「お前のご先祖様って、どんな人だったんだろうな?」
「さぁ、興味ないわねぇ」
霊夢が魔理沙とそんなやりとりを交わしたのは、いつの頃だったろうか。
春――
日は暖かく。風は優しく。幻想郷の空に桜の花が舞う。
リリーホワイトのころころとした声。
低くうなる大気の音に混じって、霊夢はそれをかなたに聞いたような気がした。
そうして縁側で穏やかに空を眺めていると、
「なーにたそがれてるんだぜ霊夢!!」
「ぶっ!?」
酒臭い魔理沙のラリアットが、容赦なく霊夢を打った。
そして霊夢は否応無く、意識を地に引きずり下ろされてしまう。
「痛ったいわね! 何すんのよ酔っぱらい!」
睨む霊夢に魔理沙は胸焼けするほどにっこり笑って、言い放った。
「花見は酔っぱらってなんぼだぜ!!」
それを後押しするかのように、境内で催されている花見という名の大宴会が、霊夢の耳を騒がせた。
騒霊達のにぎやかしい演奏。そこかしこであがる下品な笑い声。へべれけ共の小競り合い。実に五月蝿い。
けれど、境内を包む桜達が、その喧噪を優しく包み込んでくれるから、それがあるべき眺めのように、不思議と思えてしまうのだった。
「ったく……」
霊夢はだぜだぜとのたまっている魔理沙にお返しのヘッドロックをかけながら、境内を見回した。
すると、鳥居に近い一本の桜のたもとに、ぽつんと紫がいた。宴会の連中とは、少し距離を置いている。
「……?」
らしくないその様子に、霊夢は何か誘われるようなものを感じて、魅入ってしまった。
紫が、空をか桜をかを眺めながら、ふと、虚空に微笑んだ。何か、とても大切なものを込めた笑みに思えて、
「……っ」
言いたくはないが、霊夢は少しときめいてしまった。
自分にはあんな微笑み方はできないだろうな、とも思った。
それで霊夢は、魔理沙を酔っぱらいどもの渦に放り投げて、紫の側に近づいていったのだ。
「紫……」
おずおずと、声をかける。
「うん?」
紫が振り向いたから、霊夢は少しぎこちなく、手に持った二本のとっくりとお猪口をかかげて見せた。
紫がそれをみてにっこりと口元を緩ませた。とても優しい笑みで、霊夢はまた言葉を詰まらせた。
「……なんかさ。あんた、空を眺めて笑ってなかった?」
紫の隣に座って、問いかける。
くすりと、紫が笑った。
「あら。霊夢ったら。私の事を観察してたの?」
「っ! き、気持ち悪いなーってね!」
そっぽを向いて酒をあおる。紫がくすくすとまた笑った。
かと思うと、紫は突然、深く静かな声になって、囁いた。
「――穏やかになった」
「え?」
霊夢は振り向いてしまう。
「やっと。私達の望む幻想郷になった。やっと……。殺し合う事や、憎しみ合う事があたりまえじゃない時代に……」
「紫……」
霊夢がぽーっとしていると、紫が空に向かって呼びかけた。
「ね。霊夢」
「なに?」
「ああ、貴方じゃないの。ごめんね。遠い遠い昔の、霊夢に、ね」
霊夢は、はて、と少し考えて、その意味に思い当たった。
「私の……ご先祖様?」
紫は小さく頷いて、また空を見上げた。
「霊夢……」
そう呟いて、紫はまた微笑んだ。
それは先ほど霊夢が魅入られた、あの笑みで。
霊夢は早くなる自分の鼓動を聞きながら、紫の微笑みにを込められたものを、ようやく少し理解できた気がした。
大きな苦しみ、とても辛い悲しみ、長い長い苦難、そして膨大な時……それらが礎となって、今の紫の微笑みを創っているのだと思えた。
自分にはできないわけだ、と、ふかくにも、霊夢は紫に憧れてしまった。
そして霊夢は初めて、先祖に対して明確な感情を抱いた。
嫉妬、であった。
「彼女は、ね。今の貴方によく似てた」
「そうなんだ」
「怒りんぼで、いじっぱりで、だらしなくて、でも時々女の子らしくて」
「へ? じゃ、じゃあ私とは似てないんじゃん」
「……ほらね?」
「……っ!」
「彼女は今でも、この幻想郷を見守っているわ。体は滅んでも、その思いを、形に残してね。やっとゆっくりできる時代になったって、きっと喜んでいるわ」
「……ふぅん」
「貴方も頑張ってね。現、博麗霊夢」
「え、ええ……」
霊夢はこくこくと頷いた。
その時、がさりと音を立てて、草むらからゆっくり霊夢が現れた。
「あ、ゆっくりだ」
二人が見つめていると、ゆっくり霊夢が叫んだ。
『ゆっくりしていってね!!!』
相変わらず、うざかわいい顔をしている。見ているほうまで、なんだかのんびりした気分にさせられてしまう……。
と、紫がまた、あの笑みを浮かべながら、言った。
「ありがとう。霊夢」
ゆっくり霊夢に向かって、そう言った。
ゆっくりじゃない霊夢は、目をきょとんとさせた。
「へ?」
「ゆっくり、できるようになったわよ」
「へ? ……へ?」
紫はいつまでもそうやって、ゆっくり霊夢に微笑みかけていた。長い苦難を共にした、戦友に向ける笑みだった。
「え? え、え?」
霊夢は壊れた人形みたいに、紫とゆっくり霊夢の間で、カクカクと首を振っていた。
翌日の昼頃。昨日とは一変してとても静かな博麗神社の境内。
「え……なにしてんだ霊夢?」
ぽかぁんとしている魔理沙の眼前。霊夢が境内の石畳に正座をして頭を下げていた。頭を下げた先には、ゆっくり霊夢がいる。相変わらず、どこを見ているのかわからない顔で、ぬボーっとしていた。
霊夢は魔理沙に気づいて、頭を捻りながら、戸惑いまじりに答えた。
「いや……一応……」
「はぁ?」
居心地の悪い沈黙。少し風が吹いて、桜が舞う。
リリーホワイトの声が、どこかから風に乗ってきた。
「ええと……春だからか?」
魔理沙が、分かったような分からないような事を言った。
えーーーーーーーーーーーーーっ!!??
でも、本文は心に残ります。
ある意味、ゆっくりに相応しいSSだ
すごくだつりょくするw
シリアスだーと思ったらゆっくりだったぜ
幻想郷?
えーwwwwまさかのwww
…
なにィ!?
個人的にはあれも含めてよく出来たお話だと思ったのですが。
たった二行のセンテンスによってギャグからちょっとシュールなほのぼのに変化する。
SSって本当に面白いですね。
ともあれ妖怪の賢者様にはこの先もずっと微笑んでいて欲しいなぁ。
だから紫様、『ゆっかりしていってね!!!』
ネタもつまらん。
いや、これはこれで新たな可能性が広がって……でもシュールですなぁおいィ?
幻想郷だもの
ミ 彡 ,.ィi彡',.=从i、;;;;;;;;;;;;
三 ギ そ 三 ,ィ/イ,r'" .i!li,il i、ミ',:;;;;
三. ャ れ 三 ,. -‐==- 、, /!li/'/ l'' l', ',ヾ,ヽ;
三 グ は 三 ,,__-=ニ三三ニヾヽl!/,_ ,_i 、,,.ィ'=-、_ヾヾ
三 で 三,. ‐ニ三=,==‐ ''' `‐゛j,ェツ''''ー=5r‐ォ、, ヽ
三. 言 ひ 三 .,,__/ . ,' ン′  ̄
三 っ ょ 三 / i l,
三. て っ 三 ノ ..::.:... ,_ i ! `´' J
三 る と 三 iェァメ`'7rェ、,ー' i }エ=、
三 の し 三 ノ "'  ̄ ! '';;;;;;;
三 か て 三. iヽ,_ン J l
三 !? 三 !し=、 ヽ i ,.
彡 ミ ! "'' `'′ ヽ、,,__,,..,_ィ,..r,',",
彡川川川ミ. l _, , | ` ー、≡=,ン _,,,
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ノレ'ー'! / O
名作、良作、色々あるけど、話題作ってだけで評価を下げるのはどうかと思わせる作品でした
ええっ!?