その小さくて、丸い光のようなものが焦燥とした点滅を繰り替えしつつ、森の上を彷徨っておりました。その森の暗さは尋常のものではなく、今が冷え切った師走の中頃であることを差し引いたとしても、ダンテの申すところの、「人生の半ばで、正道を踏み外した私が、目を覚ましたときは暗い森の中にいた」という気持ちが、何と無くわかるような気がする、それくらいの暗さだったのです。熟寝を誘う強烈な静寂を感じながら、それでも尚、目の前の影絵のような森に目を凝らしていると、生き物の呼吸のような隠微な動きを認めることが出来ました。わたくしは家で使っている馬の毛を使った筆と和紙の変わりに、メモと万年筆を使って、書いております。
ここに篭って何日になるのでしょうか。いつもどおりの、森林限界の袂に立つ監督官の小屋の中で、息を潜めそっと森の方を伺っておりました。ちょうど懐中時計が小さな音を立てました。こち、という歯車と歯車が嵌る音を打ちました。午前零時の音は乾ききったものでした。びゅうびゅうと小屋を打つやませの中でも、機械の音は明確に、日を跨ぐ瞬間を知らせるのでした。その時計は古来からわたくしの家に置いてある物でした。置いてある、というのは文字通り蔵の中で埃を被っていたものを、わたくしの家に勤める執事が発掘(?)したのでした。わたくしはすぐに村の工場に頼み、修理して頂きました。優秀な工員は、無口な男の人でした。彼は執事の手から黙ってボロボロの時計を受け取ると、黙って小さな工場の奥へ入っていきました。油と垢で薄汚れた作業服からは饐えたメンスのような、山犬のような異臭が漂っていました。わたくしはその匂いが忘れられず、ずっと鼻腔の奥に粘性の物性を伴って張り付いております。彼は目の奥にある種の深遠を孕んでおり、見るものにちょっとした不安を与えるのです。わたくしは、生まれてこの方、この世界に住む幽玄の者達を観察し、描写してきましたが、これほど相対する者へ不可解な感情を齎す生き物に会ったことはありませんでした。欧州から引っ越してきた吸血鬼とも、西行法師と縁のある亡霊とも、果ては宇宙人とも違うのでした。彼等異型の者共が背負うものが、わたくし達の栄華の裏側で、滔滔と流れ行く怨念めいた、しかしわたくし達の世界の脆弱性と蓋然性そのものを貫き破壊しかねない逆説的アフォリズムであるとするならば、それは一切の言葉なるものを否定し、ひたすら孤独を求める一幅の偶像でありました。例えるなら、偶像こそ相応しい……。彼の他には四人程、工員が勤めておりました。彼同様に饐えた血のものの匂いを放ち、歯は黄色く汚れております。わたくしを見て、にやにやと笑いながら何か呟いていました。「金持ちのお嬢様。」「体格は、ちょうどあいつらくらいじゃねぇか。」と、言っておりました。彼はそんな猥談には目もくれず、机に座ると黙々と作業を始めました。三人の男はその工員に向かって、侮蔑の言葉らしきもの(何と言っているかは、わかりませんでした)を言い放ちましたが、工員は一瞬だけ白い歯をちらと見せ、微笑んでから作業に戻りました。黄色い歯の工員達がまた何か言いました。「わぁはんかくせー、この腐れホモ野郎が。」笑っていました。そのホモ野郎と揶揄された歯の白い工員は、懐中時計の蓋を細長く薄っぺらな金属片で開け、「歯車が馬鹿になってやがる。」と独りごちて、目頭を抑え、大儀そうに欠伸を一つ垂れました。「博麗の巫女にでも頼まなくちゃな。」彼は目が病んでいたらしいのです。わたくしが大丈夫かしら、と問うと、彼は不器用な笑いを一つ、ふっと浮かべました。口の周りを覆う皮膚は長年日陰にいる者の翳と鬱屈した歪みを見せてい、少し間を置いてから、へっとまた笑いました。「少し時間がかかるな。」と言いました。
わたくしの意識は、また森林限界へと舞い戻ってきました。こうして、時折、世界を時と夢を越えて旅をするときのみ、少しだけ安らかな気持ちを味わえるのでした。蓋し、森林と草原の狭間に立つと、確かにこのような幽玄な炎を見ることが出来るのでした。空には鬱屈としたに鉛色の雲が茫洋と広がってい、間も無く雪が降るだろうと感じました。わたくしの手元を照らしている炎は、小屋の中の古いマントルピースから発せられており、外は余りに濃密な、質量を有した原始の闇でした。手元には、ノートと使い古したライカが一つ。わたくしは一つの期待を胸に、里に溢れている、絞れば汁が垂れてきそうな鬱陶しい人いきれを逃れ、この小屋で待っております。里の人達は嫌いというわけではないけれども、彼等のどろりとした欲望を内包した気配に、そろそろ気も狂いそうになっておりました。わたくしに向かって、莞爾と笑う里人の相貌の裏には、結局セックスとお金の事が第一義で駆動する動物でしかなく、とまれ、元々別の生き物ではないかという思いに囚われておりました。特にわたくしは、恋愛というものにちょっとしたアレルギーを持ち合わせており、二十数年生きてきて未だに未経験なのも、家に引篭もって只管歴史書、幻想郷縁起なる書物をつらつらと書き続けています。いえ、歴史書を騙り只管書き続けているのです。それはずっと、わたくしを取り巻く世界の話でした。
つまり、わたくしをただずっと外界との繋がりを完全に断絶するでもなく、同時にこの粘着く体液を飲み干すような混淆を、少し離れた場所から除き見、俯瞰する愉悦を味わっているのでした。汚らしい神や人間の営みを盗み見るといった方がいいかもしれません。そもそも、わたくしの使命こそ、その点のみにありました。正しく、この郷に住む偉業の者達を正しく描写することこそ、まさしくわたくしの役割でした。そうするうちに、一つ、この間、巡り合った面白い話を思い出しました。あまりに卑猥な話なのですが、要は今年の秋、里で行われたお祭りでした。収穫祭と称したそれは、人知れず行われていた祭りだったのだそうです。どちらにせよ、知らなかったわけではなかった、わたくしには与り知らぬ世界の熱気を感じ、今まで避けていたのです。今年になって、独りの神に見るように慫慂され、そこまでというならと、半ば期待してついていったのです。結果的に行われていたのは、因みに身もふたも無い言い方をすれば○○○で、秋の収穫を司る少女に形取られた神との○○○でありました(いや、必ずしも神とは限らず、神の格好した気の違った女かもしれませんでした)。男とも女とも交わり続ける神は、寛容であり、また被害者でも御座いました。わたくし自身、初めて目にした交渉のため、一種の錯乱状態に陥っていたのは間違いなく、眩暈の後、その場を離れました。しかし、時が経てば経つほど、その光景はありまりとわたくしの眼前に横たわり、常に彼等の体臭や肉と肉がぶつかる音や、飛び散る体液が床に浸みを作っているような、そんな光景が思い出されるのでした。何とも醜悪でしたが、同時に、汚れているという感覚からとも違う、ゴヤの暗澹と、サンドロ・ポッティチェルリの醜さと正しさのあわいを彷徨う如き平衡感覚を、わたくしは感じたのでした。そして世界とは、わたくしが縁起執筆のうちに気づく以前から、そのように成り立っているに違いなく、神の少女や、そのの上に跨って自分の肉を打ち付ける男共の、いち早く出し去りたいために、小刻みに動く男達の可愛さといったら!そうか、と女のわたくしは思うのでした、交尾中の男の無防備さと、射精寸前のこちらの母性すら引き歪むような、笑ったような泣いたような顔で溢れていました。皆さん、あれこそ真実なんじゃないでしょうか。このちっぽけな世界の。物を喰い、女に圧し掛かり、只管欲腰を振り自身の肉を振るわせる人の貌こそ。
わたくしは、そうしたことも縁起に記します。
わたくしはまた、そうした人々の貌を追いかけて、古びた暖炉にかがみこみ、暖をとっているのだと思うと、自虐的な笑いが一つ毀れ、そういえばそろそろ年越しの準備が始まると感じていました。使用人も執事も、一切の人間に暇を出し、わたくしは男が来るのをじっと待ちわびていたのです。
始まりは、とある噂話で御座いました。それによると里の子供達が主役なのでした。彼等は整備された道に座り込んで、ちょうど、妖精達に悪戯をしにいくようで、成程、五匹の犬といった青臭さは確かに未経験の落ち着かなさを放っていました。わたくしが聞いてみると、彼等は一瞬驚いていました。そして反感の色を浮かべていました。成程、わたくしはその時、猩々緋色の付け下げ模様に綸子模様を染め上げた着物、珊瑚のような簪を挿し、ついでに伽羅で拵えた馥郁とした香りの扇子を忍ばせ、嫌味だったかもしれません。
「貴方達、どこへいくの。」
「森さ行くんだよ。」
「何をしに?。」
「ちぇっ金持ちが。かちゃくちゃねぇ……めんたくされ!」
「妖精のおなごと、いいことしにいくんだよ」
「あんだ、くんびまぎもしねで冷えねんだが。わのくれてやるか、あぁ?」
彼等の一人が、からかって、薄汚れたマフラーを投げてよこしました。彼等には一つの神話を持っており、それはあまりに馬鹿げた妄想に違いなかったのですが、彼等の脳髄のなかでは確かな躍動を持って、彼等を暴走させるのに十分な麻薬の効果を放ち続けているのでした。彼等は妖精達が淫乱な動物だと信じており、自分達の童貞を多少乱暴なやり方で奪ってもらえると考えているらしいのでした。里でも、随分取替えっこと称した遊びが流行っているようだし。ただ彼等がそんな考えに取り付かれたのかは不明ですが、そういえば、わたくしはいつか妖精を捕まえたら日頃の鬱憤を晴らすべく、復讐するのがいいとは何かに書いたような気がしますが、それがこのような形で現実に表出したとしたら、と思い独り臓腑が震えるような愉悦を迎えておりました。無論、自虐的な。
「そういえば、さ、あの工員のにっちゃも今度いくとかいっでなかってべか?」
「あぁ、言ってたかもしんね。何でも手紙のやりとりがあるどか、くっちゃべってたよ、酒の席で。」
彼等はいっせいに噴出しました。
「文通!」
「んだんだ。それで、来月な、会うんだど。」
「どこで!」
「あの、ぶっくれ小屋だよ。」
わたくしは、しきりに「死ね、死ね。」と思いながらどのように連中を縁起に書き表そうか思索しておりました。因みに、彼等は逆に妖精の悪戯に会い、行方不明になりました。なったそうです。
わたくしは、縁起を仕上げるため生まれ、そして死に、また生き返るといった循環を繰り返しており、しかし自身の生なるものを鑑みると、さながらダンテとウェリギリウスの彷徨に思えるのです。何度生を繰り返したとしても、待っているのは別の地獄であり、ある時はミノタウロスが横たわり、またある時は提灯のように自身の首を持ち上げる男が待つ円環の地獄だと思います。わたくしはダンテのように、何かの手違いで輪廻の散歩といわざるを得ない、森の中に迷い込んだものでした。まだ、煉獄はやってこないのでしょうか。小さなトンネルがあるはずなのです。そしてウェリギリウスは?
「それで、私に話って、何?」
それはこの世界の神ともいうべき女性でした。彼女は出された紅茶を静かに啜っており、優雅というよりは完成された一つの美であるといった方がよかった(とわたくしは過去形で語っていますが、今は何となくこのような形を取ったほうが皆様に伝わるのではないか、即ち俗世の臭気に溺れ死にそうになっているわたくしの心象を少しでも読み取れないだろうか、と考えたりもしています。)と、思っています。
「私だって、忙しいのよ。」
「わたくしは、いつまでこんな仕事をすればいいのでしょうか」
「幻想郷を見たい人がいなくなるまで」
境界を司る、という何とも不思議な力を持っていますが、結局のところ、彼女はある種のモチーフを怪物的な引力をもって曳いている舟のような存在らしい、とわたくしは考えております。即ち、神話の世界をまるごと引きずる彼女は、生き物であり、同時に間接話法の文法であり、またトートロジーとしての文脈を有する神でありました。
「見たい人はどこに、いるのでしょうか」
「そのへんにいっぱいいるわよ、それにほら」と彼女は言った。何と言っても、稗田阿求、これは仕様が無いの、一度始まったことは止めるのに大変な労力がかかるわけだし、何しろまだ全然終わってないのよ、まったく。あなた、些か本来の仕事から逸脱していると思うのだけれども、大丈夫かしら、貴方。
「どうして、知っているのです……」
一気に紅茶を飲み干すと、だって私はこの世界そのものなんだもん、と彼女は言いました。
「あぁ、ケーキが食べたい、ショートケーキ。それにしても世界が肝硬変おこしてる」
「わたくしは何の寄り道なんか、していないのですよ……」
だって、本来の目的こそ、果たしている、それは、ちゃんと縁起に書いているじゃないか、と思いました。
わたくしは、何故か期待していました。あの歯の白い工員がこのぶっくれ小屋にやってくるのを。必用なものを揃え、そして気恥ずかしそうな表情を浮かべてやってくる彼の朴訥とした貌に向かい、ただ一言「変態」と弾劾してやろうという気分だったのです。何故かはしりません。あの話を聞いた時、ふと、裏切られたのではないかという気持ちになり、私は待ち続けました。彼の朴訥たる笑顔の裏に、幼児愛好という、許されざる罪を犯していると思うと、憎しみがわいてくるのでした。彼は師走になってもやってきませんでした。
とんとんと、誰かが小屋の扉を叩いております。わたくしの元に、烏天狗の少女がやってきたのです。こんなに近くにいるというのに、「いやぁーどうもどうも、清く正しい……」と何故かとても大きな声で話します。常にカメラとメモを持っており、彼女は唾を飛ばしながら、喋っているのでした。
「帰ってください」
「縁起の進み具合は……そもそも、こんなところに何だって独りっきりで、いるんです?」
「ここには、新聞が書くようなものは何も無い」
天狗は素直に帰りました。ここのところ、随分簡単に引き下がるので、何と無く張り合いがないのでした。その際、新聞を置いていくのを忘れませんでした。わたくしがその濡れてしなびてしまっている新聞を手に取りました。バベルの塔が崩れてしまったかのような多言語使用の《天狗語》には頭が痛くなり、その辺に投げておきました。彼等は近年、ボルヘス的虚偽記事の作成文脈を手に入れてしまったおかげで、随分世界は五月蠅くなっているような気がします。世の中は、嘘をいかに本物らしく拵えるかという段階を超え、最早、嘘はいかにして真実へ近づけるのかという、問いの段階へ来ており、そうした問いの果てにあるものが、あの吸血鬼や亡霊が起こした阿呆な異変や、外の神の引越し騒ぎだとすれば、成程、そうかもしれないと頷くのでした。その後、簡単に拵えた夕餉を食べると、お腹がくちくなり、眠くなりました。わたくしは、歯車が軋む様な音を聞き、やがて、子供のころの光景が蘇ってくるのを感じたのでした。それは、冬の話でした。それは、馬も人も鼠も、吸血鬼も亡霊も魔女も神も地底の馬鹿騒ぎを起こしている異型の者達も、みな息を潜める程の吹雪が、地上を叩いておりました、わたくしは頭巾を被り、外套を着て歩いておりました、それはお友達との遊びの帰りでした。わたくしたちは雪山で遊んでいました。さて、帰ろうかとふと空を見上げると、夕暮れの照柿色が間も無く白く染まった地上を押しつぶしかねない白黒の境界へと収斂していくあの色彩の隠微な快楽の中にあって、わたくしは友達が送っていこうかと心配してくれたのですが(わたくしがこうした、身体を揺さぶるような衝動に駆られて子供の頃の話をしているのか言えば、それは今の生よりさらに二周り前の、生の話であり、二度と帰ってこない、わたくしを産み落とした九人いた母のうちの独りの心象とこちらを見やる、喜びも悲しみも無い輻輳とした感情が入り混じる眼差しが明確に重なっており、ただ一言、《あの頃が懐かしい……》というノスタルジアというよりは、ただ衝動的に溜まった澱がどろりとした性欲を押し隠すように突如噴出したといった様相なのです)、わたくしは独りで大丈夫だから、といって断ったのです。わたくしは、進んで独りになりました。まっさらな田園は雪で白く染まり、遠くの防風林に、翳のようなものが走りました。それは一匹の黒い馬でありました、が、わたくしは最初、それが地獄を守る三頭の犬のようなものに見えたのです。馬は暫くこちらを見た後、小さく嘶き、防風林の向こう側へ消えてしまいました、わたくしは鼻水を押さえながら、その林のほうへ走りました、目の前がふと白く、まるで眩暈のような冬将軍へと変わりました、わたくしは長靴と手袋で深く積もった豪雪を掻き分けていきます、そして体力は奪われていました、しかし意識だけは明確であり、只管、あの馬を追いかけなくてはと思っていました、馬のしなやかなな体を見ていると、ふと、何故この世界は人の形をした者達で溢れているのだろうか、と意味もないことを考えて、寒さを耐え忍ぼうとしました。みんな、人の形をしているから残酷なこともするんじゃないかしら、と、防風林に辿り着き、蹄型の足跡が残されていました、その向こうの、巨大な山脈へと続いているらしいのです。わたくしの眼路の限りに横たわる巨大な山脈の稜線へと溶けて行く有様を見、そうか、ここがわたくしの帰る場所であると、馬に導かれたわたくしは、独り嗤いながら、雪の上に倒れました、隠れた生物の息遣いが伝わるような吹雪であって、誰もいない場所に佇み、実際の混沌たる煉獄にも九回も産み落とされてみたものの、こうした静けさに飲み込まれていると、意外と悪くないかもしれないと(しかし、人々に聞きたいのですが、他人の幸福やそれに因んだ感情に対して、どうして小動物のようにびくびくと口を出すのでしょうか)思うようになりました。その光景は詩的リアリズムとなって、わたくしの根幹の場所で文脈となり、生きておりました。山が鳴り、林が鳴り、田園が鳴り、わたくしの心臓が鳴っておりました。幼いわたくしは、嘗て、六回目の死を迎える寸前に誰かが教えてくれた、異国の歌を口ずさんでおりました、カリンカァ、カリンカァ、カァ。
そういえば、わたくしは漸く、あの白い歯を持つ工員が死んだことを思い出したのです。彼は決して、妖精にも欲情を向けなかったし、いやらしい祭りにも参加しませんでした。彼は、ある日、目の病気が悪化し、それを苦にして首吊り自殺したのです。歯の黄色い、汚らしい工員達から「能無し」と責められて。彼等は、形だけの苦しみを演ずる時間や、弁解の機会を喪い、また、遺書を残さなかった彼自身の怨恨は、意味不明の塊として彼等を死ぬまで蝕むでしょう。この小屋でレコードをかけていると、ふいに彼の純朴な貌が浮びました。彼のことは多分、縁起には書かないのでしょう。彼の人生にはこれといって特別ではなく、ありきたりな、可愛そうな死が最後に待っていただけでした。私自身、忘れていたのです。明日にはきっと、忘れているでしょう。現に、先ほどまで忘れていたのです(では、何故、ここにいるのか、という問いについては答えようがないのですが、わたくしはこの環境が結構気に入っていて、独りでゆっくりしている方が書き物も読書も捗るし)。幺樂団の喧しいやたら耳に突く電子音もいいが、たまには古典もいい、古典が良い、と思いながら何故か使用人が持ち込んだ蓄音機にレコードからは、優しい音色が響いていました。ふと、わたくしは弦楽器の音の、撫でるような奔流の中におりました。そうか、わたくしは、やはり独りだった。その曲は、マスカーニが書いたその曲の意味は、田舎の騎士道、だったような気がします。
雪が、降っています、
読み終わって浮かんだ感想はそういうよくわからないものでした。
カカッっと感謝の百点を。
分からん。面白いのかつまらないのかさえ分からん。
でも最後まで見入ってしまう、そんな感覚。
自己の価値基準を適用できない。点数の付け方もやっぱり分からん。
心苦しいのですがフリーレスでコメントさせて頂きます。
いやはややはり興味深いテーマからの幻想郷。
除き見 ありまりと そのの上に 只管欲 しなやかなな体
九人いた母 九回も産み落とされて(カウントしてないのは礼か求か)
この腐り方を間違えたパンみたいな匂いは佐藤さんにしか出せない
実際に阿求はこんな視点で物を見ていそうだとも思う
東方の原作と二次創作の関係を暗に示してるのか、それは深読みのしすぎなのか
裏の主題があると思わないと、物語が読みとけない。それぐらい表面の物語が、意味わからん
>馬のしなやかなな体を見ていると、ふと、何故この世界は人の形をした者達で溢れているのだろうか
この一文が好きだ、俺もそう思うよ
いやしかしこの話、意味がわからん。点のつけようがないが0点というのもなんだから100としておこう
空気やセリフ回しがとても似てる
HPは作られないのでしょうか?読みたい物を読めないと言うのは中々辛いです。
出来ればHPの方に上げては貰えないものかと。
いや失恋の話なのは紫のボヤキからして明らかなのだけど。
端っから宿痾を抱えていて上手く他者と距離をとれず売れ残った阿求が、また別の理由でぼっち街道を邁進していた工員と出会い、想い慕いつつ(いや阿求の片思いか?)接近できないでいたところに、工員がどうやら糾弾される類の変態であるといよいよ確からしくなって、結局先立ち阿求が残されたという。
であるならば、醜悪な人間の実態を描写していても、それはおそらくたいした意味なんかなく、阿求自身もそういう浮気めいた経験を踏んだっていう自罰的回想であったということか。しかし恋に破れたからといって馬を追い掛け回すことはなかろうに。
縁起には書かない、ってあたりが、いいですね。