んー、どうしよっかなー、うーん。
え? もう始まってる?
えーっと……こんにちは!
今日は私――そうだ! おねえちゃんのことについて話したいと思います。え? うん、そう。おねえちゃんのこと。
え、ちょっと、せっかく来たんだから、聞いていってもいいじゃない。
だって、滅多に誰かと会ったりしないんだよ?
……そりゃなにか用事があれば呼ばれることはあるけれど、それってわくわくしないじゃない?
予想外のなにか、そういうのって、どきどきするでしょ?
まぁ、けっこう、迷惑だったりするけどね。
こんなに雨も降ってちゃ、どうしようもないし……ちょっとくらいつきあってよ。
そうだ! 雨。雨?
雨って私は嫌い。でも大嫌いってわけじゃない。いつか好きになるかもしれないし。
おねえちゃんはどうかな? たぶん、あんまり好きじゃないと思う。
雨が降ると、わー、ってなっちゃうから。
でもそれを見ると、私はゆーえつかんを感じちゃう。
特にこの季節はね。
十五夜、ちゅうしゅうのめいげつ?
十六夜、立待月、って続くんだって。
おもしろいよね。
満月が綺麗だと、いつも以上にうきうきしちゃうから。
……おねえちゃんもいつもより綺麗にみえちゃう。
満月の下、紅く染まったお洋服は、とっても上品。
私も、あんな風になれるかな?
おねえちゃんは私の金色の髪の毛を撫でて、綺麗だって言うけど、あんまり嬉しくない。
おねえちゃんの方が、綺麗にみえるんだもん。
私たち、全然反対。
何かをつむぎ出すような力と、終わらせる力。
あまのじゃく。
でも、たぶん二人でひとつ。
おねえちゃんは静かに、優しく微笑みかけてくれるけど、なにかを言ったりはしない。
なにも言わないで私を見つめて……。
瞳でおはなしするの。
しばらくしたら、ルビーみたいな瞳が綺麗ねって、今度は私の頬を撫でてくれるの。
くすぐったくなって首を振っても、お姉ちゃんは手をどけてくれない。
……私がそのままでいて欲しいって思ってるのを、知ってるから。
あ、だからおねえちゃんのことは、好きよ?
だって、世界でふたりきりの、姉妹なんだもん。
――――え? もう時間がない? えー、もうおしまい?
えっと、うんと……じゃ、ということで、冬が近づくとうつになる。
秋 穣子でした。
* * *
「――穣子も、こんな素直な時期があったのよね」
「ははは。神様といえども、幼い頃は、普通の子供みたいですね」
紅葉深く、恵みに溢れた秋の一日。だけど空模様は雨。
雨が降ると紅葉が落ちるからねぇ……。
そんな雨の中、天狗の射命丸文が私を訪ねてきた。
文が手にしているのはいつものカメラではなくって、河童印のビデオカメラだった。
なんでも天狗達の資料庫を探していたら、遠い昔に穣子が天狗に無理矢理インタビューを「させた」記録が見つかったという。
見せてもらうとインタビューというか……ずっと穣子が喋ってるだけだったけど。
「ところで、これはインタビューというのかしら?」
「いやぁ、ホームビデオですねぇ」
文がいたずらっぽく笑って見せる。
「……もう、ホームビデオだなんて、ふふっ。今、初めて見たわ」
「ははは、これでようやくこのフィルムも役割を果たしたという事です」
中秋の名月。私達が一番忙しい季節。山の奥から色づき実らせてゆく幻想郷を見守り続ける。
忙しい季節だけど、小さな穣子はまだ何もできなかったから。
昔の彼女には、ちょっとつまらなかったのかもしれないわね。
だからたまたま通りがかった天狗を捕まえて相手をさせたのでしょう。
「……おっと、どうやら妹さんが帰って来たみたいですね。それでは、私は失礼します」
「えぇ」
窓の外を窺いながら文がそそくさと帰り支度をする。
手を振りながら、ふと思いつく。
「――また今度、大きな画面で見てみたいわ。そのビデオ」
「ふふ、好きですねぇ」
「えぇ、好きよ」
文は目を丸くして、振り返った。
「……まったく、相思相愛ですか。河童に言ってみますよ。上映会」
「よろしくね」
もう一度、ニヤリと手を振りながら雨の中慌ただしく飛び立っていく烏天狗を見送る。
そして入れ違いに妹を迎え入れる。
里の収穫祭に行ってきたのだろう。年に一度の、収穫祭。
五穀豊穣と共に、雨もまた天恵。
雨の下、人々は祝い、踊る。
「姉さんただいま。天狗となにか話してたの……ってニヤニヤして、気持ち悪いよ」
「あらひどい」
「……ふぅん、なにかあったの?」
「なにもないわよ。けれど……そうね。敢えて言うなら、あの時からなにも変わっていなければ、嬉しいわ」
怪訝な顔をしている穣子をよそに、窓際に歩み寄って、山の頂に目をやる。
雨は紅葉を少なからず落とし、冬の足音を幽かに運ぶ。
恵みの雨が降る。
そうして穣子から滲み出てくる優越感が気になりはじめる――
あぁ、可愛い。
あの頃みたいに、撫で撫でしたいわ…………!
「ねぇ穣子」
「ん、なに? 姉さん」
「撫で撫でさせて」
「はぁ?」
…………という事で。
冬が近付くと鬱になる。
秋 静葉でした。
しかし秋姉妹かわいい、ナデナデしたい
秋ですよー!
もうふたりともかわいいなぁ
いかん、なでなでしたい。二人とも。
静葉姉さんは昔から奇麗だったんだな。
幻想郷はいい姉妹で溢れておるなぁ
心温まる姉妹でした。
むしろ古明地姉妹かと勘違いに次ぐ勘違いをしている私は……。
でも、後半ではその姉妹の思いにもしっかりやられてしまいました。
もう、羨ましい姉妹だなあ。
この作品のレビューを下のURLにあげておきましたので、どうぞ参考にしてください。
http://bantenmaru.at.webry.info/201008/article_22.html
レビューを書く事を快諾してくださった作者様、ありがとうございます。
けど、秋姉妹の仲良しぶりが伝わってくるいい話でした。
ほっこり暖かい気分になれました。
まさかのみのりんだった
なでなで、なでなで
いや、短いながらも温かいお話でした
秋姉妹は良いですね。私もいつか書いてみたい。ありがとうございました。
フランかと勘違いしてしまった
穣子ちゃんなでなで
よく似ている二人だがしっかりと対になる部分がある、なるほどなるほど……。
心が温まりました。感謝。
読んでいて頬が緩みました。