「あぁん……、もう可愛すぎてらめぇ……」
宴会場には、ビクンビクンッと肩を震わせて喜びを表現する霊夢があった。
こうさせたのは他でもない、妖怪達である。
霊夢はとてもクールというか、落ち着いたイメージがある。
スペルカード戦での危機的状況でも、冷静に事を考え、それを打破する。
どうやって弾幕を避け、どのタイミングでボムを使えばいいかを頭の中で瞬時に計算。
また、妖怪達が煽るような事を言っても、むきにならず冷静に対処。
外見はまだ子供でも、大人っぽさを感じる雰囲気がある。
そんな霊夢が、クールでも何でもなく、女の子全開になる時がある。
それは、動物とふれあう時。
とにかく動物が大好きで、妖怪でも、動物系統の妖怪は大好きなのだ。
霊夢が動物を好きなのはほとんどの者が知っており、動物系の妖怪も霊夢の事が好きだった。
妖怪からしてみれば、これほど自分を愛してくれる人間なんていないのだから。
妖怪は人間と違って力が強く、それほど親密に人間と関わることはない。
だから、人間の霊夢に愛されるのがとても心地よかったのだ。
異変のときは仕方なく退治していたものの、異変が終われば、
「はぁ~、この前の猫かわいかったなぁ~」
とかお茶を飲みながら呟く始末。
なんっていうかもう顔がいやらしいと言うか、惚けている。
頬に手をやり、くねくねしている霊夢なんて誰が想像できるだろう。
しかし、動物の前ではこうなってしまうのだ。
例はいくつもある。
◆
例1:猫のふれあいの場合
博麗神社に時々餌を貰いに来る猫がいる。
三毛猫で、誰も飼い主がいない野良猫だった。
忍び足で勝手に神社に入りこみ、日向ぼっこをしている事がある。
お腹が空くと霊夢の元へとことこと歩いて行き、にゃんにゃんと鳴く。
それがたまらなくて、霊夢は餌をごっそりあげる。
だから、猫は獲物が取れなかったときに霊夢の元に来るようになったのだった。
その日、魔理沙が神社に行くと、三毛猫も神社にいて、霊夢と戯れている最中だった。
「にゃんこちゃんはいつ見てもかわええのぉ~」
前足の付け根の部分に手をかけて、三毛猫を持ち上げる。
ぶらーんと足が揺れており、見ていて和む。
「お前はどこのじじいだ。私が遊びに来たのに何も言わないんだな」
「今は猫が大事なのよ。あなたはその次」
「ひどいぜ」
そういいつつも霊夢の隣に座る魔理沙。
ちらりと隣を見れば、猫に向かってとびっきりの笑顔を投げかける霊夢の姿。
こんな霊夢をこんな間近で見られるなんて幸せものだなぁと魔理沙は思った。
だって、こんなに可愛い姿を近くで一人占めできるのだから。
三毛猫を床に下ろすと、霊夢の顔を見て、にゃーんと鳴いた。
「今日は暑いもんねー。飲み物もってこよっか」
「おぉ、私にも頼むぜ」
「……仕方ないわねぇ」
露骨に嫌そうな顔をしながら答えると、向こう側へと消えていった。
こうも態度が変わると少し傷つく。
「なぁにゃんこや。霊夢より私の方が可愛いよな」
「にゃーん」
「そうだよなぁ、お前は良くわかってるぜ。はぁ~、猫可愛い」
こうして、魔理沙は霊夢が来るまでの短い間、猫と戯れて過ごした。
「ほら、冷たいお水持ってきましたよ~」
平たいお皿に水を入れてきた霊夢。
それを三毛猫の前に置くと、小さな舌でぺろぺろと舐め始めた。
ぺちゃぺちゃと水を一生懸命舐める音が部屋の中に響く。
「私のは?」
「はい、これ」
ドンと力強く置かれた湯のみからは、ほのかに湯気が見える。
魔理沙の額から冷や汗が流れた。
(……え?)
念の為湯のみを触ってみるも、当然の如く熱かった。
「あの、これ……霊夢さん?」
「どうしたのかしら、私より可愛い魔理沙さん?」
「うぐぅ……」
三毛猫は何も思わず鳴いただけだろう。
それに、魔理沙の発言だって冗談だった。
動物が関わってくると恐ろしい事が、この例で良くわかるだろう。
◆
例2:八雲一家の場合
八雲一家が博麗神社に来たときの事だった。
紫がスキマから現れ、挨拶を交わす。
「こんにちは、霊夢」
「えぇ、こんにちは、紫」
紫の大人びた雰囲気の挨拶に、霊夢もそれに合わせて返す。
こういった、大人びた雰囲気の霊夢が紫は好きだった。
例え、どれだけ力がある者が相手だろうと、変わりの無い態度。
その威風堂々たる姿は、誰もが憧れる姿である、はずだった。
続いてスキマから藍と橙とが出てきた、その時。
「ちぇ~ん、ほらこっちおいで! 膝枕してあげる!」
橙の姿が見えた瞬間、表情がぱっと明るくなる。
すぐさま座敷に座ると、パンパンとふとももを叩く。
妙に鼻息を荒くして、目を輝かせている姿は、純粋無垢な子供のよう。
橙は藍に了解を取ると、霊夢の太ももの上に頭を置いて、寝転がる。
きゅっと目を閉じて、気持ちよさそうにごろごろしている橙。
もう顔に締まりがない霊夢は、一種の病気のようにも見える。
「藍、尻尾さわらせて!」
「仕方ないなぁ、ほら」
霊夢の隣に座ると、九本の尻尾が霊夢を包み込む。
柔らかくもしっかりとした重量を持つ尻尾は、とても気持ちが良い。
膝には可愛らしい猫、そして顔に当たる心地よく、柔らかい尻尾。
その尻尾をぎゅっと抱きしめて、
「んぁあん……」
変に艶やかな声を上げ、ビクンビクンッと体を震わせる。
あまりの幸福さに喜びが絶頂にまで達した霊夢の表情は、とろけるような笑顔だった。
そんな締まりのない霊夢に、紫は呆れて声をかける。
「で、私は何をすればいいのかしら?」
「お茶入れて、お茶。あとおやつも持ってきて」
橙と藍に対しての優しくも甘い待遇に対し、この冷たい待遇。
しかしこれも慣れっこな紫は、はいはいと手短に返してスキマへと消えていく。
霊夢の膝の上で頭を擦りつけてくる橙。
可愛らしくて、柔らかい耳を指で撫でると、くすぐったそうにピクンと耳を弾ませた。
そして、藍の尻尾を頬擦りして、ぎゅーっと抱きしめる。
この、なんとも言いがたい柔らかくも優しい感覚に溺れていく。
「はぁ、幸せ」
そんな至福の顔をした霊夢を、邪魔できるはずがなかった。
◆
例3:地霊殿面子の場合
地底での異変が終わり、怨霊を出しつづけていた燐が、しばらく霊夢の元にいた際の事。
核の力を手に入れて、異変を起こした張本人たる空がやってきた。
「この前はごめんなさい! ほんとは、お燐は何も悪くないの! 悪いのは私で、お燐は私を助けようとしただけなの! だから許してあげて!」
「お空……」
「確かに、怨霊を流してしまったことは悪いかもしれないけど、私が悪いの! だからお燐を許してあげてよ!」
必死になって謝る空に対し、じっと空を見つめる霊夢。
最初はキリッとした顔だったものの、段々その表情は緩んでいく。
やがてそれは笑みに変わり、霊夢は言った。
「悪い事を素直に謝ることはいいことよ。別に私は怒ってないのよ?」
「そうなの?」
「えぇ」
その返事を聞いて、空は胸を撫で下ろした。
燐が巫女の手によってぼこぼこにされてしまうのではないと危惧していたからだ。
そんな不安も去ったところ、空がふと燐をみると、巫女に頭を擦りつけているではないか。
燐が頭を擦りつけるのは、その人の事を好きな証拠。
「ほら、貴女もこっちにきなさいな」
「うにゅ?」
とりあえず悪い事はされないような気がした空は、言われるがまま霊夢の元へとついて行く。
すると、霊夢が隣に座れと言わんばかりに隣のスペースをぽんぽんと叩く。
大きな羽を畳み、霊夢の隣に座ると、霊夢は空をぎゅーっと抱きしめた。
「そう緊張しなくていいのよ~。あ~、かわいいわねぇ、あんた」
頭を撫で、畳んだ羽をぽんぽんと叩く。
なんとも優しく柔らかい笑みに、空はなんだか嬉しくなる。
羽を広げ、霊夢を包み込むようにしてから少し畳む。
その厚い羽は温かく、より一層近くで空の体温を感じることが出来た。
「あ~、さとりが羨ましいわねぇ。こんな可愛いペットが二人もいるなんて」
霊夢の左側では、左腕にお燐が頭を擦りつけて鳴いている。
右側ではお空が霊夢に寄り添い、温かい羽のぬくもりを感じている。
現在が夏にも関わらず、ぎゅっとくっつき合う三人。
汗をだらだら流しながらも、満面の笑みで霊夢は言う。
「はぁ、幸せすぎて辛い」
清々しさすら感じるその表情は、動物系統の妖怪に囲まれてこそ生まれる表情だった。
◆
例4:命蓮寺面子の場合
前例と同様に、聖の復活の為とはいえ、霊夢に迷惑をかけてしまった命蓮寺の面々が謝りに来たときの事だった。
聖が代表して、霊夢に謝罪の言葉を述べる。
「以前は迷惑をおかけしました。心より謝罪申し上げます」
「もう終わった事だから気にしてないわ」
「そうですか……。しかし、本当にすみませんでした」
「いや、だからいいってば」
聖との対話をしているはずの霊夢の視線。
しかしそれは、徐々に聖から隣にいる二人に向けられていく。
その視線の先の二人には、ナズーリンと星。
視線に気づいたナズーリンが、星を肘で小突く。
「ご主人様、あの巫女が明らかにこっちを見てるんですけど」
「ん? あぁ、確かなんでもあの巫女は動物が好きらしいから、きっと私達がターゲットになっているんじゃないかと」
「ふーん……」
そういって二人が霊夢のほうに視線をやると、霊夢の視線とぴったり合致した。
聖と話している最中にも関わらず、二人のほうを見てとびっきりの笑顔で小さく手を振っている。
それに苦笑いをしながら応える二人。
すると、ぷるぷると小さく震えながら喜んでいるのが二人に見えた。
全身で喜びを表したいものの、聖と対話しているから我慢しているといったところか。
「大丈夫ですかね、あの人」
「大丈夫なんじゃないでしょうか、きっと」
と、次の瞬間だった。
星がナズーリンから視線を逸らし、霊夢のほうへと視線を向ける。
が、先ほどまで聖と話していたはずの霊夢がそこにはいない。
そう、目の前にまで迫っていたのだから。
奇声を発しながら星に飛びつき、そのまま倒れこむ。
あいたたた、と呟く星のことなど気にせず、頭に生える花へと手を伸ばす。
「やーん、お花生えてるのかわいい~! ねぇ、にゃーんって鳴いてよ!」
「ちょ、やめなさい。それに私は猫じゃなくて寅――うわぉう!」
んふふ~と微笑みながら花をもみくちゃにする霊夢。
それを止めに入るのは、もちろんナズーリン。
「ご、ご主人様に何をしている! 早く離れ――うわっぷ!」
ナズーリンの首に手をかけ、吸い込むようにして霊夢は手繰り寄せる。
そのまま二人ともぎゅっと抱きしめると、二人の頬に自らの頬を擦り合せた。
二人の真っ白の頬が、段々真っ赤に染まっていくのが分かる。
少しずつ、ほんのりと熱を帯びるその頬は、ほのかに赤い林檎のようだった。
「は、離しなさい! ちょ、聖助けてください!」
「ご主人様っ、は、離れるんだぁ!」
「あらあらまぁまぁ、早速博麗の巫女と仲良くなれてよかったわねぇ」
「「聖ー!!」」
二人は霊夢の手から逃れられず、もがいている他なかった。
その間、霊夢の表情がなんとも言えない惚けた顔だったのは、言うまでもない。
◆
そして、宴会。
現在、動物系統の妖怪に囲まれて、霊夢にとってハーレム状態になっている。
猫と鳥、狐や蝙蝠に、寅、鼠、狼、そして兎。
それぞれが霊夢のところに集い、お酒を呑んで盛りあがっている。
とある者は霊夢に寄り添い、とある者は膝枕、とある者はお酒を注ぎ、とある者は愉快に話し合った。
みんなに囲まれ、ご機嫌な霊夢はとても可愛らしい。
ぎゅーっと抱きしめてくれるし、可愛いねぇ~と頭を撫でてくれる。
可愛い霊夢にそんなことされるんだから、みんなが嫌がるはずもない。
「霊夢さ~ん」 「ねぇ、霊夢~」 「ほら、霊夢さんどうぞ~」
霊夢の周りには、動物がいっぱい。
そして、幸せも笑顔もいっぱいだ。
お酒の飲みすぎて、酔っ払った霊夢は、宴会場のど真ん中で、隣にいた文とレミリアをぎゅっと抱きしめる。
「もう皆可愛いのよ。ねぇ、分かる? もう私死んでもいいわ……」
「何言ってるんですか霊夢さん。死んじゃ嫌ですよ?」
「そうよ、霊夢。貴女が居なかったら私も寂しくて死んじゃうわ」
霊夢の元に近づいて、それぞれの思いを述べる妖怪たち。
悶絶する霊夢の事も知らずに、ぎゅーっと近くまで押し寄せる。
「もぅらめぇ……」
頬を真っ赤に染めて、その赤を隠すように手のひらを頬へと添える。
これまでに無いほどの喜び、絶頂のその先へと霊夢は落ちていく。
「結婚して! 私と結婚してぇ!!」
何度も何度もその場で霊夢は叫び続ける。
そんな大胆な求婚に対し、断る理由もない妖怪たち。
そして、皆霊夢の嫁になった。
妻となった霊夢は、たくさんの動物、もとい嫁たちに囲まれて、幸せに暮らしましたとさ。
めでたしめでたし。
霊夢可愛い!
エンディング後の光景を想像するとなんて幸せ空間なんだ……!
黒猫シリーズ読んでたから猫の前では豹変するのは知っていたけど猫だけじゃなかったのか……
良い表情をしてる霊夢や愛されっぷりとか面白かったです。
しかし、なんと平和な光景なんだか……。動物系以外も微笑ましく眺めてるとまごうとなきほかほか幻想家族なのだろうなぁ。
ZUN絵をイメージすると意外と合っているストーリーかも。
さすがに蛙やら蜘蛛はボールですか
しかしケモノ系を集めておきながら、なぜ椛がいない!?
わふわふしたくないのか、霊夢よ:
ところで
は虫類と犬がいないのは何故か?
きっと続編の複線に違いない
心して待とうではないか同志たちよ
ところで両生類と爬虫類は?
この話さりげ伝説になんじゃね?
愛は愛で帰ってくるのです(キリィッ
とっても和みました。
何かに恋焦がれてノーガードなときがほんとかわいい。
動物大好きな霊夢さんって新鮮な魅力ですね!
そういや、三月精でうさぎにえさあげてたよね。
やべえ・・・・この状況だれかpixivかどっかで書いてくれないかな・・・
評価ありがとうございます。
人気投票1位は格が違った。
>すねいく 様
評価ありがとうございます。
私が許しません。
>ぺ・四潤 様
評価ありがとうございます。
なんっていうか、すっごい霊夢が幸せそうなのが目に浮かびますよね。
動物は皆大好き!
外の世界では忘れ去られてきた、動物への愛です。
>煉獄 様
評価ありがとうございます。
霊夢さんは愛し愛されてるのです(キリッ
>11 様
評価ありがとうございます。
違和感をも消し去る可愛さ……ッ!!
>16 様
評価ありがとうございます。
霊夢ちゃんかわいいよ!!
>20 様
評価ありがとうございます。
可愛くない巫女さんなんていません。
>v 様
評価ありがとうございます。
動物を前にしたときのギャップ、想像してにやけちゃいます。
温かい幻想郷が、私の中の理想です。
>24 様
評価ありがとうございます。
それだけで変換されてしまうとは、へたれマジックですn(ry
なんか、想像してみると面白いですねぇ。
>29 様
評価ありがとうございます。
オチが思いつかなかったんだ、許して下さい。
>33 様
評価ありがとうございます。
蛙とか蜘蛛は動物に含みません(キリッ
……すいません、素で忘れてました。
>37 様
評価ありがとうございます。
神様になるかもしれません。
>39 様
評価ありがとうございます。
入れ忘れました、すみません。
でも、あの二人はなんか違うと思うんだ。
>43 様
評価ありがとうございます。
椛すっかり忘れてました、申し訳ない……。
>52 様
評価ありがとうございます。
ど、動物関係で続編だと!?
残念ながら、秋関係で続編になりました。
>53 様
評価ありがとうございます。
両生類と爬虫類はのーかうんと。
>56 様
評価ありがとうございます。
とりあえず、幻想郷の子皆可愛すぎて生きるのが辛い。
>58 様
評価ありがとうございます。
うひょおおおおおおおおお(ry
>59 様
評価ありがとうございます。
弾けてみたかったのです。
>60 様
評価ありがとうございます。
ぱるすぃさんこんにちは。
>63 様
評価ありがとうございます。
霊夢が可愛くて損する人なんていない(キリッ
>64 様
評価ありがとうございます。
伝説……だと!?
>65 様
評価ありがとうございます。
二次創作だから思い通りです。
>葉月ヴァンホーテン 様
評価ありがとうございます。
愛されいむが世界を救います(キリィッ
>72 様
評価ありがとうございます。
早まるんじゃない。
>73 様
評価ありがとうございます。
嬉しいお言葉ですわ。
>75 様
評価ありがとうございます。
なぜそのチョイス。
>86 様
評価ありがとうございます。
わちき許された!!
>ナルスフ 様
評価ありがとうございます。
とびっきりの笑顔の霊夢とか想像しただけでやばい。
>桜田ぴよこ 様
評価ありがとうございます。
でれいむかわいいよ、でれいむ。
動物大好き霊夢ちゃんちゅっちゅ。
>\(゚ヮ゚)/ 様
評価ありがとうございます。
霊夢さんの可愛い話をもっと書けと申すか。
季節ごとに書くのもいいかもしれませんね。
>96 様
評価ありがとうございます。
三月精で餌あげてたときの霊夢にはもだえました。
>102 様
いいだしっぺの法則です。
さぁ、描いてください。
>104 様
評価ありがとうございます。
霊夢は何でも似合いますね!