「暑い……!憎い……!目の前にある湖が憎い!」
美鈴は門の柱を背にしてぐったりとうなだれていた。
そう今は夏なのだ。幻想郷は今日猛暑猛暑の連日で熱射病で里で何人も倒れているという話が少し幻想郷に知れ渡っているほどだ。
そして紅魔館も例外ではなく猛暑は襲っていた。
そしてその影響を一番受けるのが門番の仕事をしている美鈴の他ならなかった。
美鈴以外の紅魔館のほとんどの人物は館の中で直射日光を防いでいる。
門番隊の妖精たちはチルノを拉致してきて十字架に縛り付けてカゴメカゴメをしていた。
なんか一種の信仰を集めていてすぐさまに、早苗がライバル心をだしてどこからか現れて、奇跡の力で何故か荒ぶる鷹のポーズをしたら爆発して
門番隊含め早苗、チルノはグロッキー状態で気絶している。美鈴は熱射病になっては不味いと思って木陰に全員一人で運んで
再び仕事に戻ったがこの様だった。
美鈴の仕事は門番。つまり外。警備員。警備員といってもどこぞの永遠亭の姫のような大そうな身分の警備員ではなく雑用に近い警備員なのだ。
よって自由な時間は少なく、目の前にある霧の湖にはいることさえ許されない。
ああ、咲夜さんとキャッキャウフフしたいと心底美鈴は思っていた。
目の前に涼をとる手段があるのに使えない、というまさに生き地獄状態だった。
「もう、我慢できない!お嬢様に直訴してやる!」
美鈴はそう言うと、もたれかかっていた門の石柱から立ち上がり、館の中へずかずかとはいっていった。
――――――
「はぁ?クールビズ?」
「ええ、そうです。クールビズですよ」
ソファに横たわって汗を流しながら、いつもどおり帽子まできっちり被った格好で団扇を思いっきり扇いでいたレミリアに対して、
レミリアの私室で美鈴は真面目な顔をして相談していた。
レミリアの私室は「紅」一色で闘牛を連れてきてどこにぶつかるか実験したくなるほどの紅一色だった。
窓は開けてあるが、ぬるい風しか入らなく逆にいらだたせる結果となっていて
さらに外からはバカみたいに騒いでいるセミの声が入ってきて二乗にいらだたせている。
その様子を見て美鈴は「ってか団扇で扇げば扇ぐほど暑くなりませんか?それって手首の運動でまた汗かいて暑くなりませんか?」といいたかったが
首になりたくなかったしクールビズをなんとしてでも通したかったので黙っていた。
「大体そのくーるびずってのは何なのよ?」
「ああ、それはですね。ちょっと待ってくださいね」
美鈴は、どこからともなく取り出したホラ貝を「ぶぉおお」っと吹いた。
その瞬間床をぶち破ってパチュリーが某U●Jの中にお土産コーナーにあるスパ●ダー●ッのマスクを被って現れた。
「中国風の少女に味方する魔女、パチュリーウッ!」
「まずどこから突っ込んだらいいのかステップを踏んで教えて欲しいんだけど」
レミリアが哀れむような目でお願いしたがスルーされた。どうやら全員暑さで頭がいってしまっているらしい。
「ねぇ、美鈴これ脱いでもいいかしらすっごく暑いのよ……」
「えぇー、そんなぁー。許せる!」
「ねぇ、二人ともめんどくさいからグングニルしてもいい?」
とりあえずパチュリーはマスクを脱いで、汗を拭い「こくごじてんー!」とベカベカベカーと効果音をつけたくなるようなイントネーションで
取り出した辞典をめくり、そしてレミリアにクールビズがどのようなものであるか伝えた。
「ふむ、なるほど。で?美鈴」
「はい、なんでしょうか?」
「本心は?」
「咲夜さんのノースリーブ、ギリギリのスカート姿のメイド服超みたい」
その返答に一秒も懸からずに美鈴は潔く返答した。
レミリアは額を押さえて深いため息をついた。
こいつはいつからこんな奴になってしまったのだろうと。
しかし、もうどうこういっても仕方ないし確かに暑いといっちゃ暑いとレミリアは思っていたので
美鈴の下心丸見えのクールビズを許可した。
「いやほぉおおお!!!さすがお嬢様!そこに痺れるあこがれるぅ!!!」
「これで、今度のイベントで出す新刊でのネタが増えてよかったわ……」
美鈴は嬉しさのあまり思わず天井に向かって破山砲を打ち込み、パチュリーは安堵の喜びでレミリアに向かって、ロイヤルフレアをついつい打ってしまった。
「お前ら絶対クールビズの本来の目的わかってないよね?」
レミリアはロイヤルフレアの暑さで床に倒れて、ひれ伏しながら二人に聞いた。
「クールビズは露出を楽しむものです」
「クールビズは露出を楽しむものよ」
ふたりは迷いなくあふれるばかりの笑顔でそうガッツポーズを作りいいきった。
「あとあんたらちゃんと床掃除しなさい」
「あ、はい」
二人はきちんと床掃除をし終えて満足そうにレミリアの自室を後にした。
――――――――
そして紅魔館でクールビズが実施されてから、主に苦労人が一人出没してしまった。
どたどたとレミリアの私室の前の廊下から誰かが走ってくる音が聞えてくる。
そして勢いよくドアを「ばんっ!」と開け
「お嬢様ー!」
「うぇ?何、咲夜?」
レミリアが自室で水玉模様のビニールプールに水をはって胸の辺りの白い枠にマジックペンで「れみりゃ・すかれーっと」と書かれた紺色の水着を着て
涼みを取っていたところ、咲夜がノースリーブ、超ギリギリのミニスカートのメイド服で涙目で部屋に入ってきた。
今の咲夜の格好は、スカートが短すぎる為に太股のむっちりした感じがもろに露出して、男ならず女でも見ほれてしまいそうな脚線美であり、
ノースリーブのメイド服からは、雪のような美白な肌が露出していて、とても艶やかだった。
ちなみに、メイド服のデザインはパチュリーの友人のアリスである。
そんな咲夜はとりあえず、涙目ではいってきてもドアを閉めるあたり瀟洒なのであろう。
「ちょ!お嬢様までなんっていう格好しているんですか!?」
「ん?ああ、これ?パチェがレミィはこれきなさいって渡してきたんだけど」
「そうじゃなくて!なんで私のメイド服とかこうなっているんですか!?」
「あー、それね実は……」
レミリアはそういえば咲夜に説明してなかったなと思い説明しようとしたところ、レミリアのデビルイヤー(人間の1倍)が
凄い勢いでレミリアの部屋に向かってきている足音を捕らえた。
「咲夜!急いで私のベッドの下に隠れて!」
「ふぇ?な、なんでですか?」
「いいから!」
「わ、わかりました」
レミリアは突然咲夜に隠れるように怒鳴りをいれて指示した。
そしてその数秒後レミリアの自室のドアは吹っ飛んだ。
「お嬢様あぁあああああああああああ!!!咲夜さんの声きこえてきたんですけどきませんでしたかぁ!?」
「きてないよ。つかお前はビキニで何やっている」
レミリアは顔に吹飛んできたドアと熱い接吻を交わしながら、美鈴を適当にあしらった。
美鈴は走っていた余りか豊満なあれはたゆんたゆんと揺れている。
「いやぁ、クールビズですからね!露出しないと嘘ですよ!にしても咲夜さんどこでしょうか?見つけたら私が膝枕してお昼寝させてあげるのに」
「私はあんたを暴力的にお昼寝させてあげたいわ」
「まぁ、咲夜さんがここにいないなら館内のどこかにいるはずですよね、よし探してきます!待っててください咲夜さん!私の胸の中でなかせてあげますよ!」
「恐怖のあまりなくだろうね」
美鈴はそういうとレミリアの自室の壁を破山砲でぶち壊して鼻歌交じりで出て行った。
レミリアは熱い口づけをした自室のドアを顔から外し、無理やり吸血鬼パワー(笑)でドアを元あった場所に無理やりはめ込んで、
咲夜が隠れているベッドのほうを向くと咲夜がベッドの下から出てきて、
今さっきの美鈴の発言からの恐怖のあまり泣きそうな顔をしてレミリアを無言で見つめていた。
「あー、よしよし私が守ってあげるからなかないの」
「お嬢様……!」
咲夜は安堵の表情でレミリアへ駆け寄って、レミリアに抱きついた。
レミリアはやれやれと思いながら抱きついてきた咲夜の頭をなでた。
「とりあえず、咲夜あなたも水着に着替えてプールに入りなさい」
「え?いや、私はあくまでお嬢様の従者であって流石にプールに入るのは……」
「あんたは固いわねぇ、いいのよ気にしなくてほら主人が命令しているんだから時を止めてでも、早く着替えてきなさい。私の従者なら主人の命令は絶対よ」
咲夜は主人命令ということで仕方なく時を止め水着を自室にとりに行って戻ってくると、スカートの裾を握ってより涙目になっていた。
「ちょ!?どうしたの咲夜!?」
レミリアはもういかにも泣き出しそうな咲夜を見てビニールプールから立ち上がり咲夜のほうへと歩み寄った。
「私の水着がスク水になってました……」
「……パチェの仕業ね。しかも白」
レミリアは、親友になる相手間違えたかなぁと少し考えたが今更後悔してもしょうがないと思いため息をついて、
レミリアは咲夜に水着を着るように命じて、ビニールプールの中に入水させて一緒に涼むことにした。
数分後
「あー、お嬢様これ気持ちいいですねー」
「でしょー、昨日まで熱い暑い言ってたのがバカみたいよねー」
二人とも、ぐでーとして天井に顔を向け、リラックスしていた。
ちなみに咲夜は、スク水を見事に着こなしていた。美鈴のようなわがままボディではないが、咲夜の体はとても綺麗な流曲線を描いていた。
出るとこは出て、締まるとこは締まる。そんな体の持ち主こそが十六夜咲夜なのだった。ちなみに少し胸のほうはぷっくり程度しか出ていないが
、またそれがいいと宴会の席で酔っていた慧音がいっていた。
レミリアの自室の開いた窓からは、夏特有のぬるい風が入り込んできて、窓の近くに吊るしてある紅い風鈴を、ちりんちりんと涼しげな音を奏でている。
「あれ?お嬢様風鈴なんて置いてましたっけ?」
咲夜は顔を天井から動かさないままレミリアに問いを投げた。
ちなみに窓の外から早苗とチルノによる喧騒がオマケで入り込んできていた。
「ああ、その風鈴ね。随分前に美鈴から貰ったのが机の中から出てきたから、なんと無しにつけてみたのよ」
「へぇ、お嬢様が取っておいた品というと、何か思い出の品とかそんな奴ですか?」
レミリアは、そのまま天井に顔を向けたたまま「あー」とか「うー」とかいってしばらくしてだるそうに語り始めた。
「まぁ、それ今日みたいに暑い日が続いてさ、当時メイド長だった美鈴になんとかしろって頼んだらくれてさ、でも結局私はあんまり興味なかったから
貰ったその日にどこかにしまおうかと思ったのよ」
咲夜はだんまりとしたまま、レミリアの話を静かに聴いていた。
いつの間にか外の喧騒はなくなり再び小さな爆発音が聞えてきた。
「でもねぇ、その日の晩、まだ幼かった咲夜がきてさ、眩しい笑顔でみせてみせてってせがんできたのよ。咲夜覚えてる?」
「いえ、全然覚えてませんわ」
咲夜は相変わらず天井に顔を向けたまま、レミリアの話を聞いている。
若干顔が赤いのは、夏の暑さにやられたかそれとも自らの恥ずかしい過去をきいてなのかわからない。
「で、しょうがなく私がつけたら咲夜大喜びでね。咲夜あの頃は、感情豊かで見てて飽きなかったわ」
咲夜の顔から爆発音が聞えたが、まぁ、気のせいだろうと思いレミリアは話を続ける。
「でさ、昨日なんとなく見つけてね。少しそういうことを思い出してつけたってワケよ。あら……?……咲夜?」
レミリアは天井と睨めっこをやめ、咲夜のほうを見ると、咲夜が顔を水に突っ込んで恥ずかしさのあまり自殺を計ろうとしていた。
「ちょ!咲夜何やってんのよ!」
間一髪のところレミリアが咲夜の首根っこを掴み水面から顔を上げさせた。
咲夜は「ぜぇぜぇ」といいながら、顔を紅くしている。
「だって、恥ずかしいんですもの……」
咲夜は、くねくねと体を曲げて頬に手を当ていた。
なんか軟体生物みたいで気持ち悪い。
レミリアはついでに「おゆはん、たこのおさしみがたべたい」と考えた。
そして「そっちのほうが恥ずかしいわ」と内心で心底思った。
「あーもう!とにかくあんたまだ休んどきなさい。これ以上一緒に居て自殺未遂されたら気分が悪いから私は先に上げらさせてもらうわ」
「あ、お嬢様」
ばしゃりとビニールプールから水を立ててレミリアは立ち上がり、
レミリアはあらかじめ用意してあったバスタオルで自身の体をよく拭きそのまま部屋を出て行った。
咲夜はそのあと一人、主が出て行って生まれた波紋が残っているプールに一人取り残された。
残された部屋にはただ、外から喧騒と澄んだ風鈴の音がなっていただけだった。
―――――――――
紅い廊下をレミリアは相変わらずの紺色スク水姿で腕を組んで仏頂面で歩いていたところ
「あれ?お嬢様水浴びはもういいんですか?」
後ろから相変わらず胸にでかいゴム鞠を2つ付けた、水着姿の美鈴が話しかけてきた。
「ん?ああ、十分もう涼んだしね」
「あらそうですか。私は咲夜さん探してるけど見つかんないんですよねー」
美鈴は鼻歌を歌いながら、レミリアの隣に並んでしばらく一緒に歩いていた。
ちなみに曲は明治十七年の上海アリス。
「ところで美鈴そろそろ正直に言ったらどうなの?」
「ん?お嬢様何のことですか?」
美鈴はわざとらしく笑顔で首をかしげレミリアの隣をゆっくりと歩いている。
「わざとらしいのよ。クールビズなんてただ私にあの風鈴出してほしかっただけでしょう。あれはそもそも私が美鈴の部屋に
ずいぶん昔返しにいったし、私の部屋の机の上にわざわざ引っ張り出して」
「あら?ばれちゃいました?」
美鈴はえへへと笑いながら頬を掻いて頬を少し赤く染めた。
「どうしてあんなことをしたのよ」
レミリアは深くため息をついてジト目で、横に満面な笑顔で鼻歌を歌い続ける美鈴に質問した。
「いやぁ、なんか昔を思い出しちゃって。ほら咲夜さんメイド長になってから、なんか周りから瀟洒でありたいと想い始めて
表情硬くなったじゃないですか。で、なんだかそれみてると、ほら……なんだか昔の咲夜さんのように表情豊かな咲夜さんが見たいなぁとおもいまして」
レミリアは美鈴の言葉を聴いて少し、立ち止まり、考えた。
咲夜を瀟洒な、仕立て上げてしまうようなことをしてしまったのは誰かを。
確かに、自分の側近に咲夜を置いてしまったことで少女らしさを奪ってしまったのではないかという疑問がレミリアの頭の上に浮かび上がった。
そして同時に、咲夜はもう少し咲夜自身の生き方をするべきではないのかと思った。
あらゆるとき自分に完璧に仕えることが人生でなく、
もうちょっと自由にしてもいいんじゃないかと。
無理に瀟洒に振舞わなくてもいい。
もう少し自分に仕える完璧で瀟洒なメイドとして、ではなく十六夜咲夜としての咲夜であって欲しいとレミリアは考えた。
ならば、やることは一つと思い、レミリアは、今さっき来たほうへ、くるりと体を向けて、てくてくと小さく歩き出した。
「美鈴」
「はい?なんでしょうか」
「少し咲夜に――ご主人やってくる」
少し、美鈴はきょとんし、目を見開いて驚いていたが、理解したのか笑顔になり
「はい、いってらっしゃいませ」
美鈴はそのままカリスマだだ漏れで、主として歩いていくレミリアを笑顔で手を振って見送った。
――――――
レミリアが部屋に戻ってきて、自室の廊下の前に来たとき
自室から騒がしい喧騒が聞えてきた。
レミリアは「咲夜が一人でまたくねくねしてんのかな」と思って
こっそりと、ガタガタとドアを開けて隙間から覗いて中を見てみると、チルノ、早苗、門番隊の少数が
咲夜とビニールプールで和気あいあいと笑顔で水遊びしていた。
ついでに一人だけ腋あいあいだった。
その様子を見てレミリアは少し安心した。咲夜もあんな風に今でもちゃんと笑えることがわかって。
ただここで解決したと思っては、メイドたちの前や自分の前ではまだ瀟洒でいたがるだろうとレミリアは思った。
そう、主としての仕事は「あれ?咲夜さんこんなとこにいたんですか!?」ここから如何にして、咲夜に諭すかだ。
レミリアは人よりもといっても知り合いが殆ど妖怪ばかりなのだが人一倍に咲夜を「あぁ、混ざりたいなぁ……」知り尽くしているつもりだ。
それだからこそレミリアは真剣に「ちょっとお嬢様はいってきていいですか?」思考を開始した。
「ねぇ、美鈴」
「はい?なんでしょうか?」
美鈴はレミリアの背後に着いてレミリアと同じく、こっそりとドアの隙間から部屋の中の様子を見ていた。
部屋の中では相変わらず、咲夜が水鉄砲でチルノの顔面に発射したり、早苗がライスシャワーをして
出したお米をビニールプールの水で磨いでいたりしていた。
「お前は描写で私の主としてのカリスマな仕事を描写しているのになんで邪魔してくんの?」
「お嬢さま、0に何をかけても0っていう法則知ってますか?」
「よし、そこになおれ」
そうは言ったものの、これはこれではいりづらい。
一応レミリアは咲夜の主であり、部下がキャキャウフフしているところに主がいくのはどうも気まずい。
レミリアは困り果てて、どうしたものかと悩んで美鈴にどうしようかと相談しようとしたところ
今さっきまで居たはずの位置に美鈴が居なくて、部屋の中をバッとふりかえってみるとビニールプールの中で
咲夜とはぐはぐしてた。
「ちょ!美鈴!何してるの!?」
「もう我慢できません!咲夜さんこんな可愛い姿してるのに抱きつかないなんて、もったいないです!」
周りの連中は相変わらず、ばしゃばしゃと水鉄砲したり米を磨いだりしてた。
美鈴は愛を育んでるし、もうレミリアにはどうしたらいいかわからなかった。
レミリアが現実逃避をし始めたとき脳内にある記憶が蘇ってきた。
「確かそうあれは、梅雨でじめじめしてて外に出れないからパチェの漫画を読ませてもらったときに覚えた、困ったときに使える対処法があったわ!」
そういい叫ぶと、レミリアは右手に紅い槍を具現化させ、自室に思いっきり投擲し堂々と宣言した。
「神槍『スピア・ザ・グングニル』!」
その瞬間レミリアの部屋は爆発した。
爆散したレミリアの部屋には破れた大きなビニールプールと、それからこぼれた水が赤い絨毯を湿らせていた。
あとビニールプールに入ってた連中が気を失ってプールの周りにごろごろとしてた。
レミリアは、その中にテクテクと歩いて入り本日二回吹飛んだドアを無理やり元あった場所にねじ込み、気を失った咲夜の前に立ち
頬を優しくなでながら温かい目で
「咲夜。もう無理しなくていいの。別にあなたに無理やり完璧を求めたりはしていないわ。あなたはあくまでも人間なんだから。
霊夢や魔理沙を見ててもわかるだろうけど、人間に完璧なんて無理なのよ。余りにも寿命が短すぎて達成するには到底不可能。
でもね、完璧を求め努力する咲夜は本当に美しい。私はその姿を咲夜が死んでしまうその瞬間まで見て痛いと思っている。
咲夜が完璧になってしまったらその姿を見れなくなるのはとても寂しいからさ。だから咲夜。
ずっと今のまま不完全な完璧でいてよね。完璧になろうとする、その努力を私に見せ続けなさい」
そう誰も聞いてない部屋で呟いた。
レミリアは、こんなことをいっても届いてなければ意味ないかとおもい、やれやれとため息をついて
咲夜に背を向けてぐしゃぐしゃに崩れたドアのノブを手に持った瞬間
「はい、お嬢さま。承知しましたわ」
という声が帰ってきたので、レミリアはクスリと笑いそのまま振り向かず
「がんばりなさいよ。瀟洒で完璧な私のメイド」
そういってぼろぼろのドアを開き、外側から無理やりドアを閉めて去っていった。
咲夜が残された部屋にはただ、外から喧騒もなく
ただ静かに澄んだ風鈴の音がなっていただけだった。
この紅魔館は好きです