姫海棠はたては、射命丸文が嫌いである。
彼女が愛用する消しゴムにはいつもセロハンが貼り付けられている。
気づかず使おうとすると、つるっと滑って作業の邪魔になるという地味な嫌がらせ。
さあ書こうという気力を出鼻からくじかれ、ため息をつきながら剥がすのが恒例行事になっていた。
しかもこれがなかなかどうして、気持よく全部剥がれてくれやしない。
端っこからぴりっと、しかも途中で千切れて最後までいってくれないから苛立も募る。
何度も何度も爪で引っ掻いて、ようやく終わったときにはすっかりやる気が削がれてしまう。
(まだ取れない)
今日のセロハンは一段と、念入りに消しゴムにしがみついていた。
きっと貼るときに爪の甲でこすったに違いない。
反対側も同様、ちょっと艶やかに見えるのは満遍なく貼られているから。
諦めて別の消しゴムを取り出そうと、引き出しを開けるとそこには栗が転がっていた。
鉛筆の芯だった。
裸になった白い肌に、これでもかというほど黒の針が突き刺さっている。
彼女はそれをしばらく見つめ続けた、じっと見つめ続けた。
次に手にとって観察してみた。
痛々しくて、グロテスクで、気持ちのいいものではない。
全部抜いても使い物にはならないだろう、きっと黒ずんでしまうだろうから。
急に全身から力が抜けて、彼女は椅子の背に身を預け天井を見上げた。
(『死ね』)
貼り紙に、毛筆で、二文字。
わざわざこの位置に、計算して、よくやるものだと感心してしまう。
荒々しく殴り書きされた文字には、はっきりとした殺意が込められている。
表情には出さないが元来精神的に貧弱な彼女には、労力相応のダメージが与えられたことだろう。
少しずつ、ヤスリで削られるようにゆっくり確実に、彼女の心は磨り減っていく。
目の隈が取れなくなったのはいつからか、彼女にはもう分からない。
ふと手に持った携帯の画面を覗くと、疲れた自分の顔が目に入った。
どうしてだろう、彼女は自分に問い掛ける。
(どうしてだろう)
何度も何度も問い掛けるけど、答えらしい答えなんて欠片も出てこない。
昨日は鉛筆が全部真ん中から折られていた、一昨日は原稿にインクがぶちまけられていた。
だから、今日はまだマシなほう。
だから、私はまだ、大丈夫。
大丈夫。
***
彼女は基本外から出ない、出る必要が無いから。
携帯の画面から見える外の景色は綺麗だった、だからこそ怖かった。
もしかしたら画面に写っている風景は全て嘘っぱちで、外には何か、醜いものがたくさん転がっているんじゃないか。
それらが自分を見てげらげらと、下品な笑みを向けるんじゃないか。
愚にもつかない被害妄想だっていうことは分かりきっている。
だが外界と、他人と関係を断絶していた彼女にとって、それを確認する術は無かった。
さて、彼女は鴉天狗であるからして、当然ながら記事を書き、新聞を発行し、大会に出る。
記事には自信があった、誰かが使い古した写真を彩るのは自分の文章しかないと彼女は考えていたからだ。
しかし中古のネタは中古に過ぎない、何処かで見たような事件と写真に添えられた文章などに、誰も見向きはしなかった。
果たして彼女の書く『花果子念報』は、当然大会でも選考外、つまらないとすら語ってもらえないものであった。
なけなしの勇気を体中から絞って、赴いた会場に自身の名前はどこにもない。
否定も肯定もされないということは、すなわち存在を認知されていないということである。
(『あなたはどこにもいませんよ』、と)
メール欄に書く、書く、書く、書き殴る。
他人で溢れるこの場で、もし携帯が無ければ彼女は間違いなく発狂するだろう。
「ほぅら見ろ、また例の『文々。新聞』、選考外だぜ。彼奴も懲りんな」
「あの人間かぶれめ。我ら鴉天狗の恥だな」
話し声が聞こえた。
若い鴉天狗が二人、結果発表の張り出しの前で何やら陰口をたたく最中のようだ。
件の新聞の噂は彼女の耳にも届いている、悪評ではあるが。
何度か読んでみたこともあるが、なるほど、扱き下ろされるのも納得だった。
記事に捏造が多く見られ、そもそも取り扱う内容が天狗にはあまり受け入れられないタイプのものだったのだ。
もっと内輪受けするようなネタを使えばよかろうに、作成者の嗜好が優先されているのがよく分かる。
ただ、
(写真は、あの写真だけは好き)
あの新聞に映りこんでる少女達はみな、活き活きとして実に色んな表情を見せてくれる。
いくつか検索に引っかかったので、参考にしたことも一度や二度ではない。
彼女は画面の中の少女達を通して、外界と繋がっていたのだ。
そう、思い込んでいた。
「もし」
最初彼女はその言葉が自分に向けられたものだと理解できなかった。
無名であり存在感の薄い彼女にまさか話しかける物好きがいるとは思えなかったのだ。
だから無視をした、きっと近くの他の誰かに用事があるに違いない、絶対にそうだ。
「もし」
引きこもりに声をかける輩なんているはずがない、ありえない。
早く返答してあげればいいのに、どこかの誰か。
「私は『もし』と言いました、確かに言いました2回も言いました。だのにこうして無い反応を返されるのは非常に不愉快なのですが、あなた様はそれをご承知なのでしょうか?」
そこで彼女は初めて携帯から恐る恐る顔を上げた。
目の前に立っていたのは、一人の鴉天狗の少女。
片手に新聞紙を持ち、腕を組んだ様相は明らか様に怒りを帯びていることが分かる。
他人と関わることすら萎縮してしまう彼女にとって、明確に自分に向けられた敵意に上手く対処出来るはずがなかった。
彼女はただ体を縮こませることしかできない。
必然、携帯を持つ手に力が入る。
「どうも、こんにちわ」
「あ、え」
こんにちわ、彼女はそう言い返そうと思った。
だが声にならない声は瞬く間に掻き消える。
第三者が聞けばただの空気が漏れる音にしか聞こえないだろうが、彼女にはこれが精一杯なのだ。
額に流れる汗は果たして温度調節のためだろうか。
「顔色が悪いようですが、話を続けてもいいかしら。いえすみません無駄な質問でした、続けます」
一つ一つの言葉がどういう意味だったか頭の中で確認する、返事なんてできやしない。
相手もどうやら返事は期待していないようだ、目には確かに彼女が映ってはいるが、ただそれだけ。
「あそこの連中」
「え?」
「最低だとは思いませんか? 陰でぐちぐちぐちぐちと。内輪ネタで埋め尽くした新聞しか書けない癖に」
冷たい目線が先程文々。新聞を酷評した鴉天狗達に向けられる。
陰口はあんただって同じじゃないか、という反論は当たり前のように飲み込んだ。
同時に彼女は目の前の相手が誰かを理解した。
「まぁどうでもいいことです。そしてこれもまた、どうでもいいこと」
ばさっという音と共に広げられた新聞、何故か彼女はそれに強い既視感を覚えた。
「あ」
それも当然、新聞には『花果子念報』の文字が踊っていたのだから。
何で、どうして。
疑問の二文字が頭の中でぐるぐる回る。
どう考えても自分の新聞を褒めにきたわけではないだろう、間違いなくクレームだ。
責められる、否定される。
呼吸が荒くなり、口の中がひたすら渇く。
「写真、転載。これだけ言えば何のことだか分かると思います」
頭の中が真っ白になった。
そう、彼女が検索し出てきた写真を参考にするとは、つまりそういうことなのだ。
「外の世界には『著作権』という言葉があるらしいですね、だからどうというわけではございませんが。知っていますか? 著作権」
ゆっくりと首を横に振る。
知らない、知るわけがない。
「私も詳しくは知りません、説明する気にもなれない。つまり私が言いたいのは」
ぴりり、と軽い音。
真ん中から引き裂かれていく自分の作品に、彼女ができることは何も無い。
「私の、努力の、結晶を、横取りされて、非常に、不愉快だと」
くしゃくしゃくしゃくしゃくしゃくしゃくしゃくしゃくしゃくしゃ。
作品が、心が、丸められていく。
「以上です。あら、あなた……泣いていらっしゃる?」
見開かれた目から一筋、水滴が頬を伝って零れ落ちた。
それは彼女の小さな小さな精神の器から溢れでてしまった感情。
怒りかもしれない、不安かもしれない、絶望かもしれない。
「そういえば、あなたの新聞読ましてもらいました。非常につまらなかったです」
滲む視界の中、彼女は相手の口の端が吊り上がるのを見た。
それは確かに世間一般では『笑顔』と呼ばれる表情だったはずである。
「ただ、その表情だけは愉快ですね。どうもありがとう、さようなら」
ひゅるりと風が一陣吹いたと思うと、既にその場には彼女だけしか存在しなかった。
「……うう、うう、うう」
涙も、手の震えも止まらなかった。
壁に背を預けうずくまり、必死に携帯を操作した。
『データフォルダ』、『画像』、『機能』、『削除』、『全削除』。
感情でいっぱいになった彼女の心に、綺麗な画像を保存しておく容量は、無い。
「……きらいだ」
携帯を閉じ、誰もいない空間で彼女はもう一度呟いた。
「きらいだ」
***
姫海棠はたては、射命丸文が嫌いである。
あれ以来陰湿な嫌がらせが絶えないからだ。
犯人は分かりきっている、自分のやり方が気に食わないのだろう。
嫌いだから、不愉快だから、妨害しているに違いない。
(でも私は負けない、きっと鼻を明かしてやる)
彼女は決意した、自分が対抗新聞になってやると。
彼女は決意した、ずっと白紙のままの原稿の前で。
彼女は決意した、消しゴムにセロハンを念入りに貼りつけながら。
部屋中に貼られた憎き相手の写真を見て、彼女はくすりと笑った。
彼女が愛用する消しゴムにはいつもセロハンが貼り付けられている。
気づかず使おうとすると、つるっと滑って作業の邪魔になるという地味な嫌がらせ。
さあ書こうという気力を出鼻からくじかれ、ため息をつきながら剥がすのが恒例行事になっていた。
しかもこれがなかなかどうして、気持よく全部剥がれてくれやしない。
端っこからぴりっと、しかも途中で千切れて最後までいってくれないから苛立も募る。
何度も何度も爪で引っ掻いて、ようやく終わったときにはすっかりやる気が削がれてしまう。
(まだ取れない)
今日のセロハンは一段と、念入りに消しゴムにしがみついていた。
きっと貼るときに爪の甲でこすったに違いない。
反対側も同様、ちょっと艶やかに見えるのは満遍なく貼られているから。
諦めて別の消しゴムを取り出そうと、引き出しを開けるとそこには栗が転がっていた。
鉛筆の芯だった。
裸になった白い肌に、これでもかというほど黒の針が突き刺さっている。
彼女はそれをしばらく見つめ続けた、じっと見つめ続けた。
次に手にとって観察してみた。
痛々しくて、グロテスクで、気持ちのいいものではない。
全部抜いても使い物にはならないだろう、きっと黒ずんでしまうだろうから。
急に全身から力が抜けて、彼女は椅子の背に身を預け天井を見上げた。
(『死ね』)
貼り紙に、毛筆で、二文字。
わざわざこの位置に、計算して、よくやるものだと感心してしまう。
荒々しく殴り書きされた文字には、はっきりとした殺意が込められている。
表情には出さないが元来精神的に貧弱な彼女には、労力相応のダメージが与えられたことだろう。
少しずつ、ヤスリで削られるようにゆっくり確実に、彼女の心は磨り減っていく。
目の隈が取れなくなったのはいつからか、彼女にはもう分からない。
ふと手に持った携帯の画面を覗くと、疲れた自分の顔が目に入った。
どうしてだろう、彼女は自分に問い掛ける。
(どうしてだろう)
何度も何度も問い掛けるけど、答えらしい答えなんて欠片も出てこない。
昨日は鉛筆が全部真ん中から折られていた、一昨日は原稿にインクがぶちまけられていた。
だから、今日はまだマシなほう。
だから、私はまだ、大丈夫。
大丈夫。
***
彼女は基本外から出ない、出る必要が無いから。
携帯の画面から見える外の景色は綺麗だった、だからこそ怖かった。
もしかしたら画面に写っている風景は全て嘘っぱちで、外には何か、醜いものがたくさん転がっているんじゃないか。
それらが自分を見てげらげらと、下品な笑みを向けるんじゃないか。
愚にもつかない被害妄想だっていうことは分かりきっている。
だが外界と、他人と関係を断絶していた彼女にとって、それを確認する術は無かった。
さて、彼女は鴉天狗であるからして、当然ながら記事を書き、新聞を発行し、大会に出る。
記事には自信があった、誰かが使い古した写真を彩るのは自分の文章しかないと彼女は考えていたからだ。
しかし中古のネタは中古に過ぎない、何処かで見たような事件と写真に添えられた文章などに、誰も見向きはしなかった。
果たして彼女の書く『花果子念報』は、当然大会でも選考外、つまらないとすら語ってもらえないものであった。
なけなしの勇気を体中から絞って、赴いた会場に自身の名前はどこにもない。
否定も肯定もされないということは、すなわち存在を認知されていないということである。
(『あなたはどこにもいませんよ』、と)
メール欄に書く、書く、書く、書き殴る。
他人で溢れるこの場で、もし携帯が無ければ彼女は間違いなく発狂するだろう。
「ほぅら見ろ、また例の『文々。新聞』、選考外だぜ。彼奴も懲りんな」
「あの人間かぶれめ。我ら鴉天狗の恥だな」
話し声が聞こえた。
若い鴉天狗が二人、結果発表の張り出しの前で何やら陰口をたたく最中のようだ。
件の新聞の噂は彼女の耳にも届いている、悪評ではあるが。
何度か読んでみたこともあるが、なるほど、扱き下ろされるのも納得だった。
記事に捏造が多く見られ、そもそも取り扱う内容が天狗にはあまり受け入れられないタイプのものだったのだ。
もっと内輪受けするようなネタを使えばよかろうに、作成者の嗜好が優先されているのがよく分かる。
ただ、
(写真は、あの写真だけは好き)
あの新聞に映りこんでる少女達はみな、活き活きとして実に色んな表情を見せてくれる。
いくつか検索に引っかかったので、参考にしたことも一度や二度ではない。
彼女は画面の中の少女達を通して、外界と繋がっていたのだ。
そう、思い込んでいた。
「もし」
最初彼女はその言葉が自分に向けられたものだと理解できなかった。
無名であり存在感の薄い彼女にまさか話しかける物好きがいるとは思えなかったのだ。
だから無視をした、きっと近くの他の誰かに用事があるに違いない、絶対にそうだ。
「もし」
引きこもりに声をかける輩なんているはずがない、ありえない。
早く返答してあげればいいのに、どこかの誰か。
「私は『もし』と言いました、確かに言いました2回も言いました。だのにこうして無い反応を返されるのは非常に不愉快なのですが、あなた様はそれをご承知なのでしょうか?」
そこで彼女は初めて携帯から恐る恐る顔を上げた。
目の前に立っていたのは、一人の鴉天狗の少女。
片手に新聞紙を持ち、腕を組んだ様相は明らか様に怒りを帯びていることが分かる。
他人と関わることすら萎縮してしまう彼女にとって、明確に自分に向けられた敵意に上手く対処出来るはずがなかった。
彼女はただ体を縮こませることしかできない。
必然、携帯を持つ手に力が入る。
「どうも、こんにちわ」
「あ、え」
こんにちわ、彼女はそう言い返そうと思った。
だが声にならない声は瞬く間に掻き消える。
第三者が聞けばただの空気が漏れる音にしか聞こえないだろうが、彼女にはこれが精一杯なのだ。
額に流れる汗は果たして温度調節のためだろうか。
「顔色が悪いようですが、話を続けてもいいかしら。いえすみません無駄な質問でした、続けます」
一つ一つの言葉がどういう意味だったか頭の中で確認する、返事なんてできやしない。
相手もどうやら返事は期待していないようだ、目には確かに彼女が映ってはいるが、ただそれだけ。
「あそこの連中」
「え?」
「最低だとは思いませんか? 陰でぐちぐちぐちぐちと。内輪ネタで埋め尽くした新聞しか書けない癖に」
冷たい目線が先程文々。新聞を酷評した鴉天狗達に向けられる。
陰口はあんただって同じじゃないか、という反論は当たり前のように飲み込んだ。
同時に彼女は目の前の相手が誰かを理解した。
「まぁどうでもいいことです。そしてこれもまた、どうでもいいこと」
ばさっという音と共に広げられた新聞、何故か彼女はそれに強い既視感を覚えた。
「あ」
それも当然、新聞には『花果子念報』の文字が踊っていたのだから。
何で、どうして。
疑問の二文字が頭の中でぐるぐる回る。
どう考えても自分の新聞を褒めにきたわけではないだろう、間違いなくクレームだ。
責められる、否定される。
呼吸が荒くなり、口の中がひたすら渇く。
「写真、転載。これだけ言えば何のことだか分かると思います」
頭の中が真っ白になった。
そう、彼女が検索し出てきた写真を参考にするとは、つまりそういうことなのだ。
「外の世界には『著作権』という言葉があるらしいですね、だからどうというわけではございませんが。知っていますか? 著作権」
ゆっくりと首を横に振る。
知らない、知るわけがない。
「私も詳しくは知りません、説明する気にもなれない。つまり私が言いたいのは」
ぴりり、と軽い音。
真ん中から引き裂かれていく自分の作品に、彼女ができることは何も無い。
「私の、努力の、結晶を、横取りされて、非常に、不愉快だと」
くしゃくしゃくしゃくしゃくしゃくしゃくしゃくしゃくしゃくしゃ。
作品が、心が、丸められていく。
「以上です。あら、あなた……泣いていらっしゃる?」
見開かれた目から一筋、水滴が頬を伝って零れ落ちた。
それは彼女の小さな小さな精神の器から溢れでてしまった感情。
怒りかもしれない、不安かもしれない、絶望かもしれない。
「そういえば、あなたの新聞読ましてもらいました。非常につまらなかったです」
滲む視界の中、彼女は相手の口の端が吊り上がるのを見た。
それは確かに世間一般では『笑顔』と呼ばれる表情だったはずである。
「ただ、その表情だけは愉快ですね。どうもありがとう、さようなら」
ひゅるりと風が一陣吹いたと思うと、既にその場には彼女だけしか存在しなかった。
「……うう、うう、うう」
涙も、手の震えも止まらなかった。
壁に背を預けうずくまり、必死に携帯を操作した。
『データフォルダ』、『画像』、『機能』、『削除』、『全削除』。
感情でいっぱいになった彼女の心に、綺麗な画像を保存しておく容量は、無い。
「……きらいだ」
携帯を閉じ、誰もいない空間で彼女はもう一度呟いた。
「きらいだ」
***
姫海棠はたては、射命丸文が嫌いである。
あれ以来陰湿な嫌がらせが絶えないからだ。
犯人は分かりきっている、自分のやり方が気に食わないのだろう。
嫌いだから、不愉快だから、妨害しているに違いない。
(でも私は負けない、きっと鼻を明かしてやる)
彼女は決意した、自分が対抗新聞になってやると。
彼女は決意した、ずっと白紙のままの原稿の前で。
彼女は決意した、消しゴムにセロハンを念入りに貼りつけながら。
部屋中に貼られた憎き相手の写真を見て、彼女はくすりと笑った。
そんな側面も含めまして、姫海棠はたてとは素晴らしいキャラクターだと自分は思っていたり。
次回作、正座で待たせて頂きます。
ただ、何というか、もう1パンチ欲しかった感じでした。
どうしてこうなったっていう背景をもっともっと伝えてほしいなと思いました。
でも、やっぱり巧いんだよなあ。
とても良かったです!!
明日が見えないはたたんが素敵。
続編読んでみたいです。
原作っぽいやつも楽しみにしてますね!
これはとても面白かったです、凄く好き
ただ少し短かったかなあと思いました、続き期待しております
両名の関係がこの先どう変わっていくのかも見てみたいです
感情を腐らせるよりは捌け口を見つけて爆発させる。たとえネガティブな方向でもね。
『嫌い』という感情は、きっかけさえあれば結構な確率で裏返る。実体験も加味してね。
無責任で無駄にポジティブなんだぜ、俺は。
救いはあると信じている。
今後彼女がどうなるのかは分かるものではありませんが、応援したくなります。
なんといいますか、読者の心情をも暗くさせる文章、そして事象が非常に素晴らしかったです。
やっぱはたての能力って新聞には生かしづらいよなあ。