レミリア「こんなにも月の紅い夜に 何方かしら?」
血の様な色の月を背に塔の頂上で吸血鬼が問う。
立ち尽くすは紫の魔女。
七曜を操る偉大なる魔女。
そして問い返すも賢者たる魔女。
パチュリー「ヴラド公の末裔よ。私に力を貸してくれないだろうか。新しい魔法に貴女の魔力が必要なのだ」
魔女は恭しく頭を下げる。
が、帽子は取らない。
吸血鬼は嫌悪感を露にし答えた。
レミリア「その壱、私に得が無い。その弐、非常に面倒臭い、その参、私とお前じゃ釣り合わない」
レミリア「よって却下だ」
幼くも威厳溢れる声で吸血鬼が言い放つ。
その目は純粋に夜を愉しんでいた事を邪魔された怒りによって
月よりも紅く輝いていた。
レミリア「第一ウチのメイド長はどーしたのよ。アンタにやられるような鍛え方はしてないつもりだけど」
パチュリー「私の使い魔に相手させてるわ。悪魔だし死にはしないでしょう・・・・・・たぶん」
レミリア「ちょっ・・・あの子のナイフ銀よ?」
パチュリー「」
魔女は一瞬しまった・・・というような表情をしたが
まあいいや と結論付けた。
過ぎた事は仕方ない。代わりなんていくらでも呼べるし。
それより眼前のヴァンパイアだ。
今までの会話を分析してみた所どうも話が通じないようだ。と言うより聞く気が無い。
なら仕方ない。力尽くでも従わせる他無い。
魔女が呪文を呟く。発現する精霊の火炎。
それを手に取ると思い切り握りつぶす。業火が拳に渦を巻く。
パチュリー「仕方ない・・・肉弾戦とかは余り得意では無いのだが・・・」
魔女はやれやれ とため息をつくと一息で吸血鬼の前まで移動し
そしてその燃え滾る拳を多少の驚きと期待感で歪んだ顔面に
―叩きつける
そして其れを受けた吸血鬼が笑う。哂う。嗤う。
レミリア「そのような拳で私を平伏させようと。そう言うのだな魔女よ」
魔女がギリ、と歯を鳴らす。
三日月のように吸血鬼の口が裂け呪詛が溢れる。
レミリア「運命は歯車 故に無情 定めるは鎖 故に無情」
瞬時に詠唱だと気付いたが時既に遅し。
吸血鬼の背後に浮かぶ魔法陣から数多の鎖が蛸の足のように伸び、先端が魔女の胸を貫く。
貫く鎖は二本三本と増えて行き、傷口を広げるように蠢く。
魔女が血を吐き、吸血鬼の顔に引っ掛ける。
その血を吸血鬼がそれが蜂蜜であるかのように口に含む。
レミリア「うーん不味い。不味いな 不健康な味だ」
楽しそうな声を上げた吸血鬼が表情を曇らせため息を吐く。
すると魔女の胸を貫く鎖は紅い液体になって消えた。
ようやく開放された魔女は胸に手を当て治癒魔法を唱える。
その様子を薄汚れた犬を見る様な目で見ていた吸血鬼が口を開く。
レミリア「もう終わりか魔女。ウチの門番のほうがまだ遊べるぞ?」
パチュリー「煉瓦の壁と耐久力を比べられても困るわ」
レミリア「嫌だね。床だよ床」
パチュリー「鎌は持ってなかったみたいだけど?」
ククク と喉を鳴らして吸血鬼が笑った。
レミリア「ふむ・・・さて回復したかね魔女よ」
パチュリー「貴女を倒せる程度にはね」
レミリア「面白い冗句だ、今世紀最大のな」
しかし今度は言葉とは裏腹に面白くなさそうな顔だった。
月よりも紅い瞳が、ナイフのような犬歯がギラリと光る。
レミリア「そろそろ終わりにし」
バシュッ とセリフを言い終わる前に吸血鬼の足元から水が噴き出した。
噴き出した水は竜のように細長く伸びて吸血鬼を囲む。
レミリア「話くらい最後まで聞いてくれんかね」
パチュリー「チェック」
そう魔女が言うと水の竜は勢いを増して
吸血鬼を絞め殺すかのように輪を狭める。
ゴゴゴゴゴと地鳴りのような音がした。
レミリア「水流如きが私の行く手をはばm」
ガン とまたセリフの途中で横槍が入る。
今度はエメラルドの巨大な柱が水の竜を砕き、吸血鬼を押しつぶした。
そして閻魔が罪人に判決を言い渡すような冷めた声で魔女は詠唱を終える。
パチュリー「Royal Flare.」
刹那。
光が飽和する。
熱風が爆裂する。
其処に在るのは太陽。
純然たる魔力によって構成されたもう一つの小さな太陽。
闇の住人の身を焼く神の火。
レミリア「ガッ・・・ア・・・あああアアあアあアアあアアあああアアあ!」
夜の王が悲痛に叫ぶ。
輝く槍に体を串刺しにされてのた打ち回る。
レミリア「グッ・・・あ・・・止めなさい・・・力を貸してやるからその・・・その魔法を止め・・・ろ・・・ッ!」
言い終わった瞬間。館の中に闇が舞い戻った。
おどけたように魔女が言う。
パチュリー「では交渉成立という事で」
レミリア「悪魔め・・・」
パチュリー「面白い冗句ですね。紅の悪魔さん」
魔女の魔法で消耗した体力を回復した吸血鬼が忌々しげに尋ねる。
レミリア「で、魔法って何よ」
パチュリー「転移魔法よ」
レミリア「転移?私の力要らないでしょ」
パチュリー「場所が問題なのよ、かなり強力な結界を越えなきゃならないの」
レミリア「ふぅん・・・どんな聖域よ」
パチュリー「東の国の・・・幻想郷よ」
しかしながら何事も急といいますか、あっさりしているといいますか。
もうちょっと細かく書いても良かったと思いました。
まぁでも、ちょっとばかり違和感を覚える部分もあってこの点数で。
私は今後の作品、活躍に期待しています!
カッコいいし、軽妙です。
が、全体的に何だかあっさりしすぎてるような気がします。
紅い月の昇る夜、殺し合いの始まらんとする張り詰めた空気。
パチュリーとレミリアはいかにして対峙するに至ったのか。
バトル場面は重々しく描写するのか、スピード感を重視して爽快感を演出するのか。
焦りや愉悦・油断、勝者の余裕といった心理描写。などなど……。
そういった部分は作者さんの匙加減にもよりますが、
詳細さを加味して文章・内容ともに、
読み応えある作品を目指してみるのも悪くないんじゃないでしょうか。
それから基本的なことですが、
人物名の後に台詞を持ってくる小説は、あまり褒められた形式ではありません。
お話が面白くても、それだけで興が削がれてしまいます。
また、「・・・」ではなく「……」を使いましょう。三点リーダというものです。
――とはいえ、しっかり作りこめば、紅魔郷の前日譚としてとても面白くなりそう。
偉そうに語ってしまいましたが、作者さんの成長に期待してこの点数とします。
なぜ最初に肉弾戦を挑んだのかわからん
身体能力が違いすぎることくらいわかるだろうに
パチュリーの初手はどう考えても愚策だ
それに対するレミリアも見下すのはいいんだが、見下してるわりに最後があっさりとしすぎていて
プライドも何も無いように思える
ロイヤルフレアで止めを刺すという終わりにしたかったのでしょうが
もっとパチュリーが余力を残して無くて、ギリギリで何とか発動できてチェックメイト
みたいな終わりかたのほうが良かったと思う
今後に期待
パチュリーが凛としててかっこいいですね。
僕も東方オンリーな本文(後書きは別)をこのくらいかっこよくできることを目標としてます。
もっと、本質の知識も読者のアドバイスも吸収しまくって、このくらい熱い戦い物を書きたい限りです。