□
彼女の持つ最初の記憶は、囲炉裏の火に照らされた部屋と、優しく微笑む両親の姿。
今も鮮明に思い出せる、大切な、記憶。
□
空調の利いた広い寝室の中、目覚まし時計の電子音がけたたましく木霊する。
布団の中で安らかな寝息を立てていた彼女は、眠りを阻害するその音を嫌がるように手探りで時計を探し出し、細い指先に伝わる感覚だけでアラームを止め……再び布団に潜り込みながら、枕元に置いてある携帯電話を手に取った。
薄暗い部屋の中、ディスプレイの明かりが酷く眩しい。それでも時刻を確認すると、
「ん……なによ、まだ三時じゃないの……」
「昼の、ね」
「……ん?」
自分一人しかいない筈の部屋に響く、他者の声。普通ならば悲鳴を上げて飛び上がるような状況だが、しかし彼女は違っていた。眠たげな目で声の主を見つけると、柔らかな微笑みを一つ。そして携帯電話に視線を戻しながら、とあるマイクロブログへとアクセスし、
「……幻想郷なう、っと」
「まだ行ってないわ。寝ぼけてないで起きて頂戴」
「んー……」
フォロワーの誰にも伝わらないだろう呟きを実際にポストしてから、彼女は緩慢な動作で起き上がる。
そうして、彼女は改めて彼女へと微笑み、
「おはよう、紫」
「おはよう、レティ。一週間ぶりね」
レティ・ホワイトロックは八雲・紫の言葉に微笑みを強め、彼女が目覚まし時計のアラームをセットしたのだろうと判断する。恐らく、いつものようにこちらが目覚める少し前から寝顔を覗いていたに違いない。
だから、という訳ではないが、レティは完全には抜け切っていない眠気に従うように、
「一緒に寝る……?」
そう告げながら横になろうとする体を、紫が苦笑しながら引っ張り起こし、
「魅力的な提案だけれど、今日は遊びに来た訳じゃないの。定期報告を聞きに来たわ」
「ああ、そういえばこの前言っていたわね……。忘れていた訳じゃないけれど、忘れていたわ」
そう小さく苦笑を返しながら改めて起き上がると、レティはエアコンを止め、紫と共に寝室を出た。
だが、暑い。目の前に広がるリビングダイニングには南側に大きく窓が取られており、厳しい残暑の影響を受けて室温は三十五度を軽く超えている。レティはそれを嫌がるように、テーブルの上に置いてあるエアコンのリモコンを手に取ると、「取り敢えず、顔を洗ってくるわね」の一言と共にそのスイッチを入れ、洗面所へと向かった。
■
そうしてリビングに戻ると、紫が椅子に腰掛けていた。彼女は今日も法衣姿ではなく、ムラサキのドレスにコルセットを締めたカジュアルな服装しており……何より、その外見は霊夢達よりも幼い少女の姿をしていた。
八雲・紫はその時代、状況に見合った容姿で現れる。つまり彼女にとって、この場でもっとも適当な容姿がその幼い姿なのだろう。
だが、それで精神年齢まで下がってしまう訳ではないだろうに、紫は床に届かない足を軽く揺らしながらこちらを待っている。その様子にレティは自然と微笑み、
「今日も紫は可愛いわねぇ」
「ッ?! ――と、突然何を言い出すのよ!」
「別にー」
珍しく動揺している紫に微笑みながら椅子に腰掛けると、紫は少々赤い顔を誤魔化すように、机の上に置いていた箱をこちらへと押しやり、
「……はい、お土産。大黒屋の羊羹と饅頭を買ってきたわ」
「有り難う~。こっちのお菓子も美味しいけれど、やっぱり大黒屋のが一番なのよねぇ。……っと、それじゃあお茶の準備をしないと」
座ったばかりの椅子から立ち上がると、レティはキッチンへと向かう。そして電気ケトルに水を入れ、急須などを持って再びリビングに戻り、
「でも、定期報告って言っても、先週までこっちに居た紫に説明する事なんて無いじゃない」
「それでも、定期報告は定期報告ですわ。妖怪と人間の関係のように、例えそれが形骸化していても、定められた事柄を実行する事に意味があるのです」
「そーなのかー。じゃあ一応報告するけれど……こっちに――外の世界に変わった事は無いわ。私達の存在は忘れられたまま、けれどアンダーグラウンドでひっそりと噂され、人々の心の中に存在し続けている。言い換えるなら、いつも通りよ。世は並べて事もなし、今日も美味しくお茶が飲めるわ」
お茶の準備を進めながらの言葉に、紫は満足げに頷き、
「それは重畳ですわ」
現在レティが暮らしているのは、外の世界に存在する高層マンションの一室だ。三十七階という高さから見渡す世界は広く、その中にはこちら側の博麗神社の姿もある。遠く広がる山の中腹に、大きな、しかし古びた鳥居が微かに確認出来るのだ。
その向こう側に、幻想郷は存在する。
だが、例えこちら側の博麗神社に足を運んだとしても、霊夢が暮らす神社へと向かう事は出来ない。何故ならばそこには、幻想郷と外の世界とを隔てる、二つの結界が存在するからだ。
一つは、巫女によって管理されている――外の世界の非常識を幻想郷の常識とし、外の世界の常識を幻想郷の非常識とする力を持つ、博麗大結界。もう一つは、紫の手によって張られた――力の弱まった外の世界の妖怪を幻想郷へと呼び込む力を持つ、幻と実体の境界だ。この二つの結界により、幻想郷は外の世界における幻として存在し続けている。
そして現在、この二つの結界は相互に作用しながら存在しており、外の世界で力の弱まった、或いは非常識と認識される妖怪、物品、建造物などを幻想郷へと呼び込んでいる。
だが、その常識・非常識は人間の認識におけるものであり、妖怪が存在し続ける為には、『妖怪は非常識なものだ』と外の世界の人間に知られていなければならない。つまり妖怪は――外の世界で失われたとされる存在は、しかし『非常識な存在』として外の世界に在り続けなければならないのだ。
もし外の世界からその認識が完全に失われた場合、常識と非常識の定義を行えなくなり、博麗大結界に組み込まれた術式に狂いが生じてしまう可能性がある。最悪の場合、それは結界の破損に繋がり、外の世界に存在する数少ない妖怪を、そして新たに生まれるかもしれない妖怪達を、幻想郷に引き寄せる事が出来なくなってしまうかもしれないのだ。それは紫が悪戯に大結界に穴を開けたり、霊夢が大結界を緩めたりするのとは違う、定められた事柄の破損でもあった。
それを防ぐ為に――忘れ去られた妖怪を完全に失わせない為に、レティは冬の終わりから始まりまでの間、こうして外の世界で暮らしながら怪異を引き起こし、人々の心に夜闇の恐怖を植え付けていた。
といっても、レティは大々的に行動を起こしている訳ではない。そもそも外の世界は妖怪の存在を忘れており、本格的な異変を起こしてもそれを認めようとはしない。レティの力の場合、異常気象だと判断されてお終いだろう。だが、それが小規模な、枯れ尾花を幽霊に見せる程度の恐怖だった場合、それは友人相手の噂話として、匿名掲示板の書き込みとして、ウェブサイトの日記として、マイクロブログの呟きとして語り継がれていく。
一昔前と違い、今ではどんな些細な情報でもネット上に溢れている状況だ。一度怪異を起こせばそれがあっという間に拡散し、改変され、最終的には都市伝説として新たな恐怖を生み出すほどにまで発展していく。更にそれが、いわゆるコピペ――噂話のテンプレートとして認識されるようにまでなれば、人々の心に残り続けていく事になる。
どれだけ世界が変わっても、人間そのものの本質までが大きく変わってしまった訳ではない。何か特別な出来事が起こった時、人はそれを誰かに話したくなる。井戸端の噂話は、今日も大輪の花を咲かせているのだ。
何より――
「――っと、お湯が湧いたわ」
「便利ねぇ、ケトル。魔法みたい」
「ええ、本当に」
何より、充分に発達した科学技術は魔法と見分けが付かない。クラークの三法則が示す通り、今後訪れる未来に、科学は魔法へと至るだろうと八雲・紫は算出している。そしてそれは、妖怪の存在が完全に忘れ去られる事以上に、博麗大結界を揺らがせる可能性がある。何せ、外の世界で非常識と定義されていたものが、常識へと変化してしまうのだ。
博麗大結界が結界――外と内とを隔てる物である以上、外の世界で新たな常識となった魔法が、それを常識とする幻想郷において非常識へと変化する事は無いだろう。だが、双方の世界に『魔法の存在は常識である』という事実が生まれた矛盾を解消する為、結界自体の自浄作用が働き、魔法使い達が外の世界へと弾き出される可能性があった。何より、魔法という言葉はとても広く使われているものだ。最悪の場合、魔法使いだけではなく、魔法に関する知識を持つ者や、妖術や法術などを扱う妖怪や幽霊、更には神々でさえも外の世界へ弾き出される可能性があった。
だがそれは、過去の、妖魔が夜行する禍々しい夜の再来を示すものではない。外の世界において、夜はただの時間の経過に過ぎず、都市部では煌々とした灯りが二十四時間輝き続けている。そこに妖怪達の居場所など存在しないのだ。
しかし、一度外に妖怪達が溢れてしまえば、幻と実体の境界は彼等を『弱体化した勢力』とは見なさなくなり、妖怪達を幻想郷へと引き寄せなくなるだろう。しかもそこには博麗大結界も存在する。幻の世界である幻想郷に戻る事は、紫のような力を持つ者以外不可能になるに違いない。
その結果、博麗の巫女や紫に頼み込み、二つの結界そのものを消滅させるように願う妖怪が現れる可能性もあるだろう。だがそれは、幻想郷と外の世界との境界を消滅させる事であり、つまり幻の世界である幻想郷の消滅に繋がるのだ。巫女も紫も、そうした愚かな決断を下す事は無い。
だがそうなると、今度はその自慢の力で、魔法で、妖術で、無理矢理に結界を越えようとする妖怪が現れる筈だ。だが、そうした行為は結界そのものに負担を掛け、下手をすればその破壊を招きかねない。
そうなれば、最早幻想郷は幻の世界ではなくなり――一度人間の眼に捕捉された場所を、再び結界で覆い隠すには多大な労力と時間が必要になる。その間に妖怪は狩られ続け、妖精は居場所を無くし、幽霊は消え失せ、神々は姿を隠すだろう。そうして残された人間達は、突然山間部に集落が現れた事も含めて、警察に保護されていくに違いない。
つまり、幻想郷を存在させる二つの結界が、いつか訪れる未来において、そこで暮らす者達を窮地に立たせる可能性があるのだ。
それを防ぐ為に、レティ・ホワイトロックは此処にいる。…………らしい。
「……はい紫、お茶。熱いから気を付けて」
「有り難う」
「いえいえ。では、私はお饅頭を頂こうかしら」
「はい、どうぞ。…………って、なんで手元じゃなくて私を見ているの?」
「紫が可愛いから」
「……怒るわよ?」
「本当の事じゃないの」
そう微笑むレティには――ただの妖怪であるレティ・ホワイトロックには、難しい事は良く解らない。クラークの三法則と言われても、そもそもアーサー・C・クラークという作家自体を知らない。2001年宇宙の旅? あぁ、有名な映画らしいわね、レベルである。
そんな彼女の知識で考えてみても、科学は科学であり、魔法は魔法であると思えるのだ。
確かに科学は魔法のような力を持っている。しかし、それはどこまでいっても『科学』なのであって、魔法と同一のものになるとは限らないように感じる。充分に発達した科学技術は、魔法と"見分けが"付かないのだし。
だが、数十年前、この生活を始めるにあたって、紫がその難しい事を真面目な顔で説明してくれたから、レティはそれを信じるしかない。……しかし、あの八雲・紫が真面目な顔で説明してくれた、という状況自体がどうにも怪しく、むしろその説明の信憑性を下げてしまっているような気がしてしまう。紫の事は誰よりも信用し、信頼しているが、それに関してはどうしても嘘であるように思えてしまうのだ。
それに、この生活を始めてからこちら、定期的に怪異を起こす以外は特に行動を起こしておらず、もっぱら紫と一緒に時間を過ごしている事の方が多かった。
冬から冬までの間眠り続けてきたレティにとって、春・夏・秋の三つの季節はあまり経験した事の無いものだ。当然思い出なども少なく、それが現代日本における四季となれば尚更だった。だから、といわんばかりに、紫は様々な場所へとレティを連れ出してくれたのだ。
春は日差しの暖かを感じながら著名な観光地を旅行して周り、美味しい食べ物と咲き誇る桜の美しさを堪能しつつ、冬の間に大きく変化した街の様子に驚き、
夏は突き刺さるような日差しを避けながら空調の聞いた涼しい部屋に籠もり、しかし時には外に出て暑さと蝉時雨れの洗礼を受け、夜空を彩る花火と的屋巡りを堪能し、
秋は色褪せていく世界の中で燃えるように輝く紅葉に感動しながら再び各所を巡り、夏の日差しを受けて甘く育った実りを堪能し、長い夜をゆったりと惜しむように過ごし、
冬は紫の力で幻想郷に戻ると、いつものように寒気を操り、冬眠に入る紫との別れを悲しみながら幻想郷での生活を行う。
そうしてまた春が訪れれば、再び外の世界へと戻り、レティは紫と共に行動的だったり怠惰だったりする日常を過ごし始めるのだ。
そう、日常。長らく非日常だった外の世界での生活は、紫と各所を巡った事ですぐに日常へと変化していき、最初の一年を過ごす頃にはそれを当たり前のように受け入れられるようになっていた。
つまり、レティ・ホワイトロックにとって、外の世界も幻想郷も然程変わらないものなのだ。
それは、博麗大結界が張られる頃まで外の世界で生活し、その発展を目の当たりにしてきた過去があるからなのかもしれないが……いや、そうでなくても――五百年以上前に幻想郷入りした妖怪達でも、レティのようにこの状況を受け止める事が出来るだろう。そうした柔軟性や緩さが、妖怪達の中には存在している。そうでなければ、スペルカードルールの発展は有り得なかった筈だ。
幻想郷の妖怪達は精神的に成長しており、目の前の現実を否定するのではなく、受け入れる事の出来る心の強さを持ち合わせているのだから。
……なので、紫と一緒にご飯を食べたり、近所のショッピングモールへと買い物に出掛けたり、大量に借りてきた映画やドラマシリーズを徹夜して見たり、朝から晩まで眠ったり、酒を片手に飲み明かしたり、テレビを見ながらごろごろしたり、日差しの下でぼけっとしたり……遊び呆けていると思われても仕方のない日々を送っているが、しかし精神的な成長はしているのである。
「……」
だが、こうして改めて考えてみても、やはりこの生活で幻想郷を護れているとは思えない。
紫を疑っている訳ではないのだ。ただレティは、この穏やかな日常こそが紫の求めたものなのではないか、と考えてしまう。幻想郷を護る為、というのは全て建前で、本当はこうして怠惰に時間を過ごしたいだけなのではないか、とそんな風に思ってしまうのだ。……それを問い掛ける切っ掛けは、未だに見つかっていないけれど。
「……美味しい?」
「えぇ、美味しいわ。……というか、それ私の台詞」
「あら、そうだったかしら」
そう楽しげに微笑みを強めるレティ・ホワイトロックは、冬の忘れ物、とも呼ばれる妖怪だ。
寒気を操り、春の訪れと共にどこかへと消える妖怪。
誰にも好かれない、黒幕。
彼女が消えてしまっても――外の世界で暮らしていても、誰もそれを気に留める者は居ない。
数多くの妖怪の中からレティが選ばれたのは、恐らくそれが理由で……けれどレティは、それ以外の理由があって欲しいと、そう願わずにはいられない。
何故ならば――
「ん? どうしたの、レティ?」
「……なんでもないわ、ゆかり」
――誰よりも強く、彼女の事を愛しているからだ。
■
そうして世間話をしながら時間は過ぎていき、気付けば日が陰り始めていた。
机の上には丸々とした大きな桃が三つと、その皮と種が捨てられた空箱が並んでいる。紫が隙間から取り出したそれは天界のものであるらしく、なるほど確かに、不老不死にもなれるだろうと思えるほどに上質で美味しい桃だった。
それらを片付け、数杯目のお茶を入れたところで、不意にあくびが出た。和菓子と果物とはいえ、結構な量を食べた事で腹が膨れている。それで眠気がやってきてしまったのだろう。
「一緒に二度寝する?」
レティのそれが移ったのか、小さくあくびをする紫に問い掛けてみる。すると、彼女は目元に浮かんだ涙をそっと拭いながら、
「素敵な提案だけれど……って、別に否定する理由もなかったわ」
レティ・ホワイトロックと八雲・紫。その双方を知る者達は、二人に共通点があるとは思わないだろう。二人が仲睦まじく、一緒の布団で寝泊りするほどの仲であるとは想像すらしないだろう。
だが、彼女達にはとても大きな共通点が存在するのだ。それが、眠りを好む、という事。
「もし私が冬の妖怪じゃなかったら、紫と一緒に冬眠しているわね。……というか、一度くらい冬眠してみようかしら」
「冬眠は素晴らしいわよ。寒風吹き荒む外とは無縁の部屋で、お腹いっぱい美味しい物を食べて、暖かな布団に包まれて眠るの。あれこそ至福というものね」
「うんうん。でも、夏の眠りも素晴らしいわよ? まぁ、夏でもある程度涼しい場所のある幻想郷か、エアコンの効いた部屋限定だけれど」
「確かにそうね……って、ああ、そういえば、レティと最初に逢ったのは夏だったわよね」
「これ以上無いくらい夏だったわねぇ。というか、あれは逢ったというよりも発見されたって感じだったけれど」
「久しぶりに藍達と食事を取ろうと思ったら、縁側に誰かが倒れているんだもの。……あれには本当に驚いたわ」
「涼しい場所を探してさ迷っていたら、そのまま迷い家に迷い込んでいたのよね。あの時貰ったお茶碗、今も大切に取ってあるわ」
「あれは使わないと価値が無いと思うのだけれど」
「ほら私、食事は取るけど食料は必要としないし」
「便利な体ねぇ。……ああ、だから栄養を消費する必要が無くて、ちょっぴりふとま「怒るわよー?」……ごめんなさい」
ゴミを片付け、歯を磨き、エアコンを止め……小さな紫を後ろから抱くようにしながら会話を続け、レティは寝室へと入る。すると、途端にむぁっとした夏の暑さに抱き返された。換気システムは常に稼動させているものの、どうしても夏場は部屋が熱せられやすいのだ。
「む、」と眉をひそめつつ、レティは紫から離れて寝室のエアコンのスイッチを入れ直す。すると、その一瞬の間に寝巻きへと着替えた紫が、レティの手からリモコンを抜き去り、
「私の言い付けは守っているのね」
「『この時期に電気代が低いと怪しまれるかもしれないから、部屋では能力を使わないように』でしょう? ちゃんと守っているわ」
小さな怪異を起こすという意味では、光熱費ゼロ円生活を行うのも手なのだろう。だが、外の世界では人間として生活している以上、身近過ぎるところで怪しまれてしまうと色々と問題が起き易い。そうした面倒を呼び込まない為に、レティ達は科学の恩恵を受けながら生活しているのである。
「これもある意味、郷に入っては郷に従えって事よね」
「でも、いちいちエアコンを止めておく必要は無いのよ? 光熱費は私が出しているのだし」
「それはそうなんだけれど……でも、昔は何も無い山奥で暮らしていたから、どうしても『節約しないと』って思ってしまうのよ。節約と倹約が体に染み付いてしまっているのね」
「前は団扇だけで夏を越そうとしていたものねぇ…………というか、昔って、それは何百年前の話かしら」
リモコンを棚の上に戻しながら告げる紫に、レティはどこか悲しげに微笑みながら、
「一千年以上前ね。紫がお月様へと戦争をしに行ったっていう頃より、もっと昔の事。……どれだけ時が流れようと、大切な記憶は色あせないものだから」
その言葉と共に紫をそっと抱き締め、そのままベッドへと転がった。初めてこうした時は恥ずかしいと抵抗されたけれど、今は慣れたものだ。
だからいつものように、レティは紫の柔らかな金髪へと顔を埋め――それに嬉しさとも悲しさともつかない感情を覚えながら、その小さな頭を抱き寄せる。
すると、胸の間から紫の声が響いてきた。
「ちょっと苦しいわ……。……別にこのままで良いけど」
「もう、どっちなのよ」
「……平気」
「ん」
柔らかな髪を撫でる。
「……」
「……」
少し癖のある髪。
「……」
「……」
彼女の匂い、暖かさ。
「……」
「……」
自然と想起される、記憶。
「……」
……あの日、迷い家で彼女と出逢ってから、二人は定期的に顔を合わせるようになった。といっても、携帯電話など存在しない幻想郷で、約束も無く相手と出逢うのは難しい。だから、もっぱら紫がレティの元へ訪ねて来る毎日だった。
だが、八雲・紫はとても目立つ。そして、レティ・ホワイトロックはとても嫌われ者だ。そんな二人が楽しそうに会話していると、自然とそれが噂になり、天狗の耳に入るようになってしまった。そうすると、今度はどこに居ても天狗が現れるようになり、彼等から『二人で何か大きな異変を起こそうとしているに違いない』と勘繰られ始め……最終的には、天狗がでっち上げた嘘の新聞まで発行され、それを読んで勘違いした人間に退治されそうにまでなる始末。
これでは駄目だ、と紫が案内してくれたのが、外の世界だったのだ。
場所的には、ここよりももっと山に近い場所だっただろうか。当時はまだ都市開発が進んでおらず、周囲にも田畑が多く広がっていたが……外の世界の博麗神社が見通せたその場所は、境界を操る力を持つ紫にとってみれば、外から幻想郷を一望出来る場所でもあったのだ。
そうした力を人間は妖しいと忌避し、妖怪は胡散臭いと警戒する。だが、当の八雲・紫本人は、ただの話したがりの妖怪だ。確かに人を食ったようなところはあるし、本心は明かさないし、何を考えているのか掴めない部分は多いが……だからといって、それで彼女を頭から疑って掛かるほどではないだろう。レティはそう思い、今もそう感じているのだ。
ともあれ、彼女の力によって外の世界に連れ出されたレティは、当然驚いた。だが、幻想郷に暮らす妖怪の大半がそうだったように、レティも元々は外の世界で暮らしていた妖怪だ。結界の外に出たからといっても、特に問題が起こる訳では無い。そう思ったところで、紫に釘を刺されてしまった。
『私達が外の世界でもこうして存在していられるのは、人間が私達を今も微かに覚えているからなの』
外の世界の人間は、もう妖怪を忘れ去ってしまっている。そう思っていた当時のレティは、紫の言葉を上手く理解出来ず……しかしそれから数年後、その言葉の意味を改めて紫から説明され、こうして外の世界で暮らし始めるようになったのである。
この部屋に越して来たのは三年ほど前だ。以前は山の近くの一軒家や、アパートなどにも暮らしていて、こうした高層マンションで生活するのはこれが二度目だった。とはいえ、自由に空を飛ぶ事が出来るレティでも、地上三十七階という高さにまで飛び上がる事は無く、そんな場所での生活には戸惑いがあった。だが、実際に暮らし始めてみれば、すぐにそれを受け入れる事が出来たのである。
むかしは、もっともっと高い位置から、地上を眺めるように生活していたのだから。
「……」
それは、遠い遠い昔のこと。
今も鮮明に思い出せる、大切な、記憶。
「……」
「……」
と、気付けば、紫の髪を撫でる手が止まってしまっていた。無意識に、物思いに耽ってしまっていたらしい。そんなレティの胸元で、紫がぽつりと独り言のように、
「……何か、懐かしそうな顔をしてた」
「昔の事を思い出したの。迷い家で紫と逢った時の事とか、外の世界で暮らし始めた頃の事とか……もっと昔の事とか」
「もっと、昔……」
紫が何か言いたげな様子でこちらを見つめ、けれど何も言わずに視線を逸らしてしまった。その珍しい姿に小さく首を傾げたところで、彼女が再び顔を上げ、
「本当に、レティは一千年以上前の事を覚えているの?」
「覚えているわ。……というか、具体的にはもっとね。私が私として生まれた頃からだから、千五百年以上前からの記憶があるわ。……さっきも言ったとおり、大切な記憶は今もこの胸にあるの」
「……そう」
納得と、安堵と、けれど不満を混ぜ合わせたような様子で紫が頷き……もぞもぞと引き抜かれた幼い手が、「この胸にね……」と小さく呟きながらレティの胸に軽く触れ、
「……話は変わるけれど。というか、話を変えるけれど」
「うん」
「――レティは巨乳よね」
「――うん?」
本当に予想外の方向からボールが飛んできた。当然キャッチ出来ず、そんなレティをおいて紫は言葉を続けた。
「私の予想だと、この大きな凶器に心を奪われている男は人妖拘わらずかなり多いわ。そんな彼等を味方に出来れば、レティに貼られた嫌われ者のレッテルも消えていくと思うのよ。……まぁ、この胸は私のだけれど」
と、こちらの胸を軽く揉みながら告げられた言葉に――唐突で突然で、全く予想もしていなかったその言葉に、一瞬何を言われたのかが解らず……遅れてやってきた理解と共に、レティは小さく微笑み、
「でも私は、この胸を好きな殿方は一人だけで良いわ」
「――、――え? ……そ、それはどういう事?」
後方に投げたボールが、しかし真正面から打ち返されたかのような驚きと共に告げる紫に、レティは微笑みを強め、
「私の夫は、おっぱいが好きだったの。だから、私の胸はあの人と紫のものね」
紫の前髪をそっと整えながら、優しく告げる。……こうしていると、本当に紫が子供になってしまっているように思える。精神的にはこちらよりも成熟しているだろうに。
そう思うレティの腕の中で、驚きを浮かべていた紫が再び視線を下げ、
「……夫」
「……その、思い出してくれた?」
「以前、その話をして貰った記憶は無いですわ」
「……そう」
紫の言葉に、過去を深く思い出す。色々な事を考える。そして改めて紫を見つめ……この話をするとしたら今しかないだろうと、レティはそう判断し、
「それじゃあ一つ、昔話でもしましょうか。……というかね、これはずっと前から紫に伝えたかった話でもあるの」
それは、迷い家で彼女と出逢った時から伝えようと思っていたものだ。
だがそれは、彼女との仲を深めれば深めるほどに伝え辛くなるもので。
こうして当たり前のように紫と生活するようになってからは、尚更に言葉に出すのが難しくなっていた。
恐らく、どこかに諦めがあったのだろう。このままで良いと、無理に気持ちを明かす事は無いと、そう思ってしまっていた弱い自分がいたのだろう。……喪失を恐れた自分がいたのだろう。
だが、それにも限界がくる。
今以上を求めたくなる気持ちが、止まらなくなる。
彼女に甘えられ、彼女を甘やかすほどに、この胸の中にある気持ちが暴れ、叫ぶのだ。
そうでなくても、この生活を持ち掛けてくれた紫にも何かしらの想いがある筈だ。それがレティの想いと同一であるかどうかは解らないし、もしそれが違っていたとしても――いや、違っているのならば、尚更にこの話を聞いて貰いたいと、そう思う。
そんなレティに、紫が改めて視線を上げ、
「……解ったわ。聞かせて頂戴、貴女の昔話を」
その言葉に小さく頷き、紫の瞳を見つめ返し……けれど耐え切れずその頭を抱き寄せながら、レティは遠く過去の日の事を語り始めた。
「――むかし、むかし……」
□
むかしむかし、とおいむかし。
とある山間部に小さな集落があり、そこに一人の男が暮らしていた。彼は気立てが良く、働き者で、誰にでも慕われる心優しい男だった(現代の常識に当て嵌めれば、まだ少年と呼べる年齢だったが、既に一人前と認められた立派な男だったのである)。
そんな彼は、一人前の男であると同時に、その土地の神を守護する役目を持つ、いわゆる神主でもあった。
彼の家が代々護り抜いてきたのは、北の山に御座す冬の神。四方を山に囲まれた土地柄ゆえか、他にも春、夏、秋の神を祀る家が存在し、この土地の安泰を祈願してきたのだ。
そして、その冬の神こそ、今はレティ・ホワイトロックと名乗る女性だったのである。
彼女は春の神のように目覚めを与える訳でも、夏の神のように日差しと雨を与える訳でも、秋の神のように恵みを与える訳でもない、ただ寒気を生み出すだけの神だった。当然神徳は弱く……それでも彼は彼女を信仰し、信奉してくれていたのだ。
それは、代々神主を務めた者達とは違う、とても真摯なものだった。何せ、冬の神を祀っているというだけで、他の家々から小言を言われるような立場だ。歴代の神主は、己の境遇を呪う事はあれど、彼女を深く信仰し、感謝する事は無かった。だが、彼だけは違っていたのだ。
彼は良く言っていた。
『貴女様がいるからこそ秋が終わり、そして暖かな春が来る。確かに冬は辛く厳しいものですが、それを越えるからこそ、我等は新たな季節を迎える喜びを知るのです。つまり貴女様は、全てを終わらせ、そして始めさせる偉大な神様なのです』
その言葉に、どれだけ救われた事だろうか。神とはいえ、人と触れ合う事が多ければ、その精神はどうしても人間のように脆くなる。時に悲しみを覚え、時に涙する時もある。だからこそ、彼の真っ直ぐな想いに、彼女は信頼以上の感情を覚え始めていた。そして彼も、種族の壁を越え、彼女を一人の女性として想い始めていたのである。
そうして訪れた、ある冬の終わりの事。
正月も無事に過ぎ、そろそろ春の息吹を感じ始めるだろうその頃に、彼女は久しぶりに地に降りた。どうにも目覚めの遅い、東の山に御座す春の神――自身の姉を起こしに行こうと、そう思っての行動だった。
当然、『人間に見付かると不味い』という思いはあった。しかし、周囲は深々と降り積もる雪に埋まっている。誰にも見付かる事は無いだろうと、彼女はそう思いながら東の山へと歩き出した。
だが、祠を出てすぐのところで、こちらに近付いて来る人影に気付き…………何かの期待と共に立ち止まった彼女は、そこで初めて、自身を唯一信仰してくれている男と出逢ったのだった。
今まで交わしてきた会話は、全て神籬(神を招き降ろす為の依代)としての神木を通してのものだった。故に、こうして直接顔を合わせるのは初めてであり……だがその一瞬で、彼は彼女を冬の神だと見抜いてみせた。
冬の終わりとはいえ、雪深い山の中だ。そんな中に身軽な格好をした女が現れれば、それは山に御座す神しかいないだろう。人間を化かすような物の怪は――狐や狸は、既に取って喰われてしまっているのだから。
故にそれは、本当に偶然の出逢いであり……しかし、口に出さずとも互いに望んでいた事が、こうして何気ない偶然の結果に果たされたのだ。
あとはもう、言葉はいらなかった。
……これが物語ならば、めでたしめでたしと、そう綺麗に終わるのだろう。
だが現実は、そう甘くなかったのである。
彼が彼女に惚れてしまうのは、罰当たりかもしれないが、しかし問題のない事だった。その想いは、決して届く事がないものだからだ。
だが、神である彼女が彼に惚れてしまったのは大きな問題だった。彼女は四季を司る神として――産土神として、常にその土地を守護する役目がある。にも拘らず彼に惚れ込んでしまったというのは、その役目を放棄する事に他ならず……かといって、分社を作らせて分霊を行うほどの力も、信仰も、彼女は持ち合わせていなかったのである。
現代のような暖房器具の存在しないその時代において、冬という季節は死を意味するものでもあった。火を灯し続けなければ死ぬ。蓄えの量を誤れば死ぬ。いや、どれだけ万全にしていようと、少しの油断で呆気無く人は凍え死ぬ。それ故に、凍て付く冬の世界を支配する彼女は絶対の存在だった。そこに信仰は存在しなくても、畏怖だけは確かに存在し続けていたのだ。
だからこそ、その絶対が崩れた反動は大きかった。
「……でも、それでも、私はあの人を愛し続けた」
そう。そこにいたのは最早神ではなく、一人の女だった。
彼女は一心に彼を愛し、彼も彼女を愛した。春が訪れ、夏が過ぎ、秋が終わり……新たな冬がやって来る頃には、玉のような娘を儲けるほどに。
それは、彼女が本来得られない筈の幸せだった。だがその結果、彼女は彼からの愛を得る代わりに、最後の信仰を失い――遂には、『かみさま』としての力を失ってしまったのである。
それにより消滅はしなかったものの、その身は妖怪として、最早穢れたものになっていた。
その後も、一家は幸せに暮らし続けた。周囲からの非難は続いていたが、それでも幸せに暮らしていたのだ。
神から妻となった彼女は、妖怪であるが故に年を重ねる事はなく、その美しさと器量を持って家族を深く愛し、
少年から夫となった彼は、その数年で立派な青年へと成長し、その力強さと愛情を持って家族を悪意から護り、
赤子から少女となった娘は、そんな二人の愛情を受けてすくすくと育っていた。
何より、親の贔屓目を除いても娘は可愛らしかったのだ。
少し癖のある、濡れ羽のような美しい髪。夫の血を受け継いだ、利発そうな顔。母の血を受け継いだ、雪のように白い肌……。夫婦は沢山の愛情を娘に注ぎ、娘はそれを受けて健やかに育っていったのである。
そんな娘は、とても物覚えが良く、頭が良かった。神の――妖怪の血を半分引いているからか、精神面での成長が人間よりも著しかったのだろう。だからこそ夫婦は、次第に山を降りる事を考え始めた。山を降りた先にどんな世界が広がっているのか、夫婦はそれすらも知らなかったが、こうして悪意を向けられ続ける今の生活よりは良いだろうと、そう考え始めていたのだ。
当然、この場所に未練が無い訳ではない。出来る事なら、この地に止まりたいという気持ちは強かった。しかし、これ以上孤立し続ければ、いつか冬を越せない年がやってくるかもしれない。そうなれば、待っているのは明確な死だ。
『……この冬を越えて、次の春がやってきたら、三人で山を降りよう。そして、新たな地で幸せに暮らそう』
夫婦はそう決意を固め、辛く厳しい冬を、ただ娘を護る為だけに必死で乗り越えて行った。
……それが、決して叶わぬ夢なのだと気付かぬまま。
――悲劇は、ある静かな夜に起こった。
連日降り続いていた吹雪がようやく収まった、音の無い夜。身を寄せ合って眠る一家の耳に届く音は、互いの寝息と、囲炉裏で燃える木炭が上げる音だけの筈だった。
だが突然、地震のような地響きが走ったのだ。突然のそれに慌てて飛び起きた彼女は、しかし家が揺れている訳ではないと気付いて安心し、けれど鳴り止まないその不穏な響きに眉をひそめた。
何か嫌な予感がする。一度外を確認してこよう。そう思いながら体を起こし――
――響き続けていた地響きが頂点に達した瞬間、白い壁に飲み込まれていた。
一瞬の出来事に、何が起こったのか理解出来なかった。上下左右が入れ替わり、捻じれ、砕け、凄まじい力の本流に飲み込まれたまま何の行動も起こせない。どうする事も出来ないまま、彼女の意識は強制的に途切れ……
……再び意識を取り戻した時、彼女は重く、冷たく、暗い場所に居た。
全身が痛み、自分が今、どの方向を向いているのかも解らない。何より、自分を押し潰しているものの正体すら解らず、それでも彼女は体を動かそうとし……途端、不意に体が軽くなり、煌々とした光が目に入ってきた。それは太陽の光に似た、暖かさを感じさせるもの。それにどうにか目を開くと、そこには彼女の姉だった三人の神々と、真っ白に染まった世界が広がっていた。
その瞬間、彼女は全てを理解した。自分達を襲ったものが、北の山からの大雪崩――姉達の悪意であったのだと。
だが、もう、何もかもが遅かった。
神籬であった神木は倒れ、夫と初めて出逢った祠は消え失せ、娘を産み育て、沢山の幸せと共にあった家は完全に崩れ落ち、雪の中に埋まっていた。
……地響きに気付いて飛び起きた瞬間、彼女は娘の手を握っていた。すぐ隣には、こちらを向いて眠る夫の姿があった。だが、最後に家族の顔を確認する事も出来ず、彼女は一瞬で全てを失ってしまったのだ。
何より、彼女は元々冬の神だった存在だ。今まで何百年と雪崩を防いできた為に、実際に雪崩が起きたらどうなるのかを知らなかったのだ。……だからこそ、雪に埋め尽くされた白い絶望に、何の言葉を発する事も出来なくなっていた。
それでも彼女が生きていたのは、その身が妖怪であったからに他ならないのだろう。もしこれが人間の体だったなら、どうやっても助かるものではない。……自分の家族は、どうやっても助からない。そう絶望を深める彼女の視界に、一人の女性が入ってきた。
それは、一つ上の姉であった秋の神だった。その背には後光が射しており……彼女はそこで、自分を助けてくれたのが秋の神であった事を知ったのだ。
だが、それを知ったところで目の前の絶望は覆らない。むしろ、自分だけが助けられた状況に絶望は深まって行くばかりだ。そんな彼女に、一番仲の良かった秋の神が何か言葉を掛けようとし、だが押し黙ってしまった。そんな秋の神の背後に立った春の神と夏の神は、彼女を酷く冷たい目で見つめ……
……ふと、春の神が何かを――――雪に埋まった筈の娘を抱いているのだと気付いた瞬間、彼女は弾かれたように立ち上がり、しかしその手が娘に触れる直前で吹き飛ばされた。
それが夏の神の、好戦的だった二番目の姉の力によるものだと理解するよりも早く、淡々とした春の神の声が響いてきた。
『この子は私達が育てます。貴女の穢れた血を引いた娘ですが、神の子である事には変わりありませんから』
つまり、
『この子に、貴女の変わりを務めてもらうのです』
一方的なその言葉に、反論を挟む余地は無かった。それでも反抗しようとする彼女を姉達は軽くあしらい、そして消えていったのだ。
今にして思えば、姉達の力は幻想郷に存在する神々のそれよりも遥かに弱かった。三人の姉が全力を出しても、紅葉と豊穣を司る秋姉妹の足元にも及ばないだろう。所詮山奥の、閉じた世界の四季を司っていた神々だ。信仰してくれていた人間達には悪いが、彼女達はその程度の力しか持ち合わせていなかったのである。
だが、当時の彼女はそんな姉達よりも弱かった。そうでなくても、彼女は姉達に抗う力も、意思も、何もかもを雪崩と共に奪われてしまっていたのだ。唯一残されていた母親としての想いも、強過ぎる絶望に砕かれてしまった。
どうする事も出来ないまま、彼女は耐え切れぬ絶望に慟哭し、その場に崩れ落ちたのだった……
□
「……だから貴女は、冬以外を眠って過ごすのね」
「えぇ、そうよ」
紫の言葉に頷きながら、レティは我が子を抱くように、その細い体を抱き締める。
「……あの子が神様になったのならば、冬はあの子の季節という事になる。でも、母親である私は、寒気を操る事でしかあの子を感じる事が出来ない……。だから私は、頑なに冬以外は活動しないようにしていたの。
それだけじゃないわ。私は、冬という季節をあの子と過ごすように謳歌し、寒気を操り、人間達にあの子の事を――冬という季節を印象付ける為に過ごしてきた。……そしてそれは、雪の中へと消えていった夫への弔いでもあったのよ。
でも……気付いてみたら、こうして外の世界で暮らして、冬以外の季節も自然と楽しめるようになっていたわ。人生、何があるか解らないものよね」
「……ごめんなさい。私……」
「別に良いのよ。この話をしたのは紫が初めてだから」
記憶は風化するものだ。だが、元々神であった事もあるのか、レティのそれは全くと言って良いほど風化していない。一千年以上前の遠い遠い記憶だというのに、未だに喪失の痛みは、絶望は消えていないのだ。
だからこそ、彼女は――絶望を抱え、それでも妖怪として新たな人生を歩み始めたレティ・ホワイトロックは、小さく言葉を続ける。まるで、自分自身に言い聞かせるかのように。
「私の絶望は消えない。私の悲しみは風化しない。あの人を失ってしまった記憶は、決して失われない。でもそれは、暖かな思い出も忘れずにいられるという事だもの。辛いけど、辛くないわ」
「……貴女は、本当に当時の事を覚えているのね」
「えぇ。これでも神様だったから」
「……」
レティの言葉に、紫がゆっくりと顔を上げた。その瞳にあるのは、彼女にしては珍しい不安と期待。
それに応えるように、レティは紫の前髪をそっと直しながら、
「全部、全部覚えているわ。
あの人の力強い温もりを。
あの暖かな囲炉裏の火を。
あの幸せに満ちた日々を。
そして……
……あのあどけない貴女の微笑みを、私は今でも覚えている」
「――ッ!」
「……これがとても唐突な告白で、貴女を混乱させる言葉だという事は理解しているわ。それ以前に、貴女は何も覚えていないのかもしれない。もしかしたら、私を恨んでいるのかもしれない。でも、これだけは言わせて欲しい。迷い家で再会した時から、ずっと告げられずにいた言葉……」
声が震える。
視界が滲む。
それでも、母は子へ、その言葉を告げた。
「……お帰りなさい、ゆかり」
「――わ、私、私は……!」
そう紫が声を上げ、何かを否定するような、抵抗するような素振りをみせ……けれど耐え切れなくなったように、くしゃりと崩れた表情を隠すように、こちらの胸元へ顔を埋めた。その頭を優しく撫でながら、レティは彼女を落ち着かせるように、
「……大丈夫。ここには、貴女を縛るものは何も無いわ」
八雲・紫は、妖怪の賢者とも呼ばれる大妖怪の一人だ。常に妖しく、常に胡散臭く、何もかもを解っているかのように立ち振る舞う。そうして作り上げられたイメージは、八雲・紫という妖怪を、その実体以上に妖しく胡散臭い妖怪に見せている。そのイメージ、その仮面こそが、吸血鬼以上のカリスマと、神以上の知的さと、人間以上の底の知れなさを併せ持った八雲・紫を形作っているのだ。
だが、
「ここは外の世界。幻想郷ではないの」
「っ、あ……」
その言葉に顔を上げた紫の顔から、涙と共に、八雲・紫としての仮面が剥がれ落ちていく。
そうして残ったのは、涙を浮かべる一人の少女。そこにあるのは妖しさでも胡散臭さでもなく、喜びと安堵に震える、とても人間らしい表情だった。
彼女はぽろぽろと涙を流しながら唇を震わせ、上手く言葉を紡げない事にもどかしそうにしながらも、それでもレティを真っ直ぐに見つめ……
「……ただいま、……おかあ、さん……っ!」
小さく、けれど確かに響いたその言葉に、レティは溢れ出す涙を止める事が出来ないまま、愛しい娘を強く強く抱き締めたのだった。
■
どれだけ長い時を生きようと、どれだけ精神的に成長しようと、心の弱さが完全に消え去る訳ではない。
それが、自身が腹を痛めて生んだ子供の事となれば――他者の身勝手な理由によって離れ離れになった母親の事となれば、どうしても心は弱さを見せてしまう。
人間だろうと妖怪だろうと、家族というのは、何よりも深い意味を持つものなのだから。
「……落ち着いた?」
「えぇ、どうにか。……全く、恥ずかしいところを見せてしまいましたわ……」
八雲・紫の顔に戻りながらの呟きに、レティは微笑みを浮かべながら、自身の涙を拭い、
「気にする事はないわ。私も泣いちゃったし」
「……。……一つ、質問があるの」
その言葉と共に紫が体を起こし、レティも同じように起き上がる。そうして真っ直ぐに向き合うと、彼女は真剣な表情でこちらを見つめ、
「私が娘だと、いつから気付いていたの?」
「初めて"八雲・紫"と出逢った時から」
「なら、どうして何も言って――いえ、どうして私が娘だと解ったの?」
「母親だから」
それは質問の答えになっていないかもしれない。だがレティにとっては、それ以外に答えようがなかった。
「最初は、こんな場所に貴女がいる筈が無いって、そう思い込もうとしたわ。でも、娘の顔を見間違える筈が無かった。貴女の目元は、お父さんにそっくりなんだから」
「確かに、お父さんは女顔だったものね……。……でも、私が死んでいるとは思わなかったの?」
「思わなかったわ。貴女は私の血を引いていて……それに、冬の神の代わりをさせられていたんだもの。長命になっていておかしくなかったから」
「なら、他人の空似……いえ、私はこうしていくらでも外見を変える事が出来る。今だって――」と、紫の姿がベッドへと吸い込まれるように消えていき、再度隙間の向こうから現れた時には、見目麗しい美女の姿になり、「――今も、こうして姿を変える事が出来るのです。それなのに、どうして私を自身の娘だと?」
「確かに、髪の色や外見は簡単に変えられるのかもしれないわ。特に貴女は、それを十八番としているものね。……でも、私にはそれが解るの。
貴女の、母親だから」
微笑みと共に呟いて、紫の手を握り締める。そんなレティに、紫はジト目を向け、
「そんなもの、ただの勘でしかありませんわ」
「なら、私は霊夢と一緒ね」
「そ、それは……そう、ですけれど」
まさか言い返されるとは思わなかったのか、紫が言葉に詰まる。その様子が可愛くて、愛しくて……収まっていた筈の涙が再び浮かび始めてしまった。と、その様子に紫が酷く慌て、
「ご、ごめんなさい、私、別にお母さんを困らせようと思った訳では無くて、その……」
先ほどまでの余裕有りげな様子とは一変、子供のような表情で慌て始めた紫に首を振ると、
「違う、の……そうじゃなく、て……嬉しい、のよ」
涙というのは、一度流れ出すとすぐには収まってくれないものだ。微笑みたいのに微笑めないもどかしさを感じながら涙を拭っていると、そっと紫に抱き締められた。
豊かな胸に顔が埋まる。それは始めての感覚で、柔らかく、暖かく、気持ちが安らぐものだった。……おっぱいが好きだった夫と娘の気持ちが、良く解るようだった。それに再び涙が浮かびそうになりながらも、どうにか落ち着きを取り戻そうと努め…………心を落ち着かせる為に深く呼吸すると、レティは紫の胸の奥へと言葉を届けるように、
「嬉しいの。嬉しかったの。貴女と再開する事が出来て、私は何よりも嬉しかったの。……でも、"八雲・紫"として一人立ちしていた貴女を前に、今更どんな顔で名乗り出て良いのか解らなかった。だって私は、貴女を救えなかった駄目な母親だったから。……だから私は、この事をずっと話せずにいたの」
その気持ちが変化したのは、ここ数十年の紫との生活が切っ掛けだった。二人で家族のように仲良く過ごす、この暖かで幸せな日々にレティは希望を見出し、そしてそれに縋り始めたのだ。
「希望……?」
「もしかしたら、私の事を覚えてくれているんじゃないかって、そう思ったのよ」
顔を、上げる。
それは本当に希望で、叶えられるものではないと思っていた。それでも、真摯な表情で昔話を聞く紫の――娘の様子に、レティは確信したのだ。この子は、私の事を覚えてくれている、と。
「でも、ゆかりの方こそどうして早く言ってくれなかったの? 私はこの通り、あの頃と殆ど変わっていないし……それに、一人一種族だなんて嘘まで吐いて」
「あれは嘘ではないわ。私は人と神との間に生まれた子供。その双方の力を受け継ぐ、たった一人の存在なんですから。……というより、お母さんが私の事を覚えてくれているだなんて、夢にも思わなかったのよ。むしろ、もう私の事なんて忘れていると思っていた……。……それに、例え覚えてくれていたとしても、拒絶されるのが怖くて言い出せなかったの」
「拒絶……? どうして、私がゆかりを拒絶するの?」
例え何があろうとも、そんな事をする訳が無い。そう思うレティに、対する紫は暫し逡巡しながら、
「今の話を聞いて、私はお母さんに深く愛されていたのだと知ったわ。でも、私は怖かったの。…………私は、お母さんのような『かみさま』にはなれなかったから」
紫の父は、日々の暮らしを行う家と、冬の神を祀る祠の二つを管理していた。つまり彼は、日常と非日常を管理していた事になる。そして母であるレティは、冬の神として、区切られた四季の一つを管理していた。
そんな二人の間に生まれた紫は、境界を――日常と非日常などの事象や現象を区切る境目を操るという、類稀なる強大な力を潜めており……それを姉だった神々に開花させられ、新たな冬の神として生活し始めたのだ。
だが、その生活はすぐに失われてしまう。
「私の力は、あまり美しいものではないわ。どちらかといえば、禍々しさを感じさせるもの。そんな力を操る神を信仰する人間なんて、あの狭い世界には存在しなかったのよ」
「で、でも、私はそれでゆかりを拒絶したり、非難したりしないわ!」
「有り難う、お母さん。……でも、私の中にある価値観は、この禍々しい力を肯定的には受け入れなかったの」
夫は良く、娘に妻の事を――冬の神の事を寝物語として聞かせていた。それを受けて育った彼女にとって、神とは、朝日を受けて輝く白雪のような、とても美しく神々しいものであったのである。
だからこそ、彼女は禍々しい神としての自分を否定し、その身に妖怪としての境界を引いた。母のような神にはなれなかったが、それでも母と同じような、ただ一心に誰かを愛する気高い心を手に入れたいと願ったのだ。
だが、幼い彼女は、それで自分の力を受け入れられた訳ではなかった。故に彼女は、母との再会を望みながら、しかし冬の神だった母に拒絶されるかもしれない、という恐怖をその心に得る事になる。
それを心の底へと抑え込みながら、彼女はあの土地を離れ、
「私は、八雲・紫として生き始めた。……その際に、私達一家の幸せを奪った春と夏の神に復讐しようとも考えたけれど、結局実行しなかったわ。それでお父さんが生き返る訳でも、お母さんと再会出来る訳でもなかったから」
「……、……お父さんは……見つかったの……?」
……どうにか告げた言葉と共に、必死で雪を掘り返した記憶が蘇る。
決して忘れる事など出来ない、最後の絶望が心を締め付ける。
だが、どうやっても夫を見付ける事は出来ず……朝が来て、雪崩を引き起こしたのはレティだと一方的に決め付ける人間達に襲われ、レティは集落を後にせざるを得なくなった。だからレティは、最愛の夫がどうなったのか、その顛末を知らないままなのだ。
そんなレティに、紫も辛そうな様子で、
「秋の神様が教えてくれた限りでは、見付からなかったらしいわ……。そうでなくても、当時の私は知識に乏しくて、お父さんを弔う事が出来なくて……。……でもね、お父さんは無事に三途を渡って、罪を裁かれたと聞いたわ」
「そういえば、紫は閻魔様とも面識があるのよね……って、もしかして、」
「えぇ、そうよ。私はそれだけの為にあの方と知り合ったの。まぁ、あの方はともかく、幽々子と知り合ったのはただの偶然だけれどね」
当然のように紫は言う。力の無さに絶望し、冬という季節に縋る事でしか生きる目的を見付けられなかった母とは違い、娘はここまで力強く育っていたのだ。
だが、紫の行動力はそれだけに止まらなかった。山を降りた彼女は、とある目的の為に世界中を回る事になる。
それは、迫害を受ける者達が幸せに暮らす事の出来る場所を作る、というもの。
数多くの神が、妖怪が、英雄達が暮らしていたその時代。特異であるが故に、力の無い人間から忌避される者も多く存在していた。
彼等は求めていた。永久に続く、力ある者達の楽園――理想郷を。……そこでなら、幸せに、傷付かずに過ごす事が出来る筈だから。
そしてそれは、春の訪れと共に山を降りようとしていたレティ達夫婦が願っていた場所でもあった。
「そうして生まれたのが、幻想郷。私が愛する場所。そして、この力を肯定的に浮け入られるようになった場所……。それは妖怪達の楽園であり……私にとってみれば、消えてしまったお母さんと、いつか再会出来るかもしれない場所でもあった。……でも、どうしても、辛くて。だから私は冬眠を始めたの」
「……ごめんね、ゆかり。貴女も淋しかったのよね……」
申し訳なさと悲しさの入り混じった声で告げるレティに頷くように、紫が強くこちらを抱き締め、
「――私の中にある最初の記憶は、囲炉裏の火に照らされた部屋と、優しく微笑むお母さん達の姿。……冬の寒さを感じる度、その暖かな記憶を思い出してしまうから、私は冬から逃げ出した……」
雪深い山の集落で、一家は身を寄せ合って冬を過ごした。それは掛け替えの無い記憶として、紫の中に残り続けているのだ。
「……本当、私達は似ているわね」
大事な話を言い出せなかった事。暖かな記憶から逃げるように眠りに就いていた事。そして何より、家族を愛している事……。紫の言葉に頷くと、レティは優しく微笑み、
「当たり前じゃない。だって私達は、親子なんだから」
■
そうして再び横になった二人は、エアコンの稼動する音を聞きながら、ただ静かに時間を過ごしていく。
満腹感と安堵から、眠気は強い。でも、なんだか眠ってしまうのが惜しくて…………と、そこで、レティはある事を思い出した。
「そういえば、前からずっと聞こうと思っていたんだけど」
「何かしら」
「この生活を始めた切っ掛けは、ゆかりが私に甘えたかったから、っていうのは解ったんだけど「――違うわ」違わないでしょう?」
もし本当に違うなら、それが意識的にしろ無意識にしろ、紫が少女の姿を――一家が引き裂かれた頃の姿を取る訳が無い。髪の色や服装は違えど、その姿は母にとって何よりも過去を想起させるものなのだから。
だというのに、紫はどこか拗ねたような様子で、
「違うの。全然違うの」
「頑固ねぇ。じゃあ、違うって事にしておくわ」
「……それで、何を聞きたいの?」
「あ、そうだったわ」
普段とは違う、可愛い反応を返してくれる紫の姿に頬が緩みっぱなしになっているのを感じながら、レティは改めて彼女に問い掛ける。というか、こういう時でないと紫は本心を明かしてくれないから、普段以上に彼女を構いたくなって仕方ないのだ。
ともあれ、これ以上やると怒られてしまいそうなので、レティは頭の中を整理させつつ、
「えっと、この生活を始める時に言っていた『幻想郷を護る為』っていう話、あったでしょう。あれは全部、私と一緒に暮らす為の建前だったの?」
「残念だけれど、全部ではないわ。外の世界から完全に妖怪達を忘れさせない為、というのは本当なの。こればかりは私の力でどうこう出来るものではないから」
「なら、幻想郷の未来は明るく出来るのね?」
「当然ですわ。幻と実体の境界も、博麗大結界も、その作成には私が携わっている。今後外の世界に魔法が復活し、常識と非常識のバランスが崩れたとしても、それによって混乱が起こらないよう、私がこの手で結界を調整しますわ」
レティの自慢の娘は、そう当たり前のように言ってのける。その自信に溢れた、自分に出来ない事は無いと言わんばかりの様子こそ、"八雲・紫"であるのだろう。
そして――
「可愛い可愛い、私の娘」
「……もう子供扱いされるような年じゃないのだけれど」
そう言いながらも、抱き締めに掛かるこちらの腕から逃げようとしない紫を、レティは愛しく見つめ、
「親からしてみたら、どれだけ経っても子供は子供のままなのよ」
穏やかな微笑みと共に、母は娘をぎゅっと抱き締めたのだった。
end
冬にすがるしかなかった母と冬から逃げ出した娘の、親子としての再会。
もしかしたらそれは、外の世界でないと叶わない幻想だったのかもしれませんね。
たまにはやるじゃないか、ウチらの世界も。
もう一度言っておこう、お母さんレティと娘の紫……アリだな!
母と娘の絆・・・いいものですね。
とても良い物を読ませて頂いた、と思うのでこの評価を。
独特な設定とはいえ楽しめました。
でも、ちょっと説明が多すぎる感じを受けたのと、
行間が空いてない所為で読みづらく感じたので点数としてはちょっとマイナスです。
これはこれでニヤニヤw
外の世界とレティの冬以外の居場所の設定や、博霊大結界に関する解釈も好き
素晴らしいお話でした。
お母さんレティ最高!
・・・
まぁ冗談はさておき
親子設定は大好きですが
レティゆかを見たのは初めてです!
ほんに素晴らしい作品でした!