今や霊夢は大富豪。人様の頬を、札束どころかソレが詰まったジュラルミンケースで叩くレベルである!
仮にその重量で相手の奥歯を折ってしまったとしても、賠償金など腐るほど出る。
札束風呂とかドンペリシャワーとか、ああいう類のものも余裕であった。
「という風にしたいんだけど」
無論ドリームである。叶わないから夢である。
霊夢としては切実な願いであるが、現実とは残酷なものである。億万長者になるチャンスなど、生まれてこのかた巡り合わない。
「はあ」
「はあ、じゃないわよ。神社壊したのは許してあげるから、ウチが繁盛するように何か方策を考えなさい」
青空の下、博麗神社の境内で彼女の相手をさせられているのは、比那名居天子であった。
何故こんなことになったかというと、二日ほど前に天子が神社を倒壊させたからである。それも、割とフザケた理由で。
ぶん殴ってみたたところで、壊れたものは直らない。腹の虫を治める程度にシメ上げた後で、神社復興作業に参加させた。
「いやほら、私腐っても天人だし? 俗な話は得意じゃなくて」
「得意だの不得意だのじゃないのよ、やるの」
「はいはい。で? 霊夢としては神社に人が来てほしい感じなんでしょ?」
「もちろん。客足は多いほうが良いじゃない」
「なるほどなるほど。……地図ない? あ、幻想郷全体の地図ね」
「え? まあ、あるけど」
霊夢は崩れた建物へ近づいてゴソゴソと漁ると、地図を取り出してきた。
とはいえ正確な検地など行われていないから、大まかなものである。妖怪の山などは立ち入れないため、大体の輪郭しか描かれていない。
「ここが博麗神社。で、ここが人里、あとココと、ココが重要みたいな感じかな?」
天子は何処からか朱筆を取り出すと、てんでバラバラな所に丸を入れ始める。
霊夢はその意図を測りかねて尋ねる。
「何やってるのアンタ」
「んー? 風水」
風水。
古代中国において、都市、住居、建物、墓などの位置の吉凶禍福を決定するために用いられてきた、気の流れを物の位置で制御する思想である。
日本でも割合にポピュラーであり、江戸や京は風水的に最高の立地である。
――などの知識は有っても、霊夢はその実践法を知らない。第一これは陰陽道の思想である。巫女の仕事とは畑が違った。
「風水ねぇ。名前ぐらいは分かるけど、何でそんなの知ってんの」
「いやホラ、私って大地を操る程度の能力を使うでしょ? そういうのに、先人の知恵って便利なのよ」
「へぇ。で? ウチはどんな感じなの」
「んー、客人は厄介者ばかり。金運は悲しみのズンドコ。待ち人来ず、探し物見つからず、地震で家を失う、と出たわ」
「おい最後はお前が原因だ」
その瞬間霊夢が見せた表情は、天子をしてビビらせるに足るものだった。
「ま、まあとにかく、再建ついでに移転をお勧めするわ。ええと、地図で言うと、ココがベストな感じ」
天子は朱筆で赤くボツ点を打った。
「……霧の湖のそば? あそこ人里からじゃ来づらいわよ」
「交通の便だとか、そういう理屈じゃないのよ風水って奴は。まあこの天子さんに任せてドンと泥舟に乗ってちょうだい!」
乗りたくない。
「まあ良いわ。分かった。その代わり、今より酷くなったら確実にシメるわよ。前とは比にならないレベルで」
「あれ、何? 信用してないの? はっはぁん、いいわ、泣いて感謝させてやるから待ってなさいよ。じゃあ私、風水に基づいた設計図を描いてくるわ!」
言うだけ言うと、天子は空へ飛び立っていった。霊夢はボンヤリとそれを見送る。扱いやすい奴だと思いながら。
今や霊夢は大富豪。人様の頬を、札束どころかソレが詰まったジュラルミンケースで叩くレベルである!
仮にその重量で相手の奥歯を折ってしまったとしても、賠償金など腐るほど出る。
札束風呂とかドンペリシャワーとか、ああいう類のものも余裕であった。
「いやはや天子、アンタすごいわ!」
「フフンそうでしょうそうでしょう、何なら私を神として崇めちゃってもいいのよ」
霧の湖付近に移転した博麗神社。境内には、連日黒山の人だかりが出来ている。
霊夢は感激したように天子をおだてた。彼女は天人であって天狗では無いのだが、鼻が伸びる。
扱いやすい奴だ。
「凄いわね霊夢、これだけの人を集めて来るとは」
「ああ紫」
「うげッ」
空間を裂いて現れたのは、八雲紫であった。境内の人ごみを見ながら、感心したように言った。
気が気でないのは天子である。彼女は紫にもシメられていた。霊夢の場合と違って、それ以来交流が無く、中々苦手な相手だ。
「でもまあ、私は何もやってないわよ。天子のおかげよ」
「ああ、いつかの不良天人の?」
「何? 本人の前で不良とか言っちゃう? 挑発?」
「事実でしょうが。……まあ、今回ばかりは礼を言うわ。少なくとも、博麗神社は妖怪の巣窟だ、なんて噂は消し飛んだし」
礼を言われた天子の鼻は、今や天にも昇らんばかりだ。昇った。
そんな彼女を見て、紫は目を細める。何を考えているか、霊夢にも簡単に分かった。
扱いやすい奴だな。
「フフンそうでしょうそうでしょう。このことを後世まで伝えて、末代まで私を崇めておくことね」
「ええはいはい、そうね。それにしても……」
「?」
境内にひしめく人ごみを眺めながら、紫は何か言いたげにして、口を閉ざした。
「紫?」
「いえ、大したことじゃないわ」
「何、気になるじゃないの。言ってよ」
「別に大したことじゃないのよ? この状況を見て、ちょっと思っただけよ……
立地を変えたら、リッチになれるんだなって」
また…またやられた!!
ここがちょっとなぁ
ちくしょぉぉぉぉぉぉぉ!
もってけ泥棒!
普通に聞いたら寒いダジャレなんてわかりきってるのに
何であんたの作品だったら笑っちまうんだよぉぉぉぉ!!
でも笑ったから点数持ってけ!!
今回はちょっとキたwww
相変わらずのオチの切れっぷり
どれだけ俺の腹筋を破壊するつもりだwww
もってけこの野郎www
ドちくしょおおおおっ!!www
短くして100個200個書いてる人たちだっているってのに。
今回は切れ味がよかったです
後書き含めての二段落ち、面白かったです。
持ち上げておいて落とすのは判ってるのに……くやしい、けど感じちゃう。
素晴らしいぞ。
けど霊夢が幸せならいいやw
時代を築ける。きっと。
故にてっちん(天子)に満点を献上したく。
まあ霊夢ならサクッと退治するか