朝起きたら 幽々子様が みょんな姿になっていた
魂魄異伝~妖々夢福~
「ゆゆゆっ幽々子さまぁぁぁ!?」
「みょん。おはよう妖夢~、朝から元気ね~、みょん。」
「ちょ!なに落ち着いているんですか幽々子さまっ!
己の身になにが起こっているかを、把握してください!ってかみょん!?」
「あーあー、そうなのよ~。なんだかとってもいい気分なのよ~、みょん。」
「話噛みあってません!正気を取り戻してください幽々子さま!」
「まずは落ち着きなさいな妖夢~。みょん。」
「これが落ち着いていられますか!なんだってそんな姿に!」
「みょん。みょん。わからないわ~。みょん。」
「みょん言いたいのはこっちじゃああ!幽々子おおぉぉ!」
「みょん。」
というわけで 幽々子さまのご友人の紫さまに相談してみました
「あらゆかり~ ゆっくりなさって~。みょん。」
「ふむふむ、随分丸くなったわねぇ、幽々子ったら。」
「いやいやいや!冷静に突っ込まないでください!」
「あら、じゃあ半人前の庭師さん、私まで取り乱していいの?」
「うう・・みょん・・、よろしくお願いします。」
「ねぇ幽々子、何があったのか、教えてくれない?」
「わからないわ~。あまり考えられないわ~。今日のおやつは桜餅がいいわ~。みょん。」
「食欲は旺盛なようね、問題ないわ。」
「ちょっとおおお!紫さま!問題だらけです!まだ何一つ解決してません!」
「妖夢、物の本質を見極められなければ、一人前にはなれないわよ?」
「う・・?」
「あなたがどう否定しようとも、これは、幽々子なの。それは事実。間違いないわ。」
「でも、こんなみょんなお姿になられては・・・」
「妖夢。 ・・じゃあなに?あなたは、姿一つ違うというだけで、幽々子を否定するの?」
「え・・・、それは・・その・・・」
「そんなんだから半人前って言われるのよ。妖夢。」
「そ、そうなんでしょうか・・・。」
「そうよ。その様子じゃ、あなたの半人前と一人前の境界は絶望的にぶ厚いわね。」
「がくん。みょん・・。」
「落ち込んでる場合じゃないわよ。今あなたがすべきことは何?
おそらく、この状態の幽々子はもう、本来の力を何一つ行使できない。
この愛くるしいだけが取り柄の無力な幽々子福を精一杯受け入れてあげることではなくって?」
「・・・わかりました。私も西行寺に、否、幽々子さまに忠誠を誓いし魂魄が一人、妖夢。
全身全霊を以って、この愛くるしい幽々子福さまを愛でて愛でて愛でまくる覚悟にございます。」
「そうそう。その息よ。まあ、犬猫の世話だと思えば気楽でしょ?」
「なっ! 幽々子さまを愚弄する言動は、いくら紫さまであっても!」
「いやいや妖夢~。本質を見なきゃ、だめよ~。みょん。」
「そうそう本質を見なさい妖夢。愛は愛よ。」
「みょん・・・」
かくして 私と幽々子福さまのみょんな生活が始まったのです
「みょん。妖夢~桜餅、もうないの~?」
「申し訳ありません幽々子福さま。これ以上お食べになられては、お体に障ります。」
「妖夢ったら心配性なんだから~。幽霊の体の心配するなんて、これほど無駄なことはないわよ~?」
「まあそうなんですがって、今の幽々子福さまは幽霊というかいったいなんなんでしょうかね。」
「妖夢~。本質を見定めるのよ~。みょん。」
「精進します。」
「うむうむ。みょん。というわけで、ね~。」
「え?」
「桜餅・・・食べたいなぁ・・・みょん・・・」
う・・・
「桜餅・・・食べたいよぅ・・・妖夢~・・みょん・・」
か・・・かわいい!
「い、一個だけですからね!これ以上はだめですからね!」
「わ~い。妖夢大好きよ~。」
「はい、では最後の一個をどうぞ・・・」
「ぱく、もくもく、むくむく、みょんみょん・・・んく」
ああ・・・ああああああー!!!
「み゛ょん!?」
「だ、だ、だからあああ!お体に触りますとおおお!あれほど口を酸っぱくして言ったでしょうにいいい!?」
「いやぁぁぁ いやぁぁぁ 妖夢ぅぅぅ」
「うるさい!・・・はっ!? あ、あわわっ!私はなにを・・申し訳ございません!幽々子福さま!」
「まったくもう~。くすぐったいわ~。みょん。」
そんなこんなで日はとっぷりと暮れ
「妖夢~、ご飯~」
「はい、ただいま。腕によりをかけてお作りいたします」
「妖夢~、散歩~」
「はい、ただいま。私の剪定した見事な夜桜並木を眺めながらというのも、おつなものです。」
「妖夢~、お夜食~」
「妖夢~、お風呂~」
「妖夢~、なでて~」
・・・・・・・・・・・・・・・・・・
「やっぱり、これは、幽々子さまなんだ。
そう、なにも変わってなんかない。
この魂魄妖夢、命ある限り、否、輪廻ある限り、幽々子さまにお仕えいたします・・・」
「ん~むにゃむにゃ・・・みょん・・。」
小さくかわいらしい寝息をたてて ぐっすりと眠る幽々子福さまを腕に抱きながら
この小さな幽々子福さまを いつまでも 絶対に 守っていこう
そう私は決意した
「ちょっと待ったあああ!!!異議あり!!」
「み゛ょみ゛ょん!?」
「危ねぇ、綺麗に落ちつけちまうところだった。あのスキマめ、自然と不自然の境界とかいじりやがったな!
不自然どころか超常現象じゃねぇか! 妖夢、半生の不覚!」
「どうしたの妖夢~? 寝られないわ~」
「幽々子福さま、私はこれよりマヨヒガへ向かいます。少々のお暇を。」
「妖夢~?もう夜よ~?みょん。」
「あのスキマに会いに行くには夜の方がむしろ好都合です。」
「ゆかりになにかあるの~?」
「ちょっとぶんなぐ・・いえ、今一度助力を請いに、行ってまいります。」
「でもぉ・・私を一人置いてくの~?みょん。」
「!? くっ!幽々子福さまっ!あなたの愛おしさが今は憎い!
だが断る! 妖夢はこれより修羅道へ入ります! 申し訳ございません幽々子福さま!」
「・・妖夢、本気なのね・・・」
「・・ええ、本気ですよ、幽々子様。本質は未だ見えずとも、それに至る道、確かに見出しました。」
「わかったわ、妖夢。行ってらっしゃいな。」
「幽々子様・・行って参ります!」
マヨヒガ
「たのもー! 我は西行寺幽々子の従者、魂魄妖夢! 紫さまに今一度お目通り願いたい!」
「あらあら、妖夢じゃないの。どうしたのこんな時間に。」
「紫さま、やはり幽々子さまをあのままにしておいて良いはずがありません。
どうか、もう一度お力を貸して下さい!」
「無理」
「即答!?」
「さあ子供は帰った帰った。持って帰ったら幸せになれるマヨヒガ靴下あげるから。」
「紫さま!私は半端な覚悟でこのスキマハウスまで来たわけではありません!あと靴下はいりません!」
「あらやだ。人の家をおんぼろあばら家みたいに言わないでくれる?」
「話を逸らさないでください! ・・私の気持ちなど、半人前の気持ちなど汲めないというのですか!?」
「・・・これ以上私になにをしろと?
私は幽々子の友人。その私が良かれと思っての判断よ。それにケチをつける気?」
「わ、わかっております!
それはわかっておりますが、それでも・・・私は・・・私は・・・!
幽々子さまが、好きだから! 紫さまが幽々子さまを想うよりきっとずっと、大好きだから!」
「! ・・はぁ・・まったく。我侭な主人の従者は、やっぱり我侭ねぇ。」
「それが今の私の曇りの無い想いです。」
「誓えるかしら? あなたの若さでわかるのかしらね? その言葉の重みが。」
「誓います。命にかけて。」
「言い切ったわね・・・、 いいわ、こっちいらっしゃい。
ここで話してたら、小うるさいのが起きてきちゃうわ。」
・・・・・・・・・・・・・・・・・
「まず、なにから話そうかしらね」
「今、なにをすればよいのかを、教えてください。」
「知らないわ。 やっぱり・・・」
そう言って彼女は ゆっくりと私の目の前に白玉楼直通の隙間を展開した
「やめないか」
「うほっ いい度胸」
「待って!妖夢!待って! まったくもう、話は最後まで聞くこと!
知らないってのは、本当よ。そして仕方ない。
だけどね、原因はわかるわ。」
「幽々子さまが白丸くなった原因ですか。しかし、原因がわかったところで・・・」
「だめね、妖夢。結果は原因についてくる。ならば、原因から別の道を探れば・・?」
「今の結果を・・・覆し、否定できる・・・」
「そう、そういうことよ。ふふ、1/3人前ぐらいになったんじゃない?」
「減ってませんか?割合的に。」
「言い換えれば2/3妖前よ。妖怪の私にとっては妖怪味が評価の基準だもの。」
「喜んでいいんですかねそれは。 ・・・で、どうすれば?」
「まず一つ断っておくわ。原因について知れば、あなたはきっと後悔する。
そしてあなたの剣は、後悔を斬るには、まだあまりにも若すぎる・・・」
「言ったはずです。半端な覚悟で来たのではありません。
斬れぬのならば、鍔競ってみせます。鍔競ることすら適わぬのなら、肉を切らせて骨を断つのみです。」
「言うわね、でも、己の敵はいつだって己よ?」
「ならば幸い。甘えも、迷いも、すべて斬って捨てる良い機会です。」
「ふふ・・・では妖夢、幽々子が幽々子福になった原因は、なんだと思う?」
「大福の食べすぎでしょうか?」
「おバカ。」
「言われると思いました。」
「やっぱりあなたなんか2/3人前、いや9/10人前で十分よ。」
「ありがとうございます。」
「これを」
「御札・・・?呪印が焼けて、ぼろぼろですね。」
「ええ、使用済みですもの。それが答えよ。」
「これが?どういうことですか?」
「これ以上は私の口からは言えない。
真実はそこにあるのよ。それをもって彼岸へ行きなさい。」
「彼岸・・と、いいますと・・」
「今、あなたは点よ。ただの一点。頂点が一つでは、私にも操れない。
いくら私の境界を操る能力も、片方しかない、両端が存在しないものは操れないわ。」
「私がこれをもって、そこにいくことで、頂点が二つになり、操れるようになるということですか?」
「そういうことよ。そして、原因と結果の境界を限りなく狭めることで、逆転を図ろうと思うの。
そのためには、あなたがそれを携えて此岸と彼岸を繋ぐ必要がある。」
「わかりました・・ですが、えらく抽象的な言い方をされますね?」
「あなたのことよ。真実を掴み取る権利がほしいのならば、気張りなさいな。」
「そこは幽々子さまのため、気張りたいですが、漠然としすぎですよ。」
「全くもう、しかたないわねぇ。」
そう言って紫さまは、いくつかの隙間を展開していく。
「さて、どれかが真実に繋がる穴よ。」
「どれか?教えてくださいよ。」
「妖夢。例え私が正解だと思うものを教えても、それはあなたの正解ではないのよ。」
「入るものによって、行き着く先が異なるということですか。」
「そういうこと。正確には、あなたの心持次第で、ということね。」
「つまり、私の覚悟が本物であるならば、どの穴もすべて正解、
逆に、覚悟が揺らいでいるならば、どの穴もすべてはずれ、ということですね。」
「そうよ、妖夢。わかってきたじゃないの。」
「ならば話は早いです。私の覚悟、生半可ではございません。早速!」
「ただし穴の中に一つ、全く脈絡無く意味も無くマルコビッチの穴があるわ。」
「・・・・」
「やめて!刀しまって!呼ぶわよ!テンコ呼ぶわよ!」
「・・私にはこの二振りの剣があり、両の足も健在です。
ありがとうございます。紫さま。真実は、この足で赴き、この剣で切り開こうと思います。」
「そう、それでいいわ。・・博麗へ向かいなさいな、妖夢。」
「あの紅白巫女のところですか。」
「そうよ。あなたはそこで真実の一端を知ることになるでしょうね。しかしそれは容易ではない。」
「いつだって、容易などではありませんでしたよ。いつだって。そして今回も。」
「覚悟は良いようね。ならば私から言うことはもうなにもないわね。行きなさい、妖夢。」
「ええ、行って参ります。が、その前に・・・」
「なにかしら?」
「最後になるかもしれない、幽々子さまのお寝顔を拝見したいのです。」
「我侭ねぇ。でも果たして眠れているのかしらね?不安で、枕を濡らしているかも?」
「うっ・・・、幽々子さまは、あれでいて、強いお方です。」
「理想的な関係ね、妖夢。
でも、もっと理想的な関係を築くには、お互いがお互いを期待しすぎないこと。
真実とは、いつだって、それはそれは残酷なものですもの。」
「たとえ残酷な真実であろうとも、受け入れてみせますよ。あなたが思うより、ずっと理想的ですから。」
「へぇ、言うわね。じゃあとりあえず寝顔拝見といきましょうかね。」
そういって 隙間を展開する紫さま
そこから覗くのは 白玉楼の中の・・ 寝室ではないな
ここは お茶の間だろうか まだ霞んでいて良く見えない
視界をめぐらせているうちに 幽々子さまの姿らしきものを捉えた
少しずつ はっきりと映し出されていく
寝転がり 哀しむように 惜しむように 慈しむように・・・桜餅をむさぼり食う幽々子福さま
「「・・・・・・」」
「あくまで私を愚弄するかこのスキマ!」
「し、知らないわ!100%真実よ!私はなにも手を加えてないわよ!」
「ノーカン!とにかくこれノーカン!」
隙間をピシャリとしめる
「言ったでしょう、幽々子さまは強いお方ですと。」
「何事もなかったかのように綺麗にまとめようとしない。」
「紫さま、夜が明けます。私はそろそろ行きますね。」
「ええ、それが良いわ。私もそろそろ眠いし。」
「はい。ありがとうございます、紫さま。」
「心して、挑みなさいな、妖夢。」
「いざ、博麗へ!」
まさか職場で吹き出すはめになるとは思わなかった。
今は社長室に呼ばれている。
そのネタに?はいりませんよ
続き、楽しみですねぇ~
これで続きがシリアス展開になってたりしたら、それはそれで笑えるかも(ぇ
最初はシリアスな話だと思った。今は爆笑している。
テンコ呼ぶわよ!とかシリアスに読んでて吹いてしまった・・・
続きが気になるであります
後で私のオフィスに(でも80点
ところで、スキマハウスってホルムアルデヒドが異様に検出されそうなネーミングですよね。
妖夢福は、豚蚊取線香のような胴体にデフォルメされた頭部をもち、
マシュマロの弾力を兼ね備え「みょん」と鳴くモンスターです。多分。
ちなみに2話に出る千本は、忍者必携アイテムの一つです。
針のような形状で、いわゆるスパイクです。
ただし使い道は戦闘用というよりはむしろ、
ツボをついて針治療の様に用いた、という具合だったそうな。
その効果は怪しいところでありますが。
針巫女霊夢の使う針が、いったいなんなのだろうと思っていたところ、
同ゲームにクナイ弾の存在があり、もしかしたらその類かな?と思ったのです。
当然公式ではないので違う可能性大です。むしろ違います。
ちなみにクナイも戦闘用というよりは工作用で、
家宅侵入の際にスコップやレンチの様に主に使われていたようです。
でわでわ。