トン
軽い音を立てて一人の男が庭に立つ。
「行っちゃうのかい?」
古ぼけた神社のふすまの向こうから女性が声をかける。
「見届けることが我の仕事。最期は見えた」
後はなすがまま…。その言葉は女性には届かず錆びた神社の庭に消えていく。
「行っちゃうのか…本当にさびしくなるねぇこの神社はあんたがいて保っていたのに、この場所も私たちの心も、特にあの子は」
新たな声それもまたふすまの中から。
「いたしかたなきことよ、信仰は時代のもの信仰は流れ人間の心のもの、必要とされなくなった神とは弱きものよ」
「力はね、心は折れちゃいない。それは私もこいつもあの子も」
わかっておる。だからこそ惜しい、その最後まで見届けれぬことが。その言葉は出ず心の中で止まる。
「本当に悲しむだろうね、お父さんが消えちゃったら」
「…」
バサ
話を遮るように男の背に鴉の羽が生える。
それは人外を証明するもの。
「どうしても止まらないか、まぁわかってたことだけどね」
「何年いると思ってるのさ?私は解ってたわよ、神奈子」
「なにを?さっきまでどうやってとどめようか考えていたくせに!」
「な…なにさ!それはあんただって!」
その騒ぎ声を背に目の前に現る人影、それは若葉色の髪の風祝の少女。
「早苗か…」
「行っちゃうんですね…」
「あぁ」
無情な一言。
小さな期待を奪われた少女は顔を伏せ涙を溜める。
「泣くな早苗よ、泣いてよいのは大切なものを失うときだけだ。我はそう教えたはずだ」
その言葉を聞いた早苗は涙で歪んだ顔を隠さず男を見る。
「今が…」
小さな涙の本流はとどまることを知らず小さな流れは大きな流れへと変わる。
「今がその時じゃないですか!わた、私は!あなたが好きで!大切な人で!大事な父で、兄で、友人で!だから…だから」
今は泣いてもいいじゃないですか…。
言葉は嗚咽にかき消されちゃんと発音されない、しかし男の心には届く。
「そうか、そうだな…だからこそ別れだ」
「っ、何でですか!?私の信仰が足りないから!?加奈子様や諏訪子様への信仰が足りないから!?」
「それは関係ない、我は見て判断したのだ。我と早苗たちが次に会える日が」
「え…」
泣きじゃくっていた顔は一変わけがわからないという顔に。
「会えるのですか…?」
早苗が願う限り。
その言葉を言い終わるが否か男の姿は漆黒の羽を残し消えていった。
「絶対に会えると信じてますよ」
目の前に落ちた羽根を拾い上げ大切に大切に包み胸に当てる。
「いえ…絶対に会いに行きます」
あげた顔に泣き顔は無く決意の表情。
ならば、、まずするべきは神社の中に響いてる喧噪を鎮めるとしますか。
早苗の心は既に前を向いていた。
「神奈子様!諏訪子様!喧嘩しないでください!」
少女の声は透き通り神社を超えて空に響く。
その声を聞き焦る神たちと空に浮かぶ鴉天狗。
神は謝り、天狗は笑いながらその場を消えた。
続かないなら10点です。
プロローグだとしても短すぎる。第一話の先頭にくっつけておけば十分でしょう。
続きに期待。
×洩矢神社
○守矢神社
これだけだと評価材料までには厳しいけど、ちょっとづつでもがんばって読者をうならせる作家を目指してくれ。