Coolier - 新生・東方創想話

天使伝説

2010/09/06 19:52:31
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「主か、我を呼び出したのは」
「はい、そうですよ」
何も無い空間に現れた五つの眼は大きな翼を持った女性を睨みつけた。
「……見た所天使のようだが、我に何の用だ?」
「貴方と契約しようと思いまして」
笑ってそう言う女性を五つの眼は取り囲んだ。
「我と契約だと?」
「ええ、駄目ですか?」
「昔から天使達は我を穢れ多いと言い、距離を置いていたのにどういう風の吹き回しだ?」
「昔の方々の意見は私には関係ありません。私は貴方の力を借りたいのです。貴方に私の眼として働いて頂きたいのです」
「……」
五つの眼は女性を取り囲むのを止め、また一つに集まった。
「どうでしょう?別に無理にとは言いませんけど……」
「……主は不思議な性格だな。分かった、我で良ければ契約しよう」
五つの眼は少しだけ目つきが柔らかくなる。
「本当ですか?ありがとうございます」
女性は微笑むと、手を差し出した。
「……我はその手を取ることは出来ないのだが……」
「あ、そうでした。ごめんなさい」
女性は素で気付いてなかったようで、両手で顔を恥ずかしそうに覆った。
「……少し時間を頂く」
そう言うと五つの眼を繋ぐ光が集まり、やがて人型へとなった。
「この方が何かと都合が良いだろう?」
人型となったそれは腕を組んで言った。
「そうですね。では、改めてよろしくお願いします。……あっ、申し遅れましたね」
女性は髪を手で整える。
「一応天使をやっています、サリエルです。みんなにはさっちゃんって呼んでって言ってるのに呼んでくれません」
女性、サリエルは丁寧に頭を下げた。
「そんなに改まらないで頂きたい。これからは我の主人となる身なのだから……」
「そうもいきません。礼儀は大切です。それがいかなる相手であれ、欠かしてはいけません。……ですから、貴方も自己紹介して頂けますか?」
その言葉に人型は頭を掻いた。
「我か……?我はユウゲンマガンなどと言われている」
「長いですね……マガンで良いですか?」
「好きに呼ぶといい」
「それじゃ、マガン。これから頼りにさせてもらうわ」
サリエルは手を差し出す。
「我の出来る限りお力にならせて頂く。……サリエル様、これから世話になる」
マガンはその手をとった。
「ひゃあ!?静電気が!」
「……失礼した」










「サリエル、何よあんたの後ろのやつ……」
「……そんな気味悪い奴どうしたんだよ?」
サリエルの後ろに付いていくマガンを見て、他の天使達は気味悪がった。
そんな光景にマガンは腕を組んで静かに目を閉じていたが、後ろの五つの眼は天使達を睨みつけていた。
「今日から私のパートナーになったマガンですよ」
サリエルは笑って答えた。
「マガンって……ユウゲンマガンか!?」
「穢れ多い……」
「そんな奴早く送り戻せよ!」
周りから非難の声が聞こえる中、サリエルはあくまでマイペースにマガンの方を向いた。
「すみませんね、みんな礼儀をわきまえていなくて……」
「構わない。このくらいなら言われ慣れた。今更思う事は無い」
「ですけどね……」
「おい、サリエル!」
後ろに立っていた天使がサリエルの肩を掴もうとする。
次の瞬間、マガンはそれを振り払った。
「貴様らは我に文句があるのではないのか?我に言いたい事が無くなったのなら、さっさと立ち去れ」
五つの眼が周りの天使をさっきよりも強く睨みつける。
その圧力に、天使達は少しずつその場を去っていく。
「マガン、ありがとう」
「……初めての主人だ。大切に扱わないとな」
「私がマガンの初めて、奪っちゃったんですか……?」
「……」










「狭い部屋ですが、どうぞ」
「失礼する」
二人はサリエルの住居へと移動した。
「どうぞ座ってて下さい。あ、何か飲みます?」
「お気持ちだけ貰っておく」
サリエルは「そうですか?」と言って音も無く腰掛けたマガンの向かい側に座った。
「はい、じゃあ新入社員説明会を行います」
「新入社員……?」
「仕事の内容ですが、私はこの通り目は二つしかありません。当然見える範囲も限られてきます」
サリエルは自分の目を指差した。
「二つしかないというのも不便だな」
「まあ、マガンから見ればそうですよね。普通はこれでも充分なんです。けど私は一応天使。人間界の観察をしたりしないといけません」
「それで我を通じ広い範囲を観察するというわけか」
「その通り、流石です」
サリエルはぱちぱちと手を叩いた。
「サリエル様、ちょっと良いか?」
マガンはサリエルに顔を近付ける。
「どうしました?」
首を傾げるサリエルの瞳に、マガンは自らの眼を近付けた。
サリエルは目の奥にぴりっとした衝撃を受ける。
「何を……?」
「我の主人だからな。契約の証とでも言えば分かりやすいか。……我が今サリエル様に与えたのは邪眼。魔よけの効果があるが、その力を使えば見つめた者を不幸にする眼……。持っていても害は無いので、使い道は自由にして頂きたい」
「……ちょっと私には荷が重いですね」
小さく笑い、サリエルは頬を掻いた。
「我はサリエル様になら使いこなせると思っているのだがな……」
「それは嬉しいお言葉です」





それから、時間はあっという間に流れていった。

「おはようマガン、よく眠れました?」

「マガン、少しは笑ってくださいよ」

「ぐっどもーにんぐ、マガン。え?変ですか?」

「今日は一緒に寝ましょうよ。マガン、たまには良いじゃないですか」

「はぁ~、マガン、聞いてくださいよ。また怒られちゃいました~……」

「マガン、今日は一緒にお仕事ですよ」

「羽が邪魔で背中に手が届きません~。マガン、掻いて下さい~」

「マガン、お疲れ様。疲れたでしょう?ゆっくり休んで」




日に日に他の天使達のマガンへの不満はどんどん増していく。しかしサリエルがきちんと仕事をこなしているのでなかなか文句も言えない。
サリエルはそんな他の天使達を気にする事も無く仕事を続けていた。
しかしマガンはそんなサリエルに一つだけ心配な事があった。
彼女は優しすぎる。だから人間が困っているのを放ってはおけない。
マガンの働きによりたくさんの困っている人を見つけては、そっと助言をするのだ。
それは天使として褒められた事ではない。
これまでもその事で幾度となく上の者に叱られ、疲れ果てて帰ってきてたからだ。
「サリエル様、ただいま帰った」
「ああ、マガン。お帰りなさい」
いつもと同じように微笑むサリエル、しかしいつもより元気が無いのにマガンは気付いた。
「どうかしたのか?」
「……」
サリエルは目を閉じて黙っていたが、やがて口を開いた。
「マガン……いや、ユウゲンマガン。本日をもって貴方との契約を破棄します」
「なっ……サリエル様、急に何を!?」
マガンはサリエルの肩を掴む。
「貴方はもうここにいてはいけません。これからは魔界に住んで下さい。魔界神にも話をつけました」
「我が聞きたいのはそんな事ではない!」
「……私が処分される事が決まりました」
「なっ……」
「原因は月の秘密を人間に教えてしまった事、それに……邪眼を所持している事です」
マガンがサリエルの肩を掴む力が強くなる。
「それでは……我のせいで……」
「いえ、それよりも月の秘密を話した事に問題があります。本来月の秘密は人間が知っていいものではない」
「だからと言って……」
「マガン、ごめんなさい。……もう行かないと」
肩を掴むマガンの手を軽々と引き離し、サリエルは歩きだした。
「サリエル様!」
「……さよなら、マガン」
その言葉を聞いて、マガンは動くことが出来なかった。
立ち去るその背中を見ているだけだった。










「天使サリエル」
「はい」
翼の大きな天使に名前を呼ばれ、サリエルは静かに前へ出た。
「日頃から人間への軽はずみな情報提供のみならず、月の秘密までもを教え、なおかつ汚れた邪眼を持つとは天使にあるまじき行為。……その命で償うがよい」
「…………はい」
サリエルは静かに返事をした。
「いくら罪人と言えども痛みは一瞬だ」
サリエルの横に立つ天使が剣を振り上げた。
それを振り下ろそうとしたその時、派手な爆発音が響いた。
「何事だ!?」
翼の大きな天使が声を荒げる。
と、振り上げられた剣が粉々に砕け散った。
「なっ……」
「サリエル様!」
剣が突然砕け、うろたえている天使の前に、閃光のような速さで現れた人影は、天使の腹部に勢い良く肘を叩き込む。
天使は苦悶の声を上げ、その場に倒れた。
「マガン……どうしてここに……?」
その問いに答える前に、マガンは翼の大きな天使の脳天へと踵を落とす。
これによってこの場で立っているのはサリエルとマガンの二人だけである。
「本来契約の破棄とは、双方の同意の上で行われる。よって我にとってサリエル様は今だ主人。主人を助けるのは当然の勤め」
「しかし……」
「しかしではない!」
マガンの怒鳴り声にサリエルはびくっと肩をすくませる。
「なぜこうなるまで我に何も言ってくれなかった!?我はそんなに信用できないか!?頼りないか!?役立たずか!?」
「それは……マガンに心配をかけたくなかったから……」
「だからと言って我に何も話してはくれないのか?それでは心配しようも無いが、悲しすぎる……。もう少し、我を頼ってくれても良いのではないか……?」
「そうでしたね……。ごめんなさい……」
サリエルは、マガンに抱き着いて涙を流した。
マガンはサリエルの背中を優しく撫でていたが、遠くから騒がしい音が聞こえてきた。
「まずい……追っ手か……致し方ない」
マガンはサリエルを抱き抱える。
「え?え?」
困惑するサリエルをぎゅっと強く抱き、走り出す。
五つの眼はその後に付いていく。
「聞こえるか、魔界神?」
走りながら、マガンは天に向け声をあげる。
『は~い、お呼びかしら?』
軽い返事がどこからか聞こえてきた。
「魔界移住民、一名増えるがよろしいか?」
『大歓迎よ~』
「マガン、待って下さい。天使にとってここから去るという事は即ち堕天するという事。……そんな事、私には……」
「我はどんな形であれ、サリエル様に生きてほしい」
サリエルははっとしてマガンを見る。
マガンはいつもの無表情のままだったが、言葉は温かかった。
「……分かりました。私はどんな形であれ、生きます!」
「やっと元気が戻ってきたな。魔界神、今からそちらに向かうぞ!」
『ええ、待ってるわよ』
マガンは天高く跳び上がる。地面は消え、下へ下へと落ちていく。
「サリエル様」
落ち続けながらマガンは口を開いた。
「何ですか?」
「いつもみたいにもっと笑ってくれないか?」
「……そうですね」
サリエルはにっこりと笑った。
「その方が可愛らしいぞ」
「……え?」
「そんな顔をしなくてもいいだろう」
きょとんとしたサリエルをマガンは不機嫌そうな顔で見る。
「マガンもそんな気の利いた事を言ってくれるんですね。ありがとう」
「……そろそろ魔界に着くぞ」
照れ臭そうに顔をそらすマガンの背中にサリエルは手を回し、顔を引き寄せると、マガンの頬にそっとキスをした。
「なっ……?」
「お礼です」
マガンの頬から唇を離すと、サリエルは悪戯っぽく笑った。
「…………」
「おや、そろそろ着きそうですね」
動かずに呆然していたマガンはようやく動き出した。
「あ、ああ……」
サリエルを自分に押し付けるように強く抱きしめる。
「しっかり掴まっていてくれ」
「はい」
現れた地面にマガンは静かに着地した。
「ようこそ魔界へ」
前方では、特徴的なサイドテールの女性が微笑んでいた。
ここからマガンとサリエルの新しい生活が始まる。
マガンはサリエルを抱き抱えたまま、そっと一歩を踏み出した。
今回はサリエル様勝手に解釈&マガンイケメンでしたがどうでしょうねぇ……
二人のラヴラヴ生活(?)をもう少し長く書いても良かったかもしれません
こんな短さじゃサリエル様は語れませんね……
マガンはやっぱり各眼に一個ずつ性格があったりするんじゃないでしょうか?
全部で五パターン。これは妄想するしかありませんね

次回頃には久々に旧作から離れてみようかなとか思ったり
旧作でもまだ書いてみたいキャラとかいるんですけどね
教授はなんやかんやでまだ書いてないし、封魔録3面の砦みたいな子もね←

最後に、こんな小説を最後まで読んでいただきありがとうございました
鹿墨
https://twitter.com/kaboku013
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コメント



0.360簡易評価
8.50名前が無い程度の能力削除
いままでのマガンちゃんはコミカルでいい味でした。
今回のようにシリアス風味にすると、精緻な文章とか伏線とかそれなりの文章量とかが必要になってくるかもしれません。
ご精進召されよ。
9.無評価鹿墨削除
ご意見ありがとうございます。
精進させていただきます