「猫の肉球って、どうしてこうも魅了して離さないんでしょうね」
「はあ」
「何故肉球を揉むのか、と聞かれればそこに肉球が在るから、としか答えられないでしょうね」
「理由とか答えとか何でも良いんですけど、もうそろそろ離して貰えないですか」
「あと1時間だけ」
「そのセリフ、もう4回目です」
さとり様が肉球を触り始めて6時間、未だ離す気配を見せない。
最初はあたいの方から構って欲しいと膝の上に乗り、さとり様も構いたかったらしく、すぐに遊んでくれた。
のは良いんだけど、後半は肉球を触る事に終始して、延々と肉球をぷにぷにぷにぷに。ぷにぷにぷにぷにぷにぷに……。
時にさすり、時に揉み、時に押してみたりと、思うさま堪能してくれるのは猫冥利に尽きると言うもんだが、それにしても限度がある。
いい加減飽きて離して欲しいとずっとさとり様並のジト目で熱い視線を送っているが、一向に離す気配を見せない。
無理矢理逃げようとすればぎゅっと抱きしめられて身動きが取れなくなり、そこから更にもがこうとすれば、今度は手足を押さえられてもむもむと強めに揉まれる。
むしろ逃がしませんよと言わんばかりにひっくり返され、では後ろ足で蹴ろうとすれば足の間に手を入れられて相手まで届かない。
猫との付き合いがとんでもなく長いさとり様には、生半可な戦法は通じない。加えて相手の心が読める能力のせいで、考えている事が丸分かり。
偶然と言う要素が絡まなければ、ここ百年のさとり様の完封率は10割。
負けると分かっていて何故死地へ赴くのかと問われれば、そこにさとり様が在るから、としか答えられないだろう。
かくて今日も見事な玉砕っぷりを果たしたのだった。
「秋も深まって、人肌恋しい季節には肉球が一番ですね」
肉球を自分のほっぺにくっつけながら言う。
「いや、人肌恋しいなら肉球じゃなくて、人肌を求めましょうよ」
「じゃあ、肉球恋しい季節です」
「さとり様は一年中、肉球触りっぱなしじゃないですか」
春夏秋冬、常にさとり様は肉球を求めている。
「今は強化キャンペーン中なんですよ、題して『この肉球のために私は生きている』」
「はあ、そうですか。その強化キャンペーンのせいでもう指先に感覚が無いんですけど」
「それにしても、肉球恋しい季節ですね」
こっちの話を聞いてない、いや、聞くつもりが無い。
「人の話は聞いて下さいよ、さとり様」
「人じゃないから聞きません」
「人型になりますよ」
「そうしたら仕方ありません、猫耳で遊びますよ」
「猫耳、出さないで人型になりますから」
「泣きますよ」
ほんとに目尻にうっすらと涙を浮かべている。それくらいで泣かないで下さいよ。
と、ガシャン!と近くで何かが落ちた音がした。
「あら、何事でしょうね」
さとり様は立ち上がり、音の鳴った方へと様子を見に行った。
あたいを抱えたまま。
・・・
「お空?」
炊事場に入るとお空が居て、その足元には割れた食器が散乱していた。
「あ、わわ、私じゃないよ?」
慌ててその食器を割ったのが自分じゃないと否定している。
けど、このうろたえっぷりは自分が割ったって言ってるようなもんだった。割れた食器、今更隠そうとしてるし。
「お空、さとり様には嘘付けないよ」
「だから、私じゃないもん!」
お空は意地になってしまってる。
さとり様は心が読めるし、多分お空が割ったと分かっているんだろうけど、すぐにお空を責めたりはしなかった。
やがてさとり様が諭すように話し掛ける。
「お空、この肉球を触ってみて」
「え?」
さとり様はあたいの肉球を差し出す。ぷにぷにとお空が肉球を触る。
「あ、あふぅ」
変な声を上げながら、お空の顔はどんどんばつの悪そうな顔になって行く。
やがてお空は、申し訳無さそうに頭を下げた。
「すみません、お皿、割っちゃたの私なんです。嘘をつくなんて、私、私」
お空は肉球をぷにぷにしながら、涙を流している。
「良いのですよ、お空。肉球の前では、誰もがその無垢なる触り心地に己の所業を恥じずには居られないものです」
さとり様も肉球を触り始める。
「肉球に触れ、あなたは自分の行いを反省した。それで十分です」
「さとり様ぁー」
お空は泣いたまま、さとり様に片腕で抱きついて離れない。
さとり様もお空を抱いた。片腕で。
二人ともしっかりと肉球をぷにぷにと触りながら。
あたいは何とも微妙な表情のまま、お空が泣き止んで離れるまで何も言えなかった。
さとり様はそれからもあたいを離さなかったけど、夜は胸に抱いて寝てくれた。
多分これからも、さとり様がずっと離してくれなくても、懲りずに構って貰いに行くだろう。
そうしてさとり様の上で、前足で踏みならしながらつくづく思う。
このおっぱいのために私は生きてるんだなぁ、と。
どんな凶悪犯罪者も、肉球ぷにぷにすれば更生できるかと思いました。
そして。
なんというオチであることか!
爆撃さん >肉球は郷愁にして慕情。純粋な心を思い出させます。
オチは、猫って割と大人になってもあれやるよねと言う事で。
6. >さとり様の肉球への思いについてですね。
13. >お燐と肉球とおっぱいに、プロージット!
14. >肉球は全てを優しく包みます。
19. >これからがメインイベントさ。
そうだな、肉球だ。
ふにふにと
でも、さとり様のおっぱいの方が触りたいです。
かわいい話ですねぇ。よい子も安心です! 超門番
猫飼ってる私は神と考えてよろしいのでしょうか 冥途蝶
26. >みんな可愛くてたまらないです。
27. >世の中揉みつ揉まれつ。
28. >そりゃもうオールナイトでも。サタデーのナイトにフィーバーしちゃっても良いです。
29. >お燐「あ た い ん だ」
お嬢様・冥途蝶・超門番さん >順番にレスです。
飼うとなると結構手間が掛かるんで、何人かで世話が出来た方が安心ですね。今住んでるとこは駄目なんで、いっそそう言う目的で猫用の共同住宅でも借りれないものか・・・商売にならないか。
セーフティです。
いいえ、お燐が神です。
37. >これからがry