*
カリカリ、という音だけが響く教室。
そこに場違いな声が一つだけ浮いていた。
「…ねぇ、メリー聞いてるの?ねぇってば」
横から聞こえる蓮子の声である。
いや、聞いてあげたいんだけど。それどころじゃあないんだってば。
「酷いと思わない?同じクラスの男の子がさ、『宇佐見は口を開いてないと死ぬんじゃないか?』だって!私はマグロじゃないっつーの!」
あのね、蓮子。
現状を見ればそう思われてても仕方ないわよ?
目の前には、人間かどうか疑いたくなるようなスピードで板書する教授。
一心不乱にそれを書き写す学生たち。
自分の存在と劣化したコピー機、どちらが上等なのか考えたくなるような風景が目の前に広がっている。
それでも、私は手を動かし続けなければならない。
理由は簡単。
精神西洋医学史Ⅱ(後期なのでⅡ)は必修の単位で。
落とすと留年が確定してしまうから。
近年は就職戦線も厳しいらしい。もし一年出遅れもしたら大変なことになる、と新聞かなんかで読んだ気がする。
「おーい、メリーさーん。今貴女の隣にいるの」
それでも蓮子はおかまいなしに話しかけてくる。
大体、それは普通メリーの方がいう台詞だろう。
周りは板書をする音しか出していないから、こしょこしょ声とはいっても、蓮子の声ばかりが響いていて。
私には蓮子の話を聞きながら、板書をし、授業を理解するような頭はないし。聖徳太子じゃないんだから。
絶対他の学生も「こいつらうるさいな」って思ってるだろうし。
ああああ。
ねぇお願いだから、蓮子。
ほんの少しだけ静かにしてくれないかしら。
私、本当に嫌なのよ?
貴女と一緒に卒業出来ないのは。
卒業までは、貴女と二人、一緒に居たいの。
私は手を止めて蓮子に話しかける。
「…蓮子さん?」
「お?もうコピー機時間はおしまい?」
違う。教授が話している内容が、たまたまこの間読んだ文献と被っているからである。
ようやく意識を割く余裕ができたのだ。
「ねぇ、私の記憶が確かなら」
「『この時間は貴女も授業があるんじゃなかった?』でしょ」
先に言われた。
おまけに、「メリーの言いそうな事なんて大体わかるもんね」なんて言ってる。
帽子のへりをくいっと上げて、満面の笑みで。
ああ、可愛いな。
でも授業中は、帽子を脱ぐべきだと思うの。
「…分かってるなら」
「『どうして出ないの?休講?』」
また先回りされた。
…。
私が単純なんだろうか。
彼女の頭がよく回るからだろうか。
それとも、距離が近すぎるだからだろうか。
「ぶっぶー。正解は、この時間は般教の『心理学Ⅱ』だからでしたー」
般教とは、一般教養の教科の略称である。
要するに専攻ではない、という事だ。
「いや、般教だからって切る理由にはならないと思うのだけど…」
切るというのは「その授業の単位を諦める」の意である。
大学生にとってはおよそ一般的な用語らしい。私はついこないだ蓮子に教えてもらった(というか蓮子が実践していた)のだけれど。
「メリー。『すっぱいブドウ』って知ってる?」
「認知的不協和理論の話?」
「そうそうそんな名前のやつ」
突然蓮子が出したのは、社会心理学の有名な理論でよく使われる例である。
狐が樹の高い枝に生った葡萄を取ろうとして…いや、別に説明するまでもないだろう。
社会心理学の入口にして、一般的な理論である。
まぁ、学問の「入口」ほど深い議論になりがちである、というのは置いておくとして。
「それがどうかしたの?」
「いやつまり、『心理学Ⅱ』ではそんな事をやってるってこと」
まぁ、心理学のとっかかりとしてはありそうな事である。
「それが詰まらないってこと?」
「んにゃ、んにゃ、そうじゃなくて」
ぱた、ぱた、と語感に合わせて目の前で手を振る蓮子。
ああ、もう。
いちいち可愛いなぁ。
「心理学なんて、メリーに教えて貰えばいいじゃない」
「…」
いや、確かに専門ではあるんだけど…。
それだと何も身につかないじゃない。
そう言おうとしたが、ふと意識を授業の方に戻すと、なんとなく私が読んだ文献とは離れた内容を話そうとしている気配がする。
ああ、もうコピー機に戻らないと。
私は手を動かし始めた。
「『それだと何も身につかない』って思ったでしょ」
やっぱり蓮子はおかまいなしに話しかけてくる。
しかもきっちり人の思考をトレースして。
「でもね、私思うの。絶対その分野に精通してる人から教わった方が効率がいいし、ためになるじゃない」
あのね、その分野に精通してる教授の授業に出てないのよ、貴女は。
「だけど、あの教授は教え方が悪い。最高の野球選手が最高の監督になれるとは限らないっていうのは、大学組織においても同じね」
例えは分かるけど、なんだか論点がずれてきてる気がする。
「大体、人間は「先生」って呼ばれ出したら腐っていく一方なのよ。私はDに進んだとしても、あーゆう指導者にはならないことをここに誓うわ。まぁ教職にそんな興味があるわけじゃないけど」
私の筆が止まった。
Dはドクター、博士課程の事である。その前にマスター(M)、修士課程が存在する。
つまりこれは、いつか来る未来の話。
「今」より先の話を、蓮子はしている。
ああ、これは嫌だな。
幸せな「今」以外の話を受け入れられるほど、
まだ私は大人じゃない。
ねぇ蓮子、本当にお願いだから。
将来の話なんてするのはやめて?
気になって、教授の話なんて何にも聞こえないじゃない。
貴女がMに進もうとDに進もうと、
絶対に離れる気はないけれど。
それでも、私は貴方と自由に過ごせる、
「今」を大事にしたいの。
だから、少しだけ。
もうちょっとだけ、将来の話は待って?
「大体ね、『心理学Ⅱ』が私の専門の何処に役立つか、って話よね。というよりこの先の人生において…」
ほら、また「先」の話。
私は必死に考える。
回遊魚のようにしゃべり続ける彼女を、少しだけ沈黙させる方法を。
そして、閃いた。
『宇佐見は口を開いてないと死ぬんじゃないか?』
じゃあ、いっそ殺してしまおう。
私達の「未来」なんて。
幸せな「今」だけで、全部埋めてしまおう。
「ねぇ、メリーってば。また聞いてないでしょ?これは大事な話なのよ?私達の将来に関わ」
続く言葉は、途中で殺した。
右手の親指と人差し指で、蓮子の顎を持ちあげて、
一気に口づける。
「っ…!」
蓮子の帽子には当たらない。歯もぶつけたりしない。
それくらいには、私は彼女を「知っている」。
「…んっ」
それは同様に、彼女も私を「知っている」ということ。
その証拠に、一瞬身体が跳ねた後は、蓮子もいつも通り舌を絡ませてきた。
そう、いつもは蓮子からが多いから。
ここからは、私は彼女に委ねるだけ。
「…ちゅ…んむっ…」
「ん…はっ…」
いつも蓮子は、奥歯から順に、私の歯を舐め上げていく。
最初は左。前歯まで来たら折り返す。
「んふっ、ちゅるっ…ちゅく…」
そのあとは、舌。
裏のざらざらとした突起をひとしきり舐めた後、表を撫でる。
それまでの激しさと違って、少し絡ませては引っ込める、を繰り返す。
それはまるで、誘っているかのようで。
そう思うだけで、びくんっ、と身体が震える。
早く、蓮子にたくさん埋め尽くされたくて。
めちゃめちゃにされたっていいと思う感覚。
私は、おずおずと自分の舌を伸ばして、蓮子を探す。
これで、いい…?ね…?
すると蓮子は、頭を撫でるみたいに優しく私の舌をつついた後、
激しく絡ませてくる。
「ん…んあっ…んむっ…!」
ずっと溺れていたい。
ずっと、ずっと。
ただ、夢中で蓮子を感じる。
多分、世界にとっては一瞬。
私達にとっては、とても長い時間。
私達は、「今」を確かめ合っていた。
どうか、このままで。
どうか。
カリカリ、という音だけが響いていた。
*
「…結局ノートとれなかったじゃない」
「あら、私だけのせいにされるのは心外だけど。珍しくメリーさんから積極的に…ねぇ?」
授業の後、誰もいない教室で呟き合う。
私は机に突っ伏しながら。
蓮子は変わらない笑顔で。
あのあと、蓮子を沈黙させることには成功したけれど。
私が、あまりの気恥ずかしさに碌に板書も出来なかった。
要するに仕方がなかったのだ。板書なんて忘れる程幸せだったのだから。
私達の「未来」は殺せたのか?
さぁ? わからない。
だって、死にたくなるくらい恥ずかしくて。
死にたくなくなるくらい幸せだったから。
「ねぇ、蓮子」
私は顔を上げ、大好きな笑顔を見る。
蓮子はにっ、と笑った。
「『もう一回』、でしょ?」
また、「メリーの言いそうな事なんて大体わかるもんね」なんて言ってる。
口惜しい。けど、嬉しい。
今度は、蓮子の手が私の顎にかかった。
そうやって、私達は、何度も「今」を噛み締める。
ね、今度こそ、「未来」は殺せるかしら?
唇が、塞がれた。
カリカリ、という音だけが響く教室。
そこに場違いな声が一つだけ浮いていた。
「…ねぇ、メリー聞いてるの?ねぇってば」
横から聞こえる蓮子の声である。
いや、聞いてあげたいんだけど。それどころじゃあないんだってば。
「酷いと思わない?同じクラスの男の子がさ、『宇佐見は口を開いてないと死ぬんじゃないか?』だって!私はマグロじゃないっつーの!」
あのね、蓮子。
現状を見ればそう思われてても仕方ないわよ?
目の前には、人間かどうか疑いたくなるようなスピードで板書する教授。
一心不乱にそれを書き写す学生たち。
自分の存在と劣化したコピー機、どちらが上等なのか考えたくなるような風景が目の前に広がっている。
それでも、私は手を動かし続けなければならない。
理由は簡単。
精神西洋医学史Ⅱ(後期なのでⅡ)は必修の単位で。
落とすと留年が確定してしまうから。
近年は就職戦線も厳しいらしい。もし一年出遅れもしたら大変なことになる、と新聞かなんかで読んだ気がする。
「おーい、メリーさーん。今貴女の隣にいるの」
それでも蓮子はおかまいなしに話しかけてくる。
大体、それは普通メリーの方がいう台詞だろう。
周りは板書をする音しか出していないから、こしょこしょ声とはいっても、蓮子の声ばかりが響いていて。
私には蓮子の話を聞きながら、板書をし、授業を理解するような頭はないし。聖徳太子じゃないんだから。
絶対他の学生も「こいつらうるさいな」って思ってるだろうし。
ああああ。
ねぇお願いだから、蓮子。
ほんの少しだけ静かにしてくれないかしら。
私、本当に嫌なのよ?
貴女と一緒に卒業出来ないのは。
卒業までは、貴女と二人、一緒に居たいの。
私は手を止めて蓮子に話しかける。
「…蓮子さん?」
「お?もうコピー機時間はおしまい?」
違う。教授が話している内容が、たまたまこの間読んだ文献と被っているからである。
ようやく意識を割く余裕ができたのだ。
「ねぇ、私の記憶が確かなら」
「『この時間は貴女も授業があるんじゃなかった?』でしょ」
先に言われた。
おまけに、「メリーの言いそうな事なんて大体わかるもんね」なんて言ってる。
帽子のへりをくいっと上げて、満面の笑みで。
ああ、可愛いな。
でも授業中は、帽子を脱ぐべきだと思うの。
「…分かってるなら」
「『どうして出ないの?休講?』」
また先回りされた。
…。
私が単純なんだろうか。
彼女の頭がよく回るからだろうか。
それとも、距離が近すぎるだからだろうか。
「ぶっぶー。正解は、この時間は般教の『心理学Ⅱ』だからでしたー」
般教とは、一般教養の教科の略称である。
要するに専攻ではない、という事だ。
「いや、般教だからって切る理由にはならないと思うのだけど…」
切るというのは「その授業の単位を諦める」の意である。
大学生にとってはおよそ一般的な用語らしい。私はついこないだ蓮子に教えてもらった(というか蓮子が実践していた)のだけれど。
「メリー。『すっぱいブドウ』って知ってる?」
「認知的不協和理論の話?」
「そうそうそんな名前のやつ」
突然蓮子が出したのは、社会心理学の有名な理論でよく使われる例である。
狐が樹の高い枝に生った葡萄を取ろうとして…いや、別に説明するまでもないだろう。
社会心理学の入口にして、一般的な理論である。
まぁ、学問の「入口」ほど深い議論になりがちである、というのは置いておくとして。
「それがどうかしたの?」
「いやつまり、『心理学Ⅱ』ではそんな事をやってるってこと」
まぁ、心理学のとっかかりとしてはありそうな事である。
「それが詰まらないってこと?」
「んにゃ、んにゃ、そうじゃなくて」
ぱた、ぱた、と語感に合わせて目の前で手を振る蓮子。
ああ、もう。
いちいち可愛いなぁ。
「心理学なんて、メリーに教えて貰えばいいじゃない」
「…」
いや、確かに専門ではあるんだけど…。
それだと何も身につかないじゃない。
そう言おうとしたが、ふと意識を授業の方に戻すと、なんとなく私が読んだ文献とは離れた内容を話そうとしている気配がする。
ああ、もうコピー機に戻らないと。
私は手を動かし始めた。
「『それだと何も身につかない』って思ったでしょ」
やっぱり蓮子はおかまいなしに話しかけてくる。
しかもきっちり人の思考をトレースして。
「でもね、私思うの。絶対その分野に精通してる人から教わった方が効率がいいし、ためになるじゃない」
あのね、その分野に精通してる教授の授業に出てないのよ、貴女は。
「だけど、あの教授は教え方が悪い。最高の野球選手が最高の監督になれるとは限らないっていうのは、大学組織においても同じね」
例えは分かるけど、なんだか論点がずれてきてる気がする。
「大体、人間は「先生」って呼ばれ出したら腐っていく一方なのよ。私はDに進んだとしても、あーゆう指導者にはならないことをここに誓うわ。まぁ教職にそんな興味があるわけじゃないけど」
私の筆が止まった。
Dはドクター、博士課程の事である。その前にマスター(M)、修士課程が存在する。
つまりこれは、いつか来る未来の話。
「今」より先の話を、蓮子はしている。
ああ、これは嫌だな。
幸せな「今」以外の話を受け入れられるほど、
まだ私は大人じゃない。
ねぇ蓮子、本当にお願いだから。
将来の話なんてするのはやめて?
気になって、教授の話なんて何にも聞こえないじゃない。
貴女がMに進もうとDに進もうと、
絶対に離れる気はないけれど。
それでも、私は貴方と自由に過ごせる、
「今」を大事にしたいの。
だから、少しだけ。
もうちょっとだけ、将来の話は待って?
「大体ね、『心理学Ⅱ』が私の専門の何処に役立つか、って話よね。というよりこの先の人生において…」
ほら、また「先」の話。
私は必死に考える。
回遊魚のようにしゃべり続ける彼女を、少しだけ沈黙させる方法を。
そして、閃いた。
『宇佐見は口を開いてないと死ぬんじゃないか?』
じゃあ、いっそ殺してしまおう。
私達の「未来」なんて。
幸せな「今」だけで、全部埋めてしまおう。
「ねぇ、メリーってば。また聞いてないでしょ?これは大事な話なのよ?私達の将来に関わ」
続く言葉は、途中で殺した。
右手の親指と人差し指で、蓮子の顎を持ちあげて、
一気に口づける。
「っ…!」
蓮子の帽子には当たらない。歯もぶつけたりしない。
それくらいには、私は彼女を「知っている」。
「…んっ」
それは同様に、彼女も私を「知っている」ということ。
その証拠に、一瞬身体が跳ねた後は、蓮子もいつも通り舌を絡ませてきた。
そう、いつもは蓮子からが多いから。
ここからは、私は彼女に委ねるだけ。
「…ちゅ…んむっ…」
「ん…はっ…」
いつも蓮子は、奥歯から順に、私の歯を舐め上げていく。
最初は左。前歯まで来たら折り返す。
「んふっ、ちゅるっ…ちゅく…」
そのあとは、舌。
裏のざらざらとした突起をひとしきり舐めた後、表を撫でる。
それまでの激しさと違って、少し絡ませては引っ込める、を繰り返す。
それはまるで、誘っているかのようで。
そう思うだけで、びくんっ、と身体が震える。
早く、蓮子にたくさん埋め尽くされたくて。
めちゃめちゃにされたっていいと思う感覚。
私は、おずおずと自分の舌を伸ばして、蓮子を探す。
これで、いい…?ね…?
すると蓮子は、頭を撫でるみたいに優しく私の舌をつついた後、
激しく絡ませてくる。
「ん…んあっ…んむっ…!」
ずっと溺れていたい。
ずっと、ずっと。
ただ、夢中で蓮子を感じる。
多分、世界にとっては一瞬。
私達にとっては、とても長い時間。
私達は、「今」を確かめ合っていた。
どうか、このままで。
どうか。
カリカリ、という音だけが響いていた。
*
「…結局ノートとれなかったじゃない」
「あら、私だけのせいにされるのは心外だけど。珍しくメリーさんから積極的に…ねぇ?」
授業の後、誰もいない教室で呟き合う。
私は机に突っ伏しながら。
蓮子は変わらない笑顔で。
あのあと、蓮子を沈黙させることには成功したけれど。
私が、あまりの気恥ずかしさに碌に板書も出来なかった。
要するに仕方がなかったのだ。板書なんて忘れる程幸せだったのだから。
私達の「未来」は殺せたのか?
さぁ? わからない。
だって、死にたくなるくらい恥ずかしくて。
死にたくなくなるくらい幸せだったから。
「ねぇ、蓮子」
私は顔を上げ、大好きな笑顔を見る。
蓮子はにっ、と笑った。
「『もう一回』、でしょ?」
また、「メリーの言いそうな事なんて大体わかるもんね」なんて言ってる。
口惜しい。けど、嬉しい。
今度は、蓮子の手が私の顎にかかった。
そうやって、私達は、何度も「今」を噛み締める。
ね、今度こそ、「未来」は殺せるかしら?
唇が、塞がれた。
将来直面時期世代です。今に逃避しようとしても隣にメリーがいません。
なんてこった。
私もです。隣にメリーがいません。
なんてこった。
マジでありがとうございました。
題名と物語の絡ませ方が格好良くて気に入りました
しかし、あれだね。俺も講義なんてほとんど出てない不良学生ではあるけど、目の前でこれやられたら殺意沸きそうだなw
もう見慣れすぎて気にもとめないということか!!