Coolier - 新生・東方創想話

せか中

2005/04/12 16:54:03
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「…………

 ………

 ……

 …っふあぁ~~~あー……

 ……よく寝たわ… ……お昼は…過ぎてるみたいね……
 …もう随分と、日も傾いてるし……
 …とりあえず……お嬢様が起きる前に…掃除と洗濯は済ませとかないと…

 …………

 …………

 …何で私の部屋に、龍の置物だとか、青龍刀だとか、いかにも中国好みな物が置いてあるわけ……?

 ……
 て言うか……

 …ここって…



 …中国の部屋じゃないのッ!!?
 な、何で私が中国の部屋で寝てたの!? 一体、どういう……?

 ……落ち着け、落ち着きなさい、十六夜 咲夜………
 落ち着いて思い出すのよ…

 昨日は、確か、『祝!最萌2決勝戦 紅魔館対決パーティー』をやって、
 私と中国が主役、って事で、皆から散々お酒を飲まされて…
 …え~~と…… それから……

 …先の記憶が無い……



 ま、まさか………!!



 だ、大丈夫。ウン、大丈夫よ……! 下着だってちゃんと着けて……

 て、アレ? ………胸が…

 …………

 やだ、嘘、やった――――――――ッ!!
 そりゃ毎日、バストアップエクササイズやら何やら色々やってたけど、本当に効果があるなんて!!
 これでもう、パッドがどうだとか、あらぬ噂を立てられる事も……


 ……なんか、髪の毛まで随分と伸びてるんだけど………
 いくらバストアップの為とはいえ、永遠亭の医者から貰った、怪しげなサプリメントまで飲んだのはまずかったかしら。

 それにしても伸び過ぎね。これじゃまるで…

 まるで……

 …………

 えーと、鏡、鏡は何処かしら?
 無いわねぇ~。鏡くらい、分かり易い所に置いときなさいよね、中国。

 あ、あったわ。



 …………

 ………って

 ハイイィィ――――――――――――――――――――――――――ッッ!!??」






                 “せか中”





「な…何で……!?

 何で私が、中国になっちゃてるのよ!!?


 ……そうか
 あのスキマね。
 詳しい理屈は分からないけど、あいつが私と中国の境界をいじくったんだわ…!

 準決勝で私に負けた腹いせ………はありえない、か。
 そんな器の小さい奴じゃない。それは断言できる。

 恐らく、ただ単に思いつきで、面白そうだから、とか、そういう理由でしょうね……

 ………なおさらタチが悪いわ…

 今すぐ元に戻させたいけど、あいつの居場所なんて分からないし、メイド長の仕事も放ってはおけないし…
 仕方ない。お嬢様や皆には事情を説明して、暫くはこのままで生活するか…





 …………きょぬーな生活を体験する、ってのも悪くはないし」
















「あれ、珍しいですね、中国様。こんな時間にお屋敷の方に来るなんて… 何かあったんですか?」

「あ、小悪魔。ちょっと厄介な事になっちゃって… 実は私…」

「あ~~らら? 門番如きが、こ~んな所で何してるのかしら~~~?」

「あ、咲夜様。」

「あ、私…
 
 …じゃなくて、貴方、中国でしょう!? 一体何を…」

「はぁ~? 何言ってるのかしらぁ、この門番は。中国はあんたでしょう?
 私は咲夜。
 紅魔館のメイド長にして、レミリアお嬢様の完全で瀟洒な従者。
 十六夜 咲夜よ?」

「ッ……!! 中国、貴方まさか、この機に乗じて、私の立場を乗っ取るつもり……?」

「さぁ~って、何の事だか、私にはサッパリ?」

「……いい度胸ね。分かったわ。貴方がそういうつもりなら………


 こちらも容赦はしないッ!!

 受けなさい! 幻符「殺人ドール」ッッ!!
















 って、あれ…? 何で何も起こらないの……?」

「な~にやってるんだか。
 『中国』であるあんたが、『咲夜』のスペルカードを使えるわけが無いでしょう?」

「なっ…!」

「見せてあげるわ。これが本当の、幻符「殺人ドール」よッ!!!」

「っ!!
 きゃあぁぁぁあああ―――!!!」

「あーら、意外と可愛い悲鳴を上げるのねぇ、『中国』ったら。フフフ…」

「くっ…」



「……どうしたのよ、騒がしいわね。読書の妨げになるから、もう少し静かにしてちょうだい」

「あ、パチュリー様! 大変なんです、咲夜様が中国様を虐めて…」

「ああ、なんだ。いつもの事じゃない」

「助けてあげないんですか!?」

「大丈夫よ。咲夜だって、殺しはしないわ…」

「それはそうでしょうけど…!」

「放っといてもいいでしょう、別に。中国なんだし」

「…まぁ、確かに、中国様ですしね…

 って、そうじゃないですよ!?
 いくら中国様だからって、たまには助けてあげないと、可哀想じゃないですか!」

「……でも、面倒だし………」



「あ~らら、可哀想な『中国』。この『咲夜』に虐められてるっていうのに、誰も助けてはくれない。

 『中国だから、弄られても仕方ない』
 『中国だから、ネタにされるのは当然だ』
 『中国だから、虐めたって別に大丈夫でしょ』

 『中国だから』という理由で、皆が無茶する。ネタにする。
 名前すら呼んでくれない。

 それに比べ、『咲夜』は…
 『咲夜さん』だなんて『さん』付けで、
 『咲夜さんは格好いい』だとか、『咲夜さんは瀟洒だな』とか…

 くっ!! 『咲夜』!『咲夜』!『咲夜』! どいつもこいつも『咲夜』!
 なぜだ!なぜ『咲夜』を認めて『美鈴』を認めないんだ!!」

「中国、貴方……」

「私に向かって、その名を呼ぶな! 『中国』は、あんただと言ったろう!?

 そう、私は最早『中国』ではない!
 ネタにされ、弄られる『中国』ではないッ!!

 私は『咲夜』だ!
 皆から愛され、敬われる『十六夜 咲夜』となったのだッ!!

 私は見返してやる。『中国』をネタキャラにした、この世界全てを!!!」



「…そうね。私、いえ、私達は、『中国』の気持ちなんて全然考えてなかった。
 弄られる『中国』を、当然のものとして考えていた。

 ……今、自分自身が『中国』になって初めて解った。『中国』がどんなに苦しんでいたかを…




 ごめんなさいね、美鈴…………

































 なぁんて…





 反省する様な殊勝な人間に……
















 紅魔館のメイド長が務まるかぁ―――ッ!!」

「あびすぱぁぁあッッッ!!??」

「中国様が咲夜様をブッ飛ばしたー!?」

「っフ~~ぅ… 流石に格闘戦をやるには、この体は強力ね。
 そこまでふっ飛ばせるとは思わなかったわ」

「な、殴ったね? 親父にもn……
 じゃなくて。
 あれだけの話を聞いた後で殴りますか、フツー!?」

「だまらっしゃい! 貴方の事情なんて知ったこっちゃないわ。
 重要な事はただ一つ、

 貴方が私を怒らせたって事よッ!!

 覚悟は出来てるんでしょうね、中国……」

「フンッ! 咲夜さんこそ、さっき痛い目にあったのを、もう忘れたんですか!
 行きますよ! 傷魂「ソウルスカルプチュア」ッ!!」

「遅いッ!」

「なぁ!? これだけの斬撃が、かすりもしないなんて……!」

「どれだけ高性能の機体であっても、乗っているのがお笑い三等兵じゃ、その真の力は出せない様ね。
 そして、その逆もまた然り……ッ!!」



「ちゅ、中国様の髪が金色に光って、逆立ってる!? 一体、何が…」

「むぅぅ、これは、気功絶技「崇羽亞砕野陣」!! まさか、この目で見られる日が来ようとは…」

「し 知っているのかパチュリー様――っ!!」

「……小悪魔、貴方、話し方がおかしくなってない?」

「……パチュリー様こそ」

崇羽亞砕野陣(すうぱあさいやじん)…
中国拳法の特徴が、『気』を使う事にあるのは周知の事実であるが、その『気』を高める為の奥義が『砕野陣』であり、
その『砕野陣』を極限まで極めたものが、『崇羽亞砕野陣』である。
『崇羽亞砕野陣』を完成させたのは、明代末期の2人の拳法家、童 羅厳(どう らごん)と房 王龍(ぼう おうりゅう)と言われる。
彼らは、かたや平民、かたや王族の出と、身分の違いがありながらも、互いを好敵手と認め合い、
切磋琢磨し、ついには『砕野陣』を超えた『崇羽亞砕野陣』の境地に至ったと伝えられる。
一説では、『おだやかな心をちながら はげしい怒りに目覚める』事が『崇羽亞砕野陣』を会得する為の条件と言われている。
『砕野陣』の習得自体が非常に困難な事であり、更に『崇羽亞砕野陣』に至ると言うのは、殆ど不可能と同意語である。
『崇羽亞砕野陣』を習得した者は、四千年に及ぶ中国拳法の歴史の中で、童 羅厳と房 王龍を含め僅か五人だけであり、
この事実からも、『崇羽亞砕野陣』を会得する事が如何に困難かを窺い知る事が出来る。
正に、中国拳法の秘儀中の秘儀、と言えよう。
ちなみに、数年前に某少年誌で連載され、大人気となった格闘漫画が、
この『崇羽亞砕野陣』に関する逸話を基にしている、という事は言うまでもない。
(民○書房刊『世界の中国で、哀をさけぶ』より)

「中国様… おそろしい方です……………!!」

「ええ!! この私が神に感謝することがある 彼女が敵ではなかったことをね」



「ななななななな何で!? 私にも使いこなせなかった『崇羽亞砕野陣』を、咲夜さんが使えるんです!?」

「乗り手の違い、って事じゃないの?

 自分でも感じるわ。本当に凄い力。並以上の妖怪でも一撃ね、これは。

 でも、

 あなただけは〝VIP待遇〟よ…  特別よ…
 一撃… ニ撃…  三撃…  四撃…
 何発でも食らわせてあげる。
 
 『咲夜』の体は頑丈ゆえに何度も…



 ふき飛ぶ」

「クッ、むざむざやられはしない!
 『咲夜』にはコレがある! 時よ止まれッ! 「咲夜の世界」ッッ!!」



                [時は止まる]

「あーはっはっ! いくら強大な力を手にしても、時が止まっちゃえば関係無いでしょう!?
 残念でしたね~、咲夜さn

「五月蝿い」

「じゅびろッッッッッ!!!!」

「目の前で無防備な姿をさらさないでよ。ついつい殴っちゃったじゃない」

「あ…が…がが…… な、何で…」

「動けるのかって? 当然でしょう。私が今まで、何度 時を止めてきたと思ってるの?
 『止まった時の中で動く感覚』なんて、とうの昔から身に染み付いてるわ」

「ず、ずるいです、そんなのぉ~~」

「さて、と。次は何を見せてくれるのかしら?」

「あ、あうぅ…」

「もうネタ切れ?



 そう。

 そうなの。



 なら…………





 死になさい………!」

「……!!

 スンマセンでした! 調子に乗りすぎました! ごめんなさい!
 だから、ちょっと待って…

 ス、ストップ、咲夜さん!! プリーズ、ストーッp
















              [そして時は動き出す]
















                [エピローグ]



「いつの間にか、咲夜様が吹っ飛んでる――!?」

「……て言うか、ピクリとも動かないわね、咲夜」

「しっかりして下さい、咲夜様~!」

「う…  …………  う」

「良かった…
 気がつきましたよッ! 咲夜様ッ!  良かった………… あ… 危なか…」

「違うのよ……… 小悪魔……  これは『空洞』 ……
 ………なのよ」

「…………………  え  …………」

「『空洞よ』……
 すでにいないのよ  中国はもう…
 ・・・・・・・・

 どこにも「空っぽ」なのよ  行ってしまった……
 ・・・・ ・・・ ・・・  ・・・・・・・

 もういないのよ!
 咲夜(わたし)の魂が『咲夜』の体の中に入れてしまうぐらいッ!お互いの体を行き来できるくらい すでにッ!!
 「空洞」なのよ…」

「え? 咲夜様、どういう…」

「……説明してくれるわね、咲夜」

「はい、パチュリー様。実は…………
















 …………というわけだったんです」

「咲夜と中国が入れ替わってたなんて…  なるほど、道理で言動がおかしかったわけね。

 で、中国の魂が『咲夜』の体から出て行った今、咲夜の魂は、無事 元の体に戻れた、と」

「そういう事です」

「まぁ、なんにしろ、レミィが起きてくる前に片がついて良かったわ」

「本当です。掃除も洗濯もしなきゃいけないっていうのに、
 とんだ無駄な時間を使ってしまいました(後で、時を止めて取り戻すけど)。

 まったく、入れ替わりなんて、もうこりごりですっ!」

「ふふっ、咲夜ったら……」

































「あのぉ~、綺麗にオチがついたところに申し訳ないんですが…
 中国様の魂は、一体、何処に行ったんですか…?
 体の方は、ピクリとも動かないんですけど……」

































                [死亡確認]













============================================================================================



                 [オマケ]



「幽々子さま」

「なぁに、妖夢?」

「新入りです」

「あ、どうも初めまして。紅美鈴っていいます。 よろしくお願いします……」

「…………」

「あ、あの… 何でまた、そんなに、ジーッと見つめるんですか。えと、幽々子…さん?」

「……………」

「あの…」

「ねぇねぇ妖夢」

「何ですか?」

「今日は龍料理よ♪」

「…本気ですか?」

「せっかく珍しい食材が入ったんだし~」

「はぁ… 仕方ないですね… 分かりました。


 と言うわけで新入り、あなたを今日、西行寺家の食卓へ招待するわ」

「それって、客として、ですよねぇ…?」

「勿論…













 …餌としてよ」

「あ、ああああ、ちょと、ちょっと待って!
 あれ、て言うか、私もう幽霊だし、えと、これ以上は死なないってゆーか……」

「ん~…
 私の楼観剣って、一振りで『幽霊10匹分の殺傷』力があったりするんだけど…」

「……えぇと、とりあえずご挨拶は済ませましたし、今日はこの辺で…」

「待ちなさい。



 と言うわけで…

 お決まりの科白だけど……



 ・・・妖怪が鍛えたこの楼観剣に
 斬れぬものなど、あんまり無い! 」

「いーかげん こーゆーオチはイヤ―――――――!!!」



「龍料理っ♪ 龍料理っ♪(はぁと)」
どうも、大根大蛇(だいこんおろち)です。
前の二作品を含め、この三つの作品はいずれも
第2回東方最萌トーナメントでの中国支援用に書いた文が基ですが、3本とも中国死亡エンド……
なんつーか

俺ってホント、中国好きだよなー、と実感しました(ぇ
もう、ゴールしてもいいよね?

…パロディネタも多いしなぁ……(汗

こんなアホSS、読んでくれる人がいるのか分かりませんが、
読んでくれた方は、ホンッッッットありがとうです。 多謝!
大根大蛇
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コメント



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16.90名前が無い程度の能力削除
さすが咲夜さん、集中と徹底で勝利を掴むタイプだ。
さすが中国、詰めが甘いぜ。でも大好き。
一度は勝った気になっていながら、完膚無きまでにやられてしまうのが愛らしいです。これぞ中国。

パッドの有無を公言しなかったのは、同僚に対する精一杯の情けだったのでしょうか。
26.80名無し毛玉削除
運命の奴隷吹いた。