少し時間を遡る。
永遠亭の一室。
そこは、八意 永琳の研究室だった。
「それじゃあ、二人とも頼んだわよ」
「はい師匠。
それでは行って来ます」
「ん・・・、」
呼び出されたうどんげとてゐが部屋を出てゆく。
研究、製薬に使っていた薬草の在庫が少なくなっていたので
彼女たちに採って来て貰うようにお願いしたところだ。
しかし、目的はもう一つあったのだ。
「ふふ・・・後は姫ね」
月の頭脳〝が嬉しそうに微笑む。
「そうね・・・偶には外に出てもらおうかしら」
幸福の時間への布石は着々と進むのだった。
▼△▼△▼
そして、現在。
永遠亭の玄関前
輝夜の言ったとおり、道なりに進むと屋敷が見えてきた。
「ミェテキタァ」「オウチミエター」
アリスの御遣いと、輝夜の買い物袋を持った人形たちは玄関に向かった。
「ン?」「コレッテ」
玄関の前には呼鈴があった。
紐を引っ張るとカラン、カラン、と音が鳴る。
カラン、カラン、
「ヨビィリン、ヨォビリン♪」「ヨビリンーヨビリンー♪」
カラン、カラン、
二人が呼鈴に夢中になっていると
「呼鈴は一回鳴らせばいいのよ」
と声を掛けられる。
振り返ると、
お祭りの時に、二人にウサミミをくれた人が立っていた。
「ア、ェリィーン!」「エイリン!」
「はいこんにちわ、上海ちゃん、蓬莱ちゃん」
「コニチィワー」「コンニチワー」
「あら、その袋は・・・」
上海と蓬莱が持っている買い物袋に永琳が気がつく。
「カァグャガ、ォネガァィテ」「カグヤニタノマレター」
「もう、姫ったら・・・」
永琳が買い物袋を受け取ってなにやら嬉しそうに笑う
「ァト、ァリィスノヲツカァイ」「オツカイー」
上海が小さな鞄をゴソゴソあさる。
「ありがとね、二人とも。
御遣いの件は家の中で教えてくれるかしら?」
「ゥン」「ウン」
心の中で永琳が拳を握る。
よし!
家に上げてしまえば・・・ふふふ・・・
▼△▼△▼
永遠亭の一室
遂に永琳の幸福の時間が到来した。
机の上に色々な資料を並べて3人が座っている。
アリスの御遣いとは、
人形たちのゴハンを改良して欲しいと言う物だった。
すかさずソレを利用する。
「ねぇ二人とも、御遣いの内容、知りたくないかしら?」
人形たちは縦に首を振った。
「うふふ・・・教えてあげるわ」
▼△▼△▼
「ほら・・・これが、こうなるの・・・」
永琳が資料を基に丁寧に教える。
「ゥン」「ウン」
聞いている人形たちも真剣だ。
「そうなると、・・・こうなるの。
解ったかしら?」
顔を上げて人形たちを見つめる。
「ゥ・・・」「ム・・・」
人形たちが小さく唸る。
そして、
クキっと首を傾げて、
「ワカナァイ」「ワカンナイ」
「あらあら・・・」
少し困った表情で優しく微笑む。
(きゃぁあぁあぁああッ
可愛い、可愛い!可愛すぎ、
クキって・・・くぅ~~~)
決して表に出さない心の叫び。
あのメイド長なら噴出していただろう。
永琳の幸福とは、『無垢で無知な者に教える事』
教えてる時の素直な態度、理解できた時の喜ぶ姿。
そして、教えているという優位性。
これらが永琳を至福で満たす。
嘗ては輝夜、今まではうどんげがその対象だった。
自分でできるのに頼ってくれる輝夜、中々の素質を持つが抜けているうどんげ
二人とも永琳の好みだが、そろそろ新しい至福が欲しくなってきた時に
例のトーナメントがあり、この動く人形に目をつけたのだ。
「んー、それじゃあ・・・こっちの資料を見てみて」
さらに解りやすく説明する。
「ゥ・・・」「ン・・・」
永琳の説明と、資料を見比べて頭の中で整理する。
「どうかしら?」
「ワカァタ!」「ワカッター!」
人形たちが嬉しそうに両手を挙げる。
(あぁ・・・
理解できた時のあの表情・・・
教える側にしか解らないこの快感。
ぅ~~ッ・・・いい!)
そんな人形たちを見て、永琳の中で至福が絶頂を迎えた。
プッ
表に出さないようにしていたモノが鼻から出てくる。
永琳自信はそれに気がつかず、これ以上無い程の優しい笑顔で
「はい、良く出来ました~」
と人形たちを褒める。
が、人形たちの表情が硬い。
どこか心配しているようにも思える。
「ど、どうしたの?」
「ェリィーン、チィデェテルヨ」「チデテルヨー」
▼△▼△▼
永琳が血を拭き取って依頼の品を作っていると
「ただいま戻りましたー」
「・・・、ただいま、」
と玄関から声が聞こえる。
少々残念に思いながら人形たちと一緒に玄関に向かった。
玄関には薬草採りに出かけたうどんげとてゐ。
「あら、お帰りなさい。
早かったわね」
「はい、・・あ、そちらは?」
うどんげが人形たちに気がつく。
「あぁ、アリスの御遣いよ」
「へぇ~」
と人形たちの前にしゃがむ。
「御遣いなんだ~偉いね~」
ヨシヨシと二人の頭を撫でる。
「ェハァ」「エヘェ」
嬉しそうにする人形たち
それを見て永琳もなぜか表情が緩む。
しかし、それを見て不機嫌になる存在がいた。
「・・・、」
てゐだ。
(今日は朝から鈴仙と一緒に遊べると思ったのに・・・
このままじゃ人形に・・・)
「れーせん、」
くぃくぃと袖を引っ張る。
「なぁに、てゐ?」
「・・・ん、干さない、の?」
と摘んできた薬草を指差す。
保存する分は乾燥させなければならない。
てゐは仕事を持ち出して人形たちから興味を逸らそうとしたのだ。
「あ・・・そうね、それじゃあね、上海ちゃん、蓬莱ちゃん」
まんまと策は成功し、
てゐは立ち上がった鈴仙の腕を取ってその場を去っていった。
去り際に、人形たちに舌を出したのには誰も気がつかなかった。
「あらあら、二人とも働き者ね」
感心しながら、二人を見送る。
「・・・帰ってきたと思ったら行っちゃったわね」
「イチャタァネー」「ネー」
「それじゃあ続きでもしましょうか」
そう言うと永琳は人形と供に部屋に戻った。
さりげなく上海、蓬莱の手を引いて。
▼△▼△▼
数時間が経って依頼の物は完成。
「それじゃ、アリスによろしく言っておいてね」
と永琳は袋を渡す。
「ゥン」「ウン」
手渡された袋を、持ってきた鞄に詰め込む。
「ンショ、ンショ」「ヨイショ、ヨイショ」
どうやら鞄がなかなか締まらないようだ。
そんな二人を見つめて
永琳が熱のこもった息を吐く。
「はぁ・・・(あぁ、なんて可愛らしいの・・・はぅ・・)」
ようやくしまい終えると
「ジャネェ、エリィン」「エイリン、ジャアネー」
と別れの時間だ。
二人がブンブンと手を振っている。
永琳が手を振ると、人形たちは更に手を振る。
(あぁーーー、か、可愛い・・・
密室作って帰さないってのも・・・いいわね・・)
そんな考えが一瞬脳裏を掠める
「二人とも、ちょっと待って・・・」
永琳が二人を呼び止めた。
▼△▼△▼
魔法の森の奥深くに建っている一軒の屋敷。
その玄関先を落ち着きなく歩き回っている少女がいた。
「ぅー、そろそろ永遠亭を出た頃かしら・・・」
人形の主人、アリス・マーガトロイドだ。
朝、上海、蓬莱を送り出してから
趣味である人形の手入れも、
楽しみである10時のお茶も、
美味しい美味しいお昼ご飯の間も、常に人形の事が頭の中を占めていた。
胃がキリキリと痛み、研究も手につかない。
そして現在、外に出て帰ってくるのを待っているのである。
「あぁん、まだ10分も経ってない・・・どこかであのメイド長が時間を弄ってるのかしら?」
八つ当たりに近い愚痴をこぼす。
暫くうろうろしていると、
「な、なに!?」
すぐ近くの森の中で、急に力場の発生を感知した。
とんでもない力の渦だ。
こんな事をするのは・・・魔理沙が変な実験に失敗でもしでかしたのだろうか?
「兎に角、確かめなきゃ・・・」
木の間をすり抜け、現場に急ぐ。
「あら・・・力が弱まった・・?」
強く感じた力は徐々に減って行き、アリスが到着する頃には消えてしまった。
「なんなの、一体・・・」
力の発生場所を覗こうとした時、何かが飛び込んできた。
そして、アリスは驚愕する。
「・・・えぇ!?」
「「タダイマーーーー!!」」
▼△▼△▼
永遠亭の玄関先、
息を弾ませた永琳が一人呟く。
「あぁ・・・行っちゃった・・・」
密室の事で思い出したのだ。
空間を遮断して密室が作れるのだ。
その逆も可能だと。
多少疲れるが、空間と空間を繋げて人形たちを送ってやったのだ。
「それにしても・・・思いつきでやるのはやっぱり疲れるわね
後でスペルカードにしておこうかしら・・・」
私のの幸福の時間は過ぎ去ったのだ。
部屋に戻ってうどんげとてゐでこの疲れを癒そう
そう思って帰ろうとしたとき、ふと思い出す。
まだ帰ってこない人物を
「そういえば、姫はまだかしら・・・」
▼△▼△▼
突然現れた上海と蓬莱。
どうやら永琳が送ってくれたようだ。
家に帰ると、早速道中の事を話してくれる。
先ほどは、霊夢とルーミアに出会って、リボンを結んでもらった事、
今は、
「ソォレデ、レェテイキエチャターノ」「レティキエチャッター」
「うんうん、それで、上海と蓬莱はどう思ったの?」
「チョトー、サァミシカタ」「ウン、サミシカッター」
と、レティが消えてしまったことらしい。
そういえば、もうそんな季節ね
普段出歩かないアリスにとって、二人の体験は少し羨ましかった。
「そうそう、二人にご褒美があるのよ」
話を中断させて、アリスが何かを用意する。
「ゴォホビ?」「ゴホービ?」
「えぇ、二人とも頑張ってくれたから、そのご褒美」
「ワァーィ」「ワーイ」
両手を挙げて喜ぶ二人。
「じゃあ、少しだけ眠ってね・・・」
と、アリスは二人の意識をカットした。
▼△▼△▼
「二人とも、起きて~」
あ・・アリスの声、起きなきゃ
「オハァヨ」「オハヨー」
んーっと、なんだっけ・・・
あぁ、そうだ、「ゴホウビ」貰うんだった。
「ゴォホビ、ナァニィ?」「ナニー?」
アリスは用意した袋をあける
「じゃーん、これよ」
出てきたのは・・・ゴハン
永琳に依頼した、青赤黄白黒の五色の改良ゴハンだ。
永琳に説明してもらい、作る現場を見ていたので前よりどれだけ性能が向上したかもしっている。
「ゴァンガゴォホビ?」「ゴハンハゴハンー!」
そうだ!蓬莱の言うとおりだ!
珍しく、二人がアリスに抗議する。
「アリィス、コォレゴァン!」「エイリンノゴハン!」
「ふふ食べてみればわかるわよ」
既に永琳に食べさせてもらったのに・・・
渋々、黒い色のゴハンを食べる。
「ァム・・・」
蓬莱は黄色を口に含んだ。
「!!?」「!??」
舌に何か感じる・・・
な、なにこれ?
「ふふふ・・・それが、ご褒美よ」
「コォレ?」「ンフー♪」
む、蓬莱まだモグモグしてる・・・
でも、・・・これって・・・
「酸苦甘辛塩、つまり味覚よ。
これからは、ゴハン食べて味が判るわよ~」
「ゥン!」「ウン!」
「「アリガトー」」
アリスがにっこりと笑って言ってくれた。
「初めての御遣い、ごくろうさま」
永遠亭の一室。
そこは、八意 永琳の研究室だった。
「それじゃあ、二人とも頼んだわよ」
「はい師匠。
それでは行って来ます」
「ん・・・、」
呼び出されたうどんげとてゐが部屋を出てゆく。
研究、製薬に使っていた薬草の在庫が少なくなっていたので
彼女たちに採って来て貰うようにお願いしたところだ。
しかし、目的はもう一つあったのだ。
「ふふ・・・後は姫ね」
月の頭脳〝が嬉しそうに微笑む。
「そうね・・・偶には外に出てもらおうかしら」
幸福の時間への布石は着々と進むのだった。
▼△▼△▼
そして、現在。
永遠亭の玄関前
輝夜の言ったとおり、道なりに進むと屋敷が見えてきた。
「ミェテキタァ」「オウチミエター」
アリスの御遣いと、輝夜の買い物袋を持った人形たちは玄関に向かった。
「ン?」「コレッテ」
玄関の前には呼鈴があった。
紐を引っ張るとカラン、カラン、と音が鳴る。
カラン、カラン、
「ヨビィリン、ヨォビリン♪」「ヨビリンーヨビリンー♪」
カラン、カラン、
二人が呼鈴に夢中になっていると
「呼鈴は一回鳴らせばいいのよ」
と声を掛けられる。
振り返ると、
お祭りの時に、二人にウサミミをくれた人が立っていた。
「ア、ェリィーン!」「エイリン!」
「はいこんにちわ、上海ちゃん、蓬莱ちゃん」
「コニチィワー」「コンニチワー」
「あら、その袋は・・・」
上海と蓬莱が持っている買い物袋に永琳が気がつく。
「カァグャガ、ォネガァィテ」「カグヤニタノマレター」
「もう、姫ったら・・・」
永琳が買い物袋を受け取ってなにやら嬉しそうに笑う
「ァト、ァリィスノヲツカァイ」「オツカイー」
上海が小さな鞄をゴソゴソあさる。
「ありがとね、二人とも。
御遣いの件は家の中で教えてくれるかしら?」
「ゥン」「ウン」
心の中で永琳が拳を握る。
よし!
家に上げてしまえば・・・ふふふ・・・
▼△▼△▼
永遠亭の一室
遂に永琳の幸福の時間が到来した。
机の上に色々な資料を並べて3人が座っている。
アリスの御遣いとは、
人形たちのゴハンを改良して欲しいと言う物だった。
すかさずソレを利用する。
「ねぇ二人とも、御遣いの内容、知りたくないかしら?」
人形たちは縦に首を振った。
「うふふ・・・教えてあげるわ」
▼△▼△▼
「ほら・・・これが、こうなるの・・・」
永琳が資料を基に丁寧に教える。
「ゥン」「ウン」
聞いている人形たちも真剣だ。
「そうなると、・・・こうなるの。
解ったかしら?」
顔を上げて人形たちを見つめる。
「ゥ・・・」「ム・・・」
人形たちが小さく唸る。
そして、
クキっと首を傾げて、
「ワカナァイ」「ワカンナイ」
「あらあら・・・」
少し困った表情で優しく微笑む。
(きゃぁあぁあぁああッ
可愛い、可愛い!可愛すぎ、
クキって・・・くぅ~~~)
決して表に出さない心の叫び。
あのメイド長なら噴出していただろう。
永琳の幸福とは、『無垢で無知な者に教える事』
教えてる時の素直な態度、理解できた時の喜ぶ姿。
そして、教えているという優位性。
これらが永琳を至福で満たす。
嘗ては輝夜、今まではうどんげがその対象だった。
自分でできるのに頼ってくれる輝夜、中々の素質を持つが抜けているうどんげ
二人とも永琳の好みだが、そろそろ新しい至福が欲しくなってきた時に
例のトーナメントがあり、この動く人形に目をつけたのだ。
「んー、それじゃあ・・・こっちの資料を見てみて」
さらに解りやすく説明する。
「ゥ・・・」「ン・・・」
永琳の説明と、資料を見比べて頭の中で整理する。
「どうかしら?」
「ワカァタ!」「ワカッター!」
人形たちが嬉しそうに両手を挙げる。
(あぁ・・・
理解できた時のあの表情・・・
教える側にしか解らないこの快感。
ぅ~~ッ・・・いい!)
そんな人形たちを見て、永琳の中で至福が絶頂を迎えた。
プッ
表に出さないようにしていたモノが鼻から出てくる。
永琳自信はそれに気がつかず、これ以上無い程の優しい笑顔で
「はい、良く出来ました~」
と人形たちを褒める。
が、人形たちの表情が硬い。
どこか心配しているようにも思える。
「ど、どうしたの?」
「ェリィーン、チィデェテルヨ」「チデテルヨー」
▼△▼△▼
永琳が血を拭き取って依頼の品を作っていると
「ただいま戻りましたー」
「・・・、ただいま、」
と玄関から声が聞こえる。
少々残念に思いながら人形たちと一緒に玄関に向かった。
玄関には薬草採りに出かけたうどんげとてゐ。
「あら、お帰りなさい。
早かったわね」
「はい、・・あ、そちらは?」
うどんげが人形たちに気がつく。
「あぁ、アリスの御遣いよ」
「へぇ~」
と人形たちの前にしゃがむ。
「御遣いなんだ~偉いね~」
ヨシヨシと二人の頭を撫でる。
「ェハァ」「エヘェ」
嬉しそうにする人形たち
それを見て永琳もなぜか表情が緩む。
しかし、それを見て不機嫌になる存在がいた。
「・・・、」
てゐだ。
(今日は朝から鈴仙と一緒に遊べると思ったのに・・・
このままじゃ人形に・・・)
「れーせん、」
くぃくぃと袖を引っ張る。
「なぁに、てゐ?」
「・・・ん、干さない、の?」
と摘んできた薬草を指差す。
保存する分は乾燥させなければならない。
てゐは仕事を持ち出して人形たちから興味を逸らそうとしたのだ。
「あ・・・そうね、それじゃあね、上海ちゃん、蓬莱ちゃん」
まんまと策は成功し、
てゐは立ち上がった鈴仙の腕を取ってその場を去っていった。
去り際に、人形たちに舌を出したのには誰も気がつかなかった。
「あらあら、二人とも働き者ね」
感心しながら、二人を見送る。
「・・・帰ってきたと思ったら行っちゃったわね」
「イチャタァネー」「ネー」
「それじゃあ続きでもしましょうか」
そう言うと永琳は人形と供に部屋に戻った。
さりげなく上海、蓬莱の手を引いて。
▼△▼△▼
数時間が経って依頼の物は完成。
「それじゃ、アリスによろしく言っておいてね」
と永琳は袋を渡す。
「ゥン」「ウン」
手渡された袋を、持ってきた鞄に詰め込む。
「ンショ、ンショ」「ヨイショ、ヨイショ」
どうやら鞄がなかなか締まらないようだ。
そんな二人を見つめて
永琳が熱のこもった息を吐く。
「はぁ・・・(あぁ、なんて可愛らしいの・・・はぅ・・)」
ようやくしまい終えると
「ジャネェ、エリィン」「エイリン、ジャアネー」
と別れの時間だ。
二人がブンブンと手を振っている。
永琳が手を振ると、人形たちは更に手を振る。
(あぁーーー、か、可愛い・・・
密室作って帰さないってのも・・・いいわね・・)
そんな考えが一瞬脳裏を掠める
「二人とも、ちょっと待って・・・」
永琳が二人を呼び止めた。
▼△▼△▼
魔法の森の奥深くに建っている一軒の屋敷。
その玄関先を落ち着きなく歩き回っている少女がいた。
「ぅー、そろそろ永遠亭を出た頃かしら・・・」
人形の主人、アリス・マーガトロイドだ。
朝、上海、蓬莱を送り出してから
趣味である人形の手入れも、
楽しみである10時のお茶も、
美味しい美味しいお昼ご飯の間も、常に人形の事が頭の中を占めていた。
胃がキリキリと痛み、研究も手につかない。
そして現在、外に出て帰ってくるのを待っているのである。
「あぁん、まだ10分も経ってない・・・どこかであのメイド長が時間を弄ってるのかしら?」
八つ当たりに近い愚痴をこぼす。
暫くうろうろしていると、
「な、なに!?」
すぐ近くの森の中で、急に力場の発生を感知した。
とんでもない力の渦だ。
こんな事をするのは・・・魔理沙が変な実験に失敗でもしでかしたのだろうか?
「兎に角、確かめなきゃ・・・」
木の間をすり抜け、現場に急ぐ。
「あら・・・力が弱まった・・?」
強く感じた力は徐々に減って行き、アリスが到着する頃には消えてしまった。
「なんなの、一体・・・」
力の発生場所を覗こうとした時、何かが飛び込んできた。
そして、アリスは驚愕する。
「・・・えぇ!?」
「「タダイマーーーー!!」」
▼△▼△▼
永遠亭の玄関先、
息を弾ませた永琳が一人呟く。
「あぁ・・・行っちゃった・・・」
密室の事で思い出したのだ。
空間を遮断して密室が作れるのだ。
その逆も可能だと。
多少疲れるが、空間と空間を繋げて人形たちを送ってやったのだ。
「それにしても・・・思いつきでやるのはやっぱり疲れるわね
後でスペルカードにしておこうかしら・・・」
私のの幸福の時間は過ぎ去ったのだ。
部屋に戻ってうどんげとてゐでこの疲れを癒そう
そう思って帰ろうとしたとき、ふと思い出す。
まだ帰ってこない人物を
「そういえば、姫はまだかしら・・・」
▼△▼△▼
突然現れた上海と蓬莱。
どうやら永琳が送ってくれたようだ。
家に帰ると、早速道中の事を話してくれる。
先ほどは、霊夢とルーミアに出会って、リボンを結んでもらった事、
今は、
「ソォレデ、レェテイキエチャターノ」「レティキエチャッター」
「うんうん、それで、上海と蓬莱はどう思ったの?」
「チョトー、サァミシカタ」「ウン、サミシカッター」
と、レティが消えてしまったことらしい。
そういえば、もうそんな季節ね
普段出歩かないアリスにとって、二人の体験は少し羨ましかった。
「そうそう、二人にご褒美があるのよ」
話を中断させて、アリスが何かを用意する。
「ゴォホビ?」「ゴホービ?」
「えぇ、二人とも頑張ってくれたから、そのご褒美」
「ワァーィ」「ワーイ」
両手を挙げて喜ぶ二人。
「じゃあ、少しだけ眠ってね・・・」
と、アリスは二人の意識をカットした。
▼△▼△▼
「二人とも、起きて~」
あ・・アリスの声、起きなきゃ
「オハァヨ」「オハヨー」
んーっと、なんだっけ・・・
あぁ、そうだ、「ゴホウビ」貰うんだった。
「ゴォホビ、ナァニィ?」「ナニー?」
アリスは用意した袋をあける
「じゃーん、これよ」
出てきたのは・・・ゴハン
永琳に依頼した、青赤黄白黒の五色の改良ゴハンだ。
永琳に説明してもらい、作る現場を見ていたので前よりどれだけ性能が向上したかもしっている。
「ゴァンガゴォホビ?」「ゴハンハゴハンー!」
そうだ!蓬莱の言うとおりだ!
珍しく、二人がアリスに抗議する。
「アリィス、コォレゴァン!」「エイリンノゴハン!」
「ふふ食べてみればわかるわよ」
既に永琳に食べさせてもらったのに・・・
渋々、黒い色のゴハンを食べる。
「ァム・・・」
蓬莱は黄色を口に含んだ。
「!!?」「!??」
舌に何か感じる・・・
な、なにこれ?
「ふふふ・・・それが、ご褒美よ」
「コォレ?」「ンフー♪」
む、蓬莱まだモグモグしてる・・・
でも、・・・これって・・・
「酸苦甘辛塩、つまり味覚よ。
これからは、ゴハン食べて味が判るわよ~」
「ゥン!」「ウン!」
「「アリガトー」」
アリスがにっこりと笑って言ってくれた。
「初めての御遣い、ごくろうさま」
そんなことは無いと思いますが、僕は読んでいて楽しかったです♪
ホントにお疲れ様でした♪
もし、また長編を書くことがあれば、頑張ってください。