紅魔館の大図書館は、基本的に光が少ない。
こんなところで四六時中本を読んでいては、あれよあれよという間に視力が落ちるだろう。
そんな図書館に住む魔女は、今日も今日とて、本を読んでいた。
多分、目を悪くしながら。
パラパラパラ・・・・
パチュリー「・・・・・・。」
パラパラパラ・・・・
パチュリー「う~ん・・・・・・。」
パラパラパラ・・・・
パチュリー「・・・・・・。」
パラパラパラ・・・・
パチュリー「・・・これかしら。」
・
・
・
博麗神社。
何度も説明するのはアレなので細かいことは省くが、とりあえず今は廃墟である。
そんな博麗神社を再建するプランが練られたので、暇得隊は視察に訪れていた。
霊夢「この辺が、寝室だったかな。」
魔理沙「この辺が炊事場だな。食料の備蓄は微々たる物だったけど。」
咲夜「で、この辺に戸棚があって、お茶とお茶菓子があったのよね。
高い奴はちょっと奥にあったかしら。未開封だったけど。」
アリス「天井の高さは、大体この位よ。あ、裏にはネズミの一匹くらい居たほうがいいかしら?」
霊夢「あんたら一言多い。」
割と細部まで知られている博麗神社。
しかしながら、細部を知ってる面々が多いと、縄張りにそう時間はかからないだろう。
霊夢は、喜んでいいのかどうか微妙な気持ちになった。
ともあれ、みんなやる気のようだ。
慧音「ふぁ~・・・・くしょん!」
霊夢「こら、呑気に欠伸なんかしてないの。」
慧音「何処をどう見たらそう見える?・・・・くしゅん!・・・あ~、花粉症が・・・。」
だがそんな中、約一名は何だか調子が悪そうだ。
霊夢「花粉症なんて、今時珍しいわね。」
慧音「患うときは・・・くしゅん!・・・患う・・・はくしょん!・・・・帰っていい?」
咲夜「駄目。ちゃんと作業すれば、花粉症に効くやつ分けてあげるから。」
慧音「ぞうばびっでぼば・・・。」
霊夢「はい、鼻紙。」
慧音「ずばん・・・。」
チーーン!!
慧音「あ~・・・う~・・・。そうは言ってもなぁ。
私はお前たちと違って、神社の細部まで知ってるわけじゃないからな。大したことは出来んぞ。」
魔理沙「何だ。何でも知ってそうなのに、こんな神社の構造もわからないのか?」
慧音「建築学は専門じゃあない。っていうか、人里じゃ誰も気にしないよ、こんな神社。」
霊夢「こんなとか言うな~!」
博麗神社は、人里からそれなりに離れており、その存在を知っている人間はあんまり居ない。
慧音くらいの存在になれば、その存在くらいは知っていて当然だろうが、
そこに住む巫女の、住居の細部までは、流石に知ってはいない。
慧音「へぷしっ!・・・うう、いい加減辛い・・・。目が・・・。」
アリス「はい、目薬。」
慧音「すまん・・・。」
アリス「魔理沙が作った奴だけど。」
慧音「やっぱり返す。」
魔理沙「それはどういう意味かね?」
人間だろうが妖怪だろうが半幽霊だろうが、花粉症にかかると大変辛い。
鼻水、眼のかゆみ等等、それは患った者にしか解らない。
慧音「はっくしゅん!・・・う~、やっぱり帰る。これじゃあ、何も出来ん・・・。」
霊夢「隊長さん、どうするの?」
咲夜「ま、仕方ないかしら。」
咲夜は、慧音に早退するよう伝えようとした、が。
?「大変だ~!!」
大変な声が聞こえたので、言うのをやめた。
咲夜「ん?あれは・・・。」
リグル「ぜ~・・・、ぜ~・・・。」
魔理沙「虫だな。」
霊夢「季節よね。暖かくなってきたし。」
アリス「春に蛍も、風流ね。」
声の主は、リグル・ナイトバグだ。
リグル「た、た、たたたたた・・・・・。」
魔理沙「落ち着け。深呼吸しろ。ほれ、私に合わせろ、ヒッヒッフー。」
リグル「ひ、ひ、ひえー。」
アリス「何処にツッこんだらいいと思う?」
霊夢「私に聞かないでよ。」
呼吸方法はともかく、リグルは二度三度呼吸をして、息を整えた。
リグル「ふ~、は~・・・・。あ~、ちょっと落ち着いた。」
咲夜「で、何が大変なのよ。」
リグル「それは・・・。」
リグルは色々思い出しながら、暇得隊に語り始めた・・・。
・
・
・
時は数刻前、紅魔館でのこと。
美鈴「全員、ちゃんと働いてるかしら?」
色々あったけど職務に復帰した紅美鈴は、
捕虜や食客たちを使って、何かと準備をしていた。
ルナサ「じゃあメルラン、あとはよろしくね。」
リリカ「きっと、迎えに来るからね。うるうる・・・。」
メルラン「わざわざそういうこと言わない。私が捨てられるみたいじゃないの。」
ルナサ「家が直るまでの辛抱。それまでは我慢して。」
メルラン「まあ、仕様がないわね。」
プリズムリバー三姉妹は一家離散し・・・、
もとい、家の修理と仕事とに分担することにしたらしい。
鈴仙「師匠~、姫~・・・。早く迎えに来てくださいよ~・・・。」
一人紅魔館に放置されっぱなしの鈴仙。
ちなみに輝夜は、永遠亭の修復が完了したと言う永琳の報を受け、
一目散に紅魔館を脱走・・・、ではなく、さっさと帰ったのだ。
鈴仙は置いてけぼりで。
鈴仙「兎はさびしいと、死んじゃうんですよ~・・・。死ぬ・・・。」
しかし、ここでコロッと死んじゃったら、某ラビットのパパよろしく、
肉パイにされて食べられてしまうのは目に見えている。
そういうことなので、がんばって生き抜いている。
しかし、
ルーミア「わ、私たち、どうなっちゃうの・・・・?」
リグル「し、知らないよ・・・・。」
ミスティア「毎日働かされて、遊ばれて、食べられそうになって・・・。」
ルーミア「もう、生きてる気がしない・・・。」
ミスティア「うう・・・。」
リグル「もう、どうにでもしてって感じね・・・。」
生きる希望が薄れつつある妖怪たちも居た。
そんな中、
チルノ「ちょっと~!なんで私がこんなことしなきゃいけないのよ!」
約一名、ぎゃーぎゃー騒いでいるのが居た。
この間、とある戦いに巻き込まれたチルノだ。
事件に関わった魔理沙は、とりあえずチルノをここへ連れて来た。
曰く、
魔理沙「色々あったのに、捕虜も何も無いんじゃ癪だしな。」
と言う事である。
事件の黒幕には逃げられたし、
巨大化した妖怪は、身内なので捕まえるわけにはいかない。
なので、その辺に落ちてた奴を連れて来た、ということだ。
美鈴「こらそこ!ちゃんと働きなさい!」
立場上美鈴は、チルノに警告をする。
チルノ「命令するな~!」
美鈴「口答えは・・・ふんっ!」
ごつんっ!
チルノに拳骨を叩き込む美鈴。
本気なら拳そのものが飛ぶところだ。
チルノ「いたたたたた!な、何するのよ~!?」
美鈴「許されないわ。お嬢様の前でやったら、殺されるわよ、あんた。」
チルノ「上等!やれるもんならやって・・・。」
?「ん?呼んだ?」
背後から、誰かさんの声。
チルノ「・・・・え?」
レミリア「ふんっ!」
どべぎゃっ!!
チルノ「ぐふっ・・・・。」
ばった~ん!
現れるなりレミリアは、チルノにマッハパンチを叩き込んだ。
本気なら不夜城レッドが飛ぶところだ。
本気でないとはいえ、レミリアのマッハパンチを叩き込まれたチルノは、
その場に倒れ込み、気を失ってしまった。
美鈴「あ、お嬢様。ご機嫌麗しゅう。」
レミリア「どうやら、まだ服していない不届き者が居るようね。」
美鈴「ええ・・・。申し訳ございません。」
レミリア「しっかり調教しておくこと。」
美鈴「はっ!」
それなりの言葉をかけて、レミリアは奥へと引っ込んで行った。
それを見届けると美鈴は、再び捕虜の監視へと戻った。
レミリア「咲夜~・・・、は、留守か。」
たまたまこんな時間に起きてみたものだが、特にやることは無いので暇である。
そんな暇を持て余しているお嬢様に、
パチュリー「レミィ、ちょっといい?」
レミリア「なあに?」
お友達のパチュリーが声をかけた。
パチュリーはレミリアに、本の1ページを見せる。
パチュリー「これ、巨大化の秘術。」
レミリア「ふうん。これが、一連の事件の原因だっていうの?」
パチュリー「それはわからないけど。でも、試してみる価値はあると思うわ。」
レミリア「そうねぇ、結局原因はよく分からないわけだし・・・。ちょっと、そこの。」
レミリアはそこらに居る何かに、ちょいちょいと手招きする。
ルーミア「な、なによ~・・・?」
犠牲者は、たまたまそこに居たルーミア。
レミリア「そんなに恐がらなくてもいいわ。ちょっと実験台になってもらうだけだから。」
ルーミア「それだけで十分恐いってば~!」
レミリア「パチェ、やっていいわよ。」
ルーミア「私の意志は?」
レミリア「無い。」
捕虜の待遇は酷いものだ。
パチュリー「~・・・~~・・・・。」
パチュリーは、何時の間にか詠唱を始めていた。
ルーミア「ちょっと!何が起こるって言うのよ~!?」
レミリア「黙ってな。もし何かあったら、全力で止めてあげるわ。」
ルーミア「それって今から何か起こるってこと!?それに全力って!
私死んじゃうってば!ちょっと!ねえってば~!」
ルーミアの抗議などまるで聞こえていない様子で、レミリアはパチュリーを見ている。
パチュリー「~~~!~~~!」
詠唱が、最終段階に入った。
まさにそのときである!!
パチュリー「コホっ・・・!」
パチュリーが咳き込んでしまった。
呪文の詠唱は失敗である。
レミリア「もう。無理してそんな長い詠唱しなくても・・・?」
シュウシュウシュウ・・・・
何か、嫌な音が耳に入ってきた。
ルーミア「え!?な、何よこの音!?」
レミリア「これは・・・いけない!」
ヒュン!と、レミリアは猛スピードで姿を眩ました。
逃げたのではない、危険を未然に避けようとしただけだ。
ルーミア「ええ!?私を置いてかないでぇええ!」
当然、ルーミアは置いてけぼりを食らう。
ぴか~~~~!!!
ルーミア「わ~~~~~!」
どっか~~~~ん!!
大爆発が起こった!
玄関付近は、またもやボロボロ。
咲夜が嘆くことだろう。
レミリア「危なかった~。パチェ、無事?」
真っ先に、最速で爆発を避けたレミリアは、先程まで居た場所へと戻った。
もうもうと立ち込める砂煙のせいで、視界は遮られている。
レミリア「パチェ、大丈夫?」
友人の安否を気にするお嬢様。
少しして、煙が晴れてきた。
レミリア「え・・・・?」
レミリアの視界に入ってきたモノを見て、ちょっと驚いた。
ご自慢の蝙蝠風の羽も、ピンと伸びている。
パチュリー「・・・・・・・・・・・。」
お嬢様の視界に入ってきたのは、紛れも無い、友人のパチュリーであった。
ただし、巨大化している。
レミリア「パチェ・・・。そんなお約束、守らなくてもいいのに。」
変わり果てた友人に、哀れみとも何とも表現し難い声をかけるレミリア。
と、そのとき!
ずどどどど~~~ん!!!
レミリア「何!?」
地震とも取れる地響きに異常を感じたレミリアは、音が聞こえた方を見た!
そこには何と・・・。
ルミアー「ジンニクー!!」
宵闇怪獣ルミアー。
メルラン躁人「めるぽっぽっぽっぽっぽ。」
金管奏者メルラン躁人。
ミスティア「コケ~~~~!!!」
巨大ミスティア。
ウドンゴ「ゲェェエエエエ!!!」
月兎怪獣ウドンゴ。
チャイナ「ホォォオオオオゥ~~!!!」
中華怪獣チャイナ。
これはどうしたことか!
これまでの事件に関わってきた、全ての怪獣が、再び姿を現したのだ!
レティラス星人「くろまく~!」
さらに呼ばれても無いのに、レティラス星人まで現れた。
が、
ぷち
レティラス星人「ぐふ・・・・・。」
あっさり踏み潰された。
レティラス星人は巨大化してないからだ。
リグモン「うわわわわ・・・・・。」
こうなれば表記を変えられるのが、リグルことリグモン。
チルノ「わ~~~~!うわ~~~~!!」
いたってノーマルなチルノ。
いっぱいいっぱいの二人は、腰が抜けるわ冷静を保てないわで、逃げることが出来ない。
リグモン「た、助けてえ~~~!!」
チルノ「わ~~~~~~~!!」
とにかく慌てふためく二人。
目の前の現実に、二人は対処しきれない。
その点、我らがお嬢様は違う。
レミリア「・・・魔法の失敗で、効果が拡散。そして、内に残る巨大化の原因と融合、
不思議な反応して、バーストした結果、巨大化が再発したって言うのね。」
冷静に、状況を見ることが出来る。
そこは500歳、流石である。
チルノ「あわわわわ・・・・。ど、どうするのよお!!」
レミリア「咲夜は、神社再建で出払ってるし・・・。面倒だなぁ。」
チルノ「ねえ!どうするのよお!ねえってば~!」
レミリア「ああ五月蝿い。ちょっと、そこのリグモン。」
リグモン「な、な、な、な、何よぉ・・・。」
レミリア「ちょっと神社まで飛んで、咲夜と愉快な仲間達を呼んできなさい。」
リグモン「わ、わかったぁ~!」
怪獣軍団と渡り合うには、暇得隊の力が必要だ。
レミリア一人では、少ししんどい。
リグモンはレミリアに脅されるままに、神社の方へ飛び立とうとした!
チャイナ「ホォオオゥ!!」
リグモン「わ~~~!!」
飛んで春に居る夏の虫を叩き潰さんと、チャイナがリグモンに強襲をかけた!
危うし、リグモン!
レミリア「ふんっ。」
バキィ!
チャイナ「ギャアアアア!!」
レミリアのパンチに怯むチャイナ。
レミリア「ほら、さっさと行きな。」
リグモン「ひええ・・・・。な、何でこんなことに・・・・。」
レミリアに促されるままに、リグモンは博麗神社へと向かったのであった・・・。
・
・
・
リグモン「それでかくかくしかじかのまるまるうしうしで・・・。」
咲夜「何てこと・・・・。」
紅魔館の惨状を思い、咲夜は苦い顔をした。
掃除が大変になるだろう、という顔だ。
リグモン「って!こっちでも何時の間にか表記変えられてる!?」
別のことにびっくりしているリグモンは置いといて。
咲夜「こうしちゃいられないわ。全員、紅魔館に引き返すわよ。」
魔理沙「合点だ。」
アリス「ていうか、私たちは紅魔館から来た覚えは無いけどね。」
咲夜「細かいことはいい。とにかく、時を止めた上で、全速前進!」
慧音「ちょっと、ま・・・・。」
お嬢様の安否が気遣われるこの状況。
多分大丈夫だと思うが、急ぐに越した事は無い。
咲夜「到着。」
慧音「って・・・。あ゛~?」
そういうわけで、色々無視して、暇得隊は紅魔館に到着した。
魔理沙「便利だよな。ご都合主義。」
咲夜「無駄を省いただけよ。」
リグモン「私まで連れてこないでよ~!」
咲夜「あら、あのまま逃げようとでも思ってたの?」
リグモン「え?あ~、いや、それはその・・・・。」
咲夜「そう簡単には、逃げられなくてよ?」
リグモン「う~、しくしく・・・・。」
まぁ、リグモンは置いといて、である。
メルラン躁人「めるぽっぽっぽっぽ。」
ミスティア「コケコッコーーーーー!!」
帰ってきて早々に、騒音公害の洗礼を受ける暇得隊。
霊夢「ああ!五月蝿いわね!」
アリス「もうちょっと静かにして欲しいわね。」
あんまり五月蝿過ぎるのが好きでない二人は、二匹の方を向いた。
アリス「それ!」
アリスが、人形を投げた!
どか~ん!!
ミスティア「コケー!」
メルラン躁人「ぽ~・・・。」
その爆発で、二匹は怯む。
アリス「霊夢、あとよろしく。」
霊夢「二重大結界!」
ぴき~ん!
二匹が大人しくなった一瞬をつき、霊夢が結界を張る。
二匹の動きが止まった。
霊夢「ふう、少しだけの間なら、静かになるわ。」
咲夜「お嬢様を探すわよ!」
一同は、紅魔館の奥へと向かう。
そして、少し行ったところで。
レミリア「咲夜!」
レミリアと合流することが出来た。
咲夜「お嬢様、ご無事で!」
レミリア「まぁこの通りよ。・・・・・あれを見て。」
レミリアは、とあるモノを指さした。
パチュリー「・・・・・・・・・・・。」
魔理沙「おいおい、遂にこいつまで巨大化か?」
レミリア「魔法に失敗してね。哀れこんな姿に。」
アリス「大方、詠唱中に咳き込んで、そこから失敗したんでしょうね。」
レミリア「まぁ、実にそのとおりよ。」
強い魔力を持つこの魔女が、巨大化して暴れだしたらどうなることか解らない。
一同に緊張が走る・・・!
パチュリー「・・・・・・・・・・・・・・・・。」
が、巨大パチュリーは、一向に動く気配を見せない。
霊夢「巨大化してる割には、暴れないわね。」
レミリア「多分・・・、あ、そっちより、あっちの方が大変だから何とかして。」
ずずずず~~~~ん!!
チルノ「助けてぇ~!」
ぷちっ
チルノ「ぎゃ・・・・。」
あっちでは、チルノが何かに踏み潰されたところだ。
ウドンゴ「<○>
こんなところで四六時中本を読んでいては、あれよあれよという間に視力が落ちるだろう。
そんな図書館に住む魔女は、今日も今日とて、本を読んでいた。
多分、目を悪くしながら。
パラパラパラ・・・・
パチュリー「・・・・・・。」
パラパラパラ・・・・
パチュリー「う~ん・・・・・・。」
パラパラパラ・・・・
パチュリー「・・・・・・。」
パラパラパラ・・・・
パチュリー「・・・これかしら。」
・
・
・
博麗神社。
何度も説明するのはアレなので細かいことは省くが、とりあえず今は廃墟である。
そんな博麗神社を再建するプランが練られたので、暇得隊は視察に訪れていた。
霊夢「この辺が、寝室だったかな。」
魔理沙「この辺が炊事場だな。食料の備蓄は微々たる物だったけど。」
咲夜「で、この辺に戸棚があって、お茶とお茶菓子があったのよね。
高い奴はちょっと奥にあったかしら。未開封だったけど。」
アリス「天井の高さは、大体この位よ。あ、裏にはネズミの一匹くらい居たほうがいいかしら?」
霊夢「あんたら一言多い。」
割と細部まで知られている博麗神社。
しかしながら、細部を知ってる面々が多いと、縄張りにそう時間はかからないだろう。
霊夢は、喜んでいいのかどうか微妙な気持ちになった。
ともあれ、みんなやる気のようだ。
慧音「ふぁ~・・・・くしょん!」
霊夢「こら、呑気に欠伸なんかしてないの。」
慧音「何処をどう見たらそう見える?・・・・くしゅん!・・・あ~、花粉症が・・・。」
だがそんな中、約一名は何だか調子が悪そうだ。
霊夢「花粉症なんて、今時珍しいわね。」
慧音「患うときは・・・くしゅん!・・・患う・・・はくしょん!・・・・帰っていい?」
咲夜「駄目。ちゃんと作業すれば、花粉症に効くやつ分けてあげるから。」
慧音「ぞうばびっでぼば・・・。」
霊夢「はい、鼻紙。」
慧音「ずばん・・・。」
チーーン!!
慧音「あ~・・・う~・・・。そうは言ってもなぁ。
私はお前たちと違って、神社の細部まで知ってるわけじゃないからな。大したことは出来んぞ。」
魔理沙「何だ。何でも知ってそうなのに、こんな神社の構造もわからないのか?」
慧音「建築学は専門じゃあない。っていうか、人里じゃ誰も気にしないよ、こんな神社。」
霊夢「こんなとか言うな~!」
博麗神社は、人里からそれなりに離れており、その存在を知っている人間はあんまり居ない。
慧音くらいの存在になれば、その存在くらいは知っていて当然だろうが、
そこに住む巫女の、住居の細部までは、流石に知ってはいない。
慧音「へぷしっ!・・・うう、いい加減辛い・・・。目が・・・。」
アリス「はい、目薬。」
慧音「すまん・・・。」
アリス「魔理沙が作った奴だけど。」
慧音「やっぱり返す。」
魔理沙「それはどういう意味かね?」
人間だろうが妖怪だろうが半幽霊だろうが、花粉症にかかると大変辛い。
鼻水、眼のかゆみ等等、それは患った者にしか解らない。
慧音「はっくしゅん!・・・う~、やっぱり帰る。これじゃあ、何も出来ん・・・。」
霊夢「隊長さん、どうするの?」
咲夜「ま、仕方ないかしら。」
咲夜は、慧音に早退するよう伝えようとした、が。
?「大変だ~!!」
大変な声が聞こえたので、言うのをやめた。
咲夜「ん?あれは・・・。」
リグル「ぜ~・・・、ぜ~・・・。」
魔理沙「虫だな。」
霊夢「季節よね。暖かくなってきたし。」
アリス「春に蛍も、風流ね。」
声の主は、リグル・ナイトバグだ。
リグル「た、た、たたたたた・・・・・。」
魔理沙「落ち着け。深呼吸しろ。ほれ、私に合わせろ、ヒッヒッフー。」
リグル「ひ、ひ、ひえー。」
アリス「何処にツッこんだらいいと思う?」
霊夢「私に聞かないでよ。」
呼吸方法はともかく、リグルは二度三度呼吸をして、息を整えた。
リグル「ふ~、は~・・・・。あ~、ちょっと落ち着いた。」
咲夜「で、何が大変なのよ。」
リグル「それは・・・。」
リグルは色々思い出しながら、暇得隊に語り始めた・・・。
・
・
・
時は数刻前、紅魔館でのこと。
美鈴「全員、ちゃんと働いてるかしら?」
色々あったけど職務に復帰した紅美鈴は、
捕虜や食客たちを使って、何かと準備をしていた。
ルナサ「じゃあメルラン、あとはよろしくね。」
リリカ「きっと、迎えに来るからね。うるうる・・・。」
メルラン「わざわざそういうこと言わない。私が捨てられるみたいじゃないの。」
ルナサ「家が直るまでの辛抱。それまでは我慢して。」
メルラン「まあ、仕様がないわね。」
プリズムリバー三姉妹は一家離散し・・・、
もとい、家の修理と仕事とに分担することにしたらしい。
鈴仙「師匠~、姫~・・・。早く迎えに来てくださいよ~・・・。」
一人紅魔館に放置されっぱなしの鈴仙。
ちなみに輝夜は、永遠亭の修復が完了したと言う永琳の報を受け、
一目散に紅魔館を脱走・・・、ではなく、さっさと帰ったのだ。
鈴仙は置いてけぼりで。
鈴仙「兎はさびしいと、死んじゃうんですよ~・・・。死ぬ・・・。」
しかし、ここでコロッと死んじゃったら、某ラビットのパパよろしく、
肉パイにされて食べられてしまうのは目に見えている。
そういうことなので、がんばって生き抜いている。
しかし、
ルーミア「わ、私たち、どうなっちゃうの・・・・?」
リグル「し、知らないよ・・・・。」
ミスティア「毎日働かされて、遊ばれて、食べられそうになって・・・。」
ルーミア「もう、生きてる気がしない・・・。」
ミスティア「うう・・・。」
リグル「もう、どうにでもしてって感じね・・・。」
生きる希望が薄れつつある妖怪たちも居た。
そんな中、
チルノ「ちょっと~!なんで私がこんなことしなきゃいけないのよ!」
約一名、ぎゃーぎゃー騒いでいるのが居た。
この間、とある戦いに巻き込まれたチルノだ。
事件に関わった魔理沙は、とりあえずチルノをここへ連れて来た。
曰く、
魔理沙「色々あったのに、捕虜も何も無いんじゃ癪だしな。」
と言う事である。
事件の黒幕には逃げられたし、
巨大化した妖怪は、身内なので捕まえるわけにはいかない。
なので、その辺に落ちてた奴を連れて来た、ということだ。
美鈴「こらそこ!ちゃんと働きなさい!」
立場上美鈴は、チルノに警告をする。
チルノ「命令するな~!」
美鈴「口答えは・・・ふんっ!」
ごつんっ!
チルノに拳骨を叩き込む美鈴。
本気なら拳そのものが飛ぶところだ。
チルノ「いたたたたた!な、何するのよ~!?」
美鈴「許されないわ。お嬢様の前でやったら、殺されるわよ、あんた。」
チルノ「上等!やれるもんならやって・・・。」
?「ん?呼んだ?」
背後から、誰かさんの声。
チルノ「・・・・え?」
レミリア「ふんっ!」
どべぎゃっ!!
チルノ「ぐふっ・・・・。」
ばった~ん!
現れるなりレミリアは、チルノにマッハパンチを叩き込んだ。
本気なら不夜城レッドが飛ぶところだ。
本気でないとはいえ、レミリアのマッハパンチを叩き込まれたチルノは、
その場に倒れ込み、気を失ってしまった。
美鈴「あ、お嬢様。ご機嫌麗しゅう。」
レミリア「どうやら、まだ服していない不届き者が居るようね。」
美鈴「ええ・・・。申し訳ございません。」
レミリア「しっかり調教しておくこと。」
美鈴「はっ!」
それなりの言葉をかけて、レミリアは奥へと引っ込んで行った。
それを見届けると美鈴は、再び捕虜の監視へと戻った。
レミリア「咲夜~・・・、は、留守か。」
たまたまこんな時間に起きてみたものだが、特にやることは無いので暇である。
そんな暇を持て余しているお嬢様に、
パチュリー「レミィ、ちょっといい?」
レミリア「なあに?」
お友達のパチュリーが声をかけた。
パチュリーはレミリアに、本の1ページを見せる。
パチュリー「これ、巨大化の秘術。」
レミリア「ふうん。これが、一連の事件の原因だっていうの?」
パチュリー「それはわからないけど。でも、試してみる価値はあると思うわ。」
レミリア「そうねぇ、結局原因はよく分からないわけだし・・・。ちょっと、そこの。」
レミリアはそこらに居る何かに、ちょいちょいと手招きする。
ルーミア「な、なによ~・・・?」
犠牲者は、たまたまそこに居たルーミア。
レミリア「そんなに恐がらなくてもいいわ。ちょっと実験台になってもらうだけだから。」
ルーミア「それだけで十分恐いってば~!」
レミリア「パチェ、やっていいわよ。」
ルーミア「私の意志は?」
レミリア「無い。」
捕虜の待遇は酷いものだ。
パチュリー「~・・・~~・・・・。」
パチュリーは、何時の間にか詠唱を始めていた。
ルーミア「ちょっと!何が起こるって言うのよ~!?」
レミリア「黙ってな。もし何かあったら、全力で止めてあげるわ。」
ルーミア「それって今から何か起こるってこと!?それに全力って!
私死んじゃうってば!ちょっと!ねえってば~!」
ルーミアの抗議などまるで聞こえていない様子で、レミリアはパチュリーを見ている。
パチュリー「~~~!~~~!」
詠唱が、最終段階に入った。
まさにそのときである!!
パチュリー「コホっ・・・!」
パチュリーが咳き込んでしまった。
呪文の詠唱は失敗である。
レミリア「もう。無理してそんな長い詠唱しなくても・・・?」
シュウシュウシュウ・・・・
何か、嫌な音が耳に入ってきた。
ルーミア「え!?な、何よこの音!?」
レミリア「これは・・・いけない!」
ヒュン!と、レミリアは猛スピードで姿を眩ました。
逃げたのではない、危険を未然に避けようとしただけだ。
ルーミア「ええ!?私を置いてかないでぇええ!」
当然、ルーミアは置いてけぼりを食らう。
ぴか~~~~!!!
ルーミア「わ~~~~~!」
どっか~~~~ん!!
大爆発が起こった!
玄関付近は、またもやボロボロ。
咲夜が嘆くことだろう。
レミリア「危なかった~。パチェ、無事?」
真っ先に、最速で爆発を避けたレミリアは、先程まで居た場所へと戻った。
もうもうと立ち込める砂煙のせいで、視界は遮られている。
レミリア「パチェ、大丈夫?」
友人の安否を気にするお嬢様。
少しして、煙が晴れてきた。
レミリア「え・・・・?」
レミリアの視界に入ってきたモノを見て、ちょっと驚いた。
ご自慢の蝙蝠風の羽も、ピンと伸びている。
パチュリー「・・・・・・・・・・・。」
お嬢様の視界に入ってきたのは、紛れも無い、友人のパチュリーであった。
ただし、巨大化している。
レミリア「パチェ・・・。そんなお約束、守らなくてもいいのに。」
変わり果てた友人に、哀れみとも何とも表現し難い声をかけるレミリア。
と、そのとき!
ずどどどど~~~ん!!!
レミリア「何!?」
地震とも取れる地響きに異常を感じたレミリアは、音が聞こえた方を見た!
そこには何と・・・。
ルミアー「ジンニクー!!」
宵闇怪獣ルミアー。
メルラン躁人「めるぽっぽっぽっぽっぽ。」
金管奏者メルラン躁人。
ミスティア「コケ~~~~!!!」
巨大ミスティア。
ウドンゴ「ゲェェエエエエ!!!」
月兎怪獣ウドンゴ。
チャイナ「ホォォオオオオゥ~~!!!」
中華怪獣チャイナ。
これはどうしたことか!
これまでの事件に関わってきた、全ての怪獣が、再び姿を現したのだ!
レティラス星人「くろまく~!」
さらに呼ばれても無いのに、レティラス星人まで現れた。
が、
ぷち
レティラス星人「ぐふ・・・・・。」
あっさり踏み潰された。
レティラス星人は巨大化してないからだ。
リグモン「うわわわわ・・・・・。」
こうなれば表記を変えられるのが、リグルことリグモン。
チルノ「わ~~~~!うわ~~~~!!」
いたってノーマルなチルノ。
いっぱいいっぱいの二人は、腰が抜けるわ冷静を保てないわで、逃げることが出来ない。
リグモン「た、助けてえ~~~!!」
チルノ「わ~~~~~~~!!」
とにかく慌てふためく二人。
目の前の現実に、二人は対処しきれない。
その点、我らがお嬢様は違う。
レミリア「・・・魔法の失敗で、効果が拡散。そして、内に残る巨大化の原因と融合、
不思議な反応して、バーストした結果、巨大化が再発したって言うのね。」
冷静に、状況を見ることが出来る。
そこは500歳、流石である。
チルノ「あわわわわ・・・・。ど、どうするのよお!!」
レミリア「咲夜は、神社再建で出払ってるし・・・。面倒だなぁ。」
チルノ「ねえ!どうするのよお!ねえってば~!」
レミリア「ああ五月蝿い。ちょっと、そこのリグモン。」
リグモン「な、な、な、な、何よぉ・・・。」
レミリア「ちょっと神社まで飛んで、咲夜と愉快な仲間達を呼んできなさい。」
リグモン「わ、わかったぁ~!」
怪獣軍団と渡り合うには、暇得隊の力が必要だ。
レミリア一人では、少ししんどい。
リグモンはレミリアに脅されるままに、神社の方へ飛び立とうとした!
チャイナ「ホォオオゥ!!」
リグモン「わ~~~!!」
飛んで春に居る夏の虫を叩き潰さんと、チャイナがリグモンに強襲をかけた!
危うし、リグモン!
レミリア「ふんっ。」
バキィ!
チャイナ「ギャアアアア!!」
レミリアのパンチに怯むチャイナ。
レミリア「ほら、さっさと行きな。」
リグモン「ひええ・・・・。な、何でこんなことに・・・・。」
レミリアに促されるままに、リグモンは博麗神社へと向かったのであった・・・。
・
・
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リグモン「それでかくかくしかじかのまるまるうしうしで・・・。」
咲夜「何てこと・・・・。」
紅魔館の惨状を思い、咲夜は苦い顔をした。
掃除が大変になるだろう、という顔だ。
リグモン「って!こっちでも何時の間にか表記変えられてる!?」
別のことにびっくりしているリグモンは置いといて。
咲夜「こうしちゃいられないわ。全員、紅魔館に引き返すわよ。」
魔理沙「合点だ。」
アリス「ていうか、私たちは紅魔館から来た覚えは無いけどね。」
咲夜「細かいことはいい。とにかく、時を止めた上で、全速前進!」
慧音「ちょっと、ま・・・・。」
お嬢様の安否が気遣われるこの状況。
多分大丈夫だと思うが、急ぐに越した事は無い。
咲夜「到着。」
慧音「って・・・。あ゛~?」
そういうわけで、色々無視して、暇得隊は紅魔館に到着した。
魔理沙「便利だよな。ご都合主義。」
咲夜「無駄を省いただけよ。」
リグモン「私まで連れてこないでよ~!」
咲夜「あら、あのまま逃げようとでも思ってたの?」
リグモン「え?あ~、いや、それはその・・・・。」
咲夜「そう簡単には、逃げられなくてよ?」
リグモン「う~、しくしく・・・・。」
まぁ、リグモンは置いといて、である。
メルラン躁人「めるぽっぽっぽっぽ。」
ミスティア「コケコッコーーーーー!!」
帰ってきて早々に、騒音公害の洗礼を受ける暇得隊。
霊夢「ああ!五月蝿いわね!」
アリス「もうちょっと静かにして欲しいわね。」
あんまり五月蝿過ぎるのが好きでない二人は、二匹の方を向いた。
アリス「それ!」
アリスが、人形を投げた!
どか~ん!!
ミスティア「コケー!」
メルラン躁人「ぽ~・・・。」
その爆発で、二匹は怯む。
アリス「霊夢、あとよろしく。」
霊夢「二重大結界!」
ぴき~ん!
二匹が大人しくなった一瞬をつき、霊夢が結界を張る。
二匹の動きが止まった。
霊夢「ふう、少しだけの間なら、静かになるわ。」
咲夜「お嬢様を探すわよ!」
一同は、紅魔館の奥へと向かう。
そして、少し行ったところで。
レミリア「咲夜!」
レミリアと合流することが出来た。
咲夜「お嬢様、ご無事で!」
レミリア「まぁこの通りよ。・・・・・あれを見て。」
レミリアは、とあるモノを指さした。
パチュリー「・・・・・・・・・・・。」
魔理沙「おいおい、遂にこいつまで巨大化か?」
レミリア「魔法に失敗してね。哀れこんな姿に。」
アリス「大方、詠唱中に咳き込んで、そこから失敗したんでしょうね。」
レミリア「まぁ、実にそのとおりよ。」
強い魔力を持つこの魔女が、巨大化して暴れだしたらどうなることか解らない。
一同に緊張が走る・・・!
パチュリー「・・・・・・・・・・・・・・・・。」
が、巨大パチュリーは、一向に動く気配を見せない。
霊夢「巨大化してる割には、暴れないわね。」
レミリア「多分・・・、あ、そっちより、あっちの方が大変だから何とかして。」
ずずずず~~~~ん!!
チルノ「助けてぇ~!」
ぷちっ
チルノ「ぎゃ・・・・。」
あっちでは、チルノが何かに踏み潰されたところだ。
ウドンゴ「<○>
いつも笑わせてもらっています。
けーねさん最高です(^^
花粉症は辛いですね・・・ティッシュが幾らあっても足らない。
これは花粉がなくならないと絶対治らないし。
風邪とはちがうんだよ!風邪とは!