「あの…すみません。今、何ておっしゃいました? よく聞こえなかったもので…」
「あら。耳が遠いのね、中国ったら。これだから年寄りは」
(お嬢様の方が年上じゃないですか…)
「何か言ったかしら?」
「い、いえ。何も言ってないですよッ」
(殆ど声なんて出してないのに… ものすごい地獄耳。)
「悪魔である私には、『地獄耳』よりも『魔界耳』の方が似合うと思うけど?」
「また聞こえてるしっ! って、いや、そうじゃなくて…」
「そうですよ、お嬢様。ダンテの『神曲』・第1部の題を見ても分かると思いますが、
『地獄』とは仏教のそれだけでなく、基督教に於ける悪魔の住処も指す言葉なのです。
ですから、お嬢様が『地獄耳』でも、何らおかしいことはありませんよ」
「あら、咲夜は物知りね。」
「ツッコミ所が違いますよ、咲夜さん!
つーか、あんまり地獄だ魔界だダンテだ言ってると、旧作の人達に何か言われそうだからやめましょうよ」
「『私が何を言ったか』を、中国は訊きたいんでしょ?」
「って、イキナリ話を戻さないで下さいよ! ついていけないじゃないですかぁ~」
「あら、脱線したままの方が良かったのかしら?」
「いえ、そうじゃないですけど…」
「最萌準決勝2回戦、あなたの相手がフランに決まった。さっきはそう言ったのよ」
「あ、そうなんですか。
……って
ハイイィィ―――――――――――――――――――――――――――――――――ッッ!!??」
中国SS
“殷周秦漢三国晋 南北朝隋唐五代”
「そんな馬鹿みたいな大声出して… はしたないわよ、中国」
「いやっ、でも、お嬢様! フランって、フランドール様の事ですよね? お嬢様の妹様の!?」
「他に誰がいるのよ? フランって、フランドールの事よ。私の可愛い妹の」
「萃夢想ラスボスの伊吹萃香を、1回戦で倒したフランドール様ですよね!?
第3回人気投票第1位の霧雨魔理沙を、僅差で破ったフランドール様ですよねッ!?
最萌前王者の西行寺幽々子を、大熱戦の末に制したフランドール様ですよねッ!!?」
「状況説明ありがとう。
付け加えるなら、『つい先日も、大接戦の準々決勝で、アリス・マーガトロイドに勝利した妹』よ。
…安心なさいな、中国。わざと負けろ、何て事を言うつもりは無いわ。
確かにフランドールは私の妹だけど、それと、試合は別。
あなたは、何も気にしないで、全力で戦ってかまわないのよ。妹にも、そう言ってあるし」
「私としては、別に負けてもいいんですが…… って、今、最後に何て言いました?」
「? 『妹にも、そう言ってある』、だったかしら?」
「それって、『紅美鈴に、妹様と全力で戦ってもかまわないと伝えた』ていう事を妹様に言った、って意味ですか?
それとも、『妹様が全力を出してかまわない』という事を妹様に伝えた、って意味なんでしょうか?」
「随分と解りにくい質問文ね。もう少し、簡潔にできないものかしら?」
「申し訳ありません。でも、ここんとこ、すごい重要なんです」
「まぁいいわ。
一応、前者のつもりで言ったんだけど、実際には、両方の意味を含んでた事になってたかしらね。
あいつは、やる気満々だったわよ。これまでの試合で、かなりテンションが上がってるみたいだし…
…って、何よ中国。その、今時マンガの中の泥棒だって使わない、てな感じの大風呂敷は。
そんな物を背負ったりして、なに? 季節外れの、聖ニコラウスの真似事?」
「すいません。実家の工場が不況のあおりで潰れて、帰らなきゃいけなくなりました。
今まで長い間、本当にお世話になりました。それでは」
「嘘おっしゃいな。」
「嘘じゃないですってば! 家には、お腹を空かせた弟や妹が、12人ほど待ってるんです!
病気の両親も! だからお願い、おウチに帰して~~ッ!」
「……逃げる気かしら、中国?
妹はここまで、強敵を相手の接戦を勝ち抜いてきたのよ。それが準決勝で不戦勝、なんて事になってみなさいな。
『妹を勝たせる為に、紅魔館は門番を試合に出さなかった』なんて、ありもしない噂を立てられるのは必至だわ。
あなたは妹に、そして私に恥をかかせるつもりかしら…?」
「そんなつもりじゃないですけど~~…」
「そんなつもりがあろうと無かろうと、そういう結果になるのよ。
それでも逃げるというなら、中国、あなたどうなるのか、解っているわよね…」
「いや、解りまs
「わ・か・る・わ・よ・ね?」
「わわわ解ります、解りましたからッ! しまって下さい、そのグングニル、しまって下さいッ!!」
「物分かりのいい部下を持てて、私は幸せよ、中国」
「あう~~… 何で私がこんな目に…
ハッ、そうよ。これは夢よ、夢なんだわ!
本当の私は、暖かいお布団の中で眠ってるの。そして、もうすぐ目が覚めるのよ!
ウフフ、なぁ~んだ、そうだったのか。夢だったのかぁ。だったら早く起きなきゃ。
今日も一日、頑張って門番やらなくちゃね。そんでもって………………………………………………」
「咲夜。中国が少し壊れたみたいだから、直してちょうだい」
「かしこまりました、お嬢様」
“ザ・ワールド”ッッ!!
[時は止まる]
・
・
・
[そして時は動き出す]
「落ち着いたかしら、中国?」
「はい、お嬢様。お見苦しい所を見せてしまって、申し訳ありませんでした…」
「別にいいわよ」
「ところでお嬢様…」
「何?」
「私の頭にいつの間にか刺さってる、コレは何ですか?」
「鎮静剤よ。知らないの、中国? 貴方は無学ねぇ」
「無学ですみません。でも、私にはコレが、どうしてもナイフにしか見えないんですが…」
「間違いなく鎮静剤よ。永遠亭の医者が見たって、『鎮静剤だ』って言うわ」
「でも…」
「ち・ん・せ・い・ざ・い」
「わわわ解りました、解りましたからッ! その広げた手を戻して下さい、不夜城レッド、やめて下さいッ!!」
「生きる死ぬの勝負じゃないんだし」
「…? 何の話です…??」
「最萌の試合の事よ。理解が遅いわねぇ」
「お嬢様が話を変えるのが速すぎるんです! こんなんじゃ、読み手だって意味が解らなくて困りますよ」
「読み手って何よ、中国?」
「??……何でしょうね……?? 自分で言ってて、よくわからない…???」
「ま、ともかく。
最萌は、それぞれの『萌』を競う場。
弾幕をはって敵をやっつけるとか、そういうのじゃないって事は、妹だって充分に理解してるわ」
「…充分に理解してるんですか」
「充分に理解してるのよ」
「そうですか。充分に理解してるんですか…」
「そうなのよ。充分に理解してるのよ」
「………
…でも、
…でも、ですよ……
『そーいうことを理解している上で、殺意も敵意も、悪意すらもなしに相手を破壊しちゃう』
ってのが、妹様の特徴であり、萌ポイントじゃぁないですか~~ッッ!!」
「興奮してるわね、中国。言ってる事がビミョーに変よ」
「て言うか、その事が分かってるからこそ、お嬢様は妹様を監禁してたんでしょーが!?」
「失礼な門番ね。私は、あいつを監禁してた覚えなんて無いわ。
ただちょっと部屋に閉じ込めて、外に出られない様にしただけよ」
「それを、世間一般では『監禁』て言うんじゃぁ――!」
「そうなの? 私はてっきり、『軟禁』だとばかり思ってたわ」
「そーゆー問題じゃなくてッ!」
「そうですよ、お嬢様。
『監禁…行動の自由を束縛して一つの場所に閉じこめること。』
『軟禁…ある場所にとじこめて出さないこと。程度の軽い監禁。』であり、
それほど大きな意味の差はありません。
妹様の場合、その能力や状況が特殊だという事もありますので、
『監禁』・『軟禁』どちらの言葉を使っても、特に支障はありません」
「あら、咲夜は物知りね」
「だから、ツッコミ所が違うでしょーが、咲夜さんッ!」
「五月蝿いわねぇ、中国。準々決勝までを見てごらんなさいな。皆ピンピンしてるじゃないの」
「それは、妹様の今までの相手が、主人公だとか、ラスボスだとか、EXボス経験者だとか、
そういうのばかりだったからじゃないんですか!?」
「考え過ぎよ。少しは落ち着きなさい」
「こちとら命がかかってるんじゃぁぁ~~~ッ!!!」
「…ハァ、まったく、しょうがないわね。咲夜、お願い」
「かしこまりました、お嬢様」
“ザ・ワールド”ッッ!!
[時は止まる]
・
・
・
[そして時は動き出す]
「………
……
…
ん……うん…」
「気が付いたようね中国。少しは落ち着いたかしら?」
「…はい。2本目の『鎮静剤』のおかげで、いい感じに血が抜け過ぎて、叫ぶ体力も残っちゃいません…」
「そう、それは良かったわね。咲夜に感謝なさいな」
「ところで……いつの間にか場所が変わってるみたいなんですが、ここは何処です?
紅魔館じゃないですよね?
て言うか、今って いつです?」
「ここは最萌トーナメント準決勝会場の選手控え室。
今は準決勝10分前よ」
「そうですか……で、何故に私は、こんなグルグル巻きの格好になっているんです?」
「それは、“萌符「私自身がプレゼントです…(ポッ)」”という、最高ランクのスペルカードを意識した衣装よ。
あなたの魅力を十二分に引き出す為に、紅魔館の皆が総出で作りあげたの。可愛らしいでしょ」
「へー、ふーん、そーなんですかー
何だか、
『たった今テキトーにでっちあげました』ってな感じの話に思えるのは、私の気のせいですかねー
つーか、私ゃてっきり、
『とりあえず気絶させたはいいが、なかなか目を覚まさないし、
メンドいので梱包して、(酒でつった)鬼に運ばせた(萃鬼「天手力男投げ」使用)』
みたいな感じの話だと思いましたよ。何か、全身が痛いですし。そこら中に、岩とか転がってますし。」
「あら、中国は想像力豊かね。門番仕事の合間に、小説なんて書いてみたら?
紅魔館(ウチ)では、従業員の副業、基本的に許可してるし」
「いーかもしれませんねー。考えときますよー。あははは…」
「そうね、いいんじゃないかしら。うふふふ…」
「あははは…」
「うふふふ…」
「……………」
「……………」
「さて、と」
「あん、勿体無い。破いちゃうの、その衣装?」
「何が衣装ですか! ただ単に、ガムテープやら何やらでグルグル巻きにしただけでしょう!?」
「もう、中国ったら。冗談を楽しめない妖怪は、立派な妖怪になれないわよ?」
「冗談で大怪我させられる身にもなって下さい…」
「……………」
「あれ、お嬢様?」
「……………」
「どうしたんです? 急に黙ったりして…」
「……あのね、中国。
フランドールは私の可愛い、たった一人の妹よ。大切な、大切な家族なの」
「……はい」
「でもね、あなたもそうなのよ」
「……はい?」
「あなただけじゃない。紅魔館に居る全ての者が、私にとっては大切な家族なのよ」
「お嬢様…」
「今日の試合、私は妹を応援する。
でも、忘れないで。
妹と同じくらい、あなたの事も応援している。
だから
だから…
頑張ってね、『美鈴』」
「…ッ!
お、お嬢様… 私の様な門番ごときに、勿体無き御言葉……ッ」
「ほら、泣かないの」
「はい、お嬢様……
この紅美鈴、全身全霊をもって試合にのぞみッ!
正々堂々、妹様と戦う事をッ!
我が主、レミリア・スカーレットの名にかけて誓いますッ!!」
「それでいいのよ…
安心して、骨は拾ってあげるわ」
「いや、あの、お嬢様。それは私に、『安心して死んでこい』って言ってるのに近いんですが…」
「そうですよ、お嬢様。
妹様の能力の前には、ありとあらゆるものが跡形もなく破壊されてしまうのですから、
骨を回収するのは困難です。」
「あら、咲夜は賢いわね」
「…もう、別にいいですけど。
とにかく!
(ちょっと水をさされた気もするけど、)お嬢様の御言葉により、この紅美鈴、覚悟が決まりました!
私の様な者を「家族」と言ってくれたお嬢様の為にも、決して恥ずかしい試合はいたしませんッ!
第2回東方最萌トーナメント準決勝、第2試合。
紅美鈴、行きまーすッ!!」
[エピローグ]
「あ。やっと出てきたわね、ちゅーごく!」
「妹様、今日は手加減抜きでいかせてもらいますよ。
……って
あの…妹様……?
その手に持ってる、紅くて長いソレは何ですか………?」
「レーヴァテインだけど。 知らないの?ちゅーごく。無学ね」
「いや、そうじゃなくて… ここは弾幕ごっことかじゃなくて、『萌』を競う場なんですが…
そうか、分かりました!
魔法少女よろしく、『リ○カル マジカル』とか言って、変身するのに使うんですよね、ソレ。
そーですよねッ!? そーに違いないッ!!」
「ちゅーごくったら、ホント無学。レーヴァテインの使い道っていったら、一つしかないじゃないの。
『今日は本気出していい』ってお姉様も言ってたし、遠慮なくいくわよ、ちゅーごく!」
「ヒッ… い、いや… やめて下さいッ! む、無理です、そんなおっきくて長いの!!
私、壊れちゃいます~ッッ!!!」
「美鈴!」
「お、お嬢様! 助けt
「今のあなたの科白、少しいやらしかったわ。そういうの苦手、って人もいるのだから、気を付けなさい」
「そうじゃなくて…」
「いくわよ、ちゅーごく! 禁忌「レーヴァテイン」ッ!!」
「あ゛」
[暗転]
============================================================================================
[オマケ]
「試合はどうなったかしら、咲夜?」
「妹様の攻撃の余波でよく見えませんが… 『死して屍 拾うもの無し』と言うか、
まぁ、なるよーになってしまったのではないでしょうか」
「…咲夜」
「なんですか、お嬢様」
「今更こんな事、って思われるかも知れないけど…」
「はい?」
「妹の力は、『破壊する』能力であって、『消滅させる』能力ではないわ。
という事は…
たとえ跡形も無く吹き飛ばされたとしても、あの小鬼の力で萃めさせれば、遺骨の回収は可能なのではないかしら?」
「なるほど… その可能性を失念していましたね……
それにしても、そんな事にまで気が付くとは……さすがはお嬢様、ですわ(はぁと)」
「あら。耳が遠いのね、中国ったら。これだから年寄りは」
(お嬢様の方が年上じゃないですか…)
「何か言ったかしら?」
「い、いえ。何も言ってないですよッ」
(殆ど声なんて出してないのに… ものすごい地獄耳。)
「悪魔である私には、『地獄耳』よりも『魔界耳』の方が似合うと思うけど?」
「また聞こえてるしっ! って、いや、そうじゃなくて…」
「そうですよ、お嬢様。ダンテの『神曲』・第1部の題を見ても分かると思いますが、
『地獄』とは仏教のそれだけでなく、基督教に於ける悪魔の住処も指す言葉なのです。
ですから、お嬢様が『地獄耳』でも、何らおかしいことはありませんよ」
「あら、咲夜は物知りね。」
「ツッコミ所が違いますよ、咲夜さん!
つーか、あんまり地獄だ魔界だダンテだ言ってると、旧作の人達に何か言われそうだからやめましょうよ」
「『私が何を言ったか』を、中国は訊きたいんでしょ?」
「って、イキナリ話を戻さないで下さいよ! ついていけないじゃないですかぁ~」
「あら、脱線したままの方が良かったのかしら?」
「いえ、そうじゃないですけど…」
「最萌準決勝2回戦、あなたの相手がフランに決まった。さっきはそう言ったのよ」
「あ、そうなんですか。
……って
ハイイィィ―――――――――――――――――――――――――――――――――ッッ!!??」
中国SS
“殷周秦漢三国晋 南北朝隋唐五代”
「そんな馬鹿みたいな大声出して… はしたないわよ、中国」
「いやっ、でも、お嬢様! フランって、フランドール様の事ですよね? お嬢様の妹様の!?」
「他に誰がいるのよ? フランって、フランドールの事よ。私の可愛い妹の」
「萃夢想ラスボスの伊吹萃香を、1回戦で倒したフランドール様ですよね!?
第3回人気投票第1位の霧雨魔理沙を、僅差で破ったフランドール様ですよねッ!?
最萌前王者の西行寺幽々子を、大熱戦の末に制したフランドール様ですよねッ!!?」
「状況説明ありがとう。
付け加えるなら、『つい先日も、大接戦の準々決勝で、アリス・マーガトロイドに勝利した妹』よ。
…安心なさいな、中国。わざと負けろ、何て事を言うつもりは無いわ。
確かにフランドールは私の妹だけど、それと、試合は別。
あなたは、何も気にしないで、全力で戦ってかまわないのよ。妹にも、そう言ってあるし」
「私としては、別に負けてもいいんですが…… って、今、最後に何て言いました?」
「? 『妹にも、そう言ってある』、だったかしら?」
「それって、『紅美鈴に、妹様と全力で戦ってもかまわないと伝えた』ていう事を妹様に言った、って意味ですか?
それとも、『妹様が全力を出してかまわない』という事を妹様に伝えた、って意味なんでしょうか?」
「随分と解りにくい質問文ね。もう少し、簡潔にできないものかしら?」
「申し訳ありません。でも、ここんとこ、すごい重要なんです」
「まぁいいわ。
一応、前者のつもりで言ったんだけど、実際には、両方の意味を含んでた事になってたかしらね。
あいつは、やる気満々だったわよ。これまでの試合で、かなりテンションが上がってるみたいだし…
…って、何よ中国。その、今時マンガの中の泥棒だって使わない、てな感じの大風呂敷は。
そんな物を背負ったりして、なに? 季節外れの、聖ニコラウスの真似事?」
「すいません。実家の工場が不況のあおりで潰れて、帰らなきゃいけなくなりました。
今まで長い間、本当にお世話になりました。それでは」
「嘘おっしゃいな。」
「嘘じゃないですってば! 家には、お腹を空かせた弟や妹が、12人ほど待ってるんです!
病気の両親も! だからお願い、おウチに帰して~~ッ!」
「……逃げる気かしら、中国?
妹はここまで、強敵を相手の接戦を勝ち抜いてきたのよ。それが準決勝で不戦勝、なんて事になってみなさいな。
『妹を勝たせる為に、紅魔館は門番を試合に出さなかった』なんて、ありもしない噂を立てられるのは必至だわ。
あなたは妹に、そして私に恥をかかせるつもりかしら…?」
「そんなつもりじゃないですけど~~…」
「そんなつもりがあろうと無かろうと、そういう結果になるのよ。
それでも逃げるというなら、中国、あなたどうなるのか、解っているわよね…」
「いや、解りまs
「わ・か・る・わ・よ・ね?」
「わわわ解ります、解りましたからッ! しまって下さい、そのグングニル、しまって下さいッ!!」
「物分かりのいい部下を持てて、私は幸せよ、中国」
「あう~~… 何で私がこんな目に…
ハッ、そうよ。これは夢よ、夢なんだわ!
本当の私は、暖かいお布団の中で眠ってるの。そして、もうすぐ目が覚めるのよ!
ウフフ、なぁ~んだ、そうだったのか。夢だったのかぁ。だったら早く起きなきゃ。
今日も一日、頑張って門番やらなくちゃね。そんでもって………………………………………………」
「咲夜。中国が少し壊れたみたいだから、直してちょうだい」
「かしこまりました、お嬢様」
“ザ・ワールド”ッッ!!
[時は止まる]
・
・
・
[そして時は動き出す]
「落ち着いたかしら、中国?」
「はい、お嬢様。お見苦しい所を見せてしまって、申し訳ありませんでした…」
「別にいいわよ」
「ところでお嬢様…」
「何?」
「私の頭にいつの間にか刺さってる、コレは何ですか?」
「鎮静剤よ。知らないの、中国? 貴方は無学ねぇ」
「無学ですみません。でも、私にはコレが、どうしてもナイフにしか見えないんですが…」
「間違いなく鎮静剤よ。永遠亭の医者が見たって、『鎮静剤だ』って言うわ」
「でも…」
「ち・ん・せ・い・ざ・い」
「わわわ解りました、解りましたからッ! その広げた手を戻して下さい、不夜城レッド、やめて下さいッ!!」
「生きる死ぬの勝負じゃないんだし」
「…? 何の話です…??」
「最萌の試合の事よ。理解が遅いわねぇ」
「お嬢様が話を変えるのが速すぎるんです! こんなんじゃ、読み手だって意味が解らなくて困りますよ」
「読み手って何よ、中国?」
「??……何でしょうね……?? 自分で言ってて、よくわからない…???」
「ま、ともかく。
最萌は、それぞれの『萌』を競う場。
弾幕をはって敵をやっつけるとか、そういうのじゃないって事は、妹だって充分に理解してるわ」
「…充分に理解してるんですか」
「充分に理解してるのよ」
「そうですか。充分に理解してるんですか…」
「そうなのよ。充分に理解してるのよ」
「………
…でも、
…でも、ですよ……
『そーいうことを理解している上で、殺意も敵意も、悪意すらもなしに相手を破壊しちゃう』
ってのが、妹様の特徴であり、萌ポイントじゃぁないですか~~ッッ!!」
「興奮してるわね、中国。言ってる事がビミョーに変よ」
「て言うか、その事が分かってるからこそ、お嬢様は妹様を監禁してたんでしょーが!?」
「失礼な門番ね。私は、あいつを監禁してた覚えなんて無いわ。
ただちょっと部屋に閉じ込めて、外に出られない様にしただけよ」
「それを、世間一般では『監禁』て言うんじゃぁ――!」
「そうなの? 私はてっきり、『軟禁』だとばかり思ってたわ」
「そーゆー問題じゃなくてッ!」
「そうですよ、お嬢様。
『監禁…行動の自由を束縛して一つの場所に閉じこめること。』
『軟禁…ある場所にとじこめて出さないこと。程度の軽い監禁。』であり、
それほど大きな意味の差はありません。
妹様の場合、その能力や状況が特殊だという事もありますので、
『監禁』・『軟禁』どちらの言葉を使っても、特に支障はありません」
「あら、咲夜は物知りね」
「だから、ツッコミ所が違うでしょーが、咲夜さんッ!」
「五月蝿いわねぇ、中国。準々決勝までを見てごらんなさいな。皆ピンピンしてるじゃないの」
「それは、妹様の今までの相手が、主人公だとか、ラスボスだとか、EXボス経験者だとか、
そういうのばかりだったからじゃないんですか!?」
「考え過ぎよ。少しは落ち着きなさい」
「こちとら命がかかってるんじゃぁぁ~~~ッ!!!」
「…ハァ、まったく、しょうがないわね。咲夜、お願い」
「かしこまりました、お嬢様」
“ザ・ワールド”ッッ!!
[時は止まる]
・
・
・
[そして時は動き出す]
「………
……
…
ん……うん…」
「気が付いたようね中国。少しは落ち着いたかしら?」
「…はい。2本目の『鎮静剤』のおかげで、いい感じに血が抜け過ぎて、叫ぶ体力も残っちゃいません…」
「そう、それは良かったわね。咲夜に感謝なさいな」
「ところで……いつの間にか場所が変わってるみたいなんですが、ここは何処です?
紅魔館じゃないですよね?
て言うか、今って いつです?」
「ここは最萌トーナメント準決勝会場の選手控え室。
今は準決勝10分前よ」
「そうですか……で、何故に私は、こんなグルグル巻きの格好になっているんです?」
「それは、“萌符「私自身がプレゼントです…(ポッ)」”という、最高ランクのスペルカードを意識した衣装よ。
あなたの魅力を十二分に引き出す為に、紅魔館の皆が総出で作りあげたの。可愛らしいでしょ」
「へー、ふーん、そーなんですかー
何だか、
『たった今テキトーにでっちあげました』ってな感じの話に思えるのは、私の気のせいですかねー
つーか、私ゃてっきり、
『とりあえず気絶させたはいいが、なかなか目を覚まさないし、
メンドいので梱包して、(酒でつった)鬼に運ばせた(萃鬼「天手力男投げ」使用)』
みたいな感じの話だと思いましたよ。何か、全身が痛いですし。そこら中に、岩とか転がってますし。」
「あら、中国は想像力豊かね。門番仕事の合間に、小説なんて書いてみたら?
紅魔館(ウチ)では、従業員の副業、基本的に許可してるし」
「いーかもしれませんねー。考えときますよー。あははは…」
「そうね、いいんじゃないかしら。うふふふ…」
「あははは…」
「うふふふ…」
「……………」
「……………」
「さて、と」
「あん、勿体無い。破いちゃうの、その衣装?」
「何が衣装ですか! ただ単に、ガムテープやら何やらでグルグル巻きにしただけでしょう!?」
「もう、中国ったら。冗談を楽しめない妖怪は、立派な妖怪になれないわよ?」
「冗談で大怪我させられる身にもなって下さい…」
「……………」
「あれ、お嬢様?」
「……………」
「どうしたんです? 急に黙ったりして…」
「……あのね、中国。
フランドールは私の可愛い、たった一人の妹よ。大切な、大切な家族なの」
「……はい」
「でもね、あなたもそうなのよ」
「……はい?」
「あなただけじゃない。紅魔館に居る全ての者が、私にとっては大切な家族なのよ」
「お嬢様…」
「今日の試合、私は妹を応援する。
でも、忘れないで。
妹と同じくらい、あなたの事も応援している。
だから
だから…
頑張ってね、『美鈴』」
「…ッ!
お、お嬢様… 私の様な門番ごときに、勿体無き御言葉……ッ」
「ほら、泣かないの」
「はい、お嬢様……
この紅美鈴、全身全霊をもって試合にのぞみッ!
正々堂々、妹様と戦う事をッ!
我が主、レミリア・スカーレットの名にかけて誓いますッ!!」
「それでいいのよ…
安心して、骨は拾ってあげるわ」
「いや、あの、お嬢様。それは私に、『安心して死んでこい』って言ってるのに近いんですが…」
「そうですよ、お嬢様。
妹様の能力の前には、ありとあらゆるものが跡形もなく破壊されてしまうのですから、
骨を回収するのは困難です。」
「あら、咲夜は賢いわね」
「…もう、別にいいですけど。
とにかく!
(ちょっと水をさされた気もするけど、)お嬢様の御言葉により、この紅美鈴、覚悟が決まりました!
私の様な者を「家族」と言ってくれたお嬢様の為にも、決して恥ずかしい試合はいたしませんッ!
第2回東方最萌トーナメント準決勝、第2試合。
紅美鈴、行きまーすッ!!」
[エピローグ]
「あ。やっと出てきたわね、ちゅーごく!」
「妹様、今日は手加減抜きでいかせてもらいますよ。
……って
あの…妹様……?
その手に持ってる、紅くて長いソレは何ですか………?」
「レーヴァテインだけど。 知らないの?ちゅーごく。無学ね」
「いや、そうじゃなくて… ここは弾幕ごっことかじゃなくて、『萌』を競う場なんですが…
そうか、分かりました!
魔法少女よろしく、『リ○カル マジカル』とか言って、変身するのに使うんですよね、ソレ。
そーですよねッ!? そーに違いないッ!!」
「ちゅーごくったら、ホント無学。レーヴァテインの使い道っていったら、一つしかないじゃないの。
『今日は本気出していい』ってお姉様も言ってたし、遠慮なくいくわよ、ちゅーごく!」
「ヒッ… い、いや… やめて下さいッ! む、無理です、そんなおっきくて長いの!!
私、壊れちゃいます~ッッ!!!」
「美鈴!」
「お、お嬢様! 助けt
「今のあなたの科白、少しいやらしかったわ。そういうの苦手、って人もいるのだから、気を付けなさい」
「そうじゃなくて…」
「いくわよ、ちゅーごく! 禁忌「レーヴァテイン」ッ!!」
「あ゛」
[暗転]
============================================================================================
[オマケ]
「試合はどうなったかしら、咲夜?」
「妹様の攻撃の余波でよく見えませんが… 『死して屍 拾うもの無し』と言うか、
まぁ、なるよーになってしまったのではないでしょうか」
「…咲夜」
「なんですか、お嬢様」
「今更こんな事、って思われるかも知れないけど…」
「はい?」
「妹の力は、『破壊する』能力であって、『消滅させる』能力ではないわ。
という事は…
たとえ跡形も無く吹き飛ばされたとしても、あの小鬼の力で萃めさせれば、遺骨の回収は可能なのではないかしら?」
「なるほど… その可能性を失念していましたね……
それにしても、そんな事にまで気が付くとは……さすがはお嬢様、ですわ(はぁと)」
もうちょっと区分けを細かくして、♪殷周春秋戦国秦前漢新後漢三国晋南北朝隋唐五代(あと一緒)で、アルプス一万尺のメロディーで歌えますねby代ゼ○
全力の妹様のお相手。 中国乙って所ですな、ハハハ(ヒド