鈴虫の音が静かに広がる、夏の夜の守矢神社の一室。
東風谷早苗はその日一日の活動の全てを終え、床に就いたところであった。
「夜分遅くに失礼しますわ」
「ぐはっ!」
抱えた疲れを解消せんと、眠りに落ちようとした矢先の事。
一切の予兆なく、紅魔の館のメイド長が布団の中に姿を現した。
おそらく彼女の時を操る能力を行使してのことだろうが、同じ布団に若者二人が寝ている状況は少しまずい。
つまるところ添い寝状態であるのだがそれだけでなく、今の早苗には訳あってどうにも都合が悪いのだ。
「あ、えと、その…」
「ごめんなさいね、うちの主は我が儘で。思い立ったらすぐの方な――あら?」
吐息のかかる距離、真っ赤に染まる顔。
東風谷早苗は今……全裸でした。
「……変わった寝方をするのね」
「げ、幻想郷では、常識にと、とと、囚われてはいけない…かと、と」
「そういうもの、なのかしら…まぁどうでもいいわ。はい、これ」
流石先住幻想郷人は違う――と、早苗が感心するほど早く咲夜はその事を流した。
そして手渡したのは真っ紅な一枚の封筒。
「なんですか、これ」
「お嬢様直々に筆を執ってのお誘いよ。来るか来ないかは一応自由。でも……」
「でも?」
「来なかったら私が許さない、かもね」
咲夜は鋭い視線でスッパを一瞬睨みつけたものの、「冗談よ」と言ってすぐに柔らかい表情になった。
そして「あなたが来なかったら、きっと怒られるのは私だもの」と困ったように呟いた。
「用件はわかりました…けど次はできればもっと明るいうちに来て下さると助かるんですけど…」
「暑いからって、何も着ないで寝てる方も寝てる方だと思うけど…」
「う゛っ」
「タイミングに関してはどうしようもないわ。お嬢様次第だもの」
「それでは」と一言残し、瀟洒な彼女は主の元へと帰っていった。
早苗の心に、鋭いナイフを一本突き立てたまま。
「そりゃ、悪いのはわたしですけども……」
その晩彼女は、大量の涙で濡らした枕に顔をうずめたまま眠りに落ちた。
――――――――――――――――――――
「ただいま戻りました、お嬢様」
「ご苦労様。偉いわ、咲夜」
「この程度の事、勿体無いお言葉ですわ」
招待状が早苗の手に渡ったすぐ後の紅魔館、紅い悪魔は従者の完璧な仕事振りに笑顔を浮かべた。
「やっぱりあなたは有能ね」と、当たり前のことを改めて口にする。それぐらいに、機嫌がいい。
「お嬢様、どうかなされましたか?いつになく上機嫌なようですが」
「なぁに、先のことを思って少しばかり興奮しているのさ。目の前のことだけでなく、先のことに心を奪われるとは」
そう口にしている顔も、どうにもニヤついている。
レミリア・スカーレットは笑顔のままにグラスを傾けた。
「まだまだお若い証拠ですわ」
「人間の小娘にいわれると、色々複雑な気分になるよ」
「わかってて言わせていただきましたわ」
今度は従者が笑顔になり、主は少し苦い顔。
なんだかんだで、その晩もいつも通りに。
紅魔の夜は、更けていく……
――――――――――――――――――――
「というわけなんですよ!霊夢さん!」
昨夜、咲夜から受け取ったばかりの真っ紅な封の招待状を手にした東風谷早苗。
彼女は霊夢に事を相談するため、博麗神社を訪れていた。
「……あんたが素っ裸で寝てる変態小娘だって事だけはわかったかしら」
「えっ」
早苗の動きがピタリと止まる。表情は固まったまま。
勢いよく流れ出る汗と、大きな心臓の音が彼女の生きている事の証明となっている。
『常識的に考えれば』当たり前の事だが、彼女は自分が招待状をもらった事だけを霊夢に話したのである。
まさか自分が全裸で寝ていたことなどうっかりでも話している筈がない。
「や、やだなー、霊夢さんたら変な冗談言うんだから~!」
「ほれ」
何とか冷静を取り戻した早苗に、霊夢は手にしていた新聞紙を押し付ける。
早苗は新聞に視線を落とし、一面に大きく載っている記事…いや、写真を見て絶句した。
「昨日の晩の事だってね。それを今日のお昼には記事にできて配れてるあたり、幻想郷最速(笑)も伊達じゃないみたいね」
「な……な、なんじゃこりゃー!」
『山の巫女の痴態!「私、寝るときはいつも着ないんです(笑)」』という大きな見出しの横に、写っているのは紛れもなく自分の姿。
枕に顔を埋もれさせ、何も纏わぬ上半身が掛け布団から出ている東風谷早苗の姿だった。
「あ、ああ、ア゛ーーーーーーーッ!!!」
「騒ぐな、近寄るな、変態緑」
まさかの事態に半狂乱になる早苗、それを鬱陶しそうにする霊夢。
彼女が落ち着くのには、半刻ほどを要した。
「私、もうお嫁にいけない…」
「ふぅ…そんなに騒ぐぐらいなら初めから撮らせなきゃいいのよ」
「撮らせてません!霊夢さんの中の私はそんなに痴女ですか!」
「わかったわかった……それで、用件は何だっけ?」
またも暴れだしそうな彼女を押さえ、霊夢は本来の用件を話すように促す。
すると驚くほど切り替えが早く、平常に戻った早苗が切り出した。
「だから昨夜、咲夜さんが来まして――」
霊夢は問答無用でスペルを放った。
「つまり、今日のお夕飯の席に招待されたって事?だったらそう言いなさいよ」
「別にここまで酷い事しなくても良いじゃないですか……」
早苗はボロボロになりながらも、なんとか伝えたかった内容を伝えられた。
……ボロボロなのは自業自得だが、霊夢にしてみれば散々聞いてきたネタだったため、殺意すら沸いたに過ぎないのだ。
「それで何?行きたくないから私に代わりを頼みに来たわけ?」
「そうは言ってませんけど…なんで私なのかな~と思いまして」
封を切って出てきた便箋にはこう書かれていた。
『こんばんは、現人神さん。突然で悪いのだけれど、明日の夜、よければうちで食事しないかしら?
強制もしないし誰かを呼んでも構わないけど、ちょっと二人きりで話したいこととかあるのよ。
明日の夜、あなたの空腹の虫が鳴いた頃でいいから待ってるわ。 レミリア・スカーレット』
宴会の席なんかで面識があったりはするものの、あまり接点がない相手からの誘い。
まして、『二人きりで』などと書かれていては何を目的としての事なのか、訝しむのも無理はない。
そこで早苗は、自分などよりレミリアに詳しいだろう霊夢の元を訪れたのだ。
「ふーん…あなたと『二人きりで』ねぇ」
「何か分かりますか?」
しかし、レミリアと仲のいい霊夢でも、この話はあまりピンと来るものでもなかった。
レミリアと早苗、やはり接点のかけらも浮かばない。少なくとも、自分の知る限りは。
「ダメね、特に思いつく事もないわ」
「そうですか…」
レミリアが早苗と1対1で話したいこと、それには興味があった。
でもそれが、自分にはまったく関係ないことだと勘が告げている気もした。
「とりあえず行ってみなさいよ。悪くはされないと思うわ」
「正直ちょっと怖いんですけど…霊夢さんも一緒に来てくれませんか?」
「神奈子達とでも行きなさい。私は…この後ちょっと用事があるから」
そう言うと霊夢は例の新聞を握り締め、今頃同じものがばら撒かれているであろう人里へと飛びたった。
早苗は、とりあえずその姿をおとなしく見送っておいた。
そして夜。早苗は一人で紅魔館に向かうところである。
「いってきまーす…はぁ」
「「いってらしゃーい」」
本当は一人で行くのは気が乗らないのであるが、彼女の頼りにしていた二神は
「吸血鬼が二人でといったのなら私達が行ったら水をさす事になるだろう」
「それに、久しぶりに神奈子と二人っきりってのもいいしね。私達には遠慮せず行ってきな」
とのことであった。
こんなことを満面の笑み言われてしまっては返す言葉もなく……
「結局一人できちゃいましたよ…あはは」
「東風谷早苗さんですね、どうぞ。お嬢様がお待ちです」
門をくぐり、悪魔の領地に踏み入れてしまった。
空にはもう月が輝き、今宵も妖しく輝いている。
「東風谷早苗様ですね、お待ちしておりました。」
「は、はぁ…」
「今夜は月がきれいなので、外でお食事になりたいとお嬢様が。こちらになりますわ」
今日の早苗はお客様だからだろうか。門番もメイド長も他の者達も、深く頭を下げ丁寧な態度で対応してくれている。
その雰囲気に早苗は若干居心地を悪くしつつも、自分も失礼がないよう、一層気を引き締めた。
そしてついに、この素敵なお食事会の招待主と対面した。
「どうぞ、現人神さん」
「は、はい!」
吸血鬼が口にした何と言う事のない一言に緊張しつつ、咲夜が引いた椅子に座る。
家族4人で囲めば丁度良さそうな大きさ、といえそうな程度のテーブル一つを間に挟んで向かい合う。
レミリアと早苗は今、1対1で遮る者なく真正面から向き合っている。
咲夜はもちろん、先ほどまで沢山整列していた妖精メイドもいつの間にか姿を消している。
…正直、早苗はすでに心が折れかけていた。それでも勇気を出し、先手を取ろうと声を出す。
「えっと…今日はどうして…」
「早苗」
「ひゃいっ」
しかしもちろん彼女に主導権は渡らない。
自爆してるだけとも言うが。
「で、いいかしら?あなたの呼び方だけど」
「へ?…あ、はい!なんとでもお好きなように呼んでくださいです!?」
「……あなた、緊張してるのかしら?前に見たときと印象がずいぶん違うのだけれど」
「きき、気のしぇいでひゅ」
呆れた顔になりつつも、吸血鬼は瀟洒な従者を呼び命令する。
空っぽだったテーブルの真ん中に、見ているだけで幸せになれそうな料理が次々と並べられる。
すると一通り並んだ頃に、早苗の腹部から空腹を訴える音が聞こえてきた。
「…あの」
「遠慮せず食べなさい。お腹が満たされたなら、少しは気持ちも落ち着くでしょう」
ゆったりとした笑みを浮かべ、レミリアが早苗に囁く。
少し顔を赤らめながらも、早苗はナイフとフォークを手にとった。
「い、いただきます」
「はい、どうぞ。私が言う事でもないけれどね」
レミリアが笑顔で見守る中、早苗は一口大にしたそれを口に運ぶ。
それを確認して、レミリアも小さな何かを口に放った。
しっかりと噛んで味わう。早苗が真っ先に漏らしたのはありふれた言葉だった。
「おいしいです…」
「ふふ、当たり前さ。何せ家の奴らに作らせたんだからな」
上機嫌そうに笑うレミリア。おいしい料理に緊張が解けてきた早苗。
食卓の上の空気は、いくらか軽くなった。
「その肉、気に入ったようでよかったよ。蛇のものだからてっきり本能とかで拒絶されるかと」
ピタ…と、早苗の手が止まる。
「ああ、ちなみにこっちの私が食べてるのは蛙だな。こっちもどうだ?結構うまいんだよこれが」
体を大きく震わせる早苗。その震えは恐怖から来るのではなく、怒りから来るもの。
その様を見て悪魔は大きな笑い声を上げた。
「何がおかしいんですか?」
「いやぁ、やっぱり気にするのかーと思って、さぁ」
そう答える吸血鬼の顔は今や、先ほどまでの柔らかい表情からは想像できぬ、いやらしい下衆なものであった。
早苗は席を立ち、目の前のそれに対し構えた。
「頭にきたか、だろうな。私がひどい仕打ちをするんだもんなぁ、こんな風に蛙を食べたり」
またも口に小さな塊を放り込むレミリア。それはおそらく、蛙のものなのだろう。
それが早苗にとってどういうことなのか……
当然、彼女は激昂した。早苗はスペルを唱え、展開された弾幕はレミリアを狙う。
「神様を舐めるなッ!人類を舐めるなァッ!」
「いいわ…それでこそよ。でも……『不夜城レッド』!」
人であり神である早苗のスペルだが、夜の女王である彼女に今挑んだのは流石に分が悪かった。
早苗の展開した弾幕は掻き消え、そこには椅子に座ったままのレミリアと倒れ付す早苗の姿が残っていた。
「この悪魔め……!」
「非力なものね、人間の肉体などというモノに囚われているからよ……と、まぁお芝居はこの辺でいいわ」
早苗が自分の弾幕で吹き飛ばしたものと思っていたテーブルが、再び彼女の目の前に現れた。
その上に並ぶ料理や食器の様子を見る限り、先ほどまでのものと同じようだった。
「ごめんなさいね…他にも理由はあるけれど、あなたの緊張を解きたくて意地悪を言ってしまったわ」
「じゃあ、蛇と蛙じゃ……ないんですか」
早苗の全身から力が抜ける。ふわっと体が浮き、椅子に座らされた。
目の前の悪魔は、もうただのレミリア・スカーレットになっていた。
「流石に悪かったわ、謝らせて頂戴…」
「いえ、こちらこそ変に硬くなっちゃってすいませんでした」
お互いに軽く下げていた頭を上げると、目が合った。
なんだか少し可笑しくなって早苗は笑ってしまった。こんなお嬢様が蛇や蛙を食べたり食べさせるはずがない、と。
そんな早苗を見て、レミリアも少し笑った。さっきまで鬼の顔をしていた少女が、こんなに綺麗に笑うものかと。
「あなたの笑顔、とっても素敵ね。神としての神々しさと、人の純粋さから来るのかしら?」
「そんな大層なものじゃないですよ、それを言ったら私なんかより、レミリアさんのほうがお上品で素敵ですよ」
今の二人間にはもう、重苦しく刺々しい空気は残っていない。
早苗の緊張も消え、レミリアはついに本題を切り出せることができるようになった。
「引っ張りすぎてしまったわね。そろそろ、今日あなたを呼んだ理由を…本題を話すわ」
「はい。でもその……私も引っ張らせてしまってすいませんでした」
衣装こそ似てるもののやはり霊夢とは違うな、とレミリアは改めて思う。
いや、根底にあるモノは何も変わらないのだろう。だが霊夢はなんというか……きっとそれが素直じゃないのだ。
「霊夢も神になればあなたみたいになるのかしらね……」
「え?そんなこと思って私を呼んでくれたんですか?」
気付けば早苗は食事に戻りながら話している。その辺は、霊夢とマイペースな所が似ているだろうか。
そしてどうやら、料理をとても気に入っているようだ。
「いいえ、今日のお話はあくまで私とあなたのお話よ」
「はぁ、悪魔だけにですか」
「私は運命を、あなたは奇跡を操れる事に関しての、ね。」
「???……なんでまたそんなことを?」
不思議に思ったあまりか、早苗も食事の手を止める。
逆にレミリアは真っ赤な液体の注がれたグラスを手に取った。
「私の能力とあなたの能力、できる事が似てるのよねぇ」
「そうです…かねぇ?」
レミリアはグラスを傾け喉を軽く潤すと、手にしたグラスを宙に放り投げた。
グラスの中身は辺りにぶちまけられ、グラス自体も重力に沿ってまっすぐに落下した。
そのまま地面に向かったグラスは、パリンと音を立てて割れた。
「こぼした中身も、割れたグラスも元には戻せない。でも、放り投げられる事のない運命にあれば――?」
レミリアの手の中には赤い液体の入ったグラスがあった。
「…なるほど。奇跡でも同じような事ができそうですね。それと、たぶんさっきのこのテーブルも」
「その通りよ、私の能力で。そしてあなたの能力でも同じことができるでしょう。だけど」
「その効果の働き方が違う、能力の性質が違うという事ですか?」
レミリアは早苗の呑み込みの良さに少しばかり感心した。流石、自分と似た能力を持つものといった所か。
「そう、あなたの言う通り。ある意味では性質が同じだけれど、ある意味では性質が違う。それが私達の能力」
「でもそれって、結局は大きく違いませんよね。なんで私をここに招くに至ったんですか?」
レミリアは視線を宙に移し、ぽつりと言った。
「だって、私の能力はネガティブっぽくて、あなたのはポジティブっぽかったから」
「え?」
「ちょっと羨ましかったのよ……あなたが」
レミリアはそう言うと、静かに俯いた。
早苗はその態度に驚いた。いつも皆の前で大きな態度をとっている我が儘お嬢様の姿は、こんなにも小さく、可愛らしいものだったろうか。
「運命って、決められていた事でしょう?それを弄るのって、まるで大きな我が儘みたいじゃない」
「奇跡はどちらかと言うと突然起きた素敵な事…ってかんじですしね。そういわれたらかなり前向きかも…」
「それがね、ちょっとだけ気に食わないのよ」
俯いていて表情はよく読めないが、要するに隣の芝が青かっただけなのか。
「じゃああれですか、なんとなーく私のことが気になったと」
「ええ…あなたの能力が素敵だなーって、そう思って少しお話してみたくなったのよ」
そんなことが原因で私は咲夜さんに裸を見られ、なんだかとっても緊張し、さらには食事の席で弾幕ってしまったのか。
早苗は微妙な気持ちになりつつも、長くを生きた者の気まぐれとはこういうものなのかと納得もしていた。
「でも私は……レミリアさんには奇跡より運命のほうが似合ってると思います」
「え?」
早苗はニッコリ笑うと、笑顔を崩さずに言った。
「ただでさえその不気味さ・恐ろしさ・力強さなどで忌み嫌われる吸血鬼なんですから『運命(笑)』みたいな重苦しくて堅苦しい能力がお似合いだって言ってるんですよ(笑)」
「…あら」
「ニンニクだの十字架だの水だの、元から弱点多いんですから。一個ぐらい気負う事が増えても変わりませんおww」
早苗は愉快そうに笑いながら両手でテーブルをバンバンと叩いた。
その様子を見て、レミリアは小さくため息をついた。
しかしすぐ笑顔になって、早苗に言った。
「さっき私が意地悪したものだから、そのお返しのつもりかしら」
「ええ、その通り。これでチャラです(キリッ」
今度は二人ともが笑顔になり、愉快そうにテーブルを叩いた。
「風祝(笑)ですってww」
「不夜城レッド(キリッ)だっておww」
「現人神とかwwww」
「『永遠に幼き~』とかロリ乙wwww」
「奇跡を起こす程度の能力(キリッ」
「運命を操る程度の能力(キリッ」
「「ねーよwwwwどこら辺が『程度』っていうww」」
二人は大いに笑った。とても楽しそうに笑いあった。
ひとしきり笑い終えると、二人の間にあった心の距離は随分と縮まっていて。
「広い世界から幻想郷へたどり着いて、あなたに会えたのは奇跡かしら?」
「そして近づいて仲良くなった。これは運命でしょうか?」
どちらともなく右手を差し出して、二人はがっしりと握手を交わした。
その瞳には、互いの姿だけを映して。
「改めてよろしく、レミリア・スカーレットよ」
「こちらこそよろしくお願いします。東風谷早苗です」
結局はただの奇跡的な出会いを果たした、運命の二人だったというだけ。
二人の女の子がお友達になった、そんな程度のお話。
「弾幕したり、嫌味言い合っちゃったり…とんでもない始まりですよね」
「いいのよ、霊夢も魔理沙もそうだった。私、人間とはきっとそうなる運命なのよ」
長い生涯から見ればつい最近、だけれど遥か昔に感じる二人の人間との出会い。
そういえば、咲夜だって……
「お嬢様、お取り込み中申し訳ありませんが、お客様です」
「早苗が心配だったから来てやったわ。でも、どうやらお邪魔だったみたいね」
来訪者霊夢の視線の先には、ガッチリと組まれたままの二人の右手。
二人は慌てて手を離すと、少し照れくさそうに声を揃えてこう言った。
「「私達、お友達になったから(ので)」」
「ふーん…」
「まぁ、美しい友情ですわ」
霊夢は少し面白くなさそうにそっぽを向き、
咲夜はニコニコと笑っている。
ぶつかったり、傷つけあったりするけれど、なんだかんだで仲良くなる。
それが彼女達の友達の作り方。
それが彼女達の他者との接し方。
「ところでこの肉、なかなかいい蛙ね。結構素材もこだわるじゃないレミィ」
霊夢は乱暴な手つきでそれを次々に口へと放り込んだ。
天狗退治で疲れた霊夢は、どうやら空腹になっていたようだ。
「咲夜、この貧乏人に蛙肉と鶏肉の違いを教えてあげなさい」
「わかりましたわ。ですがお嬢様、先に彼女に教えたほうがいいのでは?」
それが彼女達の、いつもの幻想郷。
「……という運命だったのさ。おしまい。」
確かに程度ってww
というか霊夢は普段から蛙を食べてる…のか?ww
最後まですらすら読めて、非常に楽しませてもらいました。
別にボコボコにする必要なくない?
素でも故意でも別によくない?
筆者さんの伝えたい流れについては分かっているのですが、
霊夢さん、少しやりすぎでは?って感じにコメントしたかったんです;
むしろ私のコメントが分かりにくかったかもしれないです、申し訳ないです。
レミさな、そうきたか。
ところでこの日の文々。新聞はどこで買えますk(
でも、それを差引いてもいい作品でした