わたくし、今、ずぅぅぅぅん、って気持ちですの。
どれくらいずぅぅぅぅん、って気持ちかというと、もう、ずぅぅぅぅぅぅぅぅぅん、ってくらい。
あんまりずぅぅぅぅん、って気持ちなものだから口に出してずぅぅぅぅん、って言ってみたら、余計に気持ちがずぅぅぅぅん、ってなりました。
もう、わたくしなんてシーラカンスより深く海の底へ沈んでしまえば良いと思いますわ。
ゲストのおもてなしも満足に出来ないばかりか、ご迷惑までおかけしてしまって。
マスターのご期待を裏切って、失望させて。
もう悲しくて、情けなくて、悔しくて、ずぅぅぅぅん、って気持ちですの。
思えば、ほんの数十分前までは、幸福の絶頂にいましたのに。
自分が、世界で一番幸福なお人形さんだと、思っていましたのに。
わたくし、お夕飯を作った後、後片付けをしてましたの。
いつも通りに、おいしくなぁれ、っていっぱい愛情と丹精を込めて作ったお料理を、上海に運んで行ってもらいました。
フライパンに残ったおこげを小一時間ほどコシコシと無心に落としておりましたら、上海が空いた食器を持って戻って来て、アリス美味しいって言ってたよ、と教えてくれました。
それを聞いてわたくしもう嬉しくって、わざわざそれを伝えてくれた上海の優しさがまた嬉しくって、上海に抱きついて何度もほっぺにちゅーをしてしまいました。
そうやってきゃいきゃいふざけておりますと、ダイニングからお食事を終えたアリスが「倫敦」とわたくしを呼ぶ声が聞こえてきます。
なんだろう、と首を傾げつつ、上海と連れ立ってすぐさまアリスのところへ飛んで行きましたわ。
「今日の晩御飯もとっても美味しかったわ。いつもありがとうね、倫敦」
少し緊張しながらアリスの前へ参りますと、アリスはそう言ってにっこりと笑いました。
普段の澄ました表情もアリスの美しさを際立たせますけれど、時折見せる笑ったアリスの可憐さときたら格別ですのよ。
その笑顔を前に、改まった感謝の言葉も相まって、何だかわたくしは恥ずかしくなって、もじもじしながらうつむいてしまいました。
すると、うつむいたわたくしの頭に、アリスが優しく何かをのせたのです。
「一年間ありがとう、倫敦。また今度の一年間もよろしくね」
そう言われて初めて、わたくしは今日が自分の誕生日だった事に気がつきました。
もちろん誕生日とは言ってもわたくしは人形ですから、アリスによって初めてこの身体に魔力を通されて、魂を授けられた日を誕生日と呼んでいるのです。
そして、アリスは全ての人形達の誕生日をきちんと覚えているのです。
「倫敦、お誕生日おめでとう」
アリスがそう言うと、どこに隠していたのか、突然蓬莱がぱぁん、ってクラッカーを鳴らしましたの。
そして仲間の人形達が一斉に拍手を始め、口々に、倫敦お誕生日おめでとう、と祝福してくれました。
わたくし、びっくりするやら感激するやらで、危うく涙をこぼしそうになってしまいましたわ。
頭に手をやると、どうやらアリスからもらった誕生日プレゼントはカチューシャのようでした。
上海が手鏡を抱えて持ってきて、わたくしを映してくれました。
カチューシャは黒くて光沢のある素材で出来たシンプルなデザインで、落ち着いた上品な美しさが、とてもとてもわたくしの気に入りましたの。
ちょっとわたくしなんかにはもったいないかな、と思いましたけど、仲間達はすごく可愛いよ、似合ってるよ、とほめてくれました。
「実はね」
わたくしが幸せに浸っておりますと、くすくすと笑いながらアリスが何かを取り出しました。
「お揃いにしちゃった」
そう言って、アリスはわたくしにくれた物をそのまま大きくしたカチューシャを自分の頭につけたのです。
アリスとお揃いのカチューシャ。
誕生日プレゼントに綺麗なカチューシャをもらった事自体、もちろんとてもとてもとても嬉しかったのに。
それがアリスとお揃いなんて、さらにその五百倍くらい嬉しくて、嬉しくて、嬉し過ぎてそのままどこかへ行ってしまうかと思いましたわ。
その時はわたくし思いましたの。
ああ、今夜は人生(人生って言っていいのかわからないですけれど)最良の日だなあ、って。
すっかりわたくし舞い上がってしまって、幸せの海の真っ只中に、ゆらゆら~、って浮かんでいるような気持ちでした。
そう、これで一日が終わればハッピーエンドでしたのに。
好事魔が多し、そうは問屋が卸さない、世の中そんなに甘くない。
訪れる悪魔の足音のように、突然玄関の扉が、どんどんどん、って音を立てたのです。
幸せムードに水を差すようないささか乱暴なノックは、それだけでとあるアリスの友人の方によるものと知れました。
「魔理沙ね。こんな時間に何の用かしら」
そう言ってアリスは上海を伴って魔理沙様を出迎えようと玄関へ向かいましたが、ふいに思い直したようにこちらを振り返りました。
そして、わたくしへ向かってこう言ったのです。
「せっかくお揃いなんだし、今夜は倫敦にお客様のおもてなしをお願いしようかしら」
え。
わたくしは急なご指名に、かちんこちん、って固まりました。
どどどどど、どうしましょう。
普段はお客様の接待やお給仕は、上海や蓬莱のお仕事。
わたくしはもっぱらお料理やお洗濯などの裏方専門ですの。
サンドイッチの耳を綺麗に切り落としたり、スープのお塩加減を見たり、お洗濯物を真っ白ふわふわに洗い上げたりするのは得意なつもりですわ。
でも、お料理を持ち上げて運ぶような力仕事や、お客様と直に接するようなお仕事はちょっと苦手なのです。
決して、決して人見知りというわけではありませんのよ。
ちょっぴり、人に見られていると思うと緊張してしまう性格なだけなのです。
「おーいアリスー。いるのはわかってるんだぜー」
そうやって固まっている間にも魔理沙様は催促をしておられます。
「はいはい、今開けるから静かにして。 …倫敦、行くわよ」
最早逃れる術はありません。
二、三度深呼吸をしてから、今まさに玄関の扉を開けんとするアリスの傍らに控えます。
今回はお役御免となって後ろに戻る上海が、すれ違いざまにガッツポーズをしながら、こくこくとうなずきかけてくれました。
…ありがとう上海、わたくしがんばりますわね。
アリスが扉を開けると、魔理沙様が背後の鬱蒼とした夜の森と絶妙なコントラストの笑顔を湛えて立っていらっしゃいました。
わたくしはきりり、って紅魔館のメイド長よろしく瀟洒にお出迎えしようと思っていたのですが、知らぬ間にうつむき加減になってしまいました。
そうすると魔理沙様の靴が妙に泥だらけなのが目に映りました。
「よう」
「こんな時間に何の用よ」
「そうツンツンするなって。こういう用だ」
そういって魔理沙様はポケットから草を取り出しました。
夜の帳の中で、ぼんやりとその草は発光しているのが見てとれました。
「これは…」
「月の光を蓄える魔法の草。きのこ狩りの途中で、偶然、見つけたんだ。確かアリスが今研究してる魔法に必要だっただろ?」
「よくそんな事覚えてたわね。これ、くれるの?」
「ああ、そのために取って来たんだからな」
「悪いわね、ありがとう。それにしてもなかなか見つからない物なのに。運が良かったのね」
アリスが草を受け取ろうとすると、魔理沙様はにやにやと笑って手を引っ込めました。
「私の乾いた喉は今、美味しい紅茶を欲しているそうだぜ」
「はいはい。別に交換条件にしなくてもお茶くらい出すわよ。いつもだって何もなくてもたかりに来る癖に」
アリスは溜息をつきながら魔理沙様を家の中へ招き入れました。
「邪魔するぜ」
早速きちんとお客様をおもてなししなくてはなりません。
アリスにとって気心の知れた友人とは言え、大事なお客様に変わりはありません。
わたくしは慌てて魔理沙様から帽子を預かりました。
魔理沙様は帽子をこちらへ手渡しつつ、何気なくお声をかけて下さいました。
「サンキュー、上海」
上海と間違えられて、思わずわたくしはぴたりと動きを止めてしまいました。
こんな時、接客に慣れている上海や蓬莱だったら。
きっとぷりぷりと可愛らしく怒ってみせて愛想を振り撒いたり、何事も無かったかのように仕事を続けたり、上手く切り抜ける事が出来たのでしょう。
それがわたくしときたら、お客様の前で無様にまごついてしまったのです。
見かねて、アリスが声をかけてくれました。
「その子は上海じゃなくて倫敦よ。全然違うでしょう?」
「そうなのか、そいつは悪いことをしたぜ。ごめんな、倫敦」
そう言って、魔理沙様はわたくしの頭を優しく撫でて下さいました。
わたくしは恥ずかしいやら情けないやらちょっぴり嬉しいやら、そんなギミックがあれば顔から火を出したい気持ちでいっぱいになりました。
もじもじしながらお預かりした帽子を帽子掛けへと運びます。
背後で「倫敦か。あいつ、なんか可愛いな」などと魔理沙様がおっしゃるので、ますますわたくしは挙動不審になってしまいました。
もしわたくしが生身の人間だったら、顔が茹で蛸よりも赤くなっていた事間違いなしですわ。
「でしょう?」
「ああ。そのお揃いのカチューシャも良く似合ってるぜ。綺麗だ」
「…気付いてたの?」
「そりゃあ、気付くさ。女の子のお洒落は目ざとく褒めてやるもんだ」
「ふうん。根っからのたらしなのね」
帽子掛けによっこいしょ、ってお預かりした帽子をかけて戻って来ると、アリスも顔が真っ赤になっていました。
そんなアリスの顔を、魔理沙様はからかうようにのぞき込みます。
「ははは、何を照れてるんだ?私は倫敦のカチューシャを褒めてるだけだぜ」
「わ、わかってるわよ。人形師として自分の人形が褒められたことに対してちょっと照れてるだけ」
その言葉にアリスのわたくし達への愛情を感じて、わたくし、また感激してしまいました。
あんなに赤くなるほどわたくしの事で喜んでもらえるなんて、ホントにアリスは人形達を我が身同然に思っているんですのね。
「まあ、そういう事にしておこうか」
ニヤニヤと笑いながら、魔理沙様はダイニングの椅子を引いて腰掛けました。
わたくしは紅茶をお出しするために、急いでキッチンへ向かいました。
キッチンでは、既に蓬莱がお茶の準備をしてくれていました。
いつもと役割が反対で不思議な感じがしますわね、と言ったら、倫敦みたいに上手に淹れられてるか不安だな、と蓬莱は小首をかしげてティーポットを心配そうに見やります。
冷まさない様に少しだけポットの蓋を開けて見てみますと、蒸らしは十分、きちんと葉も開いて、良い香りがキッチンにふわりと広がりました。
ダージリンにしてはほんの少し葉量が少ない気もしましたけれど、お茶の質が良いので問題無いでしょう。
すぐに蓋を閉じ、頭の上で大きくマルを作って見せたら、蓬莱はニッコリ笑ってその場でぴょんぴょん飛び跳ねました。
もしこれがバツだったら、蓬莱の事だからきっと首を吊ってた事でしょう。
さて、蓬莱はきちんと自分の仕事をこなしたのですから、わたくしも頑張らないと。
早くティーセットをダイニングへお持ちしなければなりません。
わたくしは意を決してトレイを持ち上げました。
お、重いですわ…!
いつもこれを涼しい顔でスイスイ運んでいる上海や蓬莱はなんて偉いんでしょう。
何とか持ち上げることは出来ましたが、手がぷるぷるしてしまいますの。
心配そうな顔の蓬莱へ、引きつった笑顔を送ります。ノープロブレムですわ。ノープロブレム。
お客様が待っていらっしゃるのですから、急いでお持ちしなくてはなりません。
それでいて、ポットの中のお茶を揺らさないような滑らかな動きが要求されます。
まして、重さに耐えかねて落としてしまうなんて言語道断、以ての外。
わたくしは精一杯力を振り絞りつつ、楚々としてなお素早く、かつ顔には涼しげな営業スマイル、というウルトラCに挑みました。
アリスと魔理沙様が待つテーブルまであと5メートル、3メートル、2メートル…
…ええ、わたくし、見事にやり遂げましたわ。
魔理沙様の背中の後ろで上海達が『10.0』と書かれたプラカードを次々と掲げます。
嗚呼っ、夢にまで見た金メダルの栄誉がついにわたくしのものに…!
「ありがとうな、倫敦」
魔理沙様の一言でわたくしは我に返りました。
極限状態からの開放感と達成感でトリップしてしまいました。非常に危ういところでしたわ。
魔理沙様、続けてアリスのティーカップへお茶を注ぎます。
こぽぽ、って音と共に湯気と香りが立ち昇るこの瞬間がわたくしは大好きですの。
手がぷるぷるしないように気を張り詰める必要が無ければ、もっと楽しめたのでしょうけど。
「魔理沙は砂糖入れるのよね?」
「ああ。いつも通り甘ーい奴が飲みたいぜ」
ティーポットを下ろしてほっと一息ついたのも束の間。
アリスが魔理沙様に確かめるようにたずね、わたくしに目配せをしました。
まあティーポットを持ち上げるのに比べればどうと言うことはありません。
わたくしは魔理沙様の方へお持ちしようと、トレイの上のシュガーポットを無造作に持ち上げました。
その油断が命取り。
持ち上げた高さが十分でなかったのでしょう、わずかに湾曲したトレイのふちに、シュガーポットの底がガッ、てぶつかりました。
ぬるぽ、なんて言ってませんのにー!ってわたくしは叫びたかったですわ。
倫敦選手、吊り輪で満点を叩き出し、金メダル間違い無しと思われた矢先、段違い平行棒でまさかの落下。
わたくしの手を離れ、シュガーポットが緩やかな弧を描いてひっくり返る様が、目の前でスローモーション。
勢いはそれほどついていませんでしたから、白磁の陶器はごろりとテーブルにころげただけでしたけれど。
お砂糖、どぶわっさー。
わたくし、呆然。
解き放たれた荒ぶるお砂糖さん達は、テーブルの上にマスタースパーク的輪郭を描きつつ、魔理沙様の方へとまっしぐら。
床にはほとんどこぼれず被害が無かったものの、大事なお客様は見事にお砂糖まみれになってしまいました。
「うわー、やったなー」
ははは、と笑いながら魔理沙様は少し椅子を引きました。
きっとお膝の上にはこんもりとお砂糖の山が出来ているに違いありません。
「ああ、待って! そのまま立つと床に砂糖がこぼれちゃうでしょ」
アリスはそう言いながら立ち上がって、魔理沙様の方へ駆け寄りました。
「じゃあどうすりゃいいんだ?」
「こうするのよ」
アリスは魔理沙様の脇の下から背中に左手を、膝の下に右手を差し入れ、魔理沙様をそのまま抱き上げました。
いわゆるお姫様抱っこの格好です。
なるほど、確かにこれならば魔理沙様のスカートの上のお砂糖がこぼれません。
「わ、わ、わ」
「ちょっと、暴れないでよ! このまま玄関まで運んじゃうわ」
慌てて上海が玄関に飛んで行って、扉を開けます。
魔理沙様は顔を真っ赤にして、手足をばたばたさせていました。
きっと、物凄く怒っていらっしゃるのでしょう。
いきなりお砂糖をぶちまけられたのですから、ご立腹なさるのも当然です。
アリスも顔を真っ赤にしていました。
きっと、自らの使役する人形の失態をひどく恥ずかしく思っているのでしょう。
ああアリス、本当にごめんなさい。
なんだかわたくしはぼんやりとしてしまって、アリスが魔理沙様を玄関まで抱いて行くのをテーブルの上に突っ立って見ておりました。
ふと気付くと、蓬莱達がテーブルや椅子の上にばら撒かれたお砂糖を掃除してくれています。
わたくしも慌てて布巾を取ってきて、自分の粗相の後始末に取り掛かりました。
そうして、冒頭のシーンに至るわけです。
ずぅぅぅぅん。
布巾でお砂糖を拭き取りながら、ため息がこぼれて来てしまいます。
わたくしなんかに、お客様のおもてなしなんて土台無理だったんですわ。
申し訳なくて情けなくて、目頭がじわわ、って熱くなって来てしまいましたけど、涙をこぼしてしまうわけにはまいりません。
わたくしは唇を噛み締めながら、懸命に後片付けに没頭しました。
玄関の外でお砂糖を払い落として戻ってきたアリスと魔理沙様は、ダイニングのテーブルがお掃除中で使えませんので、リビングのソファに並んで腰掛けました。
ソファはアリスが一人で座るにはとてもゆったりとしているのですけど、二人で並んで座るにはちょっぴり窮屈なくらいのサイズでした。
二人はぴたりと身を寄せ合って、心なしかうつむき加減です。
おしゃべりもどこかぎこちなく、いつもと比べて弾んでいないように思われました。
それはそうでしょう、窮屈な思いをしながらではくつろげるはずもありません。
わたくしのせいでご不便をおかけしていると思うと、悲しくて、心苦しくて、蓬莱でもないのに首を吊りたくなります。
ソファの前には小さなテーブルがあり、別の人形が淹れ直してくれた紅茶が並んだティーカップから湯気を立てています。
魔理沙様はその左の方のカップを持ち上げ、一口軽く啜りました。
「ストレートも悪くは無いんだけどなあ。やっぱり甘くないと口寂しいぜ」
「ふふ、お子様舌なんだから。でも紅茶に入れる砂糖はさっき全部こぼしちゃったし」
わたくし、それを耳に挟んでぴんと来ましたの。
汚名返上、名誉挽回とばかりに、キッチンシンクに砂糖まみれの布巾をほっぽらかして飛んで行き、必死でアリスに身振り手振りでアピールしましたわ。
「ああ、そう言えばハチミツがあったわね。さすが倫敦、ありがと」
「ははは、ドジっ子ちゃんが持って来てくれるのか? 今度はしっかり頼むぜ」
ううう、魔理沙様の中ではわたくしはドジっ子ちゃんに決定の模様です。
それもあの有様ではいたしかたありませんけれど、必ずや倫敦特製のハチミツティーでばっちりイメージアップですわ。
わたくし、普段アリスに淹れる紅茶にも、たまにハチミツを少ぅし垂らしたものを出してますの。
ちょっと疲れてるのかな、って時とか、いい事があった時とか。
倫敦の淹れたハチミツティーはとっても美味しいわね、ってアリスも絶賛してくれますのよ。
みそっかすなわたくしですけれども、これだけは他の人形には負けない、って自信があるんです。
もうわたくし、すっかり張り切ってキッチンにとんぼ返りして、上の戸棚からハチミツを取り出しました。
これもまた大きなビンで、結構な重量がありましたけれど、先程のティーセットに比べれば遥かにマシです。
ビンの蓋を開けて、表面に凝固している結晶を少し除けました。
これはこれで美味しいのですけれど、紅茶に混ぜるには適さないので、包んでおいて後でお菓子にでも使いましょう。
さあ準備万端、わたくしははちみつのビンを抱えて一目散にリビングを目指しました。
紅茶の温度が余り下がってしまいますと、ハチミツを入れるのにはよろしくありません。
それに、功を焦る気持ちが確かにわたくしの中にはあったのです。
息せき切ってアリス達のところへ猛スピードで向かったわたくしは、テーブルの丁度真上あたりで急ブレーキをかけました。
すると円筒形のつるりとしたハチミツのビンは、勢い余ってそれを抱えるわたくしの両腕からすぽーん、ってすっぽ抜けてしまったのです。
――同じ過ちを繰り返してなるものか!
わたくしは精一杯手を伸ばして、必死にビンに飛びつきました。
そして、なんとか二人の頭上でしっかとビンを抱きとめる事に成功したのです。
…しっかと抱きとめたビンは、上下がさかさまでした。
なお悪い事に、先程蓋を開けた後、わたくしはしっかりと閉めていなかったのです。
倫敦選手、段違い平行棒での痛恨の落下に続き、踏み切り位置を間違えあん馬に顔から激突。
ハチミツ、でんでろりーん。
わたくし、でんでろりーん。
アリスと魔理沙様の美しい金の髪を、さらに輝く金色に彩る糖分たっぷりの自然の恵み。
わたくしの眼前には見えたのです。
大英博物館に二階建てバスが突っ込み炎上しました。
ビッグベンは真ん中から折れて吹き飛び、バッキンガム宮殿に刺さりました。
テムズ川は氾濫し、ロンドン橋は崩落し、ロンドンブリッジはまさかの4着で、馬連は14,340円の万馬券でした。
ロンドンオワタ\(^o^)/
「うひゃー、見事にハチミツまみれだな」
「ごごご、ごめんなさい魔理沙! ああ、ベタベタして気持ち悪いわね!」
二人の会話がどこか遠くから聞こえてきます。
わたくしは遠のく意識を渾身の力でたぐり寄せました。
魔理沙様は怒りのメーターが振り切れて一周してしまい、無我の境地に至ってしまったのでしょうか。
妙に落ち着いた仕草でティーカップを持ち上げると、静かに紅茶を口に含みました。
それから、おもむろにアリスのほっぺたをぺろりと舌先でなめたのです。
「ちょちょちょちょ、ちょっと!!? あんた、な、なな、何してんのよ!!」
「甘くておいしいぜ。やっぱ紅茶はこうじゃないとな」
嗚呼、ああしてアリスのほっぺたについたハチミツさえなめ取らねばいられない程に、魔理沙様は甘い紅茶を渇望しておられたのですね。
そんなお気持ちにも応えることの出来ないわたくしの無能さときたら。
アリスはわたくしの知る限りでは人生最高潮に赤面していました。
脳の血管が2、3本は切れてしまったのではないでしょうか。もう死ぬ寸前です。
きっと、わたくしに対する尋常ならざる怒りを、お客様の手前無理矢理にこらえているのでしょう。
「ばばばばば、ばかな事してないで、ほら立って!」
「なんだなんだ? どこへ行くんだ?」
「お風呂に決まってるでしょう?」
アリスは乱暴に魔理沙様を立たせると、背中をぐいぐいと押してリビングを離れます。
わたくしは呆然としたままふらふらとついて行きました。
「ま、待て待て待て、待て。アリス。い、一緒に入るのか?」
「当たり前でしょう? 一人が入ってる間、もう片方はハチミツまみれで待ってるわけ?」
アリスはそう言いながら、脱衣所へと魔理沙様を押しやります。
「それはそうだ。それはそうなんだが、どうなんだ? これは」
うろたえる魔理沙様の身ぐるみを素早くぽいぽいと剥ぎ取るアリス。
わたくしは慌てて空中でそれをキャッチしました。
「みょ、妙に手馴れてないか…」
「着替えを私の分と魔理沙の分、用意しておいてね」
わたくしは必死でこくこくと頷きました。
「いやいいって! 着替えはいい! アリスの服なんて恥ずかしくてとても着れないぜ」
「ちょっと、どういう意味よ」
「お前の少女趣味な服なんて願い下げだって言ってるんだよ。軽く水洗いだけしてくれれば、八卦炉であっという間に乾かせるからな。倫敦、悪いけど、それ、簡単に洗って八卦炉の上に干しといてくれないか?」
わたくしが抱えているお洗濯物の山を指してそう言う魔理沙様に、またわたくしは必死でこくこくと頷きました。
「私のは水につけておくだけでいいから。じゃあ倫敦、よろしくね」
そう言ってアリスは魔理沙様の背中を押しながら、浴室の中へ消えていきました。
浴室の扉が閉まる寸前、アリスはわたくしに向かって軽くウインクをしました。
当然、わたくしにはそのウインクの意味がすぐにわかりましたの。
覚えてなさい、魔理沙が帰った後でキッツーイおしおきだからね。
わたくし、猛スピードでアリスのお着替えを用意して、魔理沙様のお洋服をじゃぶじゃぶじゃぶ、って洗って、八卦炉の上に干しましたわ。
八卦炉からはぶわー、って温風が絶え間なく出ていて、確かにすぐにお洗濯物が乾きそうでした。
それからわたくしリビングに戻って、気が抜けたようにじゅうたんの上にぺたん、って座り込んでしまいました。
慌ててばたばたして疲れてしまったし、度重なる失敗で精神的にもガタが来ていました。
慣れない仕事でずっと張っていた気が、ぷつん、って途切れてしまったのが自分でもわかりました。
そうすると、もうどうにもやるせない感情が胸の内に滲み出して来て、また涙が出そうになってきました。
すると、そんなわたくしの傍らにいつの間にか来ていた蓬莱が、ぽん、ってわたくしの肩に手を置いて言いました。
――倫敦たん、GJ!
上海もわたくしの前にやって来て、にこにこ笑いながら、腰をかがめてわたくしに向かって言いました。
――倫敦たん、GJ!
顔を上げると、私の周りを仲間の人形達がぐるりと取り囲んでいて、みんな口々に言うのです。
――倫敦たん、GJ! ――倫敦たん、GJ! ――倫敦たん、GJ!
わたくしは、GJ、という単語をそれまで一度も聞いたことがありませんでした。
でも、わたくしには、すぐにわかりました。
GJ、というのは、わたくしを嘲る言葉だと。
倫敦たん、という呼びかけからも明らかでした。
倫敦さん、でも倫敦ちゃん、でもなく、倫敦たん。
その幼児に対するような舌足らずな呼びかけで、わたくしを揶揄しているのです。
みんな、手を叩いて笑いながら、わたくしに向かって、何度も何度もGJという言葉を投げつけました。
仲間達の怒りももっともです。
わたくしなんかがお仕事を任せられなければ、もっとずっと上手くいってたはずなのです。
みんな誇りを持ってお仕事をしているのですから、わたくしの無様な姿が歯痒くて、腹が立ったことでしょう。
罵声の中には、倫敦たん、もえ~などというものも混じっていました。
無能なお前は焼却処分されてしまえ、という意味です。
それもまた、むべなるかな、と思いつつも、悔しくてたまりませんでした。
とうとう、わたくしは大声を上げて泣き出してしまいました。
涙を止めようと思いましたけれど、もうどうしても止められなくて、わんわんわんわん泣きました。
泣いている自分がみじめで情けなくて、それでよけいに涙が止まりませんでした。
わたくしは、霧の倫敦人形。
わたくしには、涙を流すとそれが霧になる、というギミックが搭載されているのです。
あっという間に家中に霧が立ち込めてしまいました。
その惨状に何とか涙を止めようとするのですけれど、自分の涙さえままなりません。
どんどん霧は濃くなる一方です。
「うおっ、なんだこりゃ!霧か?」
浴室の方から魔理沙様の声が聞こえてきました。
「参ったな、家の中までこれだと外は相当な濃霧って事か。視界は多分ゼロだろうし、飛んで帰るのは無理そうだぜ」
「それにそもそもこんなに湿っぽいんじゃ、魔理沙の服、乾いてないんじゃない?」
「うわ、ほんとだ。八卦炉の力をもってしても駄目だったか… っくしゅん!」
「とりあえず何か着ないと風邪引くわよ。倫敦? やっぱり魔理沙の分の着替えも持ってきてくれる?」
わたくしは何とか気力を振り絞って立ち上がり、ふらふらとアリスの部屋に向かいました。
途中、自分で撒き散らした霧のせいで前が見えずに、三度ほど頭をぶつけました。
どうにかアリスのパジャマを見つけて、脱衣所へ持って行きます。
「うわ、これアリスの着てる奴の色違いじゃないか」
「あらホントね。今度は魔理沙とお揃いだわ」
「くそ、なんかすごく恥ずかしいんだが」
「文句言うんだったら下着姿で過ごさせるわよ」
「なんて破廉恥なことを」
ぶうぶう言いながら魔理沙様がパジャマを着ますと、アリスと姉妹みたいに見えましたわ。
「今夜はもう帰るのは無理そうだし…と、泊まっていく? わよね?」
「お、おう…そうだな、泊まって、いこうかな」
またわたくしのせいでお客様に迷惑をかけてしまいます。
わたくしは懸命に身振りで霧が漂っているのは家の中だけで、外は全然そんな事ないのだと伝えましたが、ちっとも二人の目には映っていないようです。
霧のせいで見えないのでしょうか。
「あ、でも…来客用のベッド、用意してない…」
「あー、アリス。まあ、あれだ、私達、女同士じゃないか。その、お前が嫌じゃなければ、同じベッドで寝るのもおかしくはないんじゃないか? うん。あくまでも、お前が嫌じゃなければ、の話だが」
「え? え? 嫌か嫌じゃないか、と言われれば、まあ、嫌じゃないわよ? じゃあ、寝る? 一緒に。同じベッドで。寝る? 一緒に寝る?」
「ああ、そうだな、だがアリス、なんだか顔が近いぜ」
「霧だから。見えないから。魔理沙の顔が。ね? だから近いの。顔が。ね?」
二人とも何だかテンションがおかしくなっています。
度重なるアクシデントのせいでイライラも限界、というところでしょう。
ああっ、わたくしのばか。ばかばか。
今日は最高に素敵な日だったはずなのに。
どうしてこんな事になってしまったのでしょう。
「まあ、あれだな、霧のせいで視界も悪いし、何かするにも不都合だしな。それにちょっと、ひんやりして肌寒いのもあるし。どうだ、もう結構夜も遅いんじゃないか? なあ? 夜更かしは肌に悪いしな、うん」
「なるほど魔理沙の言うことにも一理あるわね。一理といわず三理くらいはあるかも。それに、私なんだか今日は凄く疲れてるっていうかぶっちゃけもう眠い? みたいな?」
「ホントか? 奇遇だな、私も今眠いなーって丁度思ったところだったんだ。あれだな、結構気が合うじゃないか」
「あらそうなの? 私達って相性バッチリだったのね? 薄々そんな気もしてたけどね? ていうか、あれね? もう、寝る? 寝ちゃう?」
「よし寝よう」
どことなしに上の空な会話を交わしつつ、アリスと魔理沙様は霧の中を寝室へと消えて行きました。
ドアがばたん、って音を立てて、それでわたくしの長い長い一日は終わりました。
本当に、アリスに命を与えられてから、一番大変な一日でした。
お仕事の量自体も普段の倍以上はしましたし、慣れない事ばかりで気も使いました。
何より、嬉しいことも、悲しいことも、心を強く揺さぶる出来事はこんなにも疲労をもたらすものなのですね。
アリスにカチューシャをもらって喜んでいたのが、もう何年も昔の事のように思えました。
もう、接客はこりごりですわ。
仲間の人形達によってたかって罵られた言葉が、頭の中でいつまでも反響しているように感じました。
所詮わたくしなんて、GJなんですの。
それから先の事は、良く覚えていません。
精も根も尽き果てて、もう何もしたくない、って思ったところまでで記憶が途絶えていますの。
「だめ、魔理沙…恥ずかしい」
「恥ずかしがることなんて無いぜ、この霧じゃあお月様にだって何にも見えやしないさ。ましてどこぞの烏天狗にもな」
翌朝、わたくしはキッチンの隅っこで目を覚ましました。
いつの間にかこんなところで眠ってしまっていたようです。
ぱちぱち、って目をしばたいて辺りを見回してみると、霧はすっかり晴れていました。
その他の昨夜の粗相の跡もすっかり綺麗になっていて、もしかしたらあれは夢だったんじゃないか、って一瞬わたくしは思いました。
でも、寝ている間もそうしていたのでしょう、胸に自分がぎゅー、って抱きしめていた物を見て、夢じゃなかったんだとわかりました。
アリスがわたくしにくれた、アリスとお揃いのカチューシャ。
きっと、わたくしはこれを見るたびに、後悔と共に辛い記憶を呼び覚ましてしまう事でしょう。
それでも、やっぱり、わたくしの一番の宝物に違いありませんの。
アリス。大好きなアリス。
もっともっと、お役に立てる人形になれるよう、わたくし努力しますから。
このカチューシャがある限り、絶対にわたくし諦めませんから。
だから、わたくしを、嫌いにならないで。
わたくし、がんばりますから。
わたくしはカチューシャを付け直して、目をごしごし、ってこすって起き上がりました。
重くて重くて仕方の無かった気分も、夜が明けたら幾分軽くなったような気がします。
さあ、今日も一日、がんばらなくっちゃ。
まだ朝もやの残る早い時間に、魔理沙様は箒に跨って帰って行きました。
「文の奴に嗅ぎ付けられたらかなわないからな。じゃあな、アリス、倫敦」
一晩でしっかり乾いたお馴染みの服を着た魔理沙様を、パジャマ姿のアリスと並んでお見送りしました。
あっという間に小さくなっていく魔理沙様の後姿に、わたくしは深々とお辞儀をしました。
本当に、色々ご迷惑をおかけして申し訳ありませんでした。
どうか、気を悪くなさらずに、またアリスのところへ遊びに来てくださいね。
「さて、と」
玄関の扉をばたん、って締めた後、アリスはわたくしに向き直りました。
そうです。これからキッツーイお仕置きがあるのです。
しかしそれも全てわたくしの不甲斐無さが招いたこと。
どんなお叱りも甘んじてこの身で受け止める覚悟は出来ておりますわ。
「倫敦」
前言撤回。やっぱりちょっぴり怖いです。
アリスは右手でわたくしの身体をぎゅっ、て掴みました。
わたくしもそれで思わずぎゅっ、て目をつぶりました。
そのまま、凄い勢いでアリスの胸元へ抱き寄せられました。
「倫敦たん、GJっっ!!」
わたくしはきょとんとして、アリスの顔を見上げました。
アリスはとびっきりの、満面の笑みで、わたくしに頬ずりをしたり、キスをしたりしながら、GJ、GJと連呼していました。
アリスがわたくしを見つめる表情には、慈愛が満ち溢れていました。
それで、ようやくわたくし、自分の勘違いに気付きましたの。
ああ、GJって、なぐさめの言葉だったんですのね。
昨夜、口々に仲間たちがわたくしにGJ、と声をかけてきたのは、わたくしをなぐさめてくれていたんですわ。
それを勝手にひねくれていじけた解釈をしていた自分が恥ずかしい。
穴があったら入りたいですし、なかったら掘りますわ。どんな岩盤でも。
それくらい恥ずかしくて、それ以上に、幸福感が胸に満ちてきました。
みんな、ありがとう。わたくし、幸せ者ですわ。
みんな、みんな、大好き!
そして、あんなに失敗ばかりで大恥をかかせたのに、わたくしを思ってなぐさめてくれる、世界で一人だけのマスター。
アリス、アリス、貴女にお仕え出来て、本当に倫敦は幸せです。
もっともっと、もっと貴女にふさわしい人形に、必ずなってみせますわ。
アリス、心から、大大大大大好き!!
やっぱり、わたくしは世界で一番幸福なお人形さんだったんですわ。
それから、魔理沙様がいらっしゃった際には、いつもわたくしがご指名を受けて接客をするようになりました。
アリスと魔理沙様は以前と比べてより親密になったようで、訪問の頻度も以前より増えたような気がします。
それでわたくしは大忙しなのですけれど、その忙しさが大変に嬉しい事ですの。
だって、魔理沙様もまた、わたくしの失敗を許してくれて、名誉挽回のチャンスを下さっているのですから。
相変わらず失敗をする事もありますけれど、その度に、仲間たちはGJ、ってわたくしを励ましてくれます。
一度、アリスの見ていないときに、魔理沙様がわたくしの頭を撫でながらおっしゃいました。
「ありがとうな、倫敦。お前のおかげだよ。ほんとGJだぜ」
それで、わたくしもますます魔理沙様の事が好きになりました。
GJという言葉の温かみを知って、いつか自分もそんな言葉を誰かに掛けてあげたい、とわたくしは思っておりました。
そうしましたら、先日、上海がお使いの帰りに茨の垣に服を引っ掛けて、あられもない格好で泣きながら帰って来ましたの。
わたくしは、にっこり笑いながら、上海の耳元で優しく、上海たんGJ、ってささやいてあげましたわ。
それから一週間ほど、上海は口をきいてくれませんでした。
完、ですの。
上海や蓬莱もかわいいw
倫敦人形可愛いぜ…恋仲まで取り持つとは
面白かったです
ロンドンオワタ\(^o^)/
じゃねーだろww
とりあえず言えることは、倫敦たんGJ
アリスオワタ\(^o^)/魔理沙にイかれたのですね。わかりますわ。 冥途蝶
ドジっ子倫惇たんGJ!
マリアリでこの切り口は非常に新鮮でした。
可愛いわあ……
文章のテンポが良くて読みやすかったです。
みんな可愛いなあ。
最初から最後まで楽しめました。
読みやすくてみんなかわいすぎた
ぬるぽで吹いたw
でマジ吹いたww
オチもキレイに決まって100点満点。
みんなかわいい!!
初め誰だこいつと思ったら倫敦いいキャラだぜ!
とくにオチが秀逸すぎる、きっと倫敦はとてもいい笑顔でささやいたことだろう。
そして、他の方は突っ込んでないが、どう考えても擬音がおかしいだろ、いきなり「ずぅぅぅぅん」の連呼で吹いたわww
倫敦のキャラクター描写が生き生きとしていて愛着が持てた。
各所のネタも程よく、最後まで楽しく読ませてもらいました。
倫敦たんGJw
>「だめ、魔理沙…恥ずかしい」
うおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお
いや、これはマリアリが主人公なのかな?
ともあれ、倫敦GJ!