※この作品は作品集115に収録されている『衣玖と焦げた天子』の続きですが、前作を見てなくても別に支障はありません。
「せ~き~ら~ん雲に~か~くさ~れた~♪龍宮城~に住んでいる~♪龍~宮~の使い~永江衣玖~」
手持ち無沙汰だった為、なんとなく歌を口ずさんでいる私の名は永江衣玖。歌って踊れて空気も読める龍宮の使いである。
ちなみに、先ほど口ずさんでいたのは自作の『永江衣玖のテーマ』で三番まである。
なぜ私が暇しているかと言うと、その原因は私の足元に転がっている。
ちらり
足元に目をやると、そこには相変わらず『比那名居天子』と言う名の炭の塊が転がっているだけだった。
総領娘様が異変を起こして以来、総領娘様が地上で厄介事を起こすたびにお仕置きするのが最近の私の日常である。
なので、ここのところ総領娘様と一緒に居ることが多い。もちろん監視目的でだが。
その所為だろうか、地上の人妖の中には私のことを総領娘様の従者だと思っている者達が多いようだがトンデモナイ。
私は龍神様の部下なのですよ。
ならばなぜ私がこんな事をしているのかと言うと、その理由は二つ。
一つは総領娘様のお父上。つまり比那名居家の御当主様直々に総領娘様の事を頼まれているという事。
これには、先の異変で大地震を起こそうとした総領娘様を懲らしめた事が大いに関係しているのだろう。
そして、もう一つ。これが最も重要なのだが……要は龍神様が許可したからである。
天人は龍宮の使いより格上であり、それも天界の名家である比那名居家の御当主様からの直々の頼みとあらば、確かに一介の龍宮の使いに過ぎない私には断りづらい話ではあるが、あくまでわたしの上司は龍神様であり、龍神様が駄目だと言えばそれまでなのだ。
だがしかし、許可が下りてしまったのである。条件付で、だが。
どんな条件かと言うと──
「ん……あれ、ここはドコ?私はダレ?」
「ここは地獄の一丁目。そして貴女の名前は『無根内平坦子』です」
「嘘をつくな!!」
わかってるなら聞くなよと思ったが、これ以上何か言うと爆発しそうな空気を感じた私は黙っていることにした。
「ったく。また凄いのくれちゃってさ、私じゃなかったら死んでたわよ」
「大丈夫ですよ総領娘様。あんな酷い事。貴女じゃなければとても出来ません。だから安心してください」
「大丈夫じゃないし全然安心出来んわ!!てか、酷いことしてる自覚あんならやめなさいよ!!」
「私としましても、総領娘様に対して辛く当たらなければならないことは、非常に心苦しいのですがこれも龍神様の指示ですので背く訳にはいかないのです」
「そう言えば、前もそんなこと言ってたわね……」
「はい、総領娘様が悪事を働いた場合、再起不能一歩手前まで追い込むくらいの徹底的なお仕置きを与えることが私の役目ですので」
そう、それが龍神様が私に課した条件である。
「いやいや、それおかしいでしょ。この前は『お仕置きは派手にすること』だって言ってたじゃない」
「……まあ、同じようなことかと」
「全然違うわよ!!」
激昂する総領娘様。何が総領娘様の癇に障ったのだろう?不明だ。
「でもさあ、衣玖にそんな命令出すって事は、龍神は私が衣玖に黒焦げにされるの見て笑ってるってことでしょ」
「今頃は、笑いつかれて御休みになっておられるかもしれませんね」
「なにそれ、むかつくわー。やっぱ絶対悪魔よそいつ」
まがりなりにも一応幻想郷の最高神であられる龍神様をそいつ呼ばわりはいかがなものかと思ったが、乙姫様─私たち龍宮の使いの長であり、龍神様の妹君であらせられる御方─に、御自分の趣味でメイド服を着せて喜んでおられる様な方だ。まともな訳がないのは確かだ。
「そうかもしれませんね」
だから、いくら空気の読める私でも、この場はそう答えるのが精一杯だった。
「せ~き~ら~ん雲に~か~くさ~れた~♪龍宮城~に住んでいる~♪龍~宮~の使い~永江衣玖~」
手持ち無沙汰だった為、なんとなく歌を口ずさんでいる私の名は永江衣玖。歌って踊れて空気も読める龍宮の使いである。
ちなみに、先ほど口ずさんでいたのは自作の『永江衣玖のテーマ』で三番まである。
なぜ私が暇しているかと言うと、その原因は私の足元に転がっている。
ちらり
足元に目をやると、そこには相変わらず『比那名居天子』と言う名の炭の塊が転がっているだけだった。
総領娘様が異変を起こして以来、総領娘様が地上で厄介事を起こすたびにお仕置きするのが最近の私の日常である。
なので、ここのところ総領娘様と一緒に居ることが多い。もちろん監視目的でだが。
その所為だろうか、地上の人妖の中には私のことを総領娘様の従者だと思っている者達が多いようだがトンデモナイ。
私は龍神様の部下なのですよ。
ならばなぜ私がこんな事をしているのかと言うと、その理由は二つ。
一つは総領娘様のお父上。つまり比那名居家の御当主様直々に総領娘様の事を頼まれているという事。
これには、先の異変で大地震を起こそうとした総領娘様を懲らしめた事が大いに関係しているのだろう。
そして、もう一つ。これが最も重要なのだが……要は龍神様が許可したからである。
天人は龍宮の使いより格上であり、それも天界の名家である比那名居家の御当主様からの直々の頼みとあらば、確かに一介の龍宮の使いに過ぎない私には断りづらい話ではあるが、あくまでわたしの上司は龍神様であり、龍神様が駄目だと言えばそれまでなのだ。
だがしかし、許可が下りてしまったのである。条件付で、だが。
どんな条件かと言うと──
「ん……あれ、ここはドコ?私はダレ?」
「ここは地獄の一丁目。そして貴女の名前は『無根内平坦子』です」
「嘘をつくな!!」
わかってるなら聞くなよと思ったが、これ以上何か言うと爆発しそうな空気を感じた私は黙っていることにした。
「ったく。また凄いのくれちゃってさ、私じゃなかったら死んでたわよ」
「大丈夫ですよ総領娘様。あんな酷い事。貴女じゃなければとても出来ません。だから安心してください」
「大丈夫じゃないし全然安心出来んわ!!てか、酷いことしてる自覚あんならやめなさいよ!!」
「私としましても、総領娘様に対して辛く当たらなければならないことは、非常に心苦しいのですがこれも龍神様の指示ですので背く訳にはいかないのです」
「そう言えば、前もそんなこと言ってたわね……」
「はい、総領娘様が悪事を働いた場合、再起不能一歩手前まで追い込むくらいの徹底的なお仕置きを与えることが私の役目ですので」
そう、それが龍神様が私に課した条件である。
「いやいや、それおかしいでしょ。この前は『お仕置きは派手にすること』だって言ってたじゃない」
「……まあ、同じようなことかと」
「全然違うわよ!!」
激昂する総領娘様。何が総領娘様の癇に障ったのだろう?不明だ。
「でもさあ、衣玖にそんな命令出すって事は、龍神は私が衣玖に黒焦げにされるの見て笑ってるってことでしょ」
「今頃は、笑いつかれて御休みになっておられるかもしれませんね」
「なにそれ、むかつくわー。やっぱ絶対悪魔よそいつ」
まがりなりにも一応幻想郷の最高神であられる龍神様をそいつ呼ばわりはいかがなものかと思ったが、乙姫様─私たち龍宮の使いの長であり、龍神様の妹君であらせられる御方─に、御自分の趣味でメイド服を着せて喜んでおられる様な方だ。まともな訳がないのは確かだ。
「そうかもしれませんね」
だから、いくら空気の読める私でも、この場はそう答えるのが精一杯だった。
分かります。