Coolier - 新生・東方創想話

過ぎ去りし思い出 祭りにて

2010/09/25 23:00:37
最終更新
サイズ
8.05KB
ページ数
1
閲覧数
1522
評価数
2/17
POINT
800
Rate
9.17

分類タグ

厳しい残暑が神社を襲う。当然博麗霊夢のその被害者の1人だ。

「暑い!全く、いつまでこの暑さが続くのよ!豊穣と紅葉の神はいつまでサボっているのかしら」

しまいには神にいちゃもんをつける始末である。いくら豊穣の神と紅葉の神がいようとこの暑さは一向に変

わることがないことは霊夢の知らないわけではない。ただこの怒りのぶつける場所がないのである。

「霊夢~いますか~」

そんな中怒りをぶつけるには絶好の相手が来た。幻想郷のブン屋、射命丸文である。

「はいはい、います・・・いますよ!」

こちらに飛んで来る文に向かって弾幕を飛ばす。八つ当たりにもほどがある。

「ちょ、いきなり何するんですか!?」
「何をするもないわよ。ただ暑い・・・それだけよ!」

さらに弾幕が激しくなる。弾幕自体はかなり乱れているので避けるのは容易だった。

「でしたらこんなことしたら、なおさら暑くなるじゃないですか!」

霊夢の弾幕がぴたりと止む。文は一息ついてようやく地面に足を着ける。

「それもそうね。暑さの余り我を忘れかけたわ」
「いきなり弾幕放たれる身にもなってくださいよ」
「ごめんなさい」

こういうところは素直なのが霊夢のいいところなのかも知れない。

「ところで何の用で来たの?」
「あっそうでした。今年の例大祭はどうなっているのか聞きに来たんですよ」
「例大祭?ならこの紙を見ればわかるわ」

そう言って霊夢は一枚の紙切れを文に渡す。内容は出店する店と当日の大まかな予定が書かれていた。

「ふむふむ、ところで霊夢は当日何をしているんですか?」
「もちろんお賽銭箱にお金が入るかのチェックよ!」
「神社の巫女が恥ずかしいことをきっぱり言わないで下さいよ・・・」

神社で祭りをやろうとすると霊夢は大体賽銭箱の前に出没する。知り合いが来れば食べ物をそこで貰い賽銭箱をただただ見つめている。

「それじゃあ・・・当日一緒にお店を回りませんか?」
「えっ、いいわよ。回っても特に何もないし食べ物なら魔理沙辺りに分けてもらえるし・・・」
「お祭りというのは実際見て回った方が楽しいですよ。それに場所を提供している巫女が人里の人間たちとより交流することで、もしかしたら参拝客が増えるかもしれません」
「わ、わかったわよ・・・」
「決定ですね、約束ですよ~!」

そう言って文は飛び立ってしまった。それも満面の笑みで。




例大祭当日、参道から境内まで出店で人がにぎわっている中、霊夢は相変わらず賽銭箱の前にいた。

「貯まっている・・・貯まっているわ!これで冬も安泰ね!」
「なーに賽銭箱見て二ヤケてんだ」

そう言ってきたのが霧雨魔理沙、どうやらすでに酒が入っているらしく頬の辺りが少し赤くなっていた。

「いいじゃないの、これが私の生命線なんだから。それより背中におぶっているのはアリス?」

暗くて気づかなかったが魔理沙の背中にはアリスがすやすやと眠っていた。

「ああ、昨日も遅くまで起きていたらしくて少し飲んだらころりと寝ちまった」
「重かったら中で寝かしておきなさい。ちなみに食べ物とかはないけどね」
「いつも通りだな、まぁ恩にきるぜ」

魔理沙はアリスをおぶり直し、居間の方へと向かっていった。

「さてそろそろね」
空を見上げる、すると空からひとつの点がこちらへ向かってくる。幻想郷最速のスピードで。

「おまたせしました~」
「遅い」
「はう!?」

着地時に屈んだ瞬間に霊夢のかかと落としが文の背中へ直撃した。約束の時間ピッタリなのに文は自分がなぜこうなったいるのか理解できなかった。

「いつまで待たせるのよ!危うく一升瓶飲みきりそうなくらい飲むところだったじゃない!」
「それは霊夢が自重すればいいだ・・・」
「問答無用」
「はう!?」

起き上がろうとした文に追撃、そのまま地面に伏せてしまった。

「霊夢~そっちに酒あるか~・・・ってどうなっているんだ」

戻ってきた魔理沙はその光景に唖然としていた。

「な、なんでもないわよ。それよりちょっとお店を回ってくるから魔理沙は賽銭箱にお賽銭が入っているかしっかり見ていて」
「お、おう・・・」

そう言って霊夢は文を引きずりながら人混みの中へと消えていった。

「それにしても珍しいな。霊夢が店を回るだなんて。そして引きずっていったのは文ということは・・・こいつは面白そうだぜ」

こうして魔理沙も人混みの中へと入っていった。




「あっ霊夢、イカ焼きがありますよ!」
「そうね」

文の言葉に霊夢が素気なく返す。それでも内心霊夢が楽しんでいることを文は知っている。ただ、こういった祭りの楽しみ方を忘れているだけだと。

「おっめずらしいね。巫女さんが直々に店に来てくれるなんて!ほれ、こいつはサービスだ。場所代の一部として貰って行ってくれ!」
「あ、ありがとう」

イカ焼き屋のおじさんから2本イカ焼きをもらう。それに霊夢は少しおどおどしながらもイカ焼きを受け取る。

「いやぁいいおじさんでしたね。タダでいただいちゃいましたよ」
「そうね、ちょっと不思議かも。普段祭りの時は賽銭箱の前にしかいない私にこうして優しくしてくれるなんて」
「それだけみなさん感謝しているんですよ。普段、参拝に来なくたってこういった形でお返ししてくれる。私はそれも悪くないと思いますよ」

そう、イカ焼き屋だけじゃない。たこ焼き屋にベビーカステラ屋も感謝していた。

「それに、こうしてお店を回るのも悪くないんじゃないですか」
「・・・そうかもしれないわね」

それはいつのことだっただろう。この神社でお祭りがあった。私は誰かと手をつなぎながら一緒に店を回った。その時もいろいろな人からサービスしてもらった気がする。いやそれだけではない。純粋に楽しかった。響く太鼓の音、脇では大人たちが歌いながら酒を飲みあい、出店では子どもから大人までみんな笑顔で短い夜の時を過ごしていた。当然私もその例外ではなかった。店という店を食べ歩き、遊びつくした。いつから忘れてしまったのだろう・・・それは私もわからない。誰もわからない。ただ一つ言えるのはこの楽しさを思い出させてくれたのは彼女だということ。

「どうしたんですか霊夢?」
「ちょっと昔を思い出しちゃってね」

霊夢の目に涙の粒が一滴だけ見えた。おそらく昔を思い出したのだろうか。

「さぁ今日はどんどん楽しみますよ!次はあの店に行きましょう」

文は射的屋へと指をさす。

「ええ!」

文がふと見ればいつもの霊夢に戻っていた。

「さてここでひとつ勝負をしませんか?」
「勝負?」

射的屋の前で文が勝負をもちかけてきた。

「ここにお互い弾が5発あります。この5発の弾を使ってあそこにある大きいぬいぐるみを落とした方が勝ちということでいいですか?」
「面白そうじゃない。受けて立つわ」
「では負けた方は勝った方の言うことをひとつだけ聞くということでいいですね」
「わかったわ」
「先攻は私が行きます」

パン!

狙いを定めて撃つもぬいぐるみはびくとも動かない。

「あややや、さすがに1発じゃ落ちませんか」
「甘いわね、こういうのは真ん中を狙うより少しずつずらしていった方が落とせるのよ」

パン!

霊夢の言ったとうりぬいぐるみは少し向きを変え後ろへ下がった。
こうして2発目、3発目と撃っていくがなかなか落ちる気配がない。

「霊夢、ここは・・・」
「ええ、同時に撃ちましょう」

一時休戦、二人はお互い同時に撃ちぬいぐるみを大きく後退させる作戦を選んだ。

『せーの!』

パン!

息を合わせて弾を放つ、同時に放たれた弾はぬいぐるみを大きく後退させることに成功した。

「あと1発・・・しっかりと当てれば落ちますね」
「そうね・・・先攻を文に与えてしまったのが失敗だったわ」
「ではいただきます!」

パン!

文の放たれた弾がぬいぐるみへと当たる。しかし、文の弾はあっけなく弾かれてしまった。

「ふふふ・・・悪いわね文、この勝負私がもらうわ」
「こういう台詞は失敗への布石となりますよ。延長戦にもっていけば私の勝ちです」

霊夢はコルクを逆に入れて詰めた。

「もらったわ!」

パン!

霊夢の放った一撃はぬいぐるみを落とすことに成功した。

からんからんからん

射的屋のおじさんがベルを鳴らしぬいぐるみを霊夢へと渡す。

「おめでとう!神社の巫女さんが特賞をゲットだ!」
『おおー!』

周りからも拍手が送られる。予想外の事態に霊夢は顔を真っ赤にしてうつむいてしまった。
しかし、ぬいぐるみをもらう瞬間彼女の笑顔は今日一日で何よりも輝いていた。





例大祭も終わり神社には夜の静けさだけが残っている。

「魔理沙ったらアリスのこと置いて帰ったわね」
「後で呼んだ方がよさそうですね」
そんな状況に置かれてもアリスの顔は微笑んでいた。なにかいい夢でもみているのだろう。
「それじゃぁ罰ゲームといきましょうか・・・」
「そう・・・ですね・・・」

霊夢の笑顔が怖い。一体何をされるかわかったもんじゃない。

「罰ゲームは、私と一緒に写真を撮ること!」
「えっ?」
「言った通りよ、私と一緒に写真を撮るの。だっていつも私ばっか写真撮って、あんたが写っているところを見たことないもの」
「それは新聞記者として第3者が写真に写るわけにはいかないからです」
「今は新聞記者じゃないでしょう」
「そ、それはそうですけど・・・」
「はい、決定。カメラ借りるわよ」
「ちょ、待ってくだ・・・」

文からカメラを取り上げる。使い方はわからなくてもいつも文がやっているようにすればいいのだ。もちろんレンズはこちらを向けて。

パシャ!

こうしてフラッシュとともに一枚の写真ができた。
これは巫女に全てをかけた天狗が唯一写っている写真である。

「本当にあなたは私の生涯で最高の巫女ですよ」

文は霊夢に気づかれないようにこっそりと呟いた。
魔理沙「置いていく以前にこの雰囲気、出にくいぜ・・・」

これで3作目です。
朝からずっと出てきた文章をただ書いていっただけなんですけどどうだったでしょうか?
本当はもっと長い話になるはずだったんですがブルスクで全部パーになり急いで作りなおしました。
書いていて気付いたのは僕の中でのあやれいむというのはこういうものなのだということです。
ヤナ
https://twitter.com/#!/yanaseagl
簡易評価

点数のボタンをクリックしコメントなしで評価します。

コメント



0.600簡易評価
13.100名前が無い程度の能力削除
甘い。。。 あやれいむ最高です!
14.100名無し程度の能力削除
賽銭箱の前でじっとしてる霊夢かわいい
いいあやれいむでした