俺、東方は萃あたりから存在を知って、それからどんどんはまっていった訳なんだけれども、一つ不満な所があったんだよね。
「なんで俺は幻想郷にいけないの?」って。
求聞史記で外来人がどんな感じで生きてるかが分かった時はわくわくしたね。
どのくらいのわくわくだったかと言うと、最近ので言うとEDF5が出るって明らかになった時くらい。
まぁそれは置いといて、なんでも幻想郷に行った外来人はそこに住み着くこともできて、しかもかなり重宝されるらしいじゃないか。
わくわくしたね。
俺はどうやったら幻想郷に辿り着けるのかと必死に探したり妄想したりしたね。
でも結局その時はすぐに東方キャラといちゃいちゃする妄想になってあまり真面目に考えなかった。
まあ、飽きちゃったんだろうね。行く方法より行った後の事を考えたほうが楽しい。
多分血液型って性格に関係してるんだろうね。俺B型。すぐに熱中してすぐに冷める。あ、東方自体に冷めたわけじゃないよ。
そんなわけで幻想郷に行く方法はしばらく考えなかった。
前置きはこのくらいにしておいて、あれから結構月日が経っていたのかな、幻想郷に行くことなんて考えをすっかり忘れてた俺がたまたま見つけた掲示板のスレにこんなものがあったんだ。
『真面目に幻想郷に入る方法を考える』
わくわくしたね。
ちょっと覗いてみたら、住人も結構真面目に考察していて驚いた。中には本当に幻想郷に入ったなんていう人もいる。
なんかもう楽しくなっちゃって、その日の内に書き込みを全て読んでしまった。
そんで何日か駐在してたんだけれども…やっぱり、大したことも考えないでスレを閉じちゃった。
駄目だね、この性格は。
そろそろ本題に入らないと駄目だな。
あれからまた月日が経って、最近、妖精大戦争が委託されたよね。あれが結構難しくて、最近になるまでExまで辿り着けなかった。
俺はネタバレが嫌いで、夏コミの日からずっと東方に関係のありそうな掲示板やHPは見ないようにしていた。
だからExをクリアするまで一切の東方の情報を絶っていたと言ってもいい。
リバウンドってやっぱりあるんだね。Exをクリアしたらもう掲示板とか見まくった。駐在スレには書き込みが溜まっていたからね。
そしたらいつも見ている掲示板にこんなスレを見つけたんだ。
『真面目に幻想郷に入る方法を考える4』
わくわくしたね。
あのスレは、あれからテンプレも出来てかなり進歩してるみたいだった。
うん…なんかこの時は何故か色々と考える気になったんだろうね。
久しぶりに、どうやったら幻想郷に行けるか考えてみた。
まずは…『博麗神社』を見つける…か。
神主の行っている博麗神社を見つけるのはかなり難しい話だ。
さらに言うと俺の住んでいる所からは博麗神社を探したりすることはちょっと…無理がある…。
ああ、結構現実的な話っぽいのに残念だ。
うーん、人々から忘れられて幻想入り…ってのはおかしい気がする。
人々に忘れられたものが集まる幻想郷だけれども、それは考えとか精神みたいな目には見えないものが忘れられたら幻想郷に行くんじゃなかったっけ?
物はどうか分からないけれども、とりあえず外来人が外の世界で忘れられた者とはどこにも書かれてないかな。
吸血鬼の食料として幻想郷に入る…?
あれ、そんな設定あったっけか。俺は求聞史記を開いてみた。
なになに。昔、縦横無尽に暴れまわる吸血鬼と、妖怪が争った結果、妖怪が食料となる外の世界の人間で死ぬ価値の無い人間(自殺者など)を提供する代わりに……よって和解したと。
ほう…生きる価値の無いじゃなくて、『死ぬ価値の無い人間』…?
わくわくしたね。
死ぬ価値の無い人間ってのがちょっと曖昧だけど…多分、本当はもっと生きることが出来る人間、見たいな感じかな。
いや、餌になるくらいだからもっと厳しい表現の方が合っているかもしれない。死ぬことすらも許されない、恐怖を味わってから死ぬべき人間とか。
いやいや、自殺に失敗した人かも。
いつまでもこの言葉の意味を考えたって仕方が無い。この方法で、幻想郷に行くことが出来るのか…?
行ったとして…吸血鬼の餌になってしまうのではないか…?
どうにかして吸血鬼の餌になる前に逃げ出さなければならない…。
「…これは……」
その時、求聞史記に…生き残るためのヒントを見つけた。
……
そして今の俺はとある山へ向かって車を走らせている。
もちろん目的は自殺じゃなく、幻想郷に行くため。
…まぁ、何日か彷徨えば拾ってくれるんじゃないかな。
さて…目的の山に着いたようだ。ここからは自分の足で登山しなければならない。
ちなみに、時間帯は夜。多分夜の方が妖怪は外の世界に来やすいんじゃないかな?
どんな妖怪がくるのか今からわくわくするね。やっぱり紫なのかな。
…それにしてもどんな気持ちで彷徨えば良いのかな。わくわくしながら歩くわけにもいかないし…。
…とりあえず3時間くらい彷徨ってみたが…何も起きなかった。
やっぱり本当に死のうと思わないと駄目なのか。
こんなに幻想郷へ行く気満々の俺は拾ってくれないのだろうか…。
折角、生き残るためのヒントを持ってきたというのに。
俺は、ポケットの中にしまってあるそれをぎゅっと握り締めた…。
……
「最近、吸血鬼の奴ら調子に乗ってきていませんか…?」
「…どうかしら、もともとそういう奴らだった気がするけど」
そう言って私は肩を竦めた。
悪魔の契約によって、妖怪は吸血鬼に食料を調達しなければならない。
そして今日は、今の里の人間には知られていないとある吸血鬼に食料を調達する日である。
「…奴の使いが来たみたいですよ」
「分かっているわ、いちいち言わなくても」
吸血鬼の使いは私の前に深々と礼をして、次の食料はどんなものが良いかの注文をつけてきた。
悪魔の契約が結ばれて最初の内は外の世界の自殺者を適当に持って行くだけで良かったのだが、だんだんと吸血鬼から注文をつけるようになり、
最近は毎回の様に好き勝手な事を言ってくる。
酷い時は腹が減ったから100人の食料を持って来いと言われたこともある。
外の世界の人間は、例えば去年は確か32845人自殺したのだから、その日自殺した人を全て持って来いと言っている様な物である。
しかし、海や山など、私の能力で神隠ししても差し支えない所で自殺する人は意外に少なく、約9%ほどしか居ない。
まぁその時はさすがに断ったのだが、最近の吸血鬼の傲慢さには少し目に余るものがある…。
今回の吸血鬼の注文は…最近イライラが激しいからカルシウム濃度の高そうな人を選んで来い、と。
「そんなの分かるわけないじゃないですか…」
「あら、藍には分からないの?適当に漁師でも持ってこればいいのよ」
「はぁ…」
悪魔の契約を破るわけにはいかない。私は外の世界の夜の空へ、カルシウム濃度の高そうな自殺者を探しに出かけた…。
……
「ここは何処だ…」
俺はまだ山を彷徨っていた。
まさか帰れなくなるとは思わなかった…。山なんて下れば麓に着くだろうと、遭難者のことが理解出来なかったのだが、今なら理解できる…。
山の奥深くまで入ると、何処に向かって下れば良いのか分からなくなるのだ。
そもそも山に登るためには時には下ったりしながら頂上を目指さなくてはならない。
つまり、一旦道に迷うと、そもそも下ってよいのかすら分からなくなる。
「こんなつもりでは…」
そもそも俺は…いつものようにすぐ熱くなって、すぐ行動してここまで来たものの…本気で幻想郷に行けると思っていなかったのかもしれない…。
あぁ、なんて今更なんだろう。いつもこうやって俺は後悔するんだ。
俺は生き抜くためのヒントを手に乗せて…途方に暮れるのであった…。
……
私はカルシウム濃度の高そうな自殺者を、隙間を使って探していた。
今日は漁師の居そうな海での自殺者は居なかったので、とりあえず山を探してみる。
「ううっ…」
「あら…?」
とある山で、変なものを手に乗せて泣いている男を見つけた。あれは…良く見ると…?
面白いことになりそうだ…!
「貴方、そんな所で妙な物を持って何をしているのかしら?」
「う、うわあっ…!」
突然現れた私に男は予想通りの反応を見せる。少し面白くない。
しかし男の顔はどこか嬉しそうな顔のような…そんな気がした。
「え、えーと…なんか人生がいやになって…そう、もう死のうかと…」
「あら、そんなものでどうやって死ぬのかしらね」
あっ、と男はそれをポケットに隠す。
「まぁいいわ…貴方に相応しい死に場所を与えましょう」
「え…え…ああああんたは誰なんだ…!」
その質問を無視して私は吸血鬼の場所に繋がる隙間を男の足元に広げた。
男が叫び声を上げながら落下していく。私も続けて隙間に入った。
さて、あの吸血鬼がどんな顔をするのか見物である…!
……
「ひいいいぃぃぃぃいやっほおぉぅぅぅぅ!!!」
やったっ…!俺は…俺はついに幻想になる…!!
こんな夢のようなことがあるか!?
上からゆかりんが降りてくる!
わざわざ上からとはなんて素敵なサービスなんだろう!!
おおお??もうすぐ出口かな!?
「いてぇぇっ!」
「おやおや、今日の食料は随分と元気ですねえ?」
「ええ、この方は間違いなく漁師でしょう。とても魚臭かったから」
目の前で二人が全然噛み合ってない挨拶をした。
ゆかりんと…もう一人は誰だ?……あぁ、恐らく吸血鬼かな。なんだレミリアじゃないのかよ…。
こりゃあ万が一食われたときにも全然嬉しくないなあ…。
「ほう、約束は守って下さったのですね、感謝しますよ?」
「ええ、それでは御機嫌よう」
「え、行っちゃうんですか!?」
俺の問いを無視してゆかりんは隙間の向こうへと足早に去っていった。
ああ、もっと見ていたかったのに…。
「さてさて…食事の時間としましょうかねぇ…」
「ひいいっ!!」
吸血鬼が歩み寄ってくる。待ってくれ、心の準備が…!
「…たしかに、貴方魚臭いですね」
「えっ、どうも」
げ、やばいバレたか…?いや、バレても問題ない。どうせバラすんだから。
「確かにあなたは漁師な香りがします」
「ええ、まあ」
さあて、そろそろ必殺を出してやろうか…?
「やっぱり漁師は魚を良く食べるのですか?ここら辺には海が無いので分かりませんねえ」
「そんな感じですね」
くっくっく…こいつ、コレを見たら卒倒するんじゃねえかなァ…?
「まぁ、さっさと飲み干してこのイライラを解消するとしましょう」
「ククク…そうはさせねぇ……」
キマッタ!
「何…!?」
「こいつを、見やがれええぇぇぇ!!!!」
俺は鰯の頭と折った柊の枝を取り出した!え、引っ張っておいてこれかよ!
「チイイィィ、近づけないっ…!!」
「カッカッカ、それじゃあまた会う日までアディオスの助、おはようサマンサ」
俺はゆかりんをこき使う性悪吸血鬼を精一杯軽蔑の目で見下してから吸血鬼の住処を後にした。
いやあ、最初は緊張したけど楽勝だったな。うん。
…さて。
「ここは何処だろう…」
そうだ…あんな吸血鬼原作に居なかった…きっと広い(?)幻想郷の中でも辺境に奴は住んでいるんだろう。
あぁ、今日は良く迷う日だ…。
「御機嫌よう」
「うわあぁっ!!」
また唐突にゆかりんが現れた。ひゃっほう、またその御姿を拝めるなんて!
「ふふっ、さっきは良くやってくれたわね」
「…ええ、まぁ」
くそ、ここで気の利いたことの一つも言えない俺に腹立つ…。
「あの吸血鬼、少し最近調子に乗っている所があってね…これで少しは分かるでしょう、彼らも馬鹿ではないから」
「あ…あの…」
「何?」
俺はここで言葉に詰まった。うぅ、この間が辛い。
ゆかりんは何もかもお見通しと言った顔で俺の次の言葉を待っている。
俺は意を決して…俺の気持ちを素直に伝えた。
「ゆ、ゆかりん…俺と……俺と結婚しtkrあごめんかんじゃった」
俺が幻想郷の住人になることは無かった。
めでたしめでたし。
「なんで俺は幻想郷にいけないの?」って。
求聞史記で外来人がどんな感じで生きてるかが分かった時はわくわくしたね。
どのくらいのわくわくだったかと言うと、最近ので言うとEDF5が出るって明らかになった時くらい。
まぁそれは置いといて、なんでも幻想郷に行った外来人はそこに住み着くこともできて、しかもかなり重宝されるらしいじゃないか。
わくわくしたね。
俺はどうやったら幻想郷に辿り着けるのかと必死に探したり妄想したりしたね。
でも結局その時はすぐに東方キャラといちゃいちゃする妄想になってあまり真面目に考えなかった。
まあ、飽きちゃったんだろうね。行く方法より行った後の事を考えたほうが楽しい。
多分血液型って性格に関係してるんだろうね。俺B型。すぐに熱中してすぐに冷める。あ、東方自体に冷めたわけじゃないよ。
そんなわけで幻想郷に行く方法はしばらく考えなかった。
前置きはこのくらいにしておいて、あれから結構月日が経っていたのかな、幻想郷に行くことなんて考えをすっかり忘れてた俺がたまたま見つけた掲示板のスレにこんなものがあったんだ。
『真面目に幻想郷に入る方法を考える』
わくわくしたね。
ちょっと覗いてみたら、住人も結構真面目に考察していて驚いた。中には本当に幻想郷に入ったなんていう人もいる。
なんかもう楽しくなっちゃって、その日の内に書き込みを全て読んでしまった。
そんで何日か駐在してたんだけれども…やっぱり、大したことも考えないでスレを閉じちゃった。
駄目だね、この性格は。
そろそろ本題に入らないと駄目だな。
あれからまた月日が経って、最近、妖精大戦争が委託されたよね。あれが結構難しくて、最近になるまでExまで辿り着けなかった。
俺はネタバレが嫌いで、夏コミの日からずっと東方に関係のありそうな掲示板やHPは見ないようにしていた。
だからExをクリアするまで一切の東方の情報を絶っていたと言ってもいい。
リバウンドってやっぱりあるんだね。Exをクリアしたらもう掲示板とか見まくった。駐在スレには書き込みが溜まっていたからね。
そしたらいつも見ている掲示板にこんなスレを見つけたんだ。
『真面目に幻想郷に入る方法を考える4』
わくわくしたね。
あのスレは、あれからテンプレも出来てかなり進歩してるみたいだった。
うん…なんかこの時は何故か色々と考える気になったんだろうね。
久しぶりに、どうやったら幻想郷に行けるか考えてみた。
まずは…『博麗神社』を見つける…か。
神主の行っている博麗神社を見つけるのはかなり難しい話だ。
さらに言うと俺の住んでいる所からは博麗神社を探したりすることはちょっと…無理がある…。
ああ、結構現実的な話っぽいのに残念だ。
うーん、人々から忘れられて幻想入り…ってのはおかしい気がする。
人々に忘れられたものが集まる幻想郷だけれども、それは考えとか精神みたいな目には見えないものが忘れられたら幻想郷に行くんじゃなかったっけ?
物はどうか分からないけれども、とりあえず外来人が外の世界で忘れられた者とはどこにも書かれてないかな。
吸血鬼の食料として幻想郷に入る…?
あれ、そんな設定あったっけか。俺は求聞史記を開いてみた。
なになに。昔、縦横無尽に暴れまわる吸血鬼と、妖怪が争った結果、妖怪が食料となる外の世界の人間で死ぬ価値の無い人間(自殺者など)を提供する代わりに……よって和解したと。
ほう…生きる価値の無いじゃなくて、『死ぬ価値の無い人間』…?
わくわくしたね。
死ぬ価値の無い人間ってのがちょっと曖昧だけど…多分、本当はもっと生きることが出来る人間、見たいな感じかな。
いや、餌になるくらいだからもっと厳しい表現の方が合っているかもしれない。死ぬことすらも許されない、恐怖を味わってから死ぬべき人間とか。
いやいや、自殺に失敗した人かも。
いつまでもこの言葉の意味を考えたって仕方が無い。この方法で、幻想郷に行くことが出来るのか…?
行ったとして…吸血鬼の餌になってしまうのではないか…?
どうにかして吸血鬼の餌になる前に逃げ出さなければならない…。
「…これは……」
その時、求聞史記に…生き残るためのヒントを見つけた。
……
そして今の俺はとある山へ向かって車を走らせている。
もちろん目的は自殺じゃなく、幻想郷に行くため。
…まぁ、何日か彷徨えば拾ってくれるんじゃないかな。
さて…目的の山に着いたようだ。ここからは自分の足で登山しなければならない。
ちなみに、時間帯は夜。多分夜の方が妖怪は外の世界に来やすいんじゃないかな?
どんな妖怪がくるのか今からわくわくするね。やっぱり紫なのかな。
…それにしてもどんな気持ちで彷徨えば良いのかな。わくわくしながら歩くわけにもいかないし…。
…とりあえず3時間くらい彷徨ってみたが…何も起きなかった。
やっぱり本当に死のうと思わないと駄目なのか。
こんなに幻想郷へ行く気満々の俺は拾ってくれないのだろうか…。
折角、生き残るためのヒントを持ってきたというのに。
俺は、ポケットの中にしまってあるそれをぎゅっと握り締めた…。
……
「最近、吸血鬼の奴ら調子に乗ってきていませんか…?」
「…どうかしら、もともとそういう奴らだった気がするけど」
そう言って私は肩を竦めた。
悪魔の契約によって、妖怪は吸血鬼に食料を調達しなければならない。
そして今日は、今の里の人間には知られていないとある吸血鬼に食料を調達する日である。
「…奴の使いが来たみたいですよ」
「分かっているわ、いちいち言わなくても」
吸血鬼の使いは私の前に深々と礼をして、次の食料はどんなものが良いかの注文をつけてきた。
悪魔の契約が結ばれて最初の内は外の世界の自殺者を適当に持って行くだけで良かったのだが、だんだんと吸血鬼から注文をつけるようになり、
最近は毎回の様に好き勝手な事を言ってくる。
酷い時は腹が減ったから100人の食料を持って来いと言われたこともある。
外の世界の人間は、例えば去年は確か32845人自殺したのだから、その日自殺した人を全て持って来いと言っている様な物である。
しかし、海や山など、私の能力で神隠ししても差し支えない所で自殺する人は意外に少なく、約9%ほどしか居ない。
まぁその時はさすがに断ったのだが、最近の吸血鬼の傲慢さには少し目に余るものがある…。
今回の吸血鬼の注文は…最近イライラが激しいからカルシウム濃度の高そうな人を選んで来い、と。
「そんなの分かるわけないじゃないですか…」
「あら、藍には分からないの?適当に漁師でも持ってこればいいのよ」
「はぁ…」
悪魔の契約を破るわけにはいかない。私は外の世界の夜の空へ、カルシウム濃度の高そうな自殺者を探しに出かけた…。
……
「ここは何処だ…」
俺はまだ山を彷徨っていた。
まさか帰れなくなるとは思わなかった…。山なんて下れば麓に着くだろうと、遭難者のことが理解出来なかったのだが、今なら理解できる…。
山の奥深くまで入ると、何処に向かって下れば良いのか分からなくなるのだ。
そもそも山に登るためには時には下ったりしながら頂上を目指さなくてはならない。
つまり、一旦道に迷うと、そもそも下ってよいのかすら分からなくなる。
「こんなつもりでは…」
そもそも俺は…いつものようにすぐ熱くなって、すぐ行動してここまで来たものの…本気で幻想郷に行けると思っていなかったのかもしれない…。
あぁ、なんて今更なんだろう。いつもこうやって俺は後悔するんだ。
俺は生き抜くためのヒントを手に乗せて…途方に暮れるのであった…。
……
私はカルシウム濃度の高そうな自殺者を、隙間を使って探していた。
今日は漁師の居そうな海での自殺者は居なかったので、とりあえず山を探してみる。
「ううっ…」
「あら…?」
とある山で、変なものを手に乗せて泣いている男を見つけた。あれは…良く見ると…?
面白いことになりそうだ…!
「貴方、そんな所で妙な物を持って何をしているのかしら?」
「う、うわあっ…!」
突然現れた私に男は予想通りの反応を見せる。少し面白くない。
しかし男の顔はどこか嬉しそうな顔のような…そんな気がした。
「え、えーと…なんか人生がいやになって…そう、もう死のうかと…」
「あら、そんなものでどうやって死ぬのかしらね」
あっ、と男はそれをポケットに隠す。
「まぁいいわ…貴方に相応しい死に場所を与えましょう」
「え…え…ああああんたは誰なんだ…!」
その質問を無視して私は吸血鬼の場所に繋がる隙間を男の足元に広げた。
男が叫び声を上げながら落下していく。私も続けて隙間に入った。
さて、あの吸血鬼がどんな顔をするのか見物である…!
……
「ひいいいぃぃぃぃいやっほおぉぅぅぅぅ!!!」
やったっ…!俺は…俺はついに幻想になる…!!
こんな夢のようなことがあるか!?
上からゆかりんが降りてくる!
わざわざ上からとはなんて素敵なサービスなんだろう!!
おおお??もうすぐ出口かな!?
「いてぇぇっ!」
「おやおや、今日の食料は随分と元気ですねえ?」
「ええ、この方は間違いなく漁師でしょう。とても魚臭かったから」
目の前で二人が全然噛み合ってない挨拶をした。
ゆかりんと…もう一人は誰だ?……あぁ、恐らく吸血鬼かな。なんだレミリアじゃないのかよ…。
こりゃあ万が一食われたときにも全然嬉しくないなあ…。
「ほう、約束は守って下さったのですね、感謝しますよ?」
「ええ、それでは御機嫌よう」
「え、行っちゃうんですか!?」
俺の問いを無視してゆかりんは隙間の向こうへと足早に去っていった。
ああ、もっと見ていたかったのに…。
「さてさて…食事の時間としましょうかねぇ…」
「ひいいっ!!」
吸血鬼が歩み寄ってくる。待ってくれ、心の準備が…!
「…たしかに、貴方魚臭いですね」
「えっ、どうも」
げ、やばいバレたか…?いや、バレても問題ない。どうせバラすんだから。
「確かにあなたは漁師な香りがします」
「ええ、まあ」
さあて、そろそろ必殺を出してやろうか…?
「やっぱり漁師は魚を良く食べるのですか?ここら辺には海が無いので分かりませんねえ」
「そんな感じですね」
くっくっく…こいつ、コレを見たら卒倒するんじゃねえかなァ…?
「まぁ、さっさと飲み干してこのイライラを解消するとしましょう」
「ククク…そうはさせねぇ……」
キマッタ!
「何…!?」
「こいつを、見やがれええぇぇぇ!!!!」
俺は鰯の頭と折った柊の枝を取り出した!え、引っ張っておいてこれかよ!
「チイイィィ、近づけないっ…!!」
「カッカッカ、それじゃあまた会う日までアディオスの助、おはようサマンサ」
俺はゆかりんをこき使う性悪吸血鬼を精一杯軽蔑の目で見下してから吸血鬼の住処を後にした。
いやあ、最初は緊張したけど楽勝だったな。うん。
…さて。
「ここは何処だろう…」
そうだ…あんな吸血鬼原作に居なかった…きっと広い(?)幻想郷の中でも辺境に奴は住んでいるんだろう。
あぁ、今日は良く迷う日だ…。
「御機嫌よう」
「うわあぁっ!!」
また唐突にゆかりんが現れた。ひゃっほう、またその御姿を拝めるなんて!
「ふふっ、さっきは良くやってくれたわね」
「…ええ、まぁ」
くそ、ここで気の利いたことの一つも言えない俺に腹立つ…。
「あの吸血鬼、少し最近調子に乗っている所があってね…これで少しは分かるでしょう、彼らも馬鹿ではないから」
「あ…あの…」
「何?」
俺はここで言葉に詰まった。うぅ、この間が辛い。
ゆかりんは何もかもお見通しと言った顔で俺の次の言葉を待っている。
俺は意を決して…俺の気持ちを素直に伝えた。
「ゆ、ゆかりん…俺と……俺と結婚しtkrあごめんかんじゃった」
俺が幻想郷の住人になることは無かった。
めでたしめでたし。