「霊夢のバカ!!!」
私はそう言った時にはもう走り出していた。
きっかけは至極単純…
あたしのせいだ。
あたしが毎日神社で好き勝手に過ごしていたから…霊夢は怒った。
自分の二本の角が生えている頭の中でもちゃんと分かっている…
あたしが悪い。
だけど…あの時の私は何を思ったのか霊夢の正しい行動に逆上し、挙句の果てには悪態をついて神社から飛び出してしまった。
真っ暗な夜道をただ走って…走って…
時には立ち止まって後ろを振り返ったりして…
また走って…
そして気が付いた時には大きな岩が一つだけある原っぱに来ていた。
そこには岩意外何も無くて、私は無性に岩の上に行きたくなったので岩に乗って空を見上げてみた。
大きな月があって…その周りには沢山の星があった。
こんな時でなければ…お酒でも飲んでぼんやりと見上げていたかったんだけど…
そんな気分じゃなかった…
色々考える事があったからね。
でもどれも最終的には「これから…どうしよう…」
これだ…良い考えなんて出てくるはずもない。
また一人になっちゃった…
霊夢や皆に会うまでは一人でも平気だった…
でも…今じゃ…
「あやや?…どうしたんですか?こんな所で」
聞き覚えのある声で誰かが話しかけてきた。
最初のセリフで大方誰なのかは予想が付いた。
「なんだ…天狗か…何の用?」
「何の用だとはまた白々しいですね…上司が寂しそうにしていたので声をかけたというのに…」
いきなり図星を突かれてちょっと動揺したけど…そこは…ほら…鬼だし…上司だし…とにかく堂々と答えようと思ったけど…
「そんな事…無い」
自分でも驚くほど小さな声で答えてしまった。
マズイ…
天狗の事だ…これでは…色々感ずかれる。
恐る恐る後ろを振り返ってみる…
そこには予想通りの天狗の良い笑顔が…って?!
「ちょ、ちょっと!何考えているのよ!?」
「いやいや御心配無く…面白い物が見れたなんてこれっぽっちも思ってないですからご安心を」
目の前の綺麗なザ・営業スマイルを見せている天狗“射命丸文”だけど…彼女の左手はせわしなく何かを手帳に書き込んでいた。
「いや…ちっとも安心できないよ!っていうか手帳に何か書き込んでいるみたいだけど?」
と言ってもう一度目をそこにやるともう彼女の手にはペンも手帳も無くなっていた…
そしてそれをアピールするかのように手をひらひらとさせている。
「それよりどうしたんですか?遠くから見ても分かるくらい寂しそうな背中をしていましたけど」
「だから何も無いって言ってるでしょ!」
そんな訳ない…
それなのに頑なにそれを否定しようとしてしまった。
「そうですか…なのに先ほどはあのような返事を?」
「…」
また図星を突かれてしまって何も言い返せなかった。
「おやおや…いけませんねぇ…鬼が嘘を付くのは」
「鬼だってたまには嘘付いたりするんだよ」
「ではさっきのは嘘ということですか」
「…」
目の前の天狗はあたしの顔を見ながら、うちわで顔の下半分を隠しながらニヤニヤしている…
相変わらず…この天狗は…
これ以上強がってあらぬ記事を書かれてしまうんじゃないかと思ったあたしは天狗に霊夢と喧嘩して神社を飛び出してしまった事を話すことにした。
が…その前に…
「分かったよ…話してあげるよ…とりあえずあんたが持っているペンと手帳とカメラををよこしなさい」
「あや?!何を言っているんですか!これは私のアイデンティティですよ?!これを取られたら私は」
「つべこべ言ってないでいいからよこしなさい!」
そう言ってあたしは天狗が逃げ出す前に飛びかかり、ペンと手帳とカメラを取り上げた。
取り上げられた天狗はぶつぶつと「私の…私の…」と呟いていたが…気にせずに話すことにした。
「あなたが悪いですね」
話を聞き終わった天狗が最初に言った言葉がそれだった。
「…そんなの分かってるよ」
「そんなことしたら誰だって怒りますよ…」
そんなことは分かってる…
でも…もうそんなこと言ったって…
「分かってるよ!でもね…でもね…もう言っちゃったよ…逃げ出しちゃったよ…もう遅いよ!」
「…そんなことはありません…今からでも遅くはありません…謝りましょうよ」
「でも…でも…」
絶対…許してくれない…あんな酷い事してしまったあたしを霊夢は…霊夢は…
「絶対許してくれますよ…あなたは悪い事をしたと分かっている…ならすることはただ一つでしょうに」
「でも…」
天狗の言葉にはどこか絶対的な自信の様な物が見え隠れしていた。
だけど…だけど…
だけどの後が続かない…最初から分かっていた…今の自分が何をしないといけないのかを…でも…
「はっきりとしませんねぇ…悪い事をしたら謝る!そうでしょう?こんなことそこらの子供でも知っているというのに」
「…」
「もういいでしょう…御健闘をお祈りいたします。では、また」
そう言い残して天狗は夜空に飛び出し、あっという間に見えなくなってしまった。
「悪い事をしたら謝る…か…そうだよね…それしかないんだよね…」
もしかしたら…あたしはただ怖がっていただけなのかもしれない…もう…一人は嫌だ…皆と一緒にいたい…何より…霊夢といたい!
「よーし!頑張るぞ!」
あたしは座っていた岩の上から飛び降りて神社に向けて走り出した。
…何か…忘れている様な気がするけど…
「やっと行きましたか…」
文はさっきまで萃香がいた岩の上に立っていた。
そして…その足元には…
「謝礼…ということで記事にさせていただこうかと思いましたけど…今回はこれで我慢しましょうか」
と言って足元に置いてあったペンと手帳とカメラを取った。
「それにしても…心配なら御自分で来ればいいものを…まったく…人使いが荒い方ですね」
と言い残して文は再び夜空に向けて飛び出した。
「着いた…」
あたしは神社の前まで来ていた。
だけど…どうしても神社の中に入っていけない…あと一歩が踏み出せない…
踏ん切りがつかずに鳥居の辺りを行ったり来たりしていた。
「あら…帰ってきてたのね」
「れ、霊夢?!」
急に声をかけられてびっくりして声が裏返った…
振り返るとそこには霊夢がいた。
顔を見る限り…もう怒ってはいないみたいだけど…
「そんな怖い物でも見たみたいに怖がることは無いでしょう?」
「う、うん…ごめん…」
それからなんて謝ればいいのか分からなかった…
霊夢もあたしも何も言わないから沈黙が続いた。
でもそのうち色々と考えるのがバカらしくなったあたしは腹を決めた。
「れ、霊夢!」
「何?」
息を整えて…霊夢の顔を見て…あたしは思いっきり頭を下げた。
「ごめんなさい!!!」
また沈黙が続いた…
あたしは霊夢の顔を見るのが怖くて頭を上げられなかった…
「違うでしょう」
「え?」
頭をあげると…霊夢は…
「帰って来た時は『ただいま』…でしょ?」
「え…?」
まったく予想外の事を言ってきた…
一瞬どうしたらいいのか分からなくて出てくる言葉もうやむやになって口から出てこない…
でも…何て言うか…ただ…ただ…
「あ…えっと…た、ただいま」
「うん、おかえりなさい」
私はそう言った時にはもう走り出していた。
きっかけは至極単純…
あたしのせいだ。
あたしが毎日神社で好き勝手に過ごしていたから…霊夢は怒った。
自分の二本の角が生えている頭の中でもちゃんと分かっている…
あたしが悪い。
だけど…あの時の私は何を思ったのか霊夢の正しい行動に逆上し、挙句の果てには悪態をついて神社から飛び出してしまった。
真っ暗な夜道をただ走って…走って…
時には立ち止まって後ろを振り返ったりして…
また走って…
そして気が付いた時には大きな岩が一つだけある原っぱに来ていた。
そこには岩意外何も無くて、私は無性に岩の上に行きたくなったので岩に乗って空を見上げてみた。
大きな月があって…その周りには沢山の星があった。
こんな時でなければ…お酒でも飲んでぼんやりと見上げていたかったんだけど…
そんな気分じゃなかった…
色々考える事があったからね。
でもどれも最終的には「これから…どうしよう…」
これだ…良い考えなんて出てくるはずもない。
また一人になっちゃった…
霊夢や皆に会うまでは一人でも平気だった…
でも…今じゃ…
「あやや?…どうしたんですか?こんな所で」
聞き覚えのある声で誰かが話しかけてきた。
最初のセリフで大方誰なのかは予想が付いた。
「なんだ…天狗か…何の用?」
「何の用だとはまた白々しいですね…上司が寂しそうにしていたので声をかけたというのに…」
いきなり図星を突かれてちょっと動揺したけど…そこは…ほら…鬼だし…上司だし…とにかく堂々と答えようと思ったけど…
「そんな事…無い」
自分でも驚くほど小さな声で答えてしまった。
マズイ…
天狗の事だ…これでは…色々感ずかれる。
恐る恐る後ろを振り返ってみる…
そこには予想通りの天狗の良い笑顔が…って?!
「ちょ、ちょっと!何考えているのよ!?」
「いやいや御心配無く…面白い物が見れたなんてこれっぽっちも思ってないですからご安心を」
目の前の綺麗なザ・営業スマイルを見せている天狗“射命丸文”だけど…彼女の左手はせわしなく何かを手帳に書き込んでいた。
「いや…ちっとも安心できないよ!っていうか手帳に何か書き込んでいるみたいだけど?」
と言ってもう一度目をそこにやるともう彼女の手にはペンも手帳も無くなっていた…
そしてそれをアピールするかのように手をひらひらとさせている。
「それよりどうしたんですか?遠くから見ても分かるくらい寂しそうな背中をしていましたけど」
「だから何も無いって言ってるでしょ!」
そんな訳ない…
それなのに頑なにそれを否定しようとしてしまった。
「そうですか…なのに先ほどはあのような返事を?」
「…」
また図星を突かれてしまって何も言い返せなかった。
「おやおや…いけませんねぇ…鬼が嘘を付くのは」
「鬼だってたまには嘘付いたりするんだよ」
「ではさっきのは嘘ということですか」
「…」
目の前の天狗はあたしの顔を見ながら、うちわで顔の下半分を隠しながらニヤニヤしている…
相変わらず…この天狗は…
これ以上強がってあらぬ記事を書かれてしまうんじゃないかと思ったあたしは天狗に霊夢と喧嘩して神社を飛び出してしまった事を話すことにした。
が…その前に…
「分かったよ…話してあげるよ…とりあえずあんたが持っているペンと手帳とカメラををよこしなさい」
「あや?!何を言っているんですか!これは私のアイデンティティですよ?!これを取られたら私は」
「つべこべ言ってないでいいからよこしなさい!」
そう言ってあたしは天狗が逃げ出す前に飛びかかり、ペンと手帳とカメラを取り上げた。
取り上げられた天狗はぶつぶつと「私の…私の…」と呟いていたが…気にせずに話すことにした。
「あなたが悪いですね」
話を聞き終わった天狗が最初に言った言葉がそれだった。
「…そんなの分かってるよ」
「そんなことしたら誰だって怒りますよ…」
そんなことは分かってる…
でも…もうそんなこと言ったって…
「分かってるよ!でもね…でもね…もう言っちゃったよ…逃げ出しちゃったよ…もう遅いよ!」
「…そんなことはありません…今からでも遅くはありません…謝りましょうよ」
「でも…でも…」
絶対…許してくれない…あんな酷い事してしまったあたしを霊夢は…霊夢は…
「絶対許してくれますよ…あなたは悪い事をしたと分かっている…ならすることはただ一つでしょうに」
「でも…」
天狗の言葉にはどこか絶対的な自信の様な物が見え隠れしていた。
だけど…だけど…
だけどの後が続かない…最初から分かっていた…今の自分が何をしないといけないのかを…でも…
「はっきりとしませんねぇ…悪い事をしたら謝る!そうでしょう?こんなことそこらの子供でも知っているというのに」
「…」
「もういいでしょう…御健闘をお祈りいたします。では、また」
そう言い残して天狗は夜空に飛び出し、あっという間に見えなくなってしまった。
「悪い事をしたら謝る…か…そうだよね…それしかないんだよね…」
もしかしたら…あたしはただ怖がっていただけなのかもしれない…もう…一人は嫌だ…皆と一緒にいたい…何より…霊夢といたい!
「よーし!頑張るぞ!」
あたしは座っていた岩の上から飛び降りて神社に向けて走り出した。
…何か…忘れている様な気がするけど…
「やっと行きましたか…」
文はさっきまで萃香がいた岩の上に立っていた。
そして…その足元には…
「謝礼…ということで記事にさせていただこうかと思いましたけど…今回はこれで我慢しましょうか」
と言って足元に置いてあったペンと手帳とカメラを取った。
「それにしても…心配なら御自分で来ればいいものを…まったく…人使いが荒い方ですね」
と言い残して文は再び夜空に向けて飛び出した。
「着いた…」
あたしは神社の前まで来ていた。
だけど…どうしても神社の中に入っていけない…あと一歩が踏み出せない…
踏ん切りがつかずに鳥居の辺りを行ったり来たりしていた。
「あら…帰ってきてたのね」
「れ、霊夢?!」
急に声をかけられてびっくりして声が裏返った…
振り返るとそこには霊夢がいた。
顔を見る限り…もう怒ってはいないみたいだけど…
「そんな怖い物でも見たみたいに怖がることは無いでしょう?」
「う、うん…ごめん…」
それからなんて謝ればいいのか分からなかった…
霊夢もあたしも何も言わないから沈黙が続いた。
でもそのうち色々と考えるのがバカらしくなったあたしは腹を決めた。
「れ、霊夢!」
「何?」
息を整えて…霊夢の顔を見て…あたしは思いっきり頭を下げた。
「ごめんなさい!!!」
また沈黙が続いた…
あたしは霊夢の顔を見るのが怖くて頭を上げられなかった…
「違うでしょう」
「え?」
頭をあげると…霊夢は…
「帰って来た時は『ただいま』…でしょ?」
「え…?」
まったく予想外の事を言ってきた…
一瞬どうしたらいいのか分からなくて出てくる言葉もうやむやになって口から出てこない…
でも…何て言うか…ただ…ただ…
「あ…えっと…た、ただいま」
「うん、おかえりなさい」
あえて萃香が出て行った描写は省いたんですかね?
妄想のし甲斐がありますわぁ
ごちそうさまです。
ただ、少し薄味な気もしますね。
飛び出した理由や心の葛藤といったものを具体的にトッピングすれば味が濃くなるかもしれませんね。
最も、少し食傷ぎみの私にはちょうどいい話でした。
読ませていただきありがとうございます。