ロンドンの夜はいつもの様に霧に包まれていました。
一ついつもと違う事を挙げるとすれば、全部が止まっているという事だけです。
ストリートランプの火は辺りを照らさず止まっています。風は小枝を揺らして止まっています。
半月の光も霧のあたりで止まっていて、街の中は少し暗いです。
でもそんな止まった暗い街の中で、一人の少女だけが動いています。
手に持ったナイフと同じくらい綺麗な銀髪です。
銀髪の少女は、これから家に帰ろうとしていたであろう金髪の少女の首を掴むとナイフをシュッと振りました。
それはバターを切るかのように簡単に切れました。血は出ません。
銀髪の少女がシュッシュッとナイフを振ると
あっという間に金髪の少女はバラバラの肉塊になってしまいました。
銀髪の少女は肩を落としてしょんぼりしていましたが、気を取り直して次の少女を探しに行きました。
通りの真ん中に、日傘を差した少女が立っていました。
夜なのに日傘です。
おかしな子だなと思いながら銀髪の少女が駆け寄ると、日傘の少女はクルッと振り向きました。
目の前でいきなり振り返った日傘の少女にびっくりして銀髪の少女はしりもちをついてしまいました。
しりもちをついた銀髪の少女に日傘の少女は問います。
「何をそんなに驚いているの?」
銀髪の少女は立ち上がって、スカートの裾を叩いてから答えました。
「私の世界にはお人形さんしか居ないと思ってたわ」
「私からも質問していいかしら?」
日傘の少女は一度、首を縦に振りました。
「貴女はどうしてこんなに月の紅い夜に日傘を差しているの?」
日傘の少女はくすくすと笑うと、傘をくるりと回して言いました。
「それはね・・・私が吸血鬼だからよ」
日傘の少女があんまりに真面目な顔で言うので、銀髪の少女はぷっと吹き出してしまいました。
銀髪の少女はしばらく笑うと息をすぅっと吸って言いました。
「私はね、お人形さんになりたいの」
「お人形さん?」
と日傘の少女が聞き返します。
「そう、お人形さん」
「私はここの人達に話しかけてみたけど皆答えないの」
「あんまり私を無視するもんだから持ってたナイフで刺しちゃったのよ」
「でもね。血が出ないし痛そうにもしないの。私はナイフで刺されたら痛いと思うわ、指を切ったとき血も流れたし」
「私はこの世界で一人だけお人形さんじゃなかったの。私だけ仲間外れなのよ」
「だから私は別のお人形さんを壊してお人形さんになるの」
銀髪の少女は赤黒く濁った目で言いました。
日傘の少女は訪ねます。
「どうしてお人形さんを壊すと貴女がお人形さんになるの?」
銀髪の少女は空を見上げながら答えました。
「お月様が・・・・・・そう言ったのよ。紅いお月様がそうすればお人形さんになれるって」
二人の少女は並んで月を見上げましたが、霧でよく見えません。
辛うじてぼんやりと紅くて丸い物が浮かんでいるのは見えました。
「吸血鬼さん。貴女のお名前は?」
「私の名前はレミリアよ。貴女は?」
「私の名前はね×××よ」
×××・・・×××・・・とレミリアは銀髪の少女の名前を嬉しそうに呟きます。
そして顔を上げると言いました。
「ねぇ×××。貴女私のお人形さんにならない?」
×××は顔をパッと輝かせて答えました。
「本当!? 本当に私をお人形さんにしてくれるの!?」
レミリアが苦笑しながら肯定すると喜びの余り×××はレミリアに飛びつきました。
あんまり勢いをつけて飛びついたので今度はレミリアがしりもちをついてしまいました。
レミリアに抱きついたまま×××は言います。
「貴女のお人形になるなら新しい名前を考えないとね」
ここでレミリアはぎくっとしました。
昔自分の館の名前を付けた時、実の妹に
「おねーさまったらひっどいネーミングセンスしてるわね」
と言われてからネーミングセンスに自信が無かったからです。
レミリアは頭を抱えてうーうー唸っていましたが、ふと顔を上げると叫びました。
「咲夜! 咲夜よ!」
いきなり叫んだので×××は少しびっくりしましたが、それが自分の新しい名前だと理解するとすぐに嬉しそうな顔に変わりました。
その表情で未だに押し倒したままのレミリアに抱きついて言いました。
「よろしくお願いしますレミリア様!」
レミリアはふぅ・・・とため息をつくと咲夜を抱き返して答えました。
「お嬢様で良いわ。よろしくね咲夜」
霧が晴れて動き始めたロンドンの夜空には
十六夜の月が浮かんでいましたとさ。
以下、気になったところを挙げさせて頂きます。
まずモノによって同じように見えますが、"・・・"と"…"は違いますぜ。
HPやブログでは・・・でも違和感が無いですが、やはり"……"が推奨されてます。
また「文末がワンパターンすぎだなぁ」とあとがきに書かれていますが、その欠点がところどころに見られます。
>あっという間に金髪の少女はバラバラの肉塊になってしまいました。
>銀髪の少女は肩を落としてしょんぼりしていましたが、気を取り直して次の少女を探しに行きました。
ここでは"肉塊になった"ことと"しょんぼりした"事が同じ時制で表されて、同時に起こっているように見えます。小さい事ですが、「少女はその肉塊を見てしょんぼりしていましたが」の方がすんなり読めます。
>銀髪の少女は立ち上がって、スカートの裾を叩いてから答えました。
>「私の世界にはお人形さんしか居ないと思ってたわ」
>「私からも質問していいかしら?」
同じ人物の台詞の場合は、間に空白ではなく地の文を入れないと誰の台詞か混乱しますぜ。もしくは、
「私の世界にはお人形さんしか居ないと思ってたわ
―――私からも質問していいかしら?」」
のように、間に"――"(ダッシュ)を入れて同じ台詞にするというのも有りだと思います。
多用は禁物ですが。
「30分内目標で書く」ならまだしも、単に30分で出来たものを、と言うのは……
いずれにせよ所要時間を書くのはあまりいいイメージがつかなかったりしますぜ?
時間制限設けると、ひとつのアイデアの有効利用を模索できますが、作りも雑になること多々ありますし。
長文失礼しました。頑張って下さい。