Coolier - 新生・東方創想話

容疑者 十六夜咲夜

2010/08/28 17:56:19
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「珍しいわね、霊夢のほうからウチにやって来るなんて。歓迎するわ」
「レミリア、気持ちは有難いんだけど、遊びに来たわけじゃないのよ」

 博麗神社に赴こうとしたレミリアであったが、門を出たところで偶然霊夢が訪ねてきた。
 レミリアは首を傾げる。

「どうしたの? 図書館に用事でも? 必要なら貸し出しましょうか、パチェは口うるさいけど家主は一応私だし」
「いや……そうじゃないんだけど……ちょっと中で話さない?」

 レミリアは怪訝に思った。今の霊夢からは、日ごろの能天気さが伺えない。
 何か重大な用事があるらしい。

「いいわよ。咲夜、日傘は自分で持つから、応接間の用意をしておいて」
「待って」

 畏まりました、と呟く咲夜を、霊夢は遮った。
 それが意外だったのか、咲夜はぴくりと身体を震わせた。
 霊夢は彼女を見据えると、有無を言わさぬ口調で告げた。

「紅茶も要らないし茶請けも要らない。その代わり咲夜、あんたにも同席してもらうわよ――レミリア、いい?」

 急に自分に話を振られて慌てるレミリア。結局、訝しがりながらも頷いた。これといって拒否する理由はない。
 ただ、巫女が咲夜へ向けた視線。あれが、彼女が見せたことの無いような、鋭いものであったことは気にかかった。












「で? 霊夢、どういう要件なの?」

 尋ねるレミリア。
 三人はそれぞれソファに腰掛け、向かい合っていた。
 普段なら咲夜は立っていて、テーブルには紅茶とケーキか何かが載っているのだが、今は無い。
 霊夢はゆっくりと口を開く。

「人里でね、次から次に人が倒れてんのよ」

 彼女の話は、要約すればこういうことだった。
 人里で、ある男が倒れた。彼はすぐさま永遠亭に運ばれ一命を取り留めたが、一ヶ月もの安静を必要とした。
 問題は、その原因だ。
 毒物。信じがたいことには、永琳すらもその正体を掴みかねた。
 そして事態はさらに悪化する。一人また一人と、同じ毒で倒れるものが続出したのだ。
 その数、計十七名。

「流石に、甘く見るわけには行かないわけよ。毒……、それもこれだけ多くの人数が倒れたとなれば、人為的なものでしょ」
「そうね。そう考えるのが自然ね」
「で、慧音が調べたらしいんだけど。何せ永琳にも正体不明の毒、どう考えたって里の連中には無理な犯行だから、私にお鉢が回ってきたってわけ。まったく、貧乏くじだわ」

 その一瞬、霊夢は日ごろのような表情に戻ったが、それはすぐ掻き消された。
 レミリアは霊夢が言ったことを頭の中で反芻し、尋ねる。

「なるほどね……じゃあ犯人を探して回ってるわけなのね? 今は」
「いや、違うの」
「?」

 霊夢は首を横に振ると、二人を交互に見て、言った。

「犯人ならもう、九割がた割れてんの」

 その言葉に、レミリアは戦慄した。
 霊夢の発言が真実なら、彼女がここに来た理由は一つになる。
 レミリアは気をつけながら発言する。

「……言っておくけど、私は違うわよ? 当主としての指示も出していない。第一、その話だって今日初めて知ったんだもの」
「ええ。アンタじゃないのは分かってる。犯人は別にいる。……ねえ、アンタなら分かるでしょ?」

 この場において、この「分かるでしょ」を向けられた相手は、一人しか考えられない。
 ――咲夜。
 霊夢の言葉は実質、犯人が彼女であると告げたようなものだ。レミリアは、ゆっくりと、己の従者を見た。

「咲夜」
「お嬢様、霊夢は勘違いしているのです。私は何もしておりません。お嬢様同様、今日初めて知りましたわ」

 冷静な声音でそう言った咲夜だったが、少しばかり顔が青い。付き合いの長いレミリアだから分かることだった。
 それは無実の罪を着せられかけている動揺か、それとも。

「――被害者が毒を摂取した経路って、教えて無かったわね」

 冷たい目で咲夜を見ながら、霊夢は続ける。

「『食物』よ。根拠は二つ。永琳の診断。そして家族単位で倒れる家ばかりだったこと。大体の家族って、みんなで集まって食べるらしいからね」

 巫女はそこで言葉を切り、一言一言染み込ませるように言う。





「ねえ咲夜、あんた、『ちょっと前から人里に食物をおすそ分けして回ってた』らしいじゃない」





「――咲夜ッ」

 はじかれたように呼びかけるレミリア。
 咲夜の顔は、はっきりと青ざめていた。
 しかしそれでも、彼女の受け答えは明瞭だ。いっそ不思議なほどに。

「……ええ霊夢。それは事実ですわ。パーティーでバナナを出したら、大量に余ったから」

 咲夜の言葉を受け、巫女は話を続ける。

「でしょうね。あんたが訪ねた家と、被害にあった家が、一致すんのよ。完璧に」
「けど、けど違う。私は何もやっていないッ!」

 ここで初めて、咲夜が声を荒げた。
 霊夢の視線は冷たいままだ。

「レミリア。咲夜が人里にバナナを配って回ってたって、知ってた?」
「……いや、知らなかったわ。でも、一々そんなことは報告しないのよ。当主だからって、何もかも知る必要はない」
「意図的に知らされなかった、ということもある」
「でも、メリットも動機も無いじゃない。私たちみたいな立場にある者が人里にちょっかい出したって、厄介ごとにしかならない」
「あんたが知らなくても、咲夜個人には有るかもしれない。大体、それを調べるのは私じゃない。私が頼まれたのは、咲夜を連れてくることだけよ」
「むう……」

 レミリアは困惑していた。
 咲夜が犯人? 馬鹿な。そんなことは有り得ない――しかし、これは身内だからこその擁護であるかもしれない。
 客観的に見れば咲夜が最も怪しい。それくらい、彼女にも分かっていた。
 それでもどうにか咲夜を救おうと、レミリアは頭を捻っている。
 頭の中で駆け巡るキーワード。咲夜。毒物。おすそ分けのバナナ。次々倒れる人間達――。
 彼女の中で、ピースがはまった。

「そうか――分かったわ! 分かったわよ」
「……何が?」
「霊夢、ちょっと私の話を聞いてくれる?」
「この件に関係した話なら、ね」

 渋々ながらも了承する霊夢。それを受けて、レミリアは語りだした。

「まず、結論から入るわ……この一件には、犯人も何もない」
「つまり?」
「これはね、過失なのよ」

 断言する吸血鬼に、霊夢は大きくため息をついた。

「……あのねえ、ンなわけ無いじゃないの。毒よ? しかも十七人も。過失じゃあ済まないって」
「まあ聞いてちょうだい。咲夜、あなたが配って回ったのは、間違いなくバナナなのね? どの家も同じ?」
「え? あ、はい。どの家にもすべてバナナです。大量に余りましたから」

 その答えに、満足げに頷く吸血鬼。

「ちょっとレミリア、どういうことなの? バナナだってことがそんなに大事なの?」
「ええ。さらに言えば、配ったのが咲夜だということも大変重要になるわ」
「……わけが分からない」
「なあに、簡単なことよ。いい? 咲夜にバナナ、そして毒物。これが意味するところは一つ!」

 そこでレミリアは言葉を切り、続ける。






























「メイド秘技『殺人Dole』というわけよ」
♪君や あの子を 笑顔にしたくて バナナは生えてる
 I am Doleマン♪



 作者はバナナの王様も大好きであるということをここに明記しておきます。
 なんでもいいから咲夜さん俺のバナナ食べにきてくれないかなぁ
喚く狂人
http://wamekukyouzintouhou.blog45.fc2.com/
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コメント



0.3880簡易評価
2.80名前が無い程度の能力削除
安心の喚くさんクオリティ
3.80へたれ向日葵削除
不覚にもくすっと笑ってしまいましたww
喚くさんの話はほんと好きですわ……
4.100名前が無い程度の能力削除
バナナパワーっぽいのはメイドが持つと
殺人とDoleが両方そなわり最強に見える
愛が備わると逆に悲しみが鬼なって死ぬ
5.80桜田ぴよこ削除
ばーなーなーのー、王様ー♪
6.100名前が無い程度の能力削除
そう来たか!やられた……
しかし、後書きは自重すべきw
7.80おるふぇ削除
そう来ましたか……。ニヤついてしまいました。
8.90名前が無い程度の能力削除
安心のくだらなさww
でも笑っちゃう、ビクンビクン
9.70妖精削除
皮剥かないと食べられないバナナの男の人って……
15.80ぺ・四潤削除
後書き「皮が剥けなくて食べられませんわ」

くっだらねええええwww(褒め言葉)
咲夜さんにかかればバナナですら凶器になりそうな気がする。
16.90UC削除
さすが喚くさんはバナナまで栽培してたんですね!すごい!
20.90名前が無い程度の能力削除
ほんとこういうの大好きwww
23.90名前が無い程度の能力削除
笑いを通り越して力が抜けてしまったw
25.100url削除
うちはエナジーナバナナだったんですが、次からはドールのバナナを買う事にします。
28.100名前が無い程度の能力削除
期待した俺が馬鹿だった
31.100名前が無い程度の能力削除
期待した私もバカだった…が、100点入れる
34.60名前が無い程度の能力削除
元ネタ分かると面白いんだろうか・・・最後の落ち
38.80名前が無い程度の能力削除
安心のクオリティーwww
39.100アガペ削除
やっぱりこんな感じですか…

流石です。
44.90名前が無い程度の能力削除
バナナの王様完熟王にはまっている自分に隙は無かった
47.100名前が無い程度の能力削除
安心の喚く狂人ブランド
49.100名前が無い程度の能力削除
やべぇ、俺死んじまうwww
54.100過剰削除
どう落ちるかと思ったらそうきますか

笑った俺の負けだよ畜生www
55.90名前が無い程度の能力削除
あ、あまりにも寒すぎて逆に面白いw
57.100名前が無い程度の能力削除
俺何で笑ってんの?
60.100名前が無い程度の能力削除
なんという…
61.70名前が無い程度の能力削除
真剣に読んでたからちょっと苦笑いしたw;
65.100七星削除
通報されればいいのにwwwwwwwwww

笑ったから100点入れるしかない
66.90名前が無い程度の能力削除
相変わらずオチがw
68.90名前が無い程度の能力削除
オチを必死に考えたが わからんかった
いつも通り予想外すぎるwww
72.100名前が無い程度の能力削除
どうして、このオチが読めなかった…!!
73.80名前が無い程度の能力削除
バナナとか出てきた時点で嫌な予感しかしなかったが
その通りだったw
75.100名前が無い程度の能力削除
この、なんとも言えない変なテンションになる読後感ww
76.100名前が無い程度の能力削除
こいつは…負けたorz
77.100名前が無い程度の能力削除
オチで吹いたので100点入れるおwww
80.100名前が無い程度の能力削除
畜生、このオチは読めなかった…
悔しいッ!
83.80名前が無い程度の能力削除
だからなんだww
84.100名前が無い程度の能力削除
このやろうwwwww
85.100名前が無い程度の能力削除
相変わらずの安定感。や、やったっ!って感じになった
86.70山の賢者削除
なんだろう。
白けたと半笑いの間あたりの感触w
87.100v削除
くっだらねぇ……!(褒め言葉
目を逸らしてたっぷり30秒は苦笑し続けさせる程度の能力っすなw
88.100智高削除
声出して笑ってしまいました
これは100点入れざるを得ない
90.100名前が無い程度の能力削除
ひどいオチwww
91.100名前が無い程度の能力削除
作者名と容量で展開の読み余裕でした。
しかしあなたは本当にひどい作品をお書きになる(ほめてます)。
途中で予測したオチを忘れさせるんだから……。

あとコメント読んでて完熟王が気になった、ちょっとバナナ買ってくる
92.100名前が無い程度の能力削除
笑っちまった…
95.100名前が有る程度の能力削除
オチが分かるまで10秒かかったのに笑えるww
97.100名前が無い程度の能力削除
作者名からシリアスはないと思ったけど……。
相変わらずひどい落ちだwwwwww
98.100名前が無い程度の能力削除
定番「はいはい喚く喚くwwwwww」
よろしければ、ずっとこのままのあなたでいてくださいwww
103.100名前が無い程度の能力削除
思わず引き込まれてしまいました。
で、このオチ……。
まあ、いいや。笑わせてもらいましたからね、ええ。
105.80名前が無い程度の能力削除
笑ってしまった・・・
106.100名前が無い程度の能力削除
さすがの狂人クオリティでした
108.100名前が無い程度の能力削除
おうふ
109.80名前が無い程度の能力削除
遂に狂人さんもシリアスを……と思ったらw
流石の狂人クオリティでした。あまりの急転直下っぷりに盛大に吹きましたw。
115.100名前が無い程度の能力削除
なんてこったい……
118.100名前が無い程度の能力削除
安心と信頼の狂人さんクオリティでしたww

タイトルからちょっとでも踊る(ryの方を想像した私は負け組みwww
121.100名前が無い程度の能力削除
こwのwやwろwうw
134.80名前が無い程度の能力削除
喚くさんもシリアス書くんだ……

そう思った数分前の自分を殴り飛ばしたい。