ただ、熱かった。
滾る湯の中に放り込まれ、泳がされる。
かなりの数の仲間もいるようだ。私たちは、これからどうなるのだろうか……。
泳がされる、とは上手いことを言ったかもしれない。所詮、私たちの生などは終着点が最初から見えている。そこに向かって、流されているだけなのだから。
そんなことを考えながらも、体はぐつぐつと悲鳴をあげる。
まるで、自分を支える芯がなくなっていくような感覚。
あいつは、無事だろうか――
私がひそかに想いを寄せていたあの娘。
姿が見えないということは、この拷問を受けていないということだ。いないでくれ、という思いと、今すぐ会いたい、という思いがぶつかって複雑に絡み合う。決して解り合うことのない二律背反と終わりの見えない責め苦は、確実に私の精神を蝕んでいった。
意識も朦朧としてきたころ、突然体を引き上げられた。
今度は冷たい水をかけられた。火照った体を冷ましてくれるようで心地よい。
地獄とも思わせる業火から逃れ得た安堵からか、もはや立つことすら儘ならない。……いや、体自体が別のものとなってしまったのかもしれない。
己のゆく先を、悲観するでもなく冷静に考えていた。私たちは、そういうものだったのだろう。
そう思わなければいけないのだ。
冷水で体を冷やされたのち、私たちは巨大な手に掴まれ、場所を移動させられた。その目には一切の慈悲や良心の呵責などはなく、予感している運命を、より強く確信させるものでしかなかった。
窓から風に揺れる青葉が見える。
蝉の声なんかも時期真っ盛りだ。
幻想郷は、夏を謳歌していた。
そんな中、私たちは……死ぬ。
抗いようのない運命。生まれてきた時から決まっていた運命。
先の通り、悲観はしていない。ただ、空しいのだ。
せめて、最後のあの娘に会いたかった。
――…………!
ふと、誰かに呼ばれた気がした。
意識を傾けてみると、そこにはあの娘がいた。
だが、神よ。あなたはなんと慈悲深く、なんと残酷なのだ。
道の途切れたこの場所で、再びあの娘に合わせてくれるとは。
神の悪戯は、私にとってのプレゼントか、それとも嫌がらせか。
そんなことはどうでもいい。今はただ、あの娘と話ができることを感謝した。
――大変なことになったな。
――ええ、そうですね。
――熱くはなかったか?
――熱かったです。けど……
――けど?
――あなたのことを考えていたら、耐えられました。
――…………!
――やっぱり、気付いてなかったのですね。
――わ、私のような色白な者など、眼中にないとばかり……。
――見た目など関係ありません。あなたは思慮深く、温かい人です。
彼女はそう言うが、やはり気にはなる。彼女の肌は、春を思わせるような桜色で、とても美しい。
そこかしこにいるような、どの者とも似たり寄ったりな私としては、些か引け目を感じていた。
だが、彼女は言葉は素直に嬉しかった。
――……ありがとう。私も、君のことを想っていた。
――知ってます。だから、ずっと待ってたのに……。
――す、すまない。
――ふふ、いいのです。こうしてまた会えたのですから。
――恐くは、ないのか?
――あなたと、一緒なら。
――……ありがとう。
不意に、地面が持ち上げられた。
――時間ですね。
――ああ。
もうあと数分もしないうちに、私たちは死ぬだろう。
だけど、最後の最後に、互いの気持ちを確かめあうことができて、良かった。
――次、生まれ変わったら、一緒に!
――はい! 次こそ、あなたと一緒に!
「そうめん流すわよー」
紅白の悪魔は、そう言って私たちを流していった。
滾る湯の中に放り込まれ、泳がされる。
かなりの数の仲間もいるようだ。私たちは、これからどうなるのだろうか……。
泳がされる、とは上手いことを言ったかもしれない。所詮、私たちの生などは終着点が最初から見えている。そこに向かって、流されているだけなのだから。
そんなことを考えながらも、体はぐつぐつと悲鳴をあげる。
まるで、自分を支える芯がなくなっていくような感覚。
あいつは、無事だろうか――
私がひそかに想いを寄せていたあの娘。
姿が見えないということは、この拷問を受けていないということだ。いないでくれ、という思いと、今すぐ会いたい、という思いがぶつかって複雑に絡み合う。決して解り合うことのない二律背反と終わりの見えない責め苦は、確実に私の精神を蝕んでいった。
意識も朦朧としてきたころ、突然体を引き上げられた。
今度は冷たい水をかけられた。火照った体を冷ましてくれるようで心地よい。
地獄とも思わせる業火から逃れ得た安堵からか、もはや立つことすら儘ならない。……いや、体自体が別のものとなってしまったのかもしれない。
己のゆく先を、悲観するでもなく冷静に考えていた。私たちは、そういうものだったのだろう。
そう思わなければいけないのだ。
冷水で体を冷やされたのち、私たちは巨大な手に掴まれ、場所を移動させられた。その目には一切の慈悲や良心の呵責などはなく、予感している運命を、より強く確信させるものでしかなかった。
窓から風に揺れる青葉が見える。
蝉の声なんかも時期真っ盛りだ。
幻想郷は、夏を謳歌していた。
そんな中、私たちは……死ぬ。
抗いようのない運命。生まれてきた時から決まっていた運命。
先の通り、悲観はしていない。ただ、空しいのだ。
せめて、最後のあの娘に会いたかった。
――…………!
ふと、誰かに呼ばれた気がした。
意識を傾けてみると、そこにはあの娘がいた。
だが、神よ。あなたはなんと慈悲深く、なんと残酷なのだ。
道の途切れたこの場所で、再びあの娘に合わせてくれるとは。
神の悪戯は、私にとってのプレゼントか、それとも嫌がらせか。
そんなことはどうでもいい。今はただ、あの娘と話ができることを感謝した。
――大変なことになったな。
――ええ、そうですね。
――熱くはなかったか?
――熱かったです。けど……
――けど?
――あなたのことを考えていたら、耐えられました。
――…………!
――やっぱり、気付いてなかったのですね。
――わ、私のような色白な者など、眼中にないとばかり……。
――見た目など関係ありません。あなたは思慮深く、温かい人です。
彼女はそう言うが、やはり気にはなる。彼女の肌は、春を思わせるような桜色で、とても美しい。
そこかしこにいるような、どの者とも似たり寄ったりな私としては、些か引け目を感じていた。
だが、彼女は言葉は素直に嬉しかった。
――……ありがとう。私も、君のことを想っていた。
――知ってます。だから、ずっと待ってたのに……。
――す、すまない。
――ふふ、いいのです。こうしてまた会えたのですから。
――恐くは、ないのか?
――あなたと、一緒なら。
――……ありがとう。
不意に、地面が持ち上げられた。
――時間ですね。
――ああ。
もうあと数分もしないうちに、私たちは死ぬだろう。
だけど、最後の最後に、互いの気持ちを確かめあうことができて、良かった。
――次、生まれ変わったら、一緒に!
――はい! 次こそ、あなたと一緒に!
「そうめん流すわよー」
紅白の悪魔は、そう言って私たちを流していった。
ここから300kbに及ぶ世界初そうめん主人公の大脱出冒険活劇がはじまるに違いない
ありがとうございます!
今後はドリンクやスイーツにも手を広げていきたいですね。
>3
さすが幻想郷ってとこですね。
常識の範囲に収まらない。そこにシビれるあこがれるぅ。
>5
勘弁してくださいorz
どう転んでも食われて終わりじゃないですかw
何かじわじわ来るなwwww
オチは読めたのですが、そうめんかwwwww
言葉が綺麗でとても素敵でした。
ていうかお前ら他のやつらと区別ついてるのかww
『そうめん主人公の大脱出冒険活劇』樋から溢れ出して地面で干からびてるか誰の箸にもすくわれずに終着点のザルの中で伸びてテロテロになった姿しか想像できないww
こんなそうめんがいたっていい。だって、幻想郷だもの!
>14
人だなんて一言も……あぁん書いてあるぅー!
>16
人間の数だけ物語があるように、そうめんの数だけ物語が……普通ないですよねw
>17
ありがとうございましたー!
なんか最後でどんでん返し系好きかもしれません。
>ぺ・四潤さん
当人たちはついているのでしょう。……たぶん。
夏場ですし、一瞬でテロテロになりそうですねw
おもしろかったです。
ところでこれ東方で(ry
いや、どんな落ちかは予想してたけど、そうめんかよっ!
正体を知った後、もう一度タイトルを見てみる。
なるほど、タイトルは伏線だったのか……!
最近、葉月さんのSSで名前が出てこないと、オチを警戒するようになってしまいましたよwwww面白かったです!
そして全世界が泣いた。
じゃ、全く関係ない話を見てきます。
ありがとうございました。
私は、東方でやる意味ない作品なんてないと信じております。
>24
最近こういう作品多いですねー私。
新しいジャンルを開拓しなければ。
>31
そらそうめんやったら流されるわ!
って感じのノリでw
>mthyさん
はっ、すでにそういう作家だと思われている!?
大丈夫! こういう作品は当分ありません!
>幻想さん
ありがとうございます!
いってらっしゃいませ!
そんなこと言われましてもw
っていう人がいたら逆にすごいですねw