「珍しいわね、霊夢のほうからウチにやって来るなんて。歓迎するわ」
「レミリア、気持ちは有難いんだけど、遊びに来たわけじゃないのよ」
博麗神社に赴こうとしたレミリアであったが、門を出たところで偶然霊夢が訪ねてきた。
レミリアは首を傾げる。
「どうしたの? 図書館に用事でも? 必要なら貸し出しましょうか、パチェは口うるさいけど家主は一応私だし」
「いや……そうじゃないんだけど……ちょっと中で話さない?」
レミリアは怪訝に思った。今の霊夢からは、日ごろの能天気さが伺えない。
何か重大な用事があるらしい。
「いいわよ。咲夜、日傘は自分で持つから、応接間の用意をしておいて」
「待って」
畏まりました、と呟く咲夜を、霊夢は遮った。
それが意外だったのか、咲夜はぴくりと身体を震わせた。
霊夢は彼女を見据えると、有無を言わさぬ口調で告げた。
「紅茶も要らないし茶請けも要らない。その代わり咲夜、あんたにも同席してもらうわよ――レミリア、いい?」
急に自分に話を振られて慌てるレミリア。結局、訝しがりながらも頷いた。これといって拒否する理由はない。
ただ、巫女が咲夜へ向けた視線。あれが、彼女が見せたことの無いような、鋭いものであったことは気にかかった。
「で? 霊夢、どういう要件なの?」
尋ねるレミリア。
三人はそれぞれソファに腰掛け、向かい合っていた。
普段なら咲夜は立っていて、テーブルには紅茶とケーキか何かが載っているのだが、今は無い。
霊夢はゆっくりと口を開く。
「人里でね、次から次に人が倒れてんのよ」
彼女の話は、要約すればこういうことだった。
人里で、ある男が倒れた。彼はすぐさま永遠亭に運ばれ一命を取り留めたが、一ヶ月もの安静を必要とした。
問題は、その原因だ。
毒物。信じがたいことには、永琳すらもその正体を掴みかねた。
そして事態はさらに悪化する。一人また一人と、同じ毒で倒れるものが続出したのだ。
その数、計十七名。
「流石に、甘く見るわけには行かないわけよ。毒……、それもこれだけ多くの人数が倒れたとなれば、人為的なものでしょ」
「そうね。そう考えるのが自然ね」
「で、慧音が調べたらしいんだけど。何せ永琳にも正体不明の毒、どう考えたって里の連中には無理な犯行だから、私にお鉢が回ってきたってわけ。まったく、貧乏くじだわ」
その一瞬、霊夢は日ごろのような表情に戻ったが、それはすぐ掻き消された。
レミリアは霊夢が言ったことを頭の中で反芻し、尋ねる。
「なるほどね……じゃあ犯人を探して回ってるわけなのね? 今は」
「いや、違うの」
「?」
霊夢は首を横に振ると、二人を交互に見て、言った。
「犯人ならもう、九割がた割れてんの」
その言葉に、レミリアは戦慄した。
霊夢の発言が真実なら、彼女がここに来た理由は一つになる。
レミリアは気をつけながら発言する。
「……言っておくけど、私は違うわよ? 当主としての指示も出していない。第一、その話だって今日初めて知ったんだもの」
「ええ。アンタじゃないのは分かってる。犯人は別にいる。……ねえ、アンタなら分かるでしょ?」
この場において、この「分かるでしょ」を向けられた相手は、一人しか考えられない。
――咲夜。
霊夢の言葉は実質、犯人が彼女であると告げたようなものだ。レミリアは、ゆっくりと、己の従者を見た。
「咲夜」
「お嬢様、霊夢は勘違いしているのです。私は何もしておりません。お嬢様同様、今日初めて知りましたわ」
冷静な声音でそう言った咲夜だったが、少しばかり顔が青い。付き合いの長いレミリアだから分かることだった。
それは無実の罪を着せられかけている動揺か、それとも。
「――被害者が毒を摂取した経路って、教えて無かったわね」
冷たい目で咲夜を見ながら、霊夢は続ける。
「『食物』よ。根拠は二つ。永琳の診断。そして家族単位で倒れる家ばかりだったこと。大体の家族って、みんなで集まって食べるらしいからね」
巫女はそこで言葉を切り、一言一言染み込ませるように言う。
「ねえ咲夜、あんた、『ちょっと前から人里に食物をおすそ分けして回ってた』らしいじゃない」
「――咲夜ッ」
はじかれたように呼びかけるレミリア。
咲夜の顔は、はっきりと青ざめていた。
しかしそれでも、彼女の受け答えは明瞭だ。いっそ不思議なほどに。
「……ええ霊夢。それは事実ですわ。パーティーでバナナを出したら、大量に余ったから」
咲夜の言葉を受け、巫女は話を続ける。
「でしょうね。あんたが訪ねた家と、被害にあった家が、一致すんのよ。完璧に」
「けど、けど違う。私は何もやっていないッ!」
ここで初めて、咲夜が声を荒げた。
霊夢の視線は冷たいままだ。
「レミリア。咲夜が人里にバナナを配って回ってたって、知ってた?」
「……いや、知らなかったわ。でも、一々そんなことは報告しないのよ。当主だからって、何もかも知る必要はない」
「意図的に知らされなかった、ということもある」
「でも、メリットも動機も無いじゃない。私たちみたいな立場にある者が人里にちょっかい出したって、厄介ごとにしかならない」
「あんたが知らなくても、咲夜個人には有るかもしれない。大体、それを調べるのは私じゃない。私が頼まれたのは、咲夜を連れてくることだけよ」
「むう……」
レミリアは困惑していた。
咲夜が犯人? 馬鹿な。そんなことは有り得ない――しかし、これは身内だからこその擁護であるかもしれない。
客観的に見れば咲夜が最も怪しい。それくらい、彼女にも分かっていた。
それでもどうにか咲夜を救おうと、レミリアは頭を捻っている。
頭の中で駆け巡るキーワード。咲夜。毒物。おすそ分けのバナナ。次々倒れる人間達――。
彼女の中で、ピースがはまった。
「そうか――分かったわ! 分かったわよ」
「……何が?」
「霊夢、ちょっと私の話を聞いてくれる?」
「この件に関係した話なら、ね」
渋々ながらも了承する霊夢。それを受けて、レミリアは語りだした。
「まず、結論から入るわ……この一件には、犯人も何もない」
「つまり?」
「これはね、過失なのよ」
断言する吸血鬼に、霊夢は大きくため息をついた。
「……あのねえ、ンなわけ無いじゃないの。毒よ? しかも十七人も。過失じゃあ済まないって」
「まあ聞いてちょうだい。咲夜、あなたが配って回ったのは、間違いなくバナナなのね? どの家も同じ?」
「え? あ、はい。どの家にもすべてバナナです。大量に余りましたから」
その答えに、満足げに頷く吸血鬼。
「ちょっとレミリア、どういうことなの? バナナだってことがそんなに大事なの?」
「ええ。さらに言えば、配ったのが咲夜だということも大変重要になるわ」
「……わけが分からない」
「なあに、簡単なことよ。いい? 咲夜にバナナ、そして毒物。これが意味するところは一つ!」
そこでレミリアは言葉を切り、続ける。
「メイド秘技『殺人Dole』というわけよ」
喚くさんの話はほんと好きですわ……
殺人とDoleが両方そなわり最強に見える
愛が備わると逆に悲しみが鬼なって死ぬ
しかし、後書きは自重すべきw
でも笑っちゃう、ビクンビクン
くっだらねええええwww(褒め言葉)
咲夜さんにかかればバナナですら凶器になりそうな気がする。
流石です。
笑った俺の負けだよ畜生www
笑ったから100点入れるしかない
いつも通り予想外すぎるwww
その通りだったw
悔しいッ!
白けたと半笑いの間あたりの感触w
目を逸らしてたっぷり30秒は苦笑し続けさせる程度の能力っすなw
これは100点入れざるを得ない
しかしあなたは本当にひどい作品をお書きになる(ほめてます)。
途中で予測したオチを忘れさせるんだから……。
あとコメント読んでて完熟王が気になった、ちょっとバナナ買ってくる
相変わらずひどい落ちだwwwwww
よろしければ、ずっとこのままのあなたでいてくださいwww
で、このオチ……。
まあ、いいや。笑わせてもらいましたからね、ええ。
流石の狂人クオリティでした。あまりの急転直下っぷりに盛大に吹きましたw。
タイトルからちょっとでも踊る(ryの方を想像した私は負け組みwww
そう思った数分前の自分を殴り飛ばしたい。