このお話には、執筆した水無月剣羅によるオリジナル設定的な要素が含まれております。
御了承下さる方は、このまま、下記本文へとお進み下さい。
※このお話は2005.4.8.に投稿させて頂きましたが、読んで下さった方々のコメントや友人・知人のコメント
から、魔理沙の一人称が間違っていた事が判明しました。
よって2005.4.9.に魔理沙の一人称を「俺」から「私」に訂正いたしました。
訂正前のものを読んで、批評やご指摘を下さった皆様、本当にありがとうございました。
以後、このような誤りがないよう気を付けます。
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
「よぉ、また見せてくれよ。」
相変らずの気楽な言葉に、紅魔館の図書館の主パチュリーは小さな吐息を漏らす。
「……久々に来ておいて、第一声がそれ?他に言うべき事はないの?」
「何拗ねてんだよ。」
黒い魔女―――魔理沙は、微かに眉を跳ね上げる。
「拗ねてなんかいないわ。」
パチュリーは微かにそっぽを向く。明らかに拗ねているとしか言い表しようがないのだが、それを認めようと
しない辺りが彼女らしい。
「そりゃ、最近確かにご無沙汰だったのは認めるさ。でも、仕方ないだろ。」
魔理沙は小さく肩をすくめる。
「厄介事に巻き込まれていたんだから。お前だって知っているんだろう?パチュリー。」
「……ええ。」
パチュリーは、魔理沙と視線を合わさないようにしたまま小さく答える。―――魔理沙が厄介事に巻き込まれ
ていたのは、確かに紛れもない事実だったから。
幻想郷から突然春が奪われたのは、割と最近の出来事。
その原因を究明し、春を取り戻すために旅立ったのは三人の少女であった。―――博麗神社の巫女霊夢、紅魔
館のメイド長咲夜、そして魔女の魔理沙。
その原因は、幽霊のお嬢様である幽々子と、彼女に仕える半分幻の庭師妖夢が、「西行妖」という桜を満開に
咲かせるために春という春を集めていたからだと判明。
真相を知った三人の少女は、幽々子や妖夢に会って無事に事態を解決し、春を取り戻して帰って来たのだった。
「分かっては、いるわ。」
紅魔館の主レミリアへの咲夜の報告を、レミリアの傍で聞いていたから、魔理沙から聞くまでもなく、パチュ
リーも経緯を知っていた。
―――知ってはいるが。
「……本当に、それしか言う事がないの?魔理沙。」
「おい、パチュリー……?」
明らかに不機嫌極まりないパチュリーの様子に、魔理沙は訳が分からない。―――事情を知っているというの
なら、何故、しばらく訪れる事が出来なかった事で彼女はむくれているのだろう?
「前回ここから借りた本は、霊夢や咲夜と出かける前にちゃんと返しただろ。」
魔理沙は、ほとほと困り果てたように呟きながら、パチュリーの傍に歩み寄る。
「それに、借りていた間に本を傷めた訳でもねぇし……。パチュリー、本当に何で機嫌悪ぃんだ?何か、気に障
る事をしたのか?―――悪いが、今回ばかりは本気で思いつかねぇ。教えてくれよ、パチュリー。でないと、直
せるものも直せないじゃないか。」
「……別にいいわ、もう。」
パチュリーは、本格的に魔理沙から背を向けてしまった。
我ながら情けない、とパチュリーは思う。元々、魔理沙はこういう性格なのだ。「気付いてくれるかも知れな
い」、そう淡い期待を抱いていた自分が愚かだったのだ。―――図書館の主として、膨大な知識を誇る者として、
何て情けない。
「―――もう、いいわ。それより、今度はどんな本が見たいの?」
「―――待てよ。」
次の瞬間、魔理沙がいきなりパチュリーの肩をぐいと掴んで、強引に自分のほうへと顔を向けさせた。
まさかそんな事をされるとは思っていなかったパチュリーは、まず驚き、それから強引な魔理沙の行動に不快
感をあらわにする。
「……痛いわ、何をするのよ。」
「嘘をつくなよ、パチュリー。」
見返した魔理沙の瞳は、いつになく厳しい。
「何が、『もう、いいわ。』だ?」
「嘘なんてついていないわ。本当に、もういいんだったら……!!!」
パチュリーは、時ならぬ魔理沙の剣幕に驚き、魔理沙の手から逃れようと身をよじる。
だが、魔理沙はそれを許さなかった。パチュリーの肩を掴む手に、自然と力が込められる。
「本当に『もう、いいわ。』なら―――何で、お前は泣いているんだよ?パチュリー!!!」
「……え?」
パチュリーは、思わず呆けたように聞き返す。
「泣いて、いる……?私、が……?」
「そうだ、泣いているんだよ、お前は。」
魔理沙は、パチュリーの肩を掴んでいない方の手で、そっとパチュリーの目尻に触れる。―――すぐに離された
彼女の指先には、微かに煌く、透明な雫。
「……ほら見ろ。これが証拠だ。」
「―――ど、どうして……?」
パチュリーは混乱する。自分が泣いていた事に気付いていなかったのも衝撃だったが、それ以上に、自分が泣い
ていたという事実の方が衝撃だった。
「何故、私は―――」
「……まずは落ち着いてくれよ、パチュリー。」
魔理沙が、そっとパチュリーの頭を撫でてくれる。―――何故かその手が心地よくて、パチュリーは、そのまま
に任せた。
対する魔理沙は、パチュリーの頭を撫でながらぶっきらぼうに呟いている。
「お前に泣かれると、私が困るんだよ。」
「―――え?」
魔理沙の呟きに、パチュリーははっと顔を跳ね上げる。―――見つめた魔女の顔は、確かに困り果てた表情にな
っている。
「何故……?何故、私が泣くとあなたが困るの……?」
「~~~~~~~っ………!!!」
瞬間、魔理沙の顔が微かに赤く上気した。その上、彼女にしては珍しい事に、言葉を紡ぎ出すのをためらってい
る。
「……ま、魔理沙……?」
思わぬ反応に、戸惑ったようなパチュリーの声が上がる。
「―――困るったら、困るんだよ!!!」
パチュリーにじっと見つめられた魔理沙は、一層顔を赤らめ、そしてパチュリーの視線から逃げるように顔を背
ける。―――その様子は「照れ隠し」以外の何物でもない。
「だから、何で私が泣くとあなたが困るの?」
それでも続く、パチュリーの追求。
「………!!!」
魔理沙は覚悟を決めたかのような表情をすると―――次の瞬間、物凄い早口でまくしたてた。
「―――出かけている間『元気だろうか?』とか心配していた相手が……久々に会ったら私を避けて、その上泣く
んだぜ?困るだろ、普通なら!!!」
「―――心配、していた?」
パチュリーは、信じられない言葉を聞いたといった表情になる。
「魔理沙が、私を……心配、していた……?冗談、でしょう……?」
「―――冗談でこういう事言うかよ!!」
今や、魔理沙の顔は真っ赤である。その真っ赤な顔を、頬を膨れさせながら、彼女は、ふいと顔を背ける。
「どうして……?どうして、私の心配なんかを……?」
パチュリーは、混乱しきった表情になる。
「だって、私は紅魔館の中にいるのよ?ここには、たくさんの人員もいるし、何よりレミリアや彼女の妹のフラン
ドールもいるわ。これだけの人達がいる館の中にいる私より、実際に外で戦うあなたの方が危険じゃない!!!あな
たがいくら強いとは言っても、怪我をするかも知れないじゃない……!!!それなのに、それなのに、安全な後方に
いた私を心配するなんて……どうしてなの、魔理沙……!!?」
「―――それが、答えか?」
魔理沙の問い掛けは、全く唐突だった。
「危険な戦いに出ていた私を、お前は心配してくれていたって事か?それなのに、再会しての一言がアレだから、
お前は怒ったのか?」
「―――っ!!!」
パチュリーは、はっと両手で口を塞いた。混乱して、言うまいと思っていた事まで口走っていた事に、今更なが
ら気付く。―――だが、明らかに手遅れだった。
「……悪ぃ、パチュリー。」
魔理沙は、そっとパチュリーを抱き締め、背中をさすってくれる。
「そんなに、心配かけていたなんて思ってもみなかったから。―――そぉだよな、心配しまくっていた相手が久々
に現れて、最初の言葉がアレだもんな。……そりゃ、パチュリーが怒って当然だよな。」
「……魔理沙。」
「でも、良かった。お前が怒っている理由が分かって。」
謝罪の言葉を聞いて驚いたように目を見開くパチュリー。その瞳をじっと見つめながら、魔理沙は答える。
「そして、嬉しかったぜ?」
「嬉しい?どうして?」
パチュリーは、おずおずと魔理沙に尋ねた。
「心配されて嬉しくない訳がないだろ。」
魔理沙は、いつもの闊達な笑顔を弾けさせる。
「特に、普段『本をちゃんと返せ』だの『本を大切に扱え』とかしか言ってくれない相手だとな。―――小言しか
言ってくれないけれど、ちゃんと想って貰えてるんだなって分かったら、やっぱ嬉しいし、安心もするぜ?」
「―――失礼ね、『小言しか言わない』だなんて。」
パチュリーは、ようやく魔理沙に向かって笑顔を見せる。
「第一、本の扱いについて私が注意するのは致し方ない事でしょう?あなたが本をまともに返してくれなかったり、
本をぞんざいに扱ったりするのは本当の事なんだから。」
「……分かってるって。今度からは気をつけるって。」
再び小言を言われて魔理沙は顔をしかめるが、その瞳は明らかに笑っている。―――パチュリーが笑ってくれた
のが、嬉しいのだ。
「その言葉、何処まで信用出来るのかしら?」
くすりと微笑んで見せてから、パチュリーは魔理沙に話し掛ける。
「―――ところで、古い書棚の方から、あなたが興味を持ちそうな魔術所を何冊か見つけたんだけど。読んでみる?」
「勿論。」
途端に目を輝かせる魔理沙。
「んで、その本のある書棚はどの辺りにあるんだ?」
「案内するわ、こっちよ。」
魔理沙を案内するために先を歩き出したパチュリーだが、数歩も進まない内にぱったりとその場に立ち止まって
しまう。
「―――パチュリー?」
いぶかしむ魔理沙を、パチュリーは、彼女にしては極めて珍しい満面の笑みで振り返る。
「言い忘れていたわ、魔理沙。」
「……え?」
「お帰りなさい。」
戸惑ったように聞き返した魔理沙に向かって、微かに頬を上気させながら、パチュリーは片手を差し伸べる。
魔理沙はパチュリーの言葉を聞いて一層驚いたような表情になったが、すぐに笑みを浮かべ、自らも片手を差し
伸べる。
二人の手が、そっと、でも確かに重なる。
「―――ただいま、パチュリー。」
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御了承下さる方は、このまま、下記本文へとお進み下さい。
※このお話は2005.4.8.に投稿させて頂きましたが、読んで下さった方々のコメントや友人・知人のコメント
から、魔理沙の一人称が間違っていた事が判明しました。
よって2005.4.9.に魔理沙の一人称を「俺」から「私」に訂正いたしました。
訂正前のものを読んで、批評やご指摘を下さった皆様、本当にありがとうございました。
以後、このような誤りがないよう気を付けます。
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
「よぉ、また見せてくれよ。」
相変らずの気楽な言葉に、紅魔館の図書館の主パチュリーは小さな吐息を漏らす。
「……久々に来ておいて、第一声がそれ?他に言うべき事はないの?」
「何拗ねてんだよ。」
黒い魔女―――魔理沙は、微かに眉を跳ね上げる。
「拗ねてなんかいないわ。」
パチュリーは微かにそっぽを向く。明らかに拗ねているとしか言い表しようがないのだが、それを認めようと
しない辺りが彼女らしい。
「そりゃ、最近確かにご無沙汰だったのは認めるさ。でも、仕方ないだろ。」
魔理沙は小さく肩をすくめる。
「厄介事に巻き込まれていたんだから。お前だって知っているんだろう?パチュリー。」
「……ええ。」
パチュリーは、魔理沙と視線を合わさないようにしたまま小さく答える。―――魔理沙が厄介事に巻き込まれ
ていたのは、確かに紛れもない事実だったから。
幻想郷から突然春が奪われたのは、割と最近の出来事。
その原因を究明し、春を取り戻すために旅立ったのは三人の少女であった。―――博麗神社の巫女霊夢、紅魔
館のメイド長咲夜、そして魔女の魔理沙。
その原因は、幽霊のお嬢様である幽々子と、彼女に仕える半分幻の庭師妖夢が、「西行妖」という桜を満開に
咲かせるために春という春を集めていたからだと判明。
真相を知った三人の少女は、幽々子や妖夢に会って無事に事態を解決し、春を取り戻して帰って来たのだった。
「分かっては、いるわ。」
紅魔館の主レミリアへの咲夜の報告を、レミリアの傍で聞いていたから、魔理沙から聞くまでもなく、パチュ
リーも経緯を知っていた。
―――知ってはいるが。
「……本当に、それしか言う事がないの?魔理沙。」
「おい、パチュリー……?」
明らかに不機嫌極まりないパチュリーの様子に、魔理沙は訳が分からない。―――事情を知っているというの
なら、何故、しばらく訪れる事が出来なかった事で彼女はむくれているのだろう?
「前回ここから借りた本は、霊夢や咲夜と出かける前にちゃんと返しただろ。」
魔理沙は、ほとほと困り果てたように呟きながら、パチュリーの傍に歩み寄る。
「それに、借りていた間に本を傷めた訳でもねぇし……。パチュリー、本当に何で機嫌悪ぃんだ?何か、気に障
る事をしたのか?―――悪いが、今回ばかりは本気で思いつかねぇ。教えてくれよ、パチュリー。でないと、直
せるものも直せないじゃないか。」
「……別にいいわ、もう。」
パチュリーは、本格的に魔理沙から背を向けてしまった。
我ながら情けない、とパチュリーは思う。元々、魔理沙はこういう性格なのだ。「気付いてくれるかも知れな
い」、そう淡い期待を抱いていた自分が愚かだったのだ。―――図書館の主として、膨大な知識を誇る者として、
何て情けない。
「―――もう、いいわ。それより、今度はどんな本が見たいの?」
「―――待てよ。」
次の瞬間、魔理沙がいきなりパチュリーの肩をぐいと掴んで、強引に自分のほうへと顔を向けさせた。
まさかそんな事をされるとは思っていなかったパチュリーは、まず驚き、それから強引な魔理沙の行動に不快
感をあらわにする。
「……痛いわ、何をするのよ。」
「嘘をつくなよ、パチュリー。」
見返した魔理沙の瞳は、いつになく厳しい。
「何が、『もう、いいわ。』だ?」
「嘘なんてついていないわ。本当に、もういいんだったら……!!!」
パチュリーは、時ならぬ魔理沙の剣幕に驚き、魔理沙の手から逃れようと身をよじる。
だが、魔理沙はそれを許さなかった。パチュリーの肩を掴む手に、自然と力が込められる。
「本当に『もう、いいわ。』なら―――何で、お前は泣いているんだよ?パチュリー!!!」
「……え?」
パチュリーは、思わず呆けたように聞き返す。
「泣いて、いる……?私、が……?」
「そうだ、泣いているんだよ、お前は。」
魔理沙は、パチュリーの肩を掴んでいない方の手で、そっとパチュリーの目尻に触れる。―――すぐに離された
彼女の指先には、微かに煌く、透明な雫。
「……ほら見ろ。これが証拠だ。」
「―――ど、どうして……?」
パチュリーは混乱する。自分が泣いていた事に気付いていなかったのも衝撃だったが、それ以上に、自分が泣い
ていたという事実の方が衝撃だった。
「何故、私は―――」
「……まずは落ち着いてくれよ、パチュリー。」
魔理沙が、そっとパチュリーの頭を撫でてくれる。―――何故かその手が心地よくて、パチュリーは、そのまま
に任せた。
対する魔理沙は、パチュリーの頭を撫でながらぶっきらぼうに呟いている。
「お前に泣かれると、私が困るんだよ。」
「―――え?」
魔理沙の呟きに、パチュリーははっと顔を跳ね上げる。―――見つめた魔女の顔は、確かに困り果てた表情にな
っている。
「何故……?何故、私が泣くとあなたが困るの……?」
「~~~~~~~っ………!!!」
瞬間、魔理沙の顔が微かに赤く上気した。その上、彼女にしては珍しい事に、言葉を紡ぎ出すのをためらってい
る。
「……ま、魔理沙……?」
思わぬ反応に、戸惑ったようなパチュリーの声が上がる。
「―――困るったら、困るんだよ!!!」
パチュリーにじっと見つめられた魔理沙は、一層顔を赤らめ、そしてパチュリーの視線から逃げるように顔を背
ける。―――その様子は「照れ隠し」以外の何物でもない。
「だから、何で私が泣くとあなたが困るの?」
それでも続く、パチュリーの追求。
「………!!!」
魔理沙は覚悟を決めたかのような表情をすると―――次の瞬間、物凄い早口でまくしたてた。
「―――出かけている間『元気だろうか?』とか心配していた相手が……久々に会ったら私を避けて、その上泣く
んだぜ?困るだろ、普通なら!!!」
「―――心配、していた?」
パチュリーは、信じられない言葉を聞いたといった表情になる。
「魔理沙が、私を……心配、していた……?冗談、でしょう……?」
「―――冗談でこういう事言うかよ!!」
今や、魔理沙の顔は真っ赤である。その真っ赤な顔を、頬を膨れさせながら、彼女は、ふいと顔を背ける。
「どうして……?どうして、私の心配なんかを……?」
パチュリーは、混乱しきった表情になる。
「だって、私は紅魔館の中にいるのよ?ここには、たくさんの人員もいるし、何よりレミリアや彼女の妹のフラン
ドールもいるわ。これだけの人達がいる館の中にいる私より、実際に外で戦うあなたの方が危険じゃない!!!あな
たがいくら強いとは言っても、怪我をするかも知れないじゃない……!!!それなのに、それなのに、安全な後方に
いた私を心配するなんて……どうしてなの、魔理沙……!!?」
「―――それが、答えか?」
魔理沙の問い掛けは、全く唐突だった。
「危険な戦いに出ていた私を、お前は心配してくれていたって事か?それなのに、再会しての一言がアレだから、
お前は怒ったのか?」
「―――っ!!!」
パチュリーは、はっと両手で口を塞いた。混乱して、言うまいと思っていた事まで口走っていた事に、今更なが
ら気付く。―――だが、明らかに手遅れだった。
「……悪ぃ、パチュリー。」
魔理沙は、そっとパチュリーを抱き締め、背中をさすってくれる。
「そんなに、心配かけていたなんて思ってもみなかったから。―――そぉだよな、心配しまくっていた相手が久々
に現れて、最初の言葉がアレだもんな。……そりゃ、パチュリーが怒って当然だよな。」
「……魔理沙。」
「でも、良かった。お前が怒っている理由が分かって。」
謝罪の言葉を聞いて驚いたように目を見開くパチュリー。その瞳をじっと見つめながら、魔理沙は答える。
「そして、嬉しかったぜ?」
「嬉しい?どうして?」
パチュリーは、おずおずと魔理沙に尋ねた。
「心配されて嬉しくない訳がないだろ。」
魔理沙は、いつもの闊達な笑顔を弾けさせる。
「特に、普段『本をちゃんと返せ』だの『本を大切に扱え』とかしか言ってくれない相手だとな。―――小言しか
言ってくれないけれど、ちゃんと想って貰えてるんだなって分かったら、やっぱ嬉しいし、安心もするぜ?」
「―――失礼ね、『小言しか言わない』だなんて。」
パチュリーは、ようやく魔理沙に向かって笑顔を見せる。
「第一、本の扱いについて私が注意するのは致し方ない事でしょう?あなたが本をまともに返してくれなかったり、
本をぞんざいに扱ったりするのは本当の事なんだから。」
「……分かってるって。今度からは気をつけるって。」
再び小言を言われて魔理沙は顔をしかめるが、その瞳は明らかに笑っている。―――パチュリーが笑ってくれた
のが、嬉しいのだ。
「その言葉、何処まで信用出来るのかしら?」
くすりと微笑んで見せてから、パチュリーは魔理沙に話し掛ける。
「―――ところで、古い書棚の方から、あなたが興味を持ちそうな魔術所を何冊か見つけたんだけど。読んでみる?」
「勿論。」
途端に目を輝かせる魔理沙。
「んで、その本のある書棚はどの辺りにあるんだ?」
「案内するわ、こっちよ。」
魔理沙を案内するために先を歩き出したパチュリーだが、数歩も進まない内にぱったりとその場に立ち止まって
しまう。
「―――パチュリー?」
いぶかしむ魔理沙を、パチュリーは、彼女にしては極めて珍しい満面の笑みで振り返る。
「言い忘れていたわ、魔理沙。」
「……え?」
「お帰りなさい。」
戸惑ったように聞き返した魔理沙に向かって、微かに頬を上気させながら、パチュリーは片手を差し伸べる。
魔理沙はパチュリーの言葉を聞いて一層驚いたような表情になったが、すぐに笑みを浮かべ、自らも片手を差し
伸べる。
二人の手が、そっと、でも確かに重なる。
「―――ただいま、パチュリー。」
~~~fin~~~
批評を、との事なのでちょっとした感想なんかを。
お話はすごく良かったのですが、「……」と「――」が多いのでちょっと読みづらかったかも。
魔理沙の一人称「俺」にはちょっと違和感が……でも、最初にオリジナル設定云々と注意されてますから、気にする方が悪いのかな。個人的にはこれで一人称が「私」だったら萌え萌えで70点はつけてたと思います。
この魔理沙は 偽者だ!
ということでちょっと減点。
でも、こういう雰囲気のSSは好きです。
とりあえず魔理沙は俺じゃなく私だと思う。
他はなかなか良かったですよー