Coolier - 新生・東方創想話

永遠てゐ ~永遠の詐欺師 因幡てゐ~

2005/04/07 09:56:25
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幻想郷の片隅に、とても広大な竹林が在る。
そこは誰もが迷い、命を落とすといわれる恐ろしい竹林。
昼夜を問わず妖怪は跋扈し、一度迷えば出る事は適わない。

運が悪く迷いこんでしまった時は潔く諦めるか、妖怪に喰われる前に兎を探すしかない。
兎といってもただの兎ではない。
はるか昔から竹林に住むといわれる兎の妖怪だ。
その妖怪は人の・・・少女の姿をしている。
彼女に着いてゆけば、いずれ竹林の外に出る事が出来る。
但し彼女は悪戯好きなので騙される事も多々ある。
が、一度彼女に会えば、結果はどうあれ間違いなく竹林の外に出る事が出来る。
故に彼女は兎神と崇められた。

その竹林の奥深くには、一軒の屋敷が存在する。
かの妖怪兎の住処でもあると言われる屋敷である。
名を、永遠亭という。

その為か、かの妖怪兎は親しみを込め、こう呼ばれる。
永遠亭の詐欺師、エンシェントデューパー。








――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

因幡の素兎    -いなばのしろうさぎ-
「古事記」所出。
隠岐島から因幡国に渡る為、兎が鰐鮫(わに)を欺き、背を用い渡るが、
最後に騙された事に気付いた鰐鮫によって皮を剥ぎ取られてしまう。
その後、八十神(ヤソガミ)の教えに従って潮に浴した為、かえって苦しんでしまう。
苦しんでいる所を大国主神(オオクニヌシ)に救われる、という話。
「しろうさぎ」は「白い兎」では無く、「皮を剥がされた素の兎」という意味。
現在では、鰐鮫では無く鮫という見解が主流。

詐欺   -さぎ-
いつわりあざむく事。
他人を騙して錯誤に落とし入れる、財物などを騙し取ったりする行為の事。
「だます」を英語で表記するとdupe 読み方はデュープ。

永遠亭   -えいえんてい-
幻想郷という世界の片隅にある竹林の、その奥深くにあると言われる豪邸。
いつからあるのか、何故このような所に在るのかは誰も知らない。
名前の由来は「永遠の人+てゐ」を略したものという噂もあるが所詮は噂。

因幡 てゐ   -いなば てい-
存在自体が嘘っぱちな位に嘘吐きな妖怪兎。
因幡の素兎が妖怪と化したもの。
悪戯が大好きで、何回怒られようが全く懲りない。
能力は人間を幸運にする程度の能力。

――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――









「こらーーーー!! 人参返せ!!」
「やだーーー!」

ずたたたたた。
永遠亭の廊下を、超高速で駆け抜ける2つの影。

人参を握り締めニヤニヤ笑いながら走り回る・・・黒髪の幼い少女の名は、因幡てゐ。
麗しき紫の髪をなびかせ、お昼ごはんを取り返そうと必死になっている哀れな少女の名は、鈴仙・優曇華院・イナバ。


「だってしょうがないじゃん! 永琳がやれって言ったんだもん!」
「毎度毎度だまされるかっ!! いいから返せ!!」
「嘘だと思うなら永琳に聞いてみなよ!」
「その間に食べられるからヤダ!!」
「疑り深いぞうどんげ!」
「うどんげって言うな!!」
「じゃあ座薬!」
「うがーーーーっ!!」



ぴた

「わ!? 急に止まらないでよ!」
「あ・・・ご、ごめん・・・。」
「? いきなりどうしたの?」
「あの・・・・・いくらなんでも言いすぎた。」
「・・・え?」
「ごめんね・・・レイセン・・・・」
「え? あ・・・・うん。」
「レイセンはうどんげって呼ばれるのイヤだったんだよね・・・・。」
「まぁ・・・」
「座薬って言われるのもイヤだったんだよね・・・。」
「それは誰だってイヤだと思う。」
「ごめんね・・・・悪い子だよね・・・最低だよね・・・・。」
「え・・・いや・・・別にそこまでは・・・・」
「永琳。」
「うおぉっ!? なんでっ!?」

うどんげは突っこんだ。
・・・しかしツッコミは完全に無視される。
一方、てゐは感極まったかの様にしゃくりあげる。
泣き顔を見られたくないのか、レイセンに背を向け語りだした・・・。

「永琳最低だよね。 嫌がるレイセンに変な名前付けたり座薬押し込んだり・・・・」
「込んでねぇ。」
「うぅっ・・・うどんげかわいそう・・・・・」
「うどんげ言うな!」
「っひくっ・・・・ひく・・・・うぅ・・・・・」
「・・・・・あーー、泣かないでよ。 もぅ。」
「ごくん、ごち。」
「っあぁーーーーーーー! 泣いてる振りしながら人参食べたわね!!」
「タベテナイ、タベテナイヨ。」
「何故にロボ口調!! こら! 吐け! 吐き出せ!!」
「うぇぇぇぇ・・・・」
「きゃーーーーー! ごめんなさい吐かないでーーー!!」
「毛糸ですがそれが何か?」
「っ・・・・・・・もーーーーーーーーーーーーーーーーーっ!!!」
「けーねだけーねだ、もーもー。」


ふんがーーーーっ! とばかりに怒り出すレイセン。
きゃあきゃあと騒ぎ、逃げ出すてゐ。
今日も永遠亭の詐欺師は絶好調だ。


このような意地悪な一面もあるが、何故かてゐは皆から尊敬されていた。

てゐは永遠亭の兎を束ねる、妖怪兎のリーダーだ。
意地悪な反面、時に凄く優しい。、
嘘をつく反面、決して皆を不快にさせない。

てゐは人気者である。

レイセンに対しても、嫌われるまでの行動は取らない。
「もう、てゐったら!」という程度にとどめて置く。
あのタイプは母性本能をくすぐれば楽勝だ。
「私がいなきゃ駄目なんだから・・・」という気持ちにさせるのも、全てはてゐの策略だ。
誰もが嫌えない、そんな不思議な魅力を持つ妖怪。
それが因幡てゐだ。
「ギャップ萌」や「ヒモの極意」を使い尽くす因幡てゐは、(表面上は)立派なリーダーである。

その為、因幡てゐにはいくつもの顔がある。
例えば、昼間に無邪気な小娘である反面、夜は優しいお母さんにもなる。
まだ生まれて間もない妖怪兎の子守り。
『優しいお母さん』であるてゐは、誰もが面倒くさがる筈の子守りだって嫌な顔一つせず率先して行なうのだ。
皆が皆、そんなてゐの限りない優しさに涙腺が緩む。











永遠亭の、とある大きな部屋には布団が十数枚。
それぞれに幼い妖怪兎が寝転がっている。
今日はここの子供達の子守りをしてやっているのだ。

「ねえねえ! てゐ! 今日もお話聞かせてよ!」
『うん! 聞きたい聞きたい! お話して!!』
「あら、しょうがないわね。 お話を聞いたらちゃんと眠るのよ?」
『はーい!』
「じゃあどんな話をしましょうか?」
「うーーてゐの昔の話の続き!」
「いいわよ、どこまで話したかしら?」
「ここの竹林に引っ越してきた所まで聞いた!」
「そう、ここからは面白い所よ。」
「わー楽しみーー!」
「だって、私と姫様達が出会った頃だもの・・・・。
 あの頃は私もまだまだ子供だったわ・・・・。」

おとぎ話をするかの様に・・・・
てゐは過去を振り返りながら語り始める・・・・。

これは、因幡てゐ が てゐ だった頃のお話。
輝夜も永琳も永遠亭も無かった頃のお話。

てゐと、二人の初めての出会い。






















出会いは最悪。
ある日、いつもの様に竹林をお散歩していたてゐは、突然やってきた二人組にいきなり砂(フクロ叩き)にされたのだ。
その後、てゐは両のウサ耳を永琳に鷲掴みにされて、逃げるに逃げられない状況に追いやられた。
何故こんな事をされなくてはいけないのか? 心当たりは在りまくるけど、まったく無いのに!といっておく事にする。


「いたいー離せーー。」
「あら、姫、コレは月からの使者じゃありませんよ。」
「嘘だー、だって耳はえてるし。」

「耳は誰にだって生えてる!!」
「ほら、反抗的、やっぱ月の民だって。」
「ツキノタミって何よ! いいから離せー!」
「反抗的ですね、やはり月からの使者かも知れませんね。」
「だったらどうするっての!?」

「・・・・ねぇ。」
「・・・・えぇ。」

「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」

「あら、反抗しなくなったわ。 この狡猾さ、やはり月の民だわ。」
「どうしろっちゅーんじゃい!!」
「うるさい小兎ね。」

「むっ!! この私、大妖怪「因幡の素兎」を馬鹿にするつもりか!!」
「・・・永琳、因幡の素兎って? 知ってる?」
「・・・・えーーー、あぁ、思い出しました。」

「ふん、私も有名になったものね。」
「で、どんなヤツなの?」
「えぇ。
 ワニだかサメだかを騙した報いで皮を剥がれ、海水にぶち込まれるお話の主人公です。
 痛いわ寒いわ苦しいわの三重苦。
 なんでそんな事を堂々と語れるのでしょうか? 私にはわかりません。」

「・・・・・・なでなで」
「哀れんだ目で慈しむな!!」



・・・・・・・・
しばしの対談の後、どうやら二人は月の民から追われているという事を聞きだした。
私に兎の耳がついているせいで、そいつらの一味だと間違えられたらしい。
まったくもって迷惑な話である。




「・・・・で、結局は、私は月の民とやらじゃないわけ。
 わかったらさっさと離しなさいよ馬鹿。」
「・・・・・ねぇ永琳、私おなかがすいたわ。 えぇ、とても。」



うわぁ、このお姫様ってば容赦無い!
だってそうじゃないか。
馬鹿だから馬鹿といったのだ、馬鹿の事を馬鹿と言って何が悪いこの馬鹿。
・・・・とはいえ。
このままでは本当に喰われてしまう可能性もある。
仕方ない・・・・・



「ひくっ・・・・くすん・・・くすん・・・・・お願い、お耳がいたいいたいなの・・・もう許して?」
「う・・・・」



てゐ必殺おねだり殺し。
生意気な少女が見せる本性とは・・・・実はただの寂しがり屋さんだったのだ・・・・・。
とかいうシチュエーション等をかもし出すという恐ろしい技である。
ツンデレ好きやロリ巨乳好き等の「ギャップ萌え」に効果特大。
実際、永琳は「か、かわいそうな事をしてしまったかしら?」という様な顔をしている。
へへん、世の中ちょろいもんよ。



「生意気ね。 やはり喰いましょう。」
「何故ッ!?」



なんて事!?
お姫様には通用しないというの!?
くそっ! 恐らくあまりの私の可愛さに嫉妬したに違いないっ!!
敗因は私が可愛すぎる事だったのか!!



「やめろー、私は喰ってもうまくないぞー。
 私の体には数億の毒物が詰め込まれてるのだー
 喰ったら死ぬぞー。」
「あら、丁度良い。
 私達には毒物は意味を成さないわ。
 姫、久々の兎の肉ですよ。」
「わーい。」

「わーい。
 じゃねーーーーッ!!」

















「・・・・・しょうがない、ガリガリだし食べる所も少なそうだし、許しましょう。」
「マジッ!? やった!」
「その代わり、この竹林の出口を教えなさい。」
「オッケーオッケー!!」

すたたたたた

「遅れるなよー。」



ふぅ、危ない危ない。
もう少しで喰われる所だった・・・・。
コンチクショウどもめ・・・・私の恐ろしさをその身に刻み込んでやるわっ!!

















すたたたたたた

すたたたたたたた

すたたたたたたたた

すたたたたたたたたた

すたたたたたたたたたた

すたたたたたたたたたたた

すたたたたたたたたたたたたたたたたたたた・・・・・・・・



二時間ほど走り続けただろうか?
黙って着いて来ていた二人に、焦りと苛立ちが生じているのが気配でわかる。

いい加減、痺れを切らしたお姫様が声をかけてきた。



「ねぇ、貴方。」
「てゐ。」
「?」
「私の名前はてゐ。 貴方じゃない。」
「・・・・・それはいいとして、ホントに出口に向かってるの?」
「いや、全然。」

ぼきゃ

「がふぁ!!」
「永琳! コイツ使えないよ! 所詮は因幡だよ!!」
「わ、私の名は・・・」
「黙れ因幡!!」

ぐしゃ

「・・・・・・」
「ねぇ・・・・・てゐ。」
「・・・はいぃ・・・」
「私達は、出口まで、案内しろって、言ったのよ?」


「いや、教えろと言っただけで案内しろとは・・・・」
「フットスタンプ!!」
「げぶはぁッ!?」

「調子にのってるともう一回、皮を剥ぐわよ?」
「いやいやいや、落ち着いて!! 落ち着いて話を聞けー!」
「落ち着いてるわ、えぇ、落ち着いてるわ。 会話をしながら貴方を懲らしめる術(すべ)を一秒につき7個ほど考え付くほどに。」


そういうのを世間一般では落ち着いて無いというのだバカモノめ。


「だからね、外には出るつもり。 でも出口が何処かはわからない。」
「・・・貴方、私達の事を馬鹿にしてるの?」

「・・・いや、私の能力は人間を幸福にする程度の能力。
 意思さえ持っていれば人間でも妖怪でもオッケーだけど。
 で、その私が外に出ようと思ってるから。
 いずれは外に出れる筈。」


「・・・・・・・」
「・・・・・・・」

「あ、信じてないな?
 良し・・・例えば・・・・」


「あーーーおなかが減ったなーー、どっかに木の実でもなってないかなーーーー」
「貴方・・・こんな竹林にそんなもの・・・・・」
「・・・え・・・・永琳、向こう・・・・・」
「・・・・?」
「ほら、あった。 つまりはそういう事。
 私が望む事は大体かなうわ。
 だから貴方達から逃げたいと思った時、逃げれたわけ。
 うやまえ、姫。」
「うっさい因幡。 今からでも食べようと思えば食べれるのよ。」
「いや、無理だって。 運は運命に準ずるもの。
 全ては私の思い通りになるってワケ。」
「・・・・それは凄いわね。」
「でしょ。」



えへん。



「じゃあさっき姫に殴られたのは何故?」
「あれは、ああした方が今後やりやすいからでしょ。
 全ては私が幸せになる様になってるの。 全てはその布石。
 意図してやってる訳じゃないけどね。」
「その能力は他人にも影響があるのかしら?」
「背反してなければね。 私の周りの人間は、大体は上手い具合にいく筈だよ。」

「・・・・姫。」
「うん、コイツは使えるね。」



二人はアイコンタクトで意思疎通をする。
永琳が一歩、前に出て笑顔で宣言する。



「てゐ。 今後貴方は私達の所有物とします。
 逆らうのならば殺します。」


「うわー、傲慢花子キター。」
「誰が傲慢花子だ。」
「アンタの事よ。 ・・・・さっきも言ったけど私が望まない限り、貴方達の所有物になる事は無いわ。」
「・・・・試してみる?」
「どうぞ。」

「・・・・・・・」
「・・・・・・・」
「・・・・・・・」
「・・・・・・・」

「やめておくわ。」
「そう? ま、それが正解だと思うよ。
 多分戦いが始まったら月の民がやってくるよ。 ココに。
 そうすれば私が助かるから。」

「・・・貴方の能力はかなり良いわね。
 じゃあ今度は命令じゃなくてお願いにするわ。
 てゐ、私達と一緒に来てくれない?」

「・・・えーーー。 なんで私が・・・・」



にやにや



「永琳! やっぱコイツ喰おうよ!」
「落ち着いて下さい姫。」
「へへん、喰えるもんなら喰ってみな。」
「むきーーーーーーーー!!」

「てゐ、どうすれば私達と一緒に来てくれる?」
「とりあえずはー・・・・その高飛車なお姫様が、私を名前で呼んでくれる事が第一条件かなーー?」
「・・・・・・・」
「姫・・・どうか寛大な御心で・・・・・」
「く・・・・・・」

「おやーー、いつまでたっても聞こえ無いにゃーーーー?」
「くぅ・・・・・・て、てゐ。」
「ちっさいなーー、蚊の音かにゃ?」
「てゐ!! これでいいでしょ!?」

「おっけーおっけー苦しゅうない。」
「他には?」
「そうだねー、うーーーん。」

「お姫様の名前は?」
「輝夜。 蓬莱山輝夜よ。」
「成程、私はアンタの従者じゃないから敬語は使わない。
 勿論、名前も呼び捨てで呼ぶわ。 いいわね?」
「く・・・・・わかったわ。」
「もういいでしょ?」
「うーーん、まだまだ。」

「次にーーーー雇用料金は一日人参20本ね。」
「え・・・・それはちょっと・・・今、手持ちも少ないし・・・・」
「だったら何処からでも盗んでくればいいじゃない。」
「くっ・・・・」
「永琳一人じゃ大変でしょ、姫も手伝ったら? 盗むの。」
「・・・姫様にそのような事はさせられないわ。
 わかりました、なんとかしましょう。」
「え・・・えーりん・・・・・
 く、くそぅ・・・どんどん要求がエスカレートしてきてる。」




「後はーーー、輝夜を殴れ永琳。」
「なッ・・・!?」
「て、てゐ・・・アンタねぇ!!」
「おやーーーー? 逆らうの? 一緒に行って、あーーげなーーいよーーー?」
「むくくくくくく・・・・・」


「・・・・・姫、もうやめましょう。
 こんな事を言われてまでこの妖怪を仲間に入れる必要はありません。」

「・・・・・・いえ、永琳。
 永琳もわかってるでしょ?
 このままじゃいつまで経っても私達は追われる身だって。
 コイツさえ居ればそんな毎日と決別できるのよ・・・・。
 多少の屈辱は・・・・」

「いえ、これだけは駄目です。
 この八意永琳。 姫に手をあげる位ならば自害します。」

「・・・・・この前殴ったじゃない。 そもそも永琳死ねないし。」

「それは姫が危険な事をしたからです。 そういう時は殴ります。
 ですが、意味も無く殴る事など出来ません。」



「茶番はどうでもいいよー、早くーー。」



「・・・永琳・・・お願い・・・・・」

「優しくしてーー私ー初めてなのーーー。」
「うっさい!!」


「・・・・わかりました。」

こつん

「・・・コレでいいわよね? てゐ。
 もうこれ以上の事は出来ないわ。 勘弁して。」

「んーーーーまぁ良しとするか。
 じゃあ最後の一つ。」
「・・・何?」








「輝夜、近くの村の男衆の慰みモノになって来い。」
「ッ!!」

「そうすれば、ようやくどっちの立場が上かわかるよね。
 いい?
 私はアンタ達が居なくても問題ない。
 かたやアンタ達は私が居なくちゃ始まらない。
 ほら。
 元々文句を言える立場じゃないって訳。
 さっきからえらそーにしやがって。
 ざまーみろ、あははははは・・・」

「く・・・・この・・・・・」



ふるふると怒りに震える輝夜。
いい気味だ。
どうせ実際にやる事は無いだろうけど多少の牽制にはなった筈。
ここで後で
「うそよ! うーそっ! ごめんね? その代わり絶対守ってあげるから!」
とか言ってやればいい。
飴と鞭。
落差があればあるほど感動も大きい。
せいぜい恩を着せさせて貰うよ、くっくっく。



「どうしたの? 竹林を出れるのよ? もっと喜んだら?」
「・・・・うぅ・・・・ふぇ・・・・・・」


















「えーりんキック!」
「ぐはぁっ!!」

「調子にのってんじゃねぇぞ・・・・このクソ兎があぁぁぁぁぁ・・・・・」
「え・・・えーりん?」
「えーりんぱんち!」
「へぶぅ!」

「黙って聞いてりゃ好き勝手言いやがって・・・・こちとら我慢のげんかいっちゅーーーー!!」
「わぁ! もう言葉になってない!!」
「ぱんちぱんちぱんちぱんち!!」
「へぶらぶべらあべしひでぶ!!」

「おぉ・・・? 最後には姫を泣かせやがったな? コノヤロウ・・・・・・」
「ちょっ・・・ごめん! ごめんなさい! 調子にのりすぎました! はんせいしてばぁっ!!」
「あぁん? ごめんで済んだらえーりんいらんっちゅうねん!」
「ひえぇぇ、輝夜ーー。 助けてーーー。」

「永琳、おやめなさい。」
「う! ひ、姫・・・で、ですが!!」
「おやめなさい。」
「う・・・・はい。」
「た、たすかったぁ・・・・」


「てゐ? これはどういう事?
 貴方は常に幸運なんじゃないの?」
「い、いやだから、幸運だからこうやって助かったという・・・」
「永琳。」
「えーりんぱんち!!」
「ぼふぅ!」

「あら? これはどういう事かしら?
 まだまだ貴方を殴れるみたいね?
 どうも私には貴方が嘘をついていた様にしか見えないんだけど?」
「い・・・いや」
「もしかして・・・・嘘をついてたの?」
「ち、ちがう。 もう少しすればツキノタミが・・・」
「永琳。」
「えーりんきっく!」
「はぅん!」

「嘘ついてたの?」
「う・・・うぅ・・・嘘ついてましたぁ・・・・」
「・・・・・・・・」
「えーりんちょっぷ!!」
「げふぁ! 輝夜、命令してないでしょ!?」
「以心伝心、姫の心はしかと受け取った。」
「うわーうそくさー。」
「えーりんニー!!」
「げぶっ!!」

「てゐ? もしかしたら幸せを運ぶというのも嘘かしら?」
「い、いや、ソレはホント。
 でも本当は・・・・その・・・・あんまり強力じゃなかったり・・・・・・てへっ♪」
「・・・・あの木の実は?」
「いや、実は最初っから木の実のなってる所の周りをぐるぐる回ってたの。
 で。
 しびれを切らした相手にさも「自分の能力はすごいんですよー」って思わせるという・・・・」
「要は、私達を騙したという訳ね?」
「うぅ・・・・その通りですぅ。」

「えーりんアイアンクロォォッ!!」
「いたいーーーーーー! ひえーん ごめんなさいーー。」

「落ち着いて、永琳。」
「いや、ですけどね、このクソ兎は・・・・」
「いいから。」
「む・・・・むぅぅ・・・・・」


「てゐ。」
「は、はい。」
「貴方がした事はとても悪い事よ。
 わかってる?」
「はいぃ・・・」
「二度としないと誓いなさい。」
「はい・・・二度としません。」

「そう、じゃあ・・・・」
「姫! コイツを許すのですか!? そんな事・・・」
「永琳、いいから落ち着きなさい。」
「そうだー落ち着けエリンギー」
「てゐ、貴方もやめなさい。」
「・・・・はーーい。」



「・・・ところでてゐ。」
「なーに?」
「隠れんぼをしました。
 およそ7割の確立で見つかってしまいます。
 貴方の能力が加わった場合、発見率はどの位になる?」
「んー、そういった偶然が作用するヤツならかなり強いよ。
 多分だけど一割以下。」
「嘘じゃない?」
「はは・・さすがに暫くの間は嘘は控えるよ・・・。」



輝夜はにっこり微笑み、



「てゐ。 今後、貴方は私達の所有物とします。
 逆らうのならば殺します。」
「うわー、傲慢花子Ⅱキター。」
「誰が傲慢花子Ⅱだ。」
「アンタだよ。 っていうか・・・」
「永琳。」
「えーりんチョークスリーパー!!」
「ぐげっ!! ぐ、ぐるじいーー。」

「てゐ。 所有物である以上、私の事は姫様と呼びなさい。」
「え゛ーー、べんどぐざいーー。」
「永琳。」
「えーりんオクトパスホールド!!」
「いたたたたたた!! わかった! わかりました!!」

「それからてゐ・・・・キサマなぞ因幡で十分だ。
 今後、役立たずの事を因幡と呼ぶのでそのつもりで。」
「うぅ・・・ひ、ひどい。」
「永琳。 因幡を殴れ。」
「えーりんぱんち!」
「いたいいたい!!」

「うぅぅ・・・・もう十分でしょ!? 反省したから!! もう悪さはしない!」
「・・・・ホント?」
「絶対! 未来永劫絶対にしません!!」
「・・・・わかったわ、確実に嘘だろうけど信じてあげる。」
「あ・・・ありがとう・・・」
「じゃあ最後の一つよ。」
「え? うん。」



「因幡、近くの村の男衆の慰みモノになって来い。」
「ぜってー言うと思ったーーーーーーーーーッッ!!」




































「で? で? てゐはどうしたの?」

「「わかりました~しくしく」と言いながら里までおりて、逃げおおせてやったわ。」

「やっぱりね~。」

「当然、あんな頭のユルイ奴等にとっつかまる私じゃないっつーの。」

「流石はてゐだね!」

「ふふふ・・・・ でもねその後、私がいなくなったせいでツキノタミがやって来たの・・・。
 運が切れたのよ。」

「えぇっ!?」

「あのままだったら確実に二人は捕まってたわね・・・。
 仕方が無い。
 あの二人と居て、ちょっと楽しかったのは事実だし。
 手伝ってやったわ。」

「ええぇぇっ!? てゐ、大丈夫だったの!?」

「当然。
 それなのに、私の助力のお陰で助かった二人は、あろう事か私を再度捕まえようとしたわ。」

「えーーっ!? 姫様達ひどーーーい!!」

「こらこら、そんな事言っちゃ駄目。 姫様達はとっても苦しかったのよ。」

「で、でも・・・・」

「だから・・・・私はわざと捕まってあげたわ。 二人がこれ以上、苦しまない様に・・・」

「わー、てゐやさしーい。」

「ふふふ。 私は嘘吐きだからね。 さも悔しそうに捕まってやったわ。
 多分あの二人は今でも気付いて無いでしょうね。」

「凄いね! さすがてゐだね! 私達のリーダーだね!!」

「ふふふ、さぁ、もう寝な。 明日も早いよ。」

「うん! お休み、てゐ!!」




子供達の寝室から出る。
もう眠ってしまっている子供達も多い。
できるだけ静かに・・・・・そっと襖を閉めた。

あれ?
すぐそばに見知った顔を見つけた。




「あら? レイセン、居たの?」

「てゐ・・・・・ごめん・・・はなし聞いちゃった・・・。」

「・・・・・・いいのよ。」

「そっか・・・・てゐはホントは優しい嘘吐きだったんだね・・・・。
 今まで勘違いしてた。」

「ふふふ・・・ばれちゃったら仕方ないね。」

「今までいっつも私に意地悪してたのは・・・・」

「だって、皆もレイセンも、平等に扱ってあげなきゃ。
 月の兎だからって邪険になんてしないわ。」

「・・・てゐ・・・・」

「ま、レイセンが可愛い過ぎるから、ちょっとかまい過ぎちゃってるかも知れないけど・・・。」

「ば、馬鹿!」

「ふふふふ・・・・。」

「ありがとう・・・てゐって凄く優しいんだね・・・
 意地悪で・・・わがままで・・・・・でも・・・・・それは全部・・・・・ッ」

「やめてよ、恥ずかしいわ。」

「てゐ・・・・・私、貴方の事を誤解してた・・・・
 師匠が言ってた事なんて歪められた事実だったのね・・・・。」

「・・・・ん?」



「師匠はてゐの話の後半部分をこんな風に捏造してたわ・・・・・

 慰みモノになって来いとは言ったものの、どうせアイツ逃げるだろうなーと、疑う師匠。
 案の定逃げようとしたてゐをシバキ倒し、その後、村にある発情した数十匹の大型犬の小屋に一週間放置。
 一週間後に放心状態で救出されたてゐは白濁液にまみれてガタガタと震えてゴメンナサイと泣き続けて・・・
 でも何故か、てゐの体に染み付いてたのはただの樹液で。
 それどころか犬小屋に居た犬は一匹残らずてゐに喰われてて。
 師匠は村人に謝る一方てゐをどつき回して大変だったって・・・・・」


「ば、馬鹿ねぇレイセン。
 簡単に永琳のいう事を信じちゃ駄目よ。」


「それだけじゃない! 師匠はこんなウソまで言ってたの!!
 何とかして復讐できないかと企むてゐの前に月の民と名乗る集団が現れて、
 コレは勝機! と見たてゐが彼等を誘導。
 コレで復讐できると思ったら、一週間ゆっくり休んだ姫様と師匠は馬鹿強くて、月の民は瞬殺されて・・・・」

「あは、あはははははは・・・・・」

「結局てゐの企みだったって事があっさりバレて、
 怒った師匠がてゐをなんとかして能力だけ残して殺せないものか、凄く考え続けて・・・・」

「・・・・・・・・」

「ある日、自由気ままに遊んでいたてゐが突如倒れてしまって、どうしたものか死んでしまうのだけは困る。
 死ぬのなら能力残して死にやがれこのクソ兎という師匠の激励の言葉もむなしく、てゐはますます衰弱。
 ひとりぼっちが寂しいのだろうという事に気付いた師匠が仕方なしに全国から兎の妖怪を捕まえてきて・・・」

「・・・・・・・・・・」

「数百人の妖怪兎が永遠亭に集まった所でてゐの様態はケロッと治って、
 「敵は永遠亭にあり!」と叫びながら師匠の部屋に赴く妖怪兎軍団・・・・
 いや、やっぱり勝てないだろ、と一人一人抜けて行く兎達、全く気がつかないてゐ。
 「復讐じゃあ! 覚悟せいや永琳!!」と意気揚々と師匠の部屋の襖を開けた時にはもう誰もいなくて・・・・。」

「・・・・・・・・・・・・・・」

「師匠はにっこり笑いながら「おもしろい冗談ね、てゐ、そういえば最近クスリの実験台がいなくて困ってたの。」
 「ブルウタスお前もか」と叫び声を残しつつ部屋に引っ張り込まれるてゐ。
 非情なる人体実験は三日三晩続き、開放された時のてゐは「うふふ、永琳お姉様・・・最高♪」
 とか言いながら人参を泣きながら貪り食っていたって・・・・」

「更には・・・」
「てゐパンチ!!」
「げふあっ!!」







・・・・・・・・しまった。
すべては遅すぎた・・・・・・
自分達の部屋の前でわめき続けるレイセンの言葉を、どうして子供達が聞き逃す事があろうか・・・・
子供達はみな一様にして、潤んだ瞳をこちらにむけている・・・・



「てゐ・・・・・嘘だよね? てゐは私達のヒーローだもんね・・・・。」

「酷い・・・みんなは私の言う事より、こんな月なんかで育ったへにょり耳のいう事を信じるのっ!?
 そんな・・・私、今までいっぱい頑張ったのに・・・・
 ウドンゲの失敗を怒った永琳が「てめぇら兎なんぞは一週間人参抜きじゃあ!!」と言った時だって・・・
 溜めて溜めて、いつかは人参のプールを作ろうと画策してたお金を全部つぎ込んで!
  「レイセン・・・貴方が失敗を気にする事なんかないって! 今度頑張ればいいじゃない!!
   大丈夫! みんなにはバレない様に私が自腹で人参買ってくる!!
   だって・・・・レイセンがみんなに嫌われちゃうのなんか・・・・イヤだもん・・・・・
   平気! お金はまた溜めればいいんだもん!
   このお金を全部使えば皆の一週間分の人参用意できるよ!! あ、一人分足りないや・・・・
   へへ、私、一週間ダイエットしよっと・・・・・・・・」」




「てゐ・・・・そんな事までしてくれてたの?」
「私達の為に・・・・」
「ありがとうてゐ・・・・」
「一瞬でも疑った私達が馬鹿だったわ・・・。」

「ううん、皆、いいのよ。 わかってくれれば!」
「て、てゐ・・・それは・・・確か失敗したのがてゐでお金をだしたのが」
「てゐキック!」
「ぐはっ!!」



「ありがとうてゐ!」
「ありがとうてゐ!」
「ありがとうてゐ!」
「てゐ最高!」
「てゐ大好き!」
「てゐ最萌!」
「てゐ結婚して!」

「うふふ、かわいいみんな。
 当然の事よ・・・だって私は永遠亭のリーダーだもの!!」


わーーーーぱちぱちぱちぱちぱち・・・・・・・


「みんな! 私の事好きでいてくれる!?」
『もちろーーーん! てゐだいすきーーーーーー!!』
「みんな! 私の事一番好きでいてくれる!?」
『もちろーーーん! てゐさいもえーーーーーー!!』
「みんな! 私の事・・・・姫様よりどれくらい好き!?」
『すっごくすきーーーー! 百倍すきーーーーー!』
「あ・・・・・そっか・・・・ひゃくばい・・・・・か・・・」

ぼそぼそ(馬鹿! 百倍じゃないよ! もっといっぱいだよ! てゐが泣いちゃいそうじゃない!!)
ぼそぼそ(ご、ごめん! もっと・・・もっといっぱい好きだよ!!)
ぼそぼそ(私達ってどれくらいてゐが好きかな!?)
ぼそぼそ(いっぱいだよ!! かぞえられないくらいいっぱい!!)

『ごめんねてゐーーーー! 百億万倍好きだよーーーーー』
「う・・・・み・・・・みんな・・・・ありがとう・・・・・・」
『泣かないでてゐーーーー! わらってーーーー!!』
「こ・・・こうかな・・・・や、やだっ・・・はずかしぃ・・・・・」
『きゃーーーー! てゐ可愛いーーーーーーー!!』
「そ・・・・そんなぁ・・・・・」
『てゐーーー!! 私達はてゐが大好きーーーー!!』
「あ・・・ありがとう・・・・・もし・・・・私が永琳に虐められたら・・・・助けてくれる?」
『・・・・・・・・』

ぼそぼそ(え・・・・永琳様に・・・・? そ、それはちょっと・・・・・)
ぼそぼそ(馬鹿っ!! とりあえずてゐファンクラブ会員番号一桁の私に謝れっ!!)
ぼそぼそ(そうだっ! てゐはいっつも私達の面倒をみてくれてるんだ! そのお返しだ!!)
ぼそぼそ(そうよ! てゐを守る為だったらなんだってできるわ!!)
ぼそぼそ(そ・・・そうだよねっ! ごめんね! てゐ!!)

『たすけるよーーー!! てゐの為だったらなんだってするーーーー!!』
「あ・・・・・・あれ・・・・・うれしくて・・・なみだが・・・・・・」
『てゐーーーーー!! 大丈夫ーーーーー!?』
「うん・・・・・うん!! ・・・・みんな・・・ありがとう!!!」
『ううんーーー!! だって私達てゐが大好きなんだものーーーー!!』
「うふふ・・・・・私・・・・・しあわせ・・・・・」
『私達もーーー!! てゐのお陰で毎日がしあわせーーーー!!』
「嬉しい・・・・だって、皆が喜んでくれる事が・・・・私の一番の幸せだもん!!」

わーーーーーーぱちぱちぱちぱち・・・・・・・

今日も因幡の素兎は絶好調だ。

















カリカリ・・・・・
てゐはリーダーなだけあって、部屋は個室。
その部屋から、ノートに書き込む鉛筆の音が響く。



昼間には遊びまわり、夜には勉強をする。
これがデキるヤツの秘訣よ。

「良し、これであの部屋の子供達からの絶対的な支持は揺らぎ無いものになったわね・・・・・
 あとは・・・・・そうね、この部屋の兎達も戦闘力が高いのが揃ってるわ・・・・・
 そして・・・そう、この部屋のコイツは将来のびるわ、可愛いし。 ツバつけ・・・・ゲフン!目をつけとかなくちゃ・・・
 えーーと他には・・・・・」

ふふふ・・・・昼の顔は天真爛漫、元気いっぱいのはつらつロリ。
そして夜の顔は眼鏡をかけた可愛らしい知的な美少女。
完璧だわ・・・・。
このギャップに萌え狂え。

「くくく・・・・待っていなさいよ永琳、もうすぐよ・・・・もうすぐだわ!!
 もうすぐで絶対的に統制の取れた無敵の軍団が出来上がる!!
 その時が・・・・・キサマの最後だッ!!」

前回の失敗は次回に生かす。
それが策士の常識だ。
前回の敗因は、信頼度の欠如。
その為に永琳の部屋の前までに皆が逃げ出してしまったのだ。
しかし今回は違う!
もはや永遠亭の兎の殆どは、私が死ねといえば喜んで死ぬだろう。
その鋼の結束の前に・・・・キサマはどれだけ持ちこたえる事ができるかな!?
くくく・・・・








「てゐーーーーー。」


部屋の前に一人の兎が立っている。
何か用だろうか。

「あら? どうしたの?」
「永琳様から伝言ーーー。」
「・・・・なんて言ってた?」
「最近の貴方の演説は素晴らしいわね。
 えぇ、何をしようとしてるのかは一目瞭然よ。
 貴方はまだまだ反省が足りないようね。
 何処まで行っても貴方は因幡の素兎なんだ、ってわからせてあげる。
 明日から三日間、予定を空けておきなさい、楽しいショウタイムの始まりよ。」
「・・・・・・・・・・」

「あれー? 何処に行くのー? てゐ。」
「ごめんね、すぐ近くに泣いてる兎の気配がするの! 一刻も早く助けに行かなくっちゃ!!」
「・・・やさしいのね、てゐ。」
「ふふふ、当然でしょ、私はどこぞの冷血マッドサイエンティストなんかとは違うのよ。」
「やさしいのね、てゐ、でも愚かね、変装くらい見破って欲しいものだわ。」


ワニも今日は絶好調らしい。
どうやら因幡の素兎は今日も今日とて皮を剥がれる様だ。




しかし。
てゐはどれだけ怒られても一向に懲りやしない。
故に、永遠亭の騒動は永遠に終わらない。
永遠亭の詐欺師は、永遠に詐欺師なのだ。


三日後、永琳に陵辱されたよぅと泣き叫ぶてゐを助けようと、レイセンが立ち上がるのだが・・・・。
それはまた別の話、というかどうでもいい話。



こんにちは転石です。

今回は永遠亭より、因幡の素兎、てゐさんのお話です。
詐欺師らしさを全開にして書かせて頂きました。
話の流れ上、てゐさんは仮面をかぶりまくりなので、一回目に読んだ時より二回目に読んだ時の方が面白いかと思われます。
一回目は「こんなのてゐじゃねえ!」も、二回目は「うわー、詐欺ってる詐欺ってる」となると思われますので。
ちなみに当初の予定の題名は
「永遠てゐ ~黙れうどんげ てゐぱんち!~」
でした。
ニヤニヤ笑いながら読んで頂けると、非常に嬉しいです。
それでは今後の永遠亭の平和とうどんげの平穏を祈って、この場を締めさせて頂きます。
読んで頂き、ありがとうございました。

転石。
転石
[email protected]
http://www.misut3gicho.sakura.ne.jp/
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コメント



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12.70so削除
うあ、ものすっごいテンポがいい。
小気味良さを感じながら、ニヤニヤとしていましたよ。
そして、弄られる輝夜には新境地を見ました(笑)
34.100名前が無い程度の能力削除
素直に「話の作り方が凄く巧いなぁ」と思いました。
台詞回しも、軽妙でありながら、さじ一杯ほどの毒が含まれていて面白い…
爆笑はせずとも、最初から最後までズーッと楽しく読めました!
えーりんとてゐの関係が、ほのぼの殺伐(?)としてて楽しそう♪