弱肉強食。
それは、弱き者は強き者の肉として食べられる自然の理。
食せずに生きられる者などこの世の中にいないのだ。
人間は、生きる為に動物を殺し、植物を採取する。
そしてそれを食べ、明日を生きる為の糧とするのだ。
食物連鎖の頂点とされる人間は、生きる為にたくさんの命を刈り取った。
生きる為には、当然の行為だった。
しかし、人間が食物連鎖の頂点とされているのは、外の世界のお話。
ここ、幻想郷には人間の能力を超越した妖怪達が跋扈している。
人間や動物を襲い、その肉を糧とする者達だ。
妖怪達は様々な能力を持っていた。
その能力を駆使して人間や動物を殺し、また、他の妖怪に力を示すことで自分の存在をも示してきた。
しかし、そんな妖怪達は飢えていた。
この世界には、あまりにもスリルが足りなかった。
弱い人間を襲い肉を求めたところで、何の楽しみも無い。
故に妖怪達は自身の力を過信して戦い、その血肉を求め続けた。
そうして数多の妖怪達が死に、強い者、賢い者達だけが残っていった……。
◆
地底の世界ができあがる前のこと。
古明地さとりは、そんな禍禍しくも恐ろしい世界の中を生きてきた。
覚りとしての能力を使い、相手のトラウマを呼び起こすことによって争いを回避し、生きてきたのだ。
決して相手を殺す事などせず、ただ戦いを避ける。
その事だけに、さとりは一生懸命になっていた。
理由は単純で、さとりは争い事が嫌いだったからである。
別にさとりは人の肉を食べたり、ましてや妖怪の肉なんて食べようと思わない。
人間と同じような食事を取って、平穏無事に暮らしたいのだ。
それなのに妖怪達は、自分たちの力を見せる為、そして自身の力を過信して相手の肉を食えると踏んで、戦いを挑んでくるのだ。
争い事が嫌いな者からすればはた迷惑な行為である。
しかも、命が関わるとなれば尚更のことだった。
一方、古明地こいしはと言うと、誰にも気づかれること無く生きてきた。
自身を意識の外に外し、戦いを避けてきたのだ。
ただ何となく、という理由だけで。
二人の姉妹は方法は違えど戦いを避けてきた。
しかし、彼女達には決定的な違いがあったのだ。
生き物を大切にする心を持ち、戦いを避けつづけたさとり。
命の大切さを知っているが故に、戦いを避ける。
そんなさとりとは違い、こいしには命の大切さなんてわからなかった。
命なんて、ちょっとした事で動かなくなってしまう、おもちゃのような存在だった。
こいしは、虫をよく捕まえてくる。
自然の中で生きていれば、もっと長生き出来るだろう虫たち。
自然の中で自由に生きることが、虫たちにとっては幸せなはずだ。
たとえ強い者に食べられようとも、それもまた運命なのだから。
虫たちは、一度人や妖怪に捕まってしまえば、弱ってすぐに死んでしまう。
環境が違うだけでも生きられない、弱い者。
そんな、脆い生き物だ。
そんな中でも、こいしは蝶を好む。
色んな色で飾られた羽が、お気に入りだった。
あの綺麗な羽で、何に縛られることも無くひらひら飛んで、とても可憐な姿だ。
そんな羽も、ちょっと力を入れただけですぐに取れてしまう。
一つ羽を失っただけで、もう上手に飛ぶことはできなくなる。
全部とってしまえば、いも虫みたいな外見になってしまうのだ。
羽を失った蝶は、何もする事ができず悶えるだけ。
可憐な蝶も、羽を失えばただの醜い虫でしかなくなってしまうのだ。
そんな姿を見て、こいしは微笑む。
こいしにとって、それらはおもちゃでしかなかったのだ。
そしてまた、こいしは気まぐれに命を奪っていく。
意識の外にあるこいしは、妖怪を容易に殺せる事だってできるのだ……。
◆
空の色が、徐々に真っ赤な茜色へと変わっていく。
明るい、人間の時間はやがて終わりを告げようとしていた。
そんな中、さとりは森の中でこいしを探していた。
気が付くといなくなるため、探すのは一苦労だ。
暗くなる前に、こいしと一緒にいつもの小屋に行きたい、と考えた矢先だった。
見覚えのある帽子と服が目に入った。
やっとみつけた。
そう心の中で呟くも、何か不審な事にさとりは気付く。
不穏な、水気の混じった音が静かな森の中に響き渡り、耳に届く。
しゃがみ込んで何かしているこいし。
そのこいしの方から、その音が聞こえるようにも思えた。
「こいし? 何をしているんです?」
「あ、お姉ちゃん? 妖怪って人間と作りは変わらないんだね!」
嬉々としてそう返すこいしは、さとりの方を振り向いた。
こいしの前には、血の海に沈む妖怪の姿。
そして、飛び散ったであろう血が手に顔に、服に付着していた。
「っ!? こいし!!」
急ぐようにしてこいしの手を取り、横たわる妖怪から離れさせた。
驚くような表情を浮かべるこいしの事など気にする余裕もない程、さとりは必死だった。
さとりは、こいしの手を取る。
その手に付着した血は、まだ妙に温かかった。
「なぜこんなことを!!」
「なぜって言われても。ただ、妖怪ってどうなってるのかが知りたかったから」
「だからってこんなことを……」
ふと横たわる妖怪に目をやる。
ぱっくりと開いた腹部から見えるものに、思わず目を伏せた。
こいしは、人間を一度だけ殺したことがある。
その時もまた、人間がどうなってるかが知りたかったからという理由だった。
そんなことしても、人間についてはわからないはずよと教えたはずなのに。
あの時は強めに叱ったはずなのに、こいしはまたやってしまった。
なぜこんなことになってしまったのだろうか……。
思考に耽るさとりの肩に、こいしの手がふわりと乗せられる。
思考を遮られたさとりは、こいしの方に目をやる。
「だって、こうしないとわからないじゃない」
その瞳は狂気に満ちたようで。
それでいて、どこか悲しそうにも見える。
「もうやめて、こいし。お願いだからもうやめて」
「そんなにお姉ちゃんがいうなら止めるよ」
こいしは、満足そうに笑う。
無邪気な子供のように、自分がしたことに誇りを持っているように。
そうしてふらふらと消えていくこいしを、さとりは目で追いかけた。
もう夜が近づいているというのに。
解っていながらも、今は追いかけることが出来なかった。
足が思うように動かなくて。
思うように口が動かなくて。
やがてこいしも見えなくなった。
さとりは、ゆっくりと妖怪の元へと歩いていく。
鬱蒼と生える草達も真っ赤になり、臓器が腹部から少しばかり見える。
直視するのが辛かった。
だけど、自分のせいでこうなったのだと、さとりは感じている。
だから、その目でしっかりと妖怪を見つめて。
「ごめんなさい、私の妹の気ままな行動で命を絶ってしまって……。本当に、ごめんなさい」
返事は返ってくる筈も無く、ただたださとりの声が森に吸い取られていった。
膝をつき、涙を流すさとり。
誰かの気まぐれで命を落とすなんて、あってはならないのだ。
例え、理由があったとしても、生きる為とは違う理由で殺すなんてあってはいけない。
さとりは、冷たくなった妖怪の手を、ぎゅっと握った。
その姿を、木陰からこいしがじっと見つめる。
寂しそうな表情で、冷めた瞳で。
「わたしより、そっちの方が大事なの?」
小さく呟くこいしの声は、どこか怒りにも悲しみにも似ていた。
そんな小さな呟きは、さとりに届く事無く、木々のざわめきにかき消されていく。
こいしには、さとりの思っていることなんてわからない。
さとりにも、こいしが何を思っているかなんてわからない。
だから気づけなかった。
さとりが、命の大切さをわかって欲しかったことを。
こいしが、少しでも自分のことにかまって欲しかったことを。
◆
覚りは、第三の目を持ち、心を覗き見ることが出来る。
意識しなくても、勝手に頭の中に流れ込んでくるのだ。
その能力を人間だけでなく、他の妖怪達も恐れ、不気味に思っていた。
故にさとりもこいしも嫌われていたのだ。
ただ覚りとして存在するだけで。
罵声を吐かれ、物を投げつけられ、嫌われる。
何故生まれつきある能力なのに、それを否定するのだろうか。
それが自分自身の個性であり、他人に真似が出来ない自慢でもある。
それを否定されることが、こいしには解らなかった。
覚りの存在を否定される度に、悲しむさとりの姿。
膝をつき、顔を手で覆って涙するさとりの背中を、何度さすったことだろう。
こいしは、悲しみに暮れる姉の姿なんて見たくなかった。
解せないことばかりの世の中だった。
何もしてなくても、嫌われる無情な世界。
そんな不可解ばかりの世界の中で、こいしは一つだけ解る事があった。
覚りだけが持つ、第三の瞳があるから嫌われるんだ。
そう思ったこいしは考えた。
第三の目を閉じることができれば、人の心が読めなくなるし、皆と対等な立場に立てる。
それからというもの、こいしは第三の目を閉じ、人の心を見ることをしなくなった。
やがて、人の心を見ることが出来なくなった代わりに、無意識を操ることができるようになった。
これで嫌われることも無くなったと思っていたこいし。
しかし、周りの待遇は全くと言ってもいいほど変わらず、嫌われ続けたのだ。
理解に苦しんだ。
だって、人の心を読んでいないのに、それでも嫌われるのだから。
結局は、覚りというだけで嫌われるだけだったのだ。
この世界は、とても汚かった。
だから、世界を憎んだ。
何故人間はその者の思いも知らずに罵り、馬鹿にするのか。
一体人間は、何者なのか。
それを知りたくて、こいしは無意識を操り、人間を観察するようになった。
そして、命をも弄ぶようになった。
凄く不器用で、考え方が幼いこいし。
故に欲求のままに動き、やりたいことはとことんやってきた。
そのためなら他人が不幸になろうとも、構わない。
とても自分勝手で、それでもって扱いが難しい妹。
それでもさとりは、こいしを愛している。
唯一の妹であり、家族でもある彼女を、放っておくことなんてできるはずもなかった。
自身の弱い姿を見せすぎたが故に、こいしは変わってしまったのだ。
自分のせいで変わったのに、今のこいしを愛せないなかったら、今までの愛が嘘になる。
愛しているからこそ、さとりは自分の思いを、命の大切さを分かってもらいたかったのだ。
◆
こいしは、瞳を閉じてからと言うもの、さとりの接し方が変わったと感じていた。
なんというか、不自然な接し方。
ぎこちないというか、とにかく変なのだ。
口には言い表しにくい、妙な心境。
どこか私に構ってあげないといけないと思っているような、そんな接し方。
瞳を閉じる前の、自然な接し方とは違ったのだ。
そんなさとりの接し方に、どこかいらいらしているのかもしれない。
故にむしゃくしゃして、生き物に当たるのかもしれない。
目に映る世界がどれも汚く見えてしまう。
本当はこの世界が素晴らしくて、美しいなんてわかっている。
だけど、心のどこかでそれを否定したい気持ちがあったのだ。
なぜなら、さとりとこいしを苦しめた人間たちがそこにはいるのだから。
皆が皆悪いわけじゃない。
だけど、一度でも嫌なことをされてしまえば、もう頭から離れないのだ。
そんなこいしは、以前のようにさとりに愛されたかった。
◆
「ねぇ、こいし。いるんでしょう?」
死体を埋め終わったさとりは、優しい風が吹き抜ける、木々の間へと言葉を投げかけた。
声はやがて木々に吸い取られるように消え、ひとときの静寂が訪れた。
ただただそこには、木々が揺れ、葉が擦れ合う音だけが響く。
「いるよ?」
やがて返事が返ってくると、木の間からひょこっと顔を出す。
少しずつさとりの方へと足を運ぶ。
そして、隣へと。
「座りましょう」
「うん」
もう空には月が昇っていた。
やがて夜が訪れ、妖怪たちが活発に動き始める時間が来る。
その時は、どこかに隠れなければいけない。
理由は簡単で、戦いに巻き込まれるのが嫌だから。
「ねぇ、さっきお姉ちゃんが泣いてたの見てたでしょ」
「うん、見てた」
そっと隣のこいしに話しかける。
すると、包み隠さず返事を返すこいしに、くすっと微笑む。
さとりは、こいしの素直な部分が好きだった。
「ねぇ、お姉ちゃん」
「なぁに、こいし」
「その、なんっていうか。迷惑かけてごめん」
さとりは、視線を土が少し盛り上がったところへと向ける。
そこには、一本の棒がそこに立っていた。
先ほどの妖怪のお墓である。
するとさとりは目を伏せ、別にいいのよ、と返した。
ただ……。
「ねぇこいし。あなたは命についてどう思う?」
それだけが聞きたかった。
心が読めないから、聞き出すしか方法はない。
意を決したさとりの言葉に対し、突如こいしは語り始めた。
「私たちは食べる為に殺す、そうだよね? だからお肉とかお魚とか、そういうのが食べられるんだもんね」
「? え、えぇ、そうね」
「食べる為に殺されるのは許されるのに、欲望のままに殺すのは許されないんだよね」
「えぇ、そうよ。自分の勝手で生き物の命を断つなんて許されない行為よ」
「じゃあ、弱肉強食の世界の中で、強い者の妖怪は、別に殺し合わなくてもいいはずなのに殺し合うのはなんで?」
「え?」
突然の質問だった。
確かに、世界は弱肉強食の世界であり、弱い者が強い者に食べられる。
だからこそ妖怪たちは人間達だったり、動物達を食べたりするのだ。
だけど、食物連鎖の頂点たる妖怪たちが殺し合うのはなぜなのか。
強い者が、強い者に殺される。
それは、なぜか。
「だって、そんな危険を冒さなくても弱い者を狩っていれば生きていけるのに、わざわざ戦って死のうとしてるんだよ? 命ってそんなに大切なの?」
確かにこいしがそう疑問に思ってもおかしくない。
正直、私もなぜそこまでして戦って死のうとするのか分らなかった。
例え自分の力があろうとも、違う方面で発揮すればいいだけじゃないか。
なのになぜ、彼らは間違った方向に行こうとするのか。
「命は大切だってお姉ちゃんは言うけど、皆大切に扱ってないんだもん」
「違うのよ、こいし。彼らは命の大切さを分かってないからああやって戦い死んでいくのよ」
「わからない。私にはわからない……」
首を横に振り、俯くこいし。
どこか悲しそうで、難しい表情を浮かべていた。
「だって、弱い者が死んで、強い者が生きるから弱肉強食なんでしょう? だけど、ただ欲求だけで動いて、強いモノ通しが殺し合って、その中でも弱い者が死ぬなんて、この世界は弱肉強殺じゃない」
こいしは笑った。
姉の言う命の大切さと、自分が見た命の大切さはあまりにも違いすぎたのだ。
投げ捨てるような命があるのに、大切な命もあるのか。
その人の存在によって命の価値は変わるのか。
なんとも安いものだと、こいしは思った。
「弱い者も強い者も死ぬのなら、私が一つ命を摘んだところで変わらないでしょう?」
「こいしっ!!」
反射的にさとりの手が動いた。
パシンッと乾いた音が森の中に響き渡る。
一瞬、何が起こったかわからなかった。
ただ解るのは、こいしの頬に残る微かな痛みと熱だった。
こいしは、初めてさとりに本気で叱られ、叩かれた。
今までどんなことをしてきても、呆れにも似たような表情で叱ってきた。
それは、優しくもこいしを思っての忠告だった。
どれだけ困らせても、手を出すなんてことはなかったさとり。
しかし、今は違う。
肩を震わせて、こいしを強く見つめるさとりがいた。
今まで見たことがない、怖い姉がそこにはいたのだ。
思わず頬に手をやる。
その手には、やけどしそうな程の熱が伝わってきた。
「痛いでしょう? あなたは、これ以上の痛みを生き物たちに与えてきた。そして、その痛みを感じることこそが、生きている証であって、命が尽きていない証拠」
さとりは、強く強くこいしを見つめた。
この場から立ち去る事を許さない、力強い三つの瞳。
こいしは、動くことすら許されないような、そんな気がした。
「あなたが笑っていられるのも、あなたが私と話していられるのも、あなたが大好きな甘いものを食べられるのも、あなたに命がある証拠。命がなきゃ、何もできないのよ?」
「命が無くなった後の世界のこと、お姉ちゃんは知ってるの?」
「知らないわ。だけど、幽霊になってしまったら、こうしてお互いに話し合うこともできないし、それに……」
一歩こいしに近づいたかと思うと、さとりはそっと抱きしめた。
突然の事にこいしは目を丸くさせる。
そんなこいしも気にせずに、さとりは頬と頬を合わせる。
「暖かいでしょう? こうして互いの暖かさを感じ合うこともできないのよ?」
「お姉ちゃん?」
こいしは、頬から感じる微かな暖かさに、そっと目を閉じた。
暖かい。
先ほど叩かれた時、頬から手に伝わったような熱さとは違う。
太陽の日を浴びたり、焚火の日に当たるのとは違った、自然で優しい暖かさ。
これほどにまで、生を間近で感じる事があっただろうかと、こいしは思う。
あの日を境に、一人でふらふら生きてきた。
さとりと手をつなぐことも無く、ただ一人で。
だからこそ、こんなに優しくて暖かく感じたのかもしれない。
「感じるでしょう、私の熱を。これが、命。素敵でしょう?」
さとりは、ただただこいしを抱きしめた。
そうすることで、こいしなら解ってくれると思ったからである。
掴めない性格だけど、心は純粋な子だってことは、さとり自身が一番よく分かっている。
難しい言葉を並べるよりも、簡単で伝わりやすい行動で示す。
それが、きっとこいしにも伝わりやすいだろうと考えたからだ。
「私は頭がよくないから、難しい言葉で納得させることなんてできないわ。だけど、こうしていられることで、あなたが傍にいることを、あなたの命がある事を確かめられる。あなたも感じるでしょう?」
「うん」
こうして抱き合っていると、胸の奥底から聞こえる鼓動。
トクン……トクン……。
それは、命がある証拠であり、存在している証拠でもある。
「こんな説得力のない話だけど、少しでも命が大切だって事が解ってくれたら、私は嬉しいわ」
「うん。なんとなくだけど、感じるよ。お姉ちゃんの命も、私の命も」
こいしも、さとりをぎゅっと抱き返す。
もっと近くで、命を感じたかったから。
今まで解らなかった命が、解るような気がしたから。
「少しでも分かってくれたのなら、私は嬉しいわ」
「うん」
もっと身近で心臓の音を聞いてみたいとこいしは思った。
だけど、胸を掻き裂いて心臓を見る頃には、あまり動いていないだろうから。
二度、経験したことである。
だから、よく聞こえる胸の近くに、そっと耳を寄せて。
トクン……トクン……。
こいしは、自分と同じ鼓動をさとりから感じることができた。
「これが、命」
弱い者も、強い者も同じ命を持っている。
命の構造なんてわからないけど、何か解ったような気がした。
それが何とも言えないほど嬉しかった。
もしかしたら、命の大切さを本当は分かっていたのかもしれない。
こいしは思う。
ただ、さとりにかまってもらいたかったから、それだけの理由で殺してきたのかもしれない。
それだけの為に無差別で殺すなんてこと、あってはならないはずなのに。
だけど、狂おしいほどに愛が欲しかったから、こうなったのかもしれない。
「ごめんね」
ぼそっと呟くこいし。
その言葉は、誰に向かっての言葉かなんて、本人しか知る由はなかった。
それは、弱い者達を無差別に殺してきた事への言葉なのか。
それとも、さとりに向けての言葉なのか。
「謝る事は、大切なことよ、こいし」
そんな呟きに対し、さとりはこいしの背中をそっと撫で、答えた。
胸の奥からこみ上げてくる、熱い何か。
これも、生きているから感じられることなのだろう。
こいしはそう思うと、嬉しくてたまらなかった。
「さぁ、もう夜が近いし、帰りましょうか」
「うん、帰ろっか」
小さな子供の迷いなんて、すぐ時間が経てば消え去ってしまうものだ。
その迷いが解消された時、その物事から興味をそらす。
それと同じように、こいしは命について深く考えることをやめた。
もう、解りきったような気がしたから。
こいしは、さとりの手をきゅっと握り、森の中を歩いて行く。
これから来る、無利益な戦いを避ける為に。
二人が結んだその手は、力強く、そして暖かかった。
ってパターンか。
解釈としてはアリだけど、あまりにも普通すぎたかも。
テーマの割にはあっさり風味のように感じましたが,楽しめました.
幻想郷は少女の世界だから過度にシリアスな解釈はいらないのかなあ,とも思います.
質を上げるってことですが,どういうのを上質って思われますか?
最近は子供が何かしてもただ怒るだけの親が多く、子供はなぜ怒られている理由がわからずに同じことをしてまた怒られる。これではいつまでも成長しません。
怒るのではなく叱る。命についてだけでなくいろいろ考えさせられました。
楽しかったです。
このテーマ自体もっと魅力的にアプローチできるはず
後半のこいしの問いに、さとりではなく作者が答えてるように感じた
その問いに語り尽くされた正論ぶつけてなし崩しに姉妹愛に持ち込んで、結局答えが借り物で終わった
練り切れてないし、一見深いけどほんとは浅瀬でちゃぷちゃぷやってるだけ、そういう内容
そのため点数無し
食べ物で言えば家畜は多くの植物の命からできています。植物の栽培も多くの雑草や害虫を殺して成り立ちます。
更に人の腸内には100兆もの腸内細菌がいて我々を支えています。彼らがいなければ生きていけません。
そして人には人間関係という何ににも代えがたいものがあります。
扱いが難しいけれど非常に大切なテーマに挑戦したことに敬意を表しこの点数を。感謝。
でも自分のイメージする彼女と近いと感じました。
何で今日に限ってこんな問答に発展したのか。
何でこんな簡単にこいしが納得するのか。
予定調和の流れに当て嵌めただけで、キャラが人形のような印象を感じました。
評価ありがとうございます。
こいしちゃん全然書いたこと無かったからなかなか……。
作品をもっと読まなきゃいけないなぁと思いました。
>3 様
評価ありがとうございます。
過度にシリアスな解釈はいらない……ほぉほぉ。
とりあえず、今まで推敲とかしたこと無かったのでちょっとしてみようかなぁと。
丸投げはやめようかなぁと思ったものです。
>ぺ・四潤 様
評価ありがとうございます。
少しでも私の作品で考えさせることができて幸いです。
>5 様
評価ありがとうございます。
私からすれば、死は悲しいもので、恐怖の対象です。
>朔盈 様
評価ありがとうございます。
さとりさんはなんか知的な事とか難しい事より、簡単な言葉で納得させるのが上手そうな気がしたので。
嬉しいお言葉です
>15 様
コメントありがとうございます。
勢いで書いてしまったがために、何か上手く表現出来なかった気がしてなりません。
コメントを見て、確かになぁと思うところばかりです。
精進します。
>オオガイ 様
評価ありがとうございます。
こういう、大きなテーマに挑んでみるのは前からちょっと夢でした。
だけど勢い任せなのはやはりだめだなぁと思いましたわ。
>22 様
評価ありがとうございます。
さとりって第三の目はありますけど、人間っぽいと思うんです。
私のさとりは、そういう妖怪です。
>24 様
評価ありがとうございます。
この重いテーマならもっと長く、濃く書けた気がします。
なのに私の都合で勝手に短く、するする流れて納得させてしまいました。
反省点は多々あります、ありがとうございます。