話をしましょう。
あれは霊夢の米びつにお米が36粒……いや、1粒だったかしら……
まぁいいわ。とにかく彼女のお米が尽きた時の話だったわ。
彼女には72通りの貧困脱出方法があるから、“あれ”はなんといえば良いのかしら。
確か、あの時は……“強奪”
そう、あの子は最初から食べ物を奪う気だった……。
言えば私が少しは分けてあげたのにね……。
まぁ、いい巫女だったわ。
† ~東方契約神~ †
「そんな巫女服で大丈夫なの?」
「大丈夫よ、問題ない」
紫の問いに、霊夢のはっきりとした声が応えた。
霊夢の身体は白衣と緋袴という、清純なる巫女の装束に包まれていた。
彼女は意を決したように頭に大きなリボンをくくりつけると、鳥居から外へと続く神社の階段へ歩みを進める。
「はっ!」
軽く地を蹴って投げ出された彼女の身体は、崖のように斜度の高い階段から、まるで飛び降りるように落ちていった。
そして、巫女は迫り来る戦闘に顔を引き締めつつ、階段を昇り来る数多の“堕ちた者”に向かっていく。
紫は境内からその様子を眺めつつ、霊夢の無事を祈るように手の中の扇子を閉じた。
霊夢の目的はただひとつ。
神社に奉納に来た参拝客を叩きのめし、そして食料を奪う事。
力強く階段に降り立った霊夢は、まっすぐに前を見据える。
階段を駆け上がってくるのは、裸体に褌、後は白い頭巾だけを被った異様な風体の男たち。
それらが津波のように大量に神社に押し寄せてくるのだ。それは霊夢にとって、悪夢以外の何者でもない。
「はぁ!」
気合と共に、霊夢の右手からお祓い棒の一閃が放たれる。
数多の妖怪たちを、尽く痛みつけてきたその一振りは、しかし男たちには通用しなかった。
肌を掠めるような僅かな距離でその一撃を躱されると、反撃の柄杓が霊夢の巫女服を抉った。
「ぐぅ!?」
男たちは目を血走らせていた。
彼らは参拝客などではない。実のところ、それは紫の呼び寄せた亡者どもであった。
彼らは言われていた。――巫女に攻撃すれば、その箇所の衣服が壊れると。
それが彼らの戦う理由であった。霊夢が空腹に耐えかねるのと同時に、男どもも抑えきれる性に依って戦っているのだ。
「うぅ!」
男たちの異常な連携攻撃により、霊夢の衣服は次々と破壊されていく。
柄杓に汲まれた僅かな水が、霊夢の身にまとう装束を消化するように溶かしていく。
「あぅ……!」
攻撃を受けるたびに霊夢は苦痛に顔を歪ませ、破れた衣服の隙間からは白い肌があらわになる。
そして止めと言わんばかりに、男の振るった柄杓が霊夢の胸部に迫った。
その一撃を甘んじて受ければ、ついに霊夢の衣服は完全に消滅してしまうだろう。
「くっ!」
間一髪、それをお祓い棒で受け止める霊夢。
が、しかし。男たちの執念は彼女の霊力を上回り、お祓い棒が悲鳴を上げるように軋む。
そして乾いた音を立てて、ついに、それが真っ二つに折れる。勢いをそのままに柄杓が霊夢に直撃し――
『神は言っている。――これ以上は創想話では書けぬと――』
時が止まった。
まるでメイドがするように、柄杓が霊夢の服を溶かす直前になって、全ての時間が停止した。
そして声が聞こえた。それはきっと、自らの巫女にすら存在を忘れ去られた悲しき神の声だった。
巻き戻しが始まる。己に仕え(てい)る(はずの)巫女が、どこで選択を間違えたのか。
何故、男どもに負けてしまったのか。その答えを教える為に、時が巻き戻される。
まるでメイドには出来ないように、博麗神社の神は時を差し戻した。
† ~東方契約神~ †
「霊夢。そんな巫女服で大丈夫なの?」
「一番いいのを頼むわ」
言った瞬間。霊夢の身体を光が包んだ。
そして彼女の体躯を軽やかに包むように、神々しい装束が顕れた。
それは一見すれば露出が大きく、防御面に劣っているように見える。
特に腋の部分に関しての露出度は、常軌を逸している。つまり腋が丸出しなのである。
だがそれを身に纏った霊夢は、満足気に薄く笑った。
「ふっ」
そして翔けた。軽やかに飛び出した身体は空中で一回、二回と回転し、階段の上に巫女が立った。
着地と同時にしゃがみ込んだ霊夢は、勢い良く顔を上げ、前を見据える。その瞳はまるで全能感のような自信に満ち溢れていた。
水面に餌が投げ入れられた雑魚のように、亡者どもが霊夢に殺到する。
そして先程と同じように、手に持った柄杓でその装備をパージせんと霊夢へ殴りかかる。
だがさっきとは決定的に違う。霊夢の身体は宙に舞う羽毛のように、軽やかにその攻撃を躱す。
腋の出た巫女服は、それ自体の防御に秀でているのではない。まず、攻撃自体が当たらないのだ。
当たらない柄杓にいらつくように、男たちは霊夢を囲って次々と腕を突き出す。
しかしそれを霊夢は軽々とさばいていく。
「はぁ!」
そして躱すと同時に奴らへと反撃をする。お祓い棒を胸部へ叩き込む、裏拳で鼻を削ぐ、鳩尾を蹴り上げる。
男たちは次第にその数を減らしつつ、そして一向に霊夢へと手が届かなかった。
涼しい顔で仲間たちをなぎ倒していく霊夢に恐怖を覚えながら、一人の男が捨て身のように突進して柄杓を振るった。
「!?」
一瞬の気の緩みか、霊夢は顔に向けて振るわれた柄杓を避けきれず、手に持ったお祓い棒でそれをなんとか防ぐ。
そして“同じように”お祓い棒が軋み、へし折れ、ついには柄杓がそれを突破する。
『神は言っている。――賽銭を集めよと』
また聞こえた“声”は、霊夢のするべき事を的確に指示していた。
鼻先に迫り来る柄杓の先を、後ろに仰け反って躱す。そしてそのまま後方転回すると、空ぶった男の顔面へ草履の裏を見舞う。
階段から落ちた男の懐から、金の入った袋が溢れる。霊夢はそれをすかさず拾うと、袋をすぐさまに自分の賽銭箱の中へと転送する。
食料を奪うのではない。金を得れば良いのだ。
金が無いことから貧困は始まる。金があればひもじくはない。
霊夢は真理に到った。――賽銭を集めるのが、巫女の仕事だ。
振るわれる拳は、真っ直ぐに男たちの急所を捉える。
そして倒れた彼らの身体からは、まるで吸い取られるように賽銭が奪われていく。
ついには敗走し始める男もいた。だが霊夢はそれを逃さない。
結界で閉じ込めてから、まるで空から獲物を狙う猛禽のように、確実に男たちを倒していった。
かくして、博麗神社への参拝客は全滅した。
博麗神社の賽銭箱は、一時的な潤いに歓喜したのである。
ええ、やっぱり今回も駄目だったわ。
あいつらは欲しか頭にないものねぇ。
そうね、今度はこれを見ている人たちにも、付き合ってもらおうかしら?
賽銭箱からあらゆるお供えが持ち去られた後だった
と書こうと思ったらあとがきで書かれていた
クリックして三秒で爆笑しましたwwww
面白かったです。
でも吹きました
元ネタ知らないけどそこそこに面白かった
いいんじゃないかな、霊夢もよくやってくれてるしね
最初で吹きました
これを読んだのはつい昨日の出来事だが、得点を入れるのはたぶん……今朝の出来事だ。
まあ、いいSSだったよ。
しかし、こういうSSを好まない人いるのでパロディタグ以外に冒頭にちゃんとした注意書きは必要。
注意書きは難しいな、やはりそういったことがかかれてないからこその破壊力もあるし。
吹いたwwww
ツボったwww
タイトルは地雷だけどエルシャダイタグで思わず読んでしまった
まぁ、いい作品だったよ。
ちくしょおおおおwww