまないねぇ。やあ、今宵の酒は一段うまい」
嬉しそうに盃をとり、小町はぐいっと一息にそれを空ける。唇から酒がひとしずく、惜しげもなく着物を押し上げる胸の谷間に消えていった。
早苗を超越するその迫力を一字に込めるなら、「爆」。
言うなれば、Bigbang。
Bigboing of Bigbang――
「宇宙開闢……!?」
「なんだって?」
「いえ別に」
ふるふる首を振る妖夢の髪を、可愛いねえ、と小町が撫でる。その度に揺れる鬼ボイン。
いいなあビッグバン乳。
目測だが、きっと幽々子様よりビッグバン。
あ。
「そういえば幽々子様は」
「さっき向こうで見たよ」
言われ、小町の指す方を見る。
そこには両手を挙げ、周囲の喝采を浴びる宵闇妖怪。
近くに、歯形まみれでひんひん泣いてる主人と、それを慰めるフリして爆笑している紫様。
負けたんですか幽々子様。
まあ竜虎相討つようなカードだったし、たまには喰われる身になるのも悪くはあるまい。最近とみに夜雀やらの苦情が相次いでいたことだし。
でも宵闇とスキマはあとでケツ楼観剣。断固として。
「……ところで、興味深かったんですか? 半分神様の話」
「あいさ。なにせあたいの専売特許のような分野じゃあないか」
「うーん?」
小野塚小町は三途の川で船頭を務め、こと多くの魂と触れる。距離を操る程度の能力をもって川幅を操り、上司である幻想郷の大閻魔、四季映姫・ヤマザナドゥの元へ死者を導くことが彼女の仕事だ。
……はて。特別、半霊だの半神様だのにゆかりの深いことはなさそうだが。
「わからないかい? ほら、こいつさ」
首を捻っていると、死神は着物の袷からなにかを抜き出して見せた。
受け取り、妖夢は目を細める。
何のことはない、紙の切れ端――毛筆で走り書きがされたそれがスペルカードだと気付かなかったわけではないが。
そこに記されたスペル名を、半ば無意識に読み上げる。
「薄命『余命幾許も無し』」
「半分にすることにかけちゃプロだよ、あたいは」
「強引じゃありません?」
「まあ流そうじゃないか」
困った顔をする妖夢に、こちらも同じく苦笑を浮かべて頭を掻く小町。
単に、暇を持て余してしまったのだろう。彼女と一緒にやって来た上司・四季映姫は現在宴席の一画で、酔い潰れた霧雨魔理沙の顔を白黒に塗り分けている最中だった。なにも髪まで塗らなくても、あ、鼻毛まで。
着々とあしゅら男爵みたいになって行く哀れな友人から目を逸らし、妖夢は話に戻ることにした。
「ともあれこのスペルカードで、あの腋ボインをぶった斬ろうということですね」
「いや、おおむね違うけど」
「師には、分からぬことは斬れば分かると教わりました」
「眼が怖いよ、魂魄の」
詰め寄る妖夢に圧されるように、小町はそれでもスペルカードを受け取った。
「ま、絶対死なないってことじゃある意味安全だしねえ。思い切り加減してなら、試してみようじゃあないか」
「キャーコマッチャーン」
「なんだい?」
「いえ」
流行らないなと判断し、沈痛に頭を振る。
首を捻りつつ、小町は立ち上がってカードに霊力を込めた。
いつも携えている大鎌はどこかに置いてきたらしく、いかにも適当な手刀を構えている。手加減にもなって丁度良いのかも知れない。
彼岸花のように美しい紅髪を揺らし、死神は手を組んで踊っている二人の早苗へ高らかにスペル宣言を行った。ジャストアモメント。
「薄命『余命幾許も無し』!」
みょーん。
■
「ひどい目にあいました」
「ひどい目にあいました」
「あたいが悪いのかなあ。あたいが悪かったのかなあ」
二重にたんこぶをこさえた頭を下げて正座する小町を見下ろし、早苗と妖夢は素知らぬ顔で肩をすくめた。
「ご協力は有り難いですが、常識というものをわきまえてください」
「まったくです。これでは辻斬りと変わりありません」
「うう。ここぞとばかりに勝手なことを言われている気がする」
涙声で呻きながら、小町はぶん殴られた頭を両手で抱える。カリスマガード。
ちなみに早苗と一緒にライフを半減された半霊は今、いつもの形態にもどって妖夢の周りを浮遊していた。
「ともあれ、小町さんの力では念願の半神様をひねり出すことはできなかったわけですが」
「残念ですね。どうしたものでしょう」
「ふふん、心配ご無用。あたいに考えがあるんだ。だから正座解いていいですか」
だめ。と声を揃えつつ、妖夢と早苗は続きを促した。
ちょっと泣きそうになりながら、小町はそれでも後を続ける。付き合いの良い人だ。
「お前さんは半人半神」
「はい」
早苗を指さし。
「お前さんは半人半霊」
「はあ」
妖夢を指さし。
うむうむ、と一人したり顔で頷く小町。
「つまり、だ。魂魄のを含めた他の半人半○の連中の共通点、そしてその中でお前さんに足りないものを調べれば、きっと何かが見えてくるはずだっ!」
「どうやって発音してるんですかその○」
「いやあなたも」
半眼で呻く早苗に、やはり半眼で指摘する妖夢。
ともあれ。
「向こうでちびちび呑んでる連中を見かけたんでね。そっちから当たってみようじゃないか」
「おおっ、ここにきて事態が急展開ですね!」
「うーん? いや、展開してるんでしょうか」
「与太話をこねくり回す頭は、多い方が面白いってもんだろう」
首を傾げる妖夢に、小町がへらりと笑って手を振る。本当に暇つぶしに徹するつもりらしい。
とはいえ妖夢とて、本当に半神様とやらを捻り出そうとしているわけではない。早苗ですら本気ではないかもしれない。
全ては戯れ言、宴席の遊び。
宵と酔いを言い訳に、愚かを装うのは存外、痛快ではあった。
■
「と、いうわけなのです」
「なにがどういうわけなんだ」
席は移り。
小町曰く「暇そうな奴ら」――その一人である上白沢慧音が、困惑顔をする。
事情は説明したものの、まあその上で「どういうことなんだ」と言いたくなる事情なのは確かだ。
さて如何に、と腕を組む妖夢の隣に座った早苗は両腕を振り回し、力強く慧音に訴えている。
「ですから! 私が念願の半神様を得るべく、あなたの半獣を見せていただきたいのです!!」
「この子は何を言ってるんだ。なあ、おい」
「さあ」
素直な気持ちで首を捻る妖夢に、慧音が長々と溜め息をつく。
そちらに詰め寄り、早苗は上気した顔を目一杯真剣に引き締めた。
「半人半霊の妖夢さんには、もちもちの半霊がついているじゃないですか! ならば半人半獣の慧音さんには、半獣なるオプションがついているは自明の理!」
「うん。いや、ちょっと意味が分からない」
「いるんでしょう、可愛いのが! ふさふさでマスコット系の相棒が! 『ちびけーね』とか『プチけーね』とかそういうあざとい商業主義のアイドルがッ!!」
「よーし東風谷の。ちょっとだけ落ち着こうか」
ふしゅるるーっ。
鼻息荒く叫ぶ腋を、後ろから小町が羽交い締めにする。蛇のような威嚇音は八坂の神性顕現か、野性に還っただけなのか。
ビビったらしく僅かに腰を浮かしていた慧音は、ほっと安堵の息をつき、それから真面目な表情でこちらに向き直った。
「つまり……守矢の巫女は半人半霊である妖夢、君の半霊を羨んでいる。そして半人半神の自分も同じような存在を持つことが可能ではないかと仮定し、更にそこから、同じく半分だけ人間である存在ならば自己を象徴する半独立体を所有しているのではないか、という論へ飛躍したのだな」
「理路整然と説明されたら、なんだか学術的な探求の気がしてきました」
「大いに気のせいだ。――ちなみに、私に『半獣』なるオプションはついてないぞ。ワーハクタクとはそういう生き物ではない」
苦笑する慧音に、妖夢はさもありなんと頷き返す。
彼女、上白沢慧音はワーハクタク――半人半獣とでもいうのだろうか、人間とハクタクのハーフである。
「そも、半人半霊という種族が非常に特異なんだ。半ば人、半ば幽霊。生と死の狭間を歩む彼らの基準を、そのまま生物に当てはめようとすれば具合のおかしなことになるのは当然だよ。……いやすまない、気に障ったか?」
「いえ別に。そういうことらしいですよ、早苗さん」
「つまり、私は半人半神ではなくワー神様と名乗るべきなんですね」
「耳腐ってるんじゃないのかお前さん」
神妙に見当違いな事を呟く早苗を、小町が半眼で引っぱたく。
誰ともなく溢した溜め息がその場に空しく流れ出た、その時。
「いや……君たちの仮説は間違ってはいないかも知れない」
不意に呟かれたその言葉に、妖夢たちは全員揃ってそちらへ顔を向けた。
先程から手酌でちびちび飲っていた、もう一人の「暇そうな奴ら」――森の外れで道具屋を営んでいる男は、音もなくその場へ盃を置く。
鼻先に引っ掛けた眼鏡といい、細身で色素の薄い体躯といい、ともすれば見る者にひどく脆弱な印象を与えるこの男性は、しかし見た目通りの存在ではない。
彼こそは人間と妖怪のハーフ。
半人半妖の道具屋、「香霖堂」店主・森近霖之助であった。
「人と人外のハーフは、純粋種族の人や妖怪とは一線を画する要素を持っているのでは……と、僕も常々考えていたんだ」
「お。なにか心当たりがあるのかい、香霖堂」
「うむ。漠然と考えていたことが、君たちの話を聞いて仮説にまで形を得た」
さりげなく小町が酒を注いだ盃を受け、霖之助はふっと視線を上げた。
その視線を追い、妖夢も顔を上げる。
澄んだ夜空に引っかかるのは、満月に些か足りない上弦の月。少し無粋なくらい冴え、境内にくっきりと影を落としていた。
叢雲を飛ばすではないが、なんとなく、半霊を頭上へ泳がせてみる。
月の指先に引っ張られるような、浮き足立つ、奇妙な感触。
よく見たら守矢の腋が半霊の尾を掴み、つんつん引っ張って遊んでいた。うぼぁ、突っ張る。
「なにしてるんですか、早苗さん」
「理想の中の半神様を追いかけるより、手近なもちもちで手を打つのも一つの幸せなんじゃないかなって」
「今更なに言ってるんですか」
「ふ……笑ってください。私は東風谷早苗。孤独を紛らわせるためにあなたと寝たがる惨めな女」
「そら指さして笑いますけど、とりあえず半霊返してください」
「うみあああ痛い痛いいったいッ!? ちょ、妖夢さんマジ、マジ痛いですちょっと!」
「…………話してもいいかな?」
「知らんよ」
「あたいは味方だぜ、お二人さん」
手繰り寄せた半霊に絡みつこうとする早苗と、それをボストンクラブで締め上げる妖夢を寂しげに指差し、霖之助が呟く。
慧音と小町がそれぞれ溜め息混じりに答えると、彼はどこかほっとしたように頷き、眼鏡の縁を押し上げた。
「既に言ったが、人と人外の狭間に生を受けた者は特殊な要素を持っているのかも知れないと、僕は以前から考えていた。その『特殊な要素』があの子の半霊であり、巫女の言う半神様なのではないかと考えた次第だ」
「ふむ。続けてくれ」
「つまり『自分の半身でありながら身体の外部に存在する器官』だ。それは常にその者と共にある。ある程度は距離を取ることもでき、知能も有している――彼女の半霊を見る限りでは、知能を共有しているというべきかな」
「ほう、面白いねえ」
店の番をしている時より饒舌なのは酒精の仕業か、説明好きの変人故にか。
にぃと笑って、小町は自分の盃を一息に干す。
「言い切るからには、香霖堂。お前さん自身はその『器官』に心当たりがあるのかい?」
「当然だ。とくと見るがいい」
「うん?…………うわあ!?」
大きく頷き、胡座を掻いたまま器用に後ろを向く霖之助。
その背中を訝しげに見下ろした慧音が、声を裏返らせる。
決して逞しくはない背中に、少女がしがみついていた。
貼り付いていた、とかこびりついていた、とか言った方が適当かも知れない。小さな身体を大の字に広げ、両手と両脚で彼の着物にぶら下がっている様は、何となくこなきジジイを彷彿とさせる有り様ではあった。
「香霖堂。あんたいつの間に子供なんかこさえたんだい」
「僕は未婚だ」
「不貞の子か? どこの女性を不幸にしたのだ、ダニめ。宇宙のダニめ」
「濡れ衣でそこまで言うか、君は」
見下げた視線で罵倒する慧音を、負けず劣らずやぶ睨みで睨み返す霖之助を余所に、小町はまじまじと少女を見つめていた。
黒い、ドレスのような可愛らしい服装。短く切り揃えた鈍色の髪や新雪の如き肌も相まって無機質な容貌の中、一際鮮烈な鴇色の小さな翼が目を引く。ぱたぱたと揺れるその羽根を見つめていると、着物に埋まっていた顔が小町の方を向く。
翼と同じ色の瞳が険しく尖り、頬はぷくぅと膨れていた。背中の翼も一層ぱたぱた空を打つ。
縄張りを主張しているらしい。
へらりと頬を緩め、小町は少女の髪に優しく手を触れた。
「心配しなさんな。あたいもあっちの姐さんも、お前さんの父ちゃんをとったりしないよ」
「どうしても僕の子供にしたいようだが、違うと言っている」
「この懐きっぷりが親子でなけりゃなんだってんだい」
「そう。僕もそこが解せなかった」
途端に勢い込んだ霖之助が居ずまいを正し、その拍子にころりん、と少女が背中を転げ落ちる。
慌ててよちよち定位置によじ登る少女を手助けしながら、小町は首を傾げた。
「聞こうじゃないか」
「事の起こりは少し前、霊夢が店に本を持ち込んだ時だ。どうやら外の世界の物らしいその本を、僕は当然の権利としてツケ代わりに巻き上げた」
「まあ、いまさらあの紅白についてはなにも言わないけど」
「この子はその日から出現し、僕の周りをうろちょろしているんだ。初めは噛み付かれたり蹴飛ばされたりと大変だったが、書物を与えておけば大人しくなると気付いてからはあまり手が掛からず助かっている」
「ふむ……なあ、死神。この子は人里の子供ではないよな?」
「ああ、妖怪だ。魂を見る限り、香霖堂みたいなハーフではなく純粋な血統だね」
「だから濡れ衣と言ったろう」
頷き合う女性陣を半眼で見回してから、霖之助は一度大きく空を見上げた。
その拍子にまた転がり落ちる妖怪少女。だが彼女は不屈の精神で、再びよちよち登攀に挑んでいく。
いかん、あれ欲しい。
「いったい何事かと思っていたが、今夜ひとつの仮説を得た。この妖怪が半人半妖である僕の『半妖』を司る器官である、ということだ」
「そのこころは」
「僕が外出する時は必ず一緒に貼り付いてくる。書物を読むなど自律行動もとるし、僕がいる間は、店の中ならどこにでも行けるようだ。例に挙げた、魂魄妖夢の『半霊』の条件には合致しているだろう」
「ふむ。やい、お前さんはこのメガネの『半妖』なのか?」
ひとつ息をつき、小町は妖怪少女にぴし、と指を向けてみた。
少女はしばし目を丸くしていたが、やがて鼻先でつん、と指をつついてくる。
きゃん。
「しかし説が正しいとすると、この娘も店主自身だということになるんだよなあ」
「……一瞬でもときめいたあたいの純情を返しておくれ」
「申し訳ございませんお客様。当店は返品を一切受け付けておりません」
顔をしかめる慧音と、慇懃に頭を下げる霖之助を交互に睨んでから、ぐったりと肩を落とす。
空になっていた三人の盃にそれぞれ酒を注ぐと、霖之助は腕組みして息をついた。
「当然、全て酒の席での仮説だよ。これが『半妖』だなんて話も本気にするようなことじゃあない」
「店主よ。その子に名前はないのか?」
注がれた酒で口を湿し、慧音が少女の方を顎でしゃくる。
霖之助の肩越しに覗いていた頭を即座に引っ込める少女に微笑を浮かべてから、彼女は改めて盃を傾けた。
「さっきから『これ』だの『半妖』だの、随分な言いぐさだぞ」
「僕も、呼び名が無いのは不便だから仮の名前はつけたさ。その名もスウィートビブリオン二世」
ごん。
痛そうな音と共に、霖之助の頭に弾幕がぶつけられた。飛び散る鴇色の火花が美しく夜を彩る。
真っ赤な頬を膨らませ、目に涙すら浮かべた少女が後ろから撃ち出した弾幕に間断なく殴られながら、霖之助はフフ、と苦笑した。
「どうもお気に召さなかったようでね」
「そりゃお気に召さないだろうけども」
「お前がどのツラ下げて『すうぃーと』と抜かす」
「僕なりに女の子に気を遣ったつもりだったんだ」
割と本気らしく、ちょっと落ち込んだ様子で頭を振る店主。その頭を容赦なく、ぽかぽか叩く膨れっ面の妖怪少女。
やんぬるかな。紅魔の吸血鬼じゃあるまいに。
酒に口をつけ、慧音が眉根を寄せる。
「雰囲気から見るに、この子は日本の妖怪だろう。横文字は似合わんよ」
「ほお。では先生、どうさね。この機にひとつ名を与えてみては」
「そのつもりさ、死神。この男に任せておくとろくなことにならん」
すかさず小町が注いだ酒をにやりと笑って飲み干し、小町も返杯された酒を一息に呷る。
笑み交わす女性二人を、霖之助の肩にもたれた少女は不思議そうに見比べていた。
その好奇の眼差しに微笑み返してから、慧音が月を見上げる。歴史の獣、ワーハクタクの深い瞳は欠けた月を映し込み、その光を呑み込むように瞼が閉じる。
ややあって、彼女はスゥと目を開いた。
「――鴇子、というのはどうだ。その翼と瞳の鴇色は、きっと天が君に与えた宝物だ」
「いいねえ、雅だねぇ。あたいは悪くないと思うが……香霖堂はどうさね?」
「もとより何だって構わないよ。スウィートビブリオン二世が気に入りさえすればいい」
「譲る気ゼロかお前」
ことのほか断固として答える霖之助に、慧音は長々と溜め息をついた。
再び頭を弾幕で殴り始めるスウィート某を肩越しに見やり、霖之助は顔をしかめる。
「大体、この子が手を触れさせてくれないのがいけないんだ」
「おっと、問題発言かい?」
「違う。僕の能力を忘れたか? 〝未知のアイテムの名称と用途が判る程度の能力〟だ」
弾幕に殴られ続ける仏頂面を左右に振り、彼は肩にしがみつく少女を指さした。意外にタフな男ではある。
「触れば名前が判るかとも思ったが、僕が手を伸ばすと器用に逃げ回るんでね」
「子供をアイテム扱いか。これだから変人はな……」
「寝てる間にでも触ってみれば良いじゃあないか」
「死神。寝ているこの子にいざや、と手を伸ばす僕を想像してみろ」
「犯罪だな」
「犯罪だねえ。あたいが悪かった」
「……間髪入れずに断言されるのも業腹だが、まあそういうことだよ」
大体、苦労して寝かしつけた子をわざわざ起こすほど馬鹿げたことはない。
そう言って頭を振る霖之助と、憤懣としてぱたぱた羽ばたく少女を、小町と慧音は微笑を浮かべて眺めていた。
そこへ。
「すみません、お騒がせしました」
「なんだかハブられてて悲しい気配がしたので、戻ってきましたー」
涼しげな声で、妖夢と早苗が話坐に加わってきた。
妖夢はいつも通りの様子で皆に酒を注いで回るが、早苗はぼろぼろになってへたり込んでいる。それでも半霊のだっこ権は勝ち取ったらしく、抱きしめたもちもちの塊にもたれるその顔は、悲しくなるくらい幸せそうだ。
お疲れさん、と苦笑する小町に注がれた盃を受けて、妖夢は首を傾げて一同を見回す。
「それで、どういう話になってますか?」
「香霖堂が幼女をモノ扱いしている案件について討論中だ」
「待て」
「ふむ、なんなら閻魔様を呼ぶか。あの人も来ているはずだったな」
「あ、それはあたいが勘弁して欲しいかなって、先生」
首を巡らせる慧音の膝に縋り付き、およよと泣き崩れる小町。
そちらには一切構わず、霖之助は妖夢に向かって僅かに鼻の角度を変えて見せた。
「君が自分の『半霊』をどう思っているかは知らない。だが、僕はこの『半妖』を道具扱いすることに別段、やましい思いは抱いていないよ」
「えー、そんなに可愛いのにー。なんなら下さいよぅ。愛でますから。愛潰しますから」
「早苗さんちょっと黙っててください」
ぎぶぎぶぎぶぎぶぎぶ!
謎の悲鳴を上げる早苗を、変形させた半霊で卍固めに絞り上げる。ぎぶってなんでしょう。妖夢半人前だからわかんない。
頭でも痛いのかこめかみを指でおさえてから、霖之助は話を続ける。
「魂魄妖夢。なぜ君には、半霊という存在がついているのだと思う?」
「半人半霊だから……という答えではないですよね」
「無論。……肺は呼吸をするために、心臓は血液を送り出すために、指は道具を扱う為にある。では君の『半霊』や僕の『半妖』…………それはいったい、何のため此処にあるのだろう」
――歓声。
遠くで、俄に皆が騒ぎ出す。そちらを見れば、幽々子様が扇を手に舞を舞われているところだった。
静から動へ、動から静へ。
虚の中に実を踏み、実の内に虚を噛ませる。
幽玄にして、荘厳。
思わず溜め息をつかずに居られないそんな舞は、幻想郷広しと言えど幽々子様を置いて他に舞えるものなど居はしない。
「最近、僕はこう考えている。……この子は、僕が自分を繋ぎ止めるための『楔』なのかも知れない、と」
「くさび……ですか?」
舞に見入り、半霊の拘束を緩めた隙に逃げ出した早苗が、首を傾げて霖之助を見る。
興味深い話をしているようだったが、妖夢の目は主人から離れない。
亡霊故に、その身は幽か。
亡霊故に、その舞は幽か。
だというのに。彼女はあまりに、美しく。
宴の夜へ幽雅に咲ける、生死の境を踏破する、反魂の蝶よりなお強く。なお強く!
ああ――嗚呼。
幽々子様。我魂魄の剣を捧ぐ、西行族の桜姫。
あなたは、あなたは御存じですか。未熟で至らぬ私の目に、その御姿がどれほど遠く眩しく映るのか。
畜生、乳揺れすっげえ。
「ギャストリドリーム……ッ!!」
「なにがどうしたって?」
「さあ」
血を吐くように呟く妖夢に、小町と慧音が遠くで囁いている――なにも物理的な距離というわけではなかろうが。
見ればハクタク先生もその胸に、かなり凶悪な弾頭をぶら下げていらっしゃる。
悲しいかな、この場で胸を比べれば自分が太刀打ちできるのは霖之助くらいのものだ。それですら、純粋に胸囲という事でなら男性には劣るだろう。
諸行無常。忘我絶望。
非想非非想の境地に至る、今ならば。師の伝えし奥義に開眼できるやも知れぬ。
空を斬り、魔を斬り、精霊を斬り時空を斬り、輪廻因果の陰陽表裏、三千世界を遍く絶やし、今こそ一念、魂魄の剣となり。
我に悔い無し。迷い無し。
一身既にして人であり、鬼であるならば。
照覧あれ。
顕來、未来永劫斬――――――!!
「……泣きながら胸を叩くこの子を、私はどうすればいいんだろう」
「……なにも言わず、抱きしめてやることさね」
「そ、そうか……ぎゅ」
「うわーん」
困惑顔の慧音に優しく抱きしめられ、その胸に殴りかかっていた妖夢は静かに泣き崩れた。くそう、やーらかい。
すんすん泣きじゃくる彼女の肩に、小町がそっと手を載せる。
「魂魄の。泣くんじゃない、魂魄の」
「言うなッ! 言葉は敗者の肉を腐らせ、情けは敗者の魂を腐らせる!!」
「気分出してるとこ悪いけど、あれを見てごらんよ」
「はい」
素直に顔を上げ、妖夢は小町が指差す方を見た。
そこにいたのは霖之助。そしてその背にしがみつき、肩越しにこちらを見る妖怪少女。
少女
=大平原
≦マイおっぱい
「アミーゴッ!!」
「あ、ずるい妖夢さんずるい! 私も、私もー!」
「ぐわ、なんなんだ君たち!?」
号泣した妖夢が妖怪少女に抱きつき、早苗がその後ろから妖夢ごと少女を抱きしめて、結果として霖之助が下敷きになる。
しばし、しばし。
「……話を続けてもいいかな?」
「存分に」
「もりもりと」
それぞれ頭に一発ずつ、霖之助の拳骨を喰らった妖夢と早苗は正座して先を促した。
怯えた顔で背中にしがみつく妖怪少女を二人から隠すように座り、彼は大きく嘆息する。
「最初から繰り返そう。この娘――『半妖』は、僕が僕であるための『楔』なのではないだろうか」
「どういうことでしょう」
「肺も、心臓も、指も。生き物の器官とは全て、必要だからそこに在る」
横目に、背後の少女へ視線を送ってから、霖之助は妖夢と早苗を見比べた。
「つまり、この娘は僕にとって足りない何かを補うために出現した。生物学的に言えば……進化か、適応か?」
「……遥か昔、獣が翼を得て鳥になったように、森近さんはその娘を得たというわけでしょうか」
「飲み込みが良いね、山の巫女は」
風祝です、と小声で主張はしたものの、早苗は話に聞き入っているようだった。
彼女たちの後ろで、盃を交わしながら講釈を聞いている小町と慧音の方へも視線を配ってから、霖之助は自分の酒に口をつけた。
「では、この娘は僕の何を補う存在なのだろう。無口で店番には向かないし、力仕事だって任せられたもんじゃない」
「……孤独を紛らわせるため、とか」
「生憎だが、僕は道具にさえ囲まれていれば別段、寂しさは感じないんだ」
「金の勘定や回し方が巧いんじゃあないのかね」
「知能は低くないようだが、そういうことでもないよ」
妖夢と小町が挙げた答えに、ことごとく否定が返される。
しかめ面で呻き、慧音が軽く霖之助を睨みつけた。
「勿体つけるな。お前はどう考えている」
「先に言ったように、『楔』。……この娘は、『僕が森近霖之助である事を忘れないための器官』だ」
盃が揺れ、雫が月下へこぼれる。
黙って、慧音が霖之助に酒を注ぐ。無言でその盃を掲げてから、彼は一同を見回した。
皆、一様に口を噤み、話の続きを待っている。
「この幻想郷で暮らしていると……とりわけあの博麗の巫女に関わっていると、時折、自分が何者か判らなくなることがある」
「……」
「人と妖怪、凡人と才人、奇人と変人、陰と陽――結界を司り、楽園の境界を守る彼女の周りでは、皮肉なことにあらゆる境界が曖昧だ。だから彼女と関わっていると……自分を見失いそうになることがある」
「……自分が妖怪の血を引くことを忘れない、その為の戒めだと?」
手酌で一献空け、小町が僅かに目を細める。
ちろりと彼女へ視線を向け、霖之助は頭を振った。
軽く。
声を立てて、笑いながら。
「大げさだ、死神。そんな深刻な話じゃない。あの巫女と関わっていると、自分のペースを乱されると言いたかったんだ」
「ああ、そりゃあよく判るねぇ」
「彼女や魔理沙に流されるのは正直、嫌いじゃない。が……一番の根底、僕という存在の基盤を成すのは、偏屈で無愛想。不思議な道具を愛し、好きなようにそれらを眺め、それらの使い方を思索して日々を過ごす香霖堂店主の姿だ。僕は、そんな森近霖之助であることを誇りに思っている」
「埃臭い、の間違いじゃないのか」
慧音が下手な茶々を入れるのに、早苗がぶふッ、と噴き出して笑い転げる。
妙なツボに入ったらしく、けたたましく笑い続ける巫女を見て、一同は生温い溜め息をつく。もうこの腋はいろいろ駄目かも知れない。
とりあえず近くに生えていた猫じゃらしで腋の腋をくすぐりつつ、妖夢は霖之助の話を聞くことにする。
「一心不乱に店の書物を読みふけるこの娘を見ていると、この道に入ったばかりの自分を思い出す。目に触れるもの全てが新鮮だった――僕の周りにはあらゆる知識と情報が渦を巻き、僕の血肉となるのを待っていた。道具に触れる一撫でが、書物に開く一頁が、僕の好奇心を潤し、満たしてゆく。……あの心地良さを味わうことは二度と出来ないだろう。発見の感動は、未熟者の特権なのだ」
「……」
「そして、道を歩んだ者は別の特権を得る。後に続く未熟者を見守ることだ」
ぱちくり、と。
肩から顔を出し目を瞬かせる妖怪少女を振り返ってから、霖之助はゆっくり目を伏せる。
「妖怪は人を襲う存在だ。人間が記した書物を読み解いても、妖怪が得る物は何ひとつない。あったとして、それを生かす場はまず訪れないだろう。それでも、この娘は本を読む」
「なぜ、なんでしょう」
「決まっている。…………好奇心が、押さえられないのさ」
――ああ。
きっとそうに違いないのだろう。
なぜなら言い切る店主の顔は、今まで見たことのない、きっとこれからも見せることのない、ひどく子供じみた笑顔だったのだから。
(もしかして)
たった一人だけはもう一度、この笑顔を見ることがあるのかも知れない。
きょとんと店主の横顔を覗き込む妖怪少女を見つめる妖夢の口元にも、自然と笑みが浮かんでいた。
ちなみに彼女がくすぐり続けている腋祝は、口元と言わず顔と身体全体で大爆笑している。そろそろ息切れで死ぬんじゃなかろうか。心配だ。
熱心に手を動かし続ける妖夢の耳には、どこか満足そうな霖之助の声が聞こえていた。
「この子は突然に現れた。突然に居なくなることも、またあるのかも知れない。しかし、この子が僕の傍にいる間は……僕は、自分を忘れない。森近霖之助であることを忘れない。だからこの子は、正しく、欠かせない僕の『半身』であるのだよ」
――ごん。
闇夜に尾を曳き、弾幕一閃。
真っ赤な弾がひとつ、同じくらい真っ赤な顔をした妖怪少女から放たれて、霖之助の頭を軽く一撃。
ぎゅうと霖之助の着物を掴み、肩に顔を埋める様は、やはり親に甘える童のよう。
微笑ましげに二人を見つめていた慧音が、ぐ、と盃を傾ける。
「なるほどな。店主の論、楽しませてもらったぞ」
「それはよかったが、酒の上での言葉だと言うことは忘れないでくれよ」
「忘れるものか!」
快笑。
白い喉を見せて笑うハクタクの先生の盃が空なのを見て、妖夢は慌てて徳利を傾けた。
それに気付いているのかいないのか、彼女はにんまりと意地悪げに笑う。
「その論には普遍性がない。酔っ払いのごたくより他、何であろう」
「というと?」
「私には『半獣』などついていないじゃないか」
愉快そうに喉を鳴らし、ハクタクは「ねー?」と隣の小町を振り返る。「そうだねぇ」と返すや死神、にっこり笑い返し。
意外や意外、気が合うらしい。否々、酔っぱらい同士の連帯感か。
これ以上は勧めない方が良いかな、とさりげなくその辺の徳利を片付ける妖夢。なぜか守矢の緑色が痙攣して倒れていたので、空いている腋に徳利を挟んでおいた。冷たかったのか、うひゃぃと鳴く腋。
冷えて縮むがいい、ボインめ。
「どうだ店主。いつものらりくらりと言いくるめられるが、今日ばかりはぐうの音も出まい」
ほんのり赤みの差した顔を得意げな笑みで一杯にし、慧音が霖之助を指さした。宴の度にこんな議論――与太話?――をしているのだろうか。
指さされた霖之助は、しかし、頭を振るだけであった。
「おやおや。人里の守護者、上白沢の慧音女史ともあろう方が、随分と酔っておいでのようだ」
「む……どういうことだ」
「君が君である為の『半獣』……いつだって、君の傍にいるさ。今この時だっている」
「うぇあ?」
奇妙な疑問符を上げ、慧音はぐるりと首をねじ曲げて自分の背中を見ようとする。長い髪が邪魔をするのか単に身体が硬いのか、よく見えなかったらしい。助けを求めるようにこちらを見るので、「ついてません。貼り付いてません」と首と手を横に振っておいた。
何をしているかとばかりの半眼で、霖之助は肩をすくめる。
「残念なことに、僕はまだお目に掛かったことはない。運が良ければ、もうすぐ会えるかも知れないがね」
「もうすぐ……?」
「そうさ。あと――二日もすれば」
二日、と。
そう断ずる前に霖之助が見上げたのは、月。
ころころと膨れた上弦の月は、あと二日もすれば満月を迎えるだろう。
満月になれば――
「――ハクタクになる」
「屁理屈だ」
ぽつりと妖夢が呟いたのと、ほぼ同時。
腕を組み、慧音が憮然として霖之助を睨みつける。
半人半獣の彼女は満月の夜にのみ、ハクタクの姿を得る。その時は妖力・霊力ともに現在とは比べものにならず、新たに歴史を創り出すことすら可能にせしめるとも伝え聞く。実際、妖夢もその状態の彼女と弾幕を交えたが、余りの力と美しさに圧倒されたものだ。
つまり、そのハクタクの姿こそが慧音の『半獣』。
正しく常に共にある存在。それは、彼女自身のことなのだから。
「半身と別個に行動できる、という前提を守っていない」
「そんな事はない。満月の夜、『半獣』は自由に行動する。満月以外の夜に行動する『半人』である君から離れてね」
「屁理屈だ」
もう一度呟く慧音に、霖之助は涼しい顔で肩をすくめた。
それから盃を置き、ゆっくりと腰を上げる。
「何度も言うが、全て酒の席の与太話さ。真面目に考える事じゃない」
「おや、帰るのかい」
「そろそろ眠たそうなんでね」
眉を上げる小町に、霖之助は自分の肩を指差して見せた。
そこに掴まっている妖怪少女は、うつらうつらと頭を揺らしている。時折はっとしたように霖之助の着物やら髪やらを掴み直すものの、すぐに瞼が閉じていく。
もう夜も深い。よい子は寝る時間、ではあった。
仮にも妖怪が健全な生活を送っているのもどうかと思うが、昨今は妖怪も昼型に生きているのかも知れない。その辺は、冥界住まいの妖夢が疎いところだ。
少女を落とさないよう多少腰を折ったまま、霖之助は一同を見回す。
「先に失礼するよ。騒がしい所は苦手だが、今夜は楽しめた」
「送ろうかい? その体勢で店まで歩くのは難儀だろう」
「なに、大丈夫だよ。……死神に送られては、そのまま三途の川を越えてしまいそうだ」
「うぬぼれるない。あんたは川の途中で蹴り落としてやると決めているんだ」
冗談めかして笑う霖之助に、小町がけらけらと盃を掲げる。
その隣、しかめ面のまま酒を舐めていた慧音が、顔を上げ早口に呟いた。
「その子の名前。ちゃんと考えてやれよ」
「もう考えた。――朱鷺子、なんて美しいと思わないかい?」
「私の案じゃないか」
「そうでもあるが、僕の案でもある。ぜひ一度、名付け親として会いに来てやってくれ」
「…………ふん」
鼻を鳴らし、微かに口元を緩め。
慧音はいかにもそっけない手付きで、月へ盃を掲げて見せた。
「いいとも、会いに行くとしよう。――――私の『半獣』と一緒にな」
「楽しみにしていよう」
頷く彼はいつも通り、飄々とした涼しい顔で。
頭を振る慧音もまた、仏頂面で空の盃を弄び。
刺々しいはずの視線がなぜか軽快に交わる様に、傍で見ていた妖夢は首を傾げる。
微妙に腰を折った姿勢のまま歩いていく霖之助を見送ることもなく、慧音は彼女を振り向いた。
「君はどう思う、半人半霊の庭師」
「『半身』のお話ですか?」
「ああ。私には、やはりあの男一流の戯れ言としか思えないよ」
苦笑し、適当な徳利を探る慧音。しかし近くの徳利は、あらかた飲み干してしまっていた。
残念そうに吐息をこぼす彼女に、妖夢は少しだけ首を傾ける。
「慧音さんは……自分の『半獣』がお嫌いですか?」
「うん?」
「いま戯れ言と」
霖之助は、あの妖怪少女を自分に必要な『半身』と呼んだ。
それが戯れ言であると言うならば。
彼女は、自分の『半獣』――ハクタクである自分の姿を不要な存在と捉えている、という事にはなるまいか。
深刻な面持ちで問う妖夢に、慧音はそっと、唇の端を持ち上げる。
「……ふふ、そうだよ。酒の上での戯れ言だ」
「それは、しかし――」
「――しかし。酒の沁みた言葉ほど、人の本心が染みる言葉もないのだよ」
反駁しかけた彼女の先を制し。
慧音は盃を置き、妖夢の髪に軽く手を載せた。
「君も、自分の半霊が嫌いな訳ではないだろう?」
「それはそうですけど」
「なら、私もそう言うことさ」
「うーん」
うやむやに言いくるめられたような気がして、妖夢は眉根を寄せた。
いかにも不服げな彼女の頬をぷにぷにつついて、慧音が小町の方を振り返る。
「――ときに死神、この辺りの酒はもう、粗方飲み干してしまったようだ」
「やや、いけないねぇ。酒を欠いては、宴が宴たり得ない」
「いかにも、いかにも。どうだ。ここは一つ、まだ見ぬ盃を求め豊穣の旅路へ」
「然らば先生その道行き、この小野塚小町が供をしよう。我等、酩の使徒にして酊の酒徒なれば」
「険しい旅路ぞ、いざ飲めや。酒國は千にして万なる酔夢哉……」
双方、上機嫌に笑いながら立ち上がる。
喋り続けていたくなるのは酔っ払い特有の気分であろう。交わす言葉の意味は、本人達ですら分かっているとは思えなかった。
危なっかしく体勢を崩した小町がこちらを見下ろし、にへらと笑う。
「お前さんも一緒にどうだい? 夜は長いし、宴は永い」
「いえ。すみませんが、彼女がもう……」
言って、妖夢は肩越しに後ろを振り返る。
半霊を抱きしめたまま、すぅすぅ寝息を立てる守矢の巫女。酔い潰れたのか、かなり深く眠っているようだ。
彼女と自分の与太話が発端でここまでつき合わせてしまったというのに、誘いを断るのは申し訳ない気分だが……
「ご迷惑をおかけしました、小町さん」
「なんの。あたいも楽しかったさ」
ふらつく足を、慧音と肩を組んで安定させながら、小町は軽やかに笑み転がす。
くしゃくしゃと頭を撫でてくる彼女を見上げ、妖夢はむぅ、と小声で呻いた。
……この人は、
(きっと酒なんて飲まずとも、本心を言葉にすることが出来るのだろうなあ)
あけすけな笑みを、少しだけ羨ましくも思う。
まっこと。
小野塚小町は、付き合いの良い死神であった。
「じゃあね、魂魄の。また遊んでおくれよ」
「気が向いたら合流してくるといい。歓迎するぞ」
はい、と頭を下げる妖夢の言葉を聞いていたのか、いないのか。
二人の酔客は肩を組み、下手くそな唄など唄いながら宴席の何処かへと彷徨っていった。その後ろ姿は、なんだか仲の良い兄弟のように見える――姉妹ではなく――。
後に残るは妖夢と、東風谷の風祝。
とりあえず、神社の中に運ぼうか。
半霊と自分で両腋を抱え上げ、酒の尽きた席を後にする。
幸せそうな顔で眠る早苗を起こし、霖之助の話を聞かせてやろうとも思ったが。
(別にいいよね)
半人半神、現人神。
守矢神社の東風谷早苗。
彼女の『半身』――欠かすことの出来ない存在など、あまりに分かりきっているのだから。
腋を担ぎ直し、妖夢は、緩んだ口元から零れる寝言に耳を傾ける。
「ぅみう……神奈子さま……諏訪子さまぁ…………にへ」
早苗さん。
『半神様』。ちゃんと持ってるじゃないですか。
もちもちふっくらはしてないかも、ですけどね。
「うふふ、神奈子さまおっきくてもちもち……なんと、マジカル諏訪子さまがホーリーアップ……ろりきょぬー……!?」
滅べ。
■
気が付くとたんこぶまみれになっていた早苗を、神社の適当な部屋に適当に放り捨て。
妖夢は縁側に腰掛けてぼーっとしていた。
いつもよりも鮮鋭な気がする宴の喧騒を聞きながら、ふと、半霊を膝の上に乗せてみる。
もちもち、ふっくら。
ひんやり心地良いそれを撫で、首を傾げる。
(この半霊は……私の『半霊』なのかな?)
傍で聞けば、わけの分からぬ自問ではあったが。
確かに半霊は、欠かすことの出来ない存在――しかしそれは霖之助や慧音、早苗の『半身』とは意味が異なる。
妖夢にとって半霊は生まれながらについていたものであり、正しく身体の一部だ。
それは……なんとなく、違う。
どう違うのかと言えば説明はつかないが、ともあれ、違うと思うのだ。
「……わかんないや」
半霊を宙に飛ばし、ひょいと境内に飛び降りる。
分からなくて困ることもあるまい。どうせ宴席の与太話だ。
さて、これからどうしよう。
いつも通りに給仕役に戻るか、小町と慧音を捜してもう少し酒を飲むのもいい。
さて如何にする、と辺りを見回した時。
首筋を、冷たい風が撫で上げる。ひぃ。
「……よ~お~むぅ~~~~」
「なんですか幽々子様」
「ちょっとは驚きなさいな」
答えると、背後から妖夢を抱きすくめていた亡霊――西行寺幽々子はぷぅ、と頬を膨らませた。
驚いたじゃないですか。ひぃって。
ともあれ主人に正対し、妖夢は怪訝そうに眉を顰めた。
「どうなさったんですか。宵闇妖怪に囓られた後、余興で舞を舞っていた所を夜雀と竜宮の使いの逆襲連携に襲われて転倒し、倒れたところがよりにもよって料理の山だったもんだから腹を空かした紅白巫女に物理的に食いつかれたようなそのお姿」
「一部始終見てたなら助けてよぅ!」
ぼろぼろの両腕を振り上げ、幽々子が悲鳴を上げる。ちょっと泣いてすらいたかもしれない。
どうどう、と主人をなだめつつ、妖夢は彼女の桜色の髪にこびりついた鶏肉の欠片をはたき落とした。
「とりあえず宵闇やら紅白やらは、後で首だけ出して埋めておきますね」
「……それはちょっとやりすぎかなって、幽々子は思うの」
「無論、顔には蜂蜜を塗ります。とりわけ耳や鼻の穴」
「あ、やめて妖夢やめて。スプラッタ怖い」
頭を抱え、いやいやと首を振る幽々子様。
心配性だなあ。蟻に喰われて死ぬ妖怪がいるものですか。
あ、巫女もいたか。まあいいや。大差はない。
「ほら、顔にソースついてるから動かないで。喰われますよ」
「んむぅ」
ぴたりと静止する幽々子の顔を、妖夢はてきぱきと拭っていく。
一通り作業を終えた妖夢の顔を覗き込み、幽々子がふと首を傾げた。
「妖夢、お酒を呑んでるのね」
「え? あ、はい。すみません、まだ酔いが醒めなくて」
「いいんじゃない? 宴の席で酔わない客は興ざめですわ」
くすくす笑い、幽々子が縁側に腰掛ける。
自然とその傍らに控える妖夢の髪を撫で、彼女はそっと目を伏せた。
「あなた、いつも私の世話ばかりで宴を楽しんだことがなかったでしょう。こんな夜があったっていいんじゃないかしら」
「だって幽々子様、食べる物無くなると拗ねるじゃないですか」
「お腹空くんだもん」
くすん、と泣き真似をする幽々子様。
「何か、適当に持ってきましょうか」
「ううん、今日はもう充分。……その代わり、こっちに付き合いなさい」
花が咲くように微笑み溢し、亡霊嬢が袂から取り出したのは。
まだ封切られていない酒の小瓶と、可憐な桜の装飾の盃二つ。
ぱちぱちと瞬きする妖夢を引っ張り隣に座らせ、彼女はころころと笑う。
「あなたと差し向かいで呑むのも、珍しい気がするわ」
「お屋敷ではその辺の幽霊をつき合わせますからね」
「そもそも、あなたあんまり呑まないんだもの」
そうですねえ、と頷きつつ、妖夢は主人の盃へ酒を注ぐ。主人も、また彼女の盃を酒で満たす。
馥郁たる酒の香に鼻をくすぐられ、妖夢はほう、と吐息をこぼした。
「いいお酒ですね」
「紫が持ってきたの。外の世界のお酒だそうよ」
「なんだか勿体ない気がします」
「外の世界も、幻想郷も、お酒はお酒。酒精に結界の内も外も無い。気にすること無いわよ」
首をすくめ、幽々子は盃を傾ける。
桜色の唇が月光の沁みた酒に濡れる様は、ひどく幻想的で。
思わず呆として見入ってしまい、主人が不思議そうな目を向けてくる。
慌てて酒に口をつけ、妖夢は美味しいです、と呟いた。
味など、実は分からなかったが。
「ところで、妖夢」
「なんでしょう」
「今夜は楽しかった?」
即答はしない。
小瓶を取り上げ、妖夢は主人の盃に酒を満たした。
思い返すは今夜の出来事。
酔いのせいにして、愚かな与太話を繰り広げた僅かな時間。
他人から見れば無意味な時間と言える。
当人たちにすら無意義な時間と言えた。
だから、妖夢は首を横に振り。
「はい」
「どっちなの」
困った笑みを浮かべるも、幽々子はそれ以上追及しない。
一度、息をつき。
妖夢は両目を閉じ、一息に酒を呷る。
強い酒精が喉を焼き、身体に落ちて火を灯す感覚。
そして次の瞬間――視界がぐるり、と回転する。
(あれ?)
酔い潰れた、訳ではない。
何かに腕を引っ張られ、ころりと倒れてしまったようだ。
とどのつまり。
妖夢は、幽々子の膝の上に寝かされていた。
「ぅ、……?」
「酔ってしまったみたいね、妖夢」
意識の隙を突かれ硬直する妖夢の髪を、幽々子は猫でも撫でるようにゆっくりと梳く。
亡霊である幽々子の手は本来、冷たい。
それでも髪に触れる指には、確かな温もりを感じる。
(ああ)
酔っている。
間違いなく、自分は目も当てられないくらいに酔っていた。
ならば。
酔っているのならば……これはもう、仕方がない。……よね。
「はい――幽々子様。私は酔っています」
「少し休みなさい。妖夢に膝枕をしてあげるのは、何十年ぶりかしら」
着物の袖が隠す口から零れるのは、蝶の羽音より幽かな笑い声。
耳がじんじんと熱くなる。本格的に酔いが回ってきたようだ。
(今日は本当に珍しい日)
珍しく宴で与太話に興じ。
珍しく幽々子様とお酒を酌み交わし。
珍しく酔っ払ってしまった挙げ句に。
珍しく、膝枕などされてしまった。
近くを飛ばしていた半霊も、ふらふらと怪しい軌道で飛んでいる。千鳥足、と言ってはおかしいだろうか。
その半霊を指でつつき、幽々子がほう、と息をつく。
「やっぱり柔らかいわね。ねえ妖夢。この半霊、枕にしてもいいかしら」
「はい。どうぞお好きに」
「あら」
彼女の答えに、幽々子は意外そうに目を瞬かせる。
それもまた、珍しい事ではあった。
なんとなく嬉しくなって、妖夢は寝返りを打ち主人の膝に顔を埋める。
そのままぎゅっとしがみつくと、幽々子はもう一度、あら、と呟いた。
今だけ、ですから。
珍しく酔っ払ってしまった、今夜だけですから。
こんな無礼な、愚かの真似をお許し下さい。
畏まると同時に、とっておきの悪戯を仕掛けたようなワクワクした気分に胸が弾む。
妖夢は少しだけ顔を上げ、幽々子の顔を見上げた。
微笑む亡霊の姫に届けるのは、きっとこんな夜にしか伝えることのできない、酒の沁みた言葉。
だから妖夢は、にっこり笑う。
抱きしめた幽々子様のお膝は、とても柔らかくて――
「私も…………『半霊』、持っていますから」
――もちもち、ふっくら。
この宴会の雰囲気と霖之助ならではの独自理論がとても気に入ってしまいました
原作ぽくてよかったなあ。
霖之助な
些細な一言が転がって大きくなって、でも脱線しないで
いい感じにストン、と落ちて素敵でした
ところでタグにおっぱいがついてないのは納得いかないです
しかし小町の余命幾許は無理があるだろw
あと朱鷺子かわいい
ハーフっていうとちょっと語弊? 異種族間に生まれたのは霖之助だけのはず。
他はそういう種族なんじゃなかったかな。
幽々子に勝つとか宵闇すげぇ。
なんか原作読みなおしたい気分になりました。
面白かった。
軽快なテンポと掛け合いですらすら楽しく読めました
食べ合いに負けるゆゆ様ってのは珍しいw
タグだけじゃん。読んでからいいなよ
よちよちぴっとりの朱鷺子ちゃん。
甲乙付けがたい可愛らしさだ。
宇宙開闢を想起させる小町さんの揺らめき。
着物の上からでも主張する幽々子様の揺らめき。
甲乙付けがたいビッグバンだぜ。
初投稿おめでとうございます。
半○に対する考察とおっぱいが織り成す奇天烈なスパイラル、楽しませて頂きました。
あとはあれだ。おっぱいに朱鷺子。どうもごちそうさまでした
小児組の愛らしさに、ビッグボインの魅力に。
そして酔いどれ共の軽快かつ珍妙な、半○の存在意義から酒宴自体への醍醐味へと話が移行する様は……なんか、堪りません!
初投稿にしてこんな素晴らしい作品を、ありがとうございました。
嗚呼、それにしても……酒が欲しい…!
それにしても霖之助はいい味出してるし朱鷺子も可愛いな。
慧音は色々意味深だった気もしますが。はて。
キャラがらしくて良かったです。読み進める内にどんどん世界に没入していく感覚がありました。
朱鷺子が可愛すぎる。あめちゃんあげたくなります。
実に良いおっぱいでした。作者に感謝を。
いい空気出してましたね。
あと、あなたがおっぱい星人だということも良く分かりました。
所々のギャグもいい味だしてましたw
つまり半○というのは乳なのだ。
その乳が物理的に離れたのが半霊となるのだ。
半霊は胸部の装甲を削って装備したオプションではないかと睨んでいます。
にしても小町と慧音のやり取りが良すぎる。この酔っ払い共が好きすぎて困りました。
久しぶりに面白いSSが読めて良かった。ありがとうございます。
宴会っぽい空回りする会話が見事でした
面白い与太話でした。
それでいて、自分のもう半分となる存在に対しての結論も
読んでほっこりしました
あと妖夢、お前もう諦めろよww
「発見の感動は未熟者の特権」。いい言葉だと思います。
楽しませて頂きました。
優しい雰囲気が本当に素敵でした。次作も待ってます。
後は近くの書店に香霖堂が並ぶのを待つばかりです。
会話やら仕草やら文章全体から出てるほろ酔い感が良かった。
妖夢に憑いているおっぱい。。。じゃない、半霊はヴィジュアル的にしか捉えていませんでした。
常々不思議には思っておりましたが、成程この考察は実におっぱい。。。じゃない、幻想郷らしいですね。
読んでいてとてもおっぱい。。。じゃない、面白かったです。
つまり、妖夢もいわゆる『ろりきょぬー』であると?
滅べww
巨乳組の乳揺れも、映像で見てみたい……!
そしてまさかのルーミア勝利w
素敵な宴会ごちそうさまです
次回作も楽しみにしてます!
霖之助はハーフ
慧音は人間→半獣
早苗は人間→半神(?)
妖夢と小町は普通にそういう種族
山なし落ちなし意味なし。でもそれがいい。酒の席ですもんね。
『未熟者の特権』のくだりはとても納得がいき感心させられました。
可能ならば、この小説の内容を忘れ、何度も読み返して
何度も感動することができればいいのになぁと思います。
コメディタッチで小洒落た文章、真面目な内容とギャグの両立、各々キャラクターも上手く機能していて、全体的に高いレベルでまとまっているように思えました。
とりわけ素晴らしいと感じたのは着眼点。「半○」という要素を軸に物語を作る、という発想には脱帽しました。お見事。
つまり、霖之助も(ry
次回作も楽しみにすてます!
おっぱいに全部もってかれたけど
あと雰囲気も好きだよ
このなんか特殊なことが、ごく自然に・当たり前のように進んでいく描写が大好きで。
酒の勢いに任せて与太話を繰り広げ、酒の力を借りて普段語れぬことを語る。
宴の席とはかくあるべし。そんなことを思わせてくれるお話でした。
雰囲気も語彙も極めすぎっすよ・・w
朱鷺子かわいい。
じゃあなんでリザレクションして妖夢の所に(ピチューン
それ…より…ス…スウィートビブリオン…二世…ブフッ