Coolier - 新生・東方創想話

索引「※この歴史は削除されたか存在しません。※」

2010/10/09 16:40:01
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益々肌寒く成ってきた昨今、皆様はいかがお過ごしだろうか。

乙女心と秋の空とは申すが、季節の変わり目にて、泣いては笑い、ころころと表情を変える様は、正に乙女のそれであると言える。
お陰で、体調管理に気を使う季節でもあり、この私、上白沢慧音も、自身の健康に気を配る日々である。

それにしても、この秋という複雑な季節を乙女心と言ってしまうとは、これを言った人物はかなりのロマンチストだったに違いない。
この表現には感服する。

これだけに留まらない。先人は表現が豊かである。
つまりそれは、文明が豊かで在る事とはあまり結び付かないのではないか。
むしろ便利ではなかったからこそ、様々な表現を生み出してきたのではないかとも思う。

 例えば、人体の部位の表現一つとっても様々だ。

目が飛び出るほど驚く。
喉から手が出るほど欲しい。
膝が笑う。

など、枚挙に暇が無い。
先人から学ぶ事は限りなく多く、我々はこれを持って新しき道を生み出す。
つまりは温故知新の精神を以って日々精進すべきである。

 言うは容易い。
しかし、私とて実践しているつもりではあるが、人とは忘れる生き物であるのも確かだ。身近に例外はあるが、それは除外する。
そう、悲しいかな忘れてしまうのだ。
それ故に、記録し歴史とし、見返す事で己が無知を噛み締めるのだ。
私は今も噛み締めている。自身の無知、過ち、そして油断という大敵を、私は見落としてしまったのだ。
つまり、











・・・つまり、なんだ、その……
まあ、うん。人体の脆さを再確認したというか、ああ、私も人の子だったのだなというか、そもそも脊椎動物の永遠の命題に、私は直面しているというか・・・










――――――――――――腰が、グキッって言ったんだ。











 思い返せば、私はいつものように書の編纂をしていた。
今日は調子が良く、満月でもないのに随分と捗った。
誤字脱字などある筈もなく、思い出せない事もない。最高の編纂日和だ。
しかし、流石に喉は渇く。
河童印の時計を見れば、既に未の刻を過ぎていた。
茶をシバくにはやや遅いかもしれなかったが、まあ良いだろうと思い、机に手を掛けたその時だった。

――――――――――――何かが軋んだ

違和感の拡大は刹那、腰部に広がる折れんばかりの痛みが走り、身体の中を音が瞬時に駆け巡ったのだ。
誰もが知っているであろう、あの忌まわしき『グキッ』という音が。
感覚が伝わろうとも、勢いの着いた身体は急には止まらない。
全力を挙げて制動を掛けるも、中腰まで上半身が上り、声にならない声と痛みで、にっちもさっちもいかなくなったのである。







 と、このような事があってから既に半刻が過ぎた。
私は何時までこの格好のままで居ればいいのだろうか。
もしかして、誰も来ないまま、この格好のまま一生を終えてしまうのだろうか。
いやいや有り得ない。
落ち着け上白沢慧音。
私は慧音。知識の塊。
確率的に、誰も来ないなど有り得ないではないか。
そうだそうとも誰か来て。
いやいやまてまて、妖精は来るな。
編纂途中の書に、悪戯でもされては堪ったモノではない。
そればかりか、今の私は無防備で、更には、端から見れば珍妙な格好に違いない。
こんな、お尻を突き出したような格好、誰かに見られでもしたら、もうお嫁さんに行けなくなってしまうではないか!
ましてや、相手は妖精。
あの無邪気な残酷さが私に向けば、一体どうなってしまうのか。
まさかくすぐられるのか?
それはいかん、非常にまずい。
私は脇も脇腹も、足の裏も駄目なのだ。
ここで、私はハッとした。
考えてみれば、全部無防備ではないか!
そんな事をされたら、私はくすぐったさに身を悶えさせ、同時に襲う腰の痛みの二重苦に苛まれる事となる。
いや、奴らの事だ。そんなものは生易しいとばかりに、かんちょうという恐ろしい必殺技をしてくるに違いない。
それは駄目だ、本当に駄目だ。
お嫁さんに行けなくなる。確実に。
その時は妹紅に貰われるか!?

ああ、もういっそ一思いに!!

・・・・・落ち着け。
掌に文字を書いて飲め。

馬。

しまった、画数が多い上に、手はずっと机の上。私の生命線になっているのだ。
よもやここまで読んでいたとは、おのれ妖精め!
・・・ならば別の対策を取るしかあるまい。
幸い、今ので少し冷静になれた。何か考えが浮かぶ筈だ。
そうだ、警告だ。警告すれば、そんな人生終了のお知らせとかならなくて済む!
文面はこうだ。


警告『止めろ、さもなくば私が酷い目に遭うぞ、それでも良いのか!!』


……我ながら中々な提案ではないか、それでいこう。


なんとか冷静さを取り戻し、ふと縁側に視線を向ける。
と、何かが居た。
はて、誰だったか。
一度だけ会った事はあったが、よく名前を覚えていない。天狗なのは確かなのだが・・・
いかん、天狗!
よりにもよって天狗だと!?
思い出せ名前を!
そう、確か貝のような名前、ホタテとか言っていた。
そう、今こそ警告だ。
さっき考えたあれがあれば最早無敵。
さあ今こそ使う時だいくぞ!

「止めろ、さもなくば私が酷い目に遭うぞ、それでみょいうぃうぃうぃ・・・!!」

―――ぴろりろり~ん♪

噛んだ、だとお!?
そんな、こんな時に限って!
いやそれより、今の気の抜ける音は何だ?
あ、まてホタテ!
何を笑っている。その瞳の奥に光る同情の色は何だ!
まて、待つんだ話し合おう!? 話せばわかる!!
だから行くな、生かして堪るか!!
繊維一本一本、全て裂いて何本あるか数えてくれる!
ええい、動け私の身体!
身体! 何故動かん!?


叫んだつもりだった。
つもりだったのだ。
声は出ず、微動だに出来ず。
貝柱は、飛び立っていく。
私は一人取り残され、ほんの、ほんのちょっぴり、泣いた。






 もう終わりだ。
私は終わったのだ。
今はともかく、明日になれば、新聞として私の恥態が広められてしまうのだ。
皆はどう思うだろうか。
泣くだろうか。
笑うだろうか。
見捨てられはしないだろうか。

不安だ。不安で仕方ない。
先ほど、少しだけ泣いたのが呼び水となったのか、再び込み上げてくるものを感じる。
まるで痺れるように込み上げ、それが比喩でなく脚の痺れだと気付くのに、些か時間を労した。

おい脚よ、私の脚よ。今の私は、何処までも恥ずかしめを受けなければならないのか?
泣くことも許されないなんて私が一体何をしあばばばばばばば………

駄目だ。今日は駄目だ。明日なら良いのかとかそういう問題ではなく、駄目、駄目なの・・・・
苦悶に息が荒くなる。
首を振って気を紛らわそうにも、腰に響いてそれも出来ない。
動く首は緩慢で、体は微動だに出来ず、只々、脚から上る痺れにじっと我慢することしか出来ない。
これは・・・拷問だ。
今はまだ何とか耐えられているが、それも何時までなのか。

暫しすると、やや痺れが退いてきた。
良かった・・・
そう、ほっとしたのがいけなかった。一度退いた筈の痺れが、僅かな動きで再発したのだ。

完全な不意打ちだった。

思考より先に、身体が動いてはいけない方向へ捩れる。
待て、待て我が身体、身をよじるんじゃない!
よじったら、よじったら、









アッ――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――!!!










 ・・・気付けば、傍らに妹紅が居た。
移動させられたのか、私は布団に入り、額には濡れたおしぼりが乗っていた。
どうやら、私は気を失ってしまったらしい。
何やら腰の痛みが酷くなってる気がするが、それは致し方あるまい。

済まない。
乾く唇でそう告げると、ええ、と彼女は微笑んだ。































「とても見事なアヘ顔だったわ」

私は舌を噛んだ。
慧音好きなんですが、気付いたらしこたま虐めてましたごめんなさい。


もう、慧音はもこたんのお嫁さんになれば良いと思います。
って、けーねがいってた。
夢藍(むあい)
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コメント



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4.90コチドリ削除
上白沢ひぎぃ先生のご冥福を心よりお祈り致します。
8.70名前が無い程度の能力削除
人の数だけいろんな考えと理想と妄想があるんだね
作者の世界を堪能しました
9.100名前が無い程度の能力削除
けーねが、先生がぁぁぁああああ!! 途中から、パプテ○ス様になっているww
ごめんね先生、この私、終止爆笑してしまったせいで、いかの煮付けと自分の舌を噛み千切ってしまいました……
13.100奇声を発する程度の能力削除
ラストwwwww
15.100名前が無い程度の能力削除
奴め、イッたか……
19.100名前が無い程度の能力削除
これはひどすぎるwww
20.100名前が無い程度の能力削除
これはいいけーねwww
生真面目な人ほど混乱すると大変な事になるのですね
でもこんな慧音も大好きです。