はぁ~あったかい。
ママのまっ黒いふさふさの毛にくるまれてるとしあわせだなぁ。
やねの上はおひさまもポカポカできもちいい。
もう一ねむりしようっと。
でも何だかやねの下がさわがしいな。
え?あれ、ママどこ行くの?
逃げなさいって何?どういうこと?ねぇ、ママ!!
「奥さん!捕まえましたよ!」
「ああ、それよその猫!黒猫なんて嫌だわ縁起でもない。仔猫もいませんでした?」
「見あたりませんねぇ・・・でも仔猫ならどうせ一匹では生きていけませんから、心配いりませんよ」
「あらそう?じゃあその野猫、ちゃんと処理しといて下さいね。保健所の人に来てもらって良かったわ。ほんっと猫が黒いなんて気持ち悪い」
んにゃ?
ふぁ~あ・・・んーーっ・・・。
またあのときの夢かぁ。
なんで黒いってだけでいじめられるんだろう。
アタシわるいことしてないのに。
ママもわるいことしてなかったのに。
・・・ママ、元気にしてるかなぁ。
会いたいなぁ。
まあいいや、おなかすいた。
でもねずみもすずめも速くてつかまえられないし、まただれかに食べものをもらおう。
っていっても、アタシは「にゃー」しか言えないけどね。
かわいくおねだりするとやさしい人は何かくれるのだ。
だれかいないかなぁ。
*************************
あ、あのおねーさんはやさしそう。
何かくださいなっ。
にゃあ
「あら、クロちゃん可愛いわね。お腹が空いたの?」
むぅ。
おなかはすいたけど「クロ」って呼ばれるのはイヤなの。
でもみんなアタシのことを勝手に「クロ」って呼ぶ。
アタシの名前は・・・ないけど・・・クロなんて名前じゃないもん。
「ふぅん。クロって呼ばれるのは嫌なのね。ごめんね」
へ?
このおねーさん、何でそのことを知ってるんだろう?
「私には君の考えてる事が分かるのよ」
ふえぇ、すごいや。
じゃあ、何かくださいなっ。
「ふふっ、はいはい。じゃあウチの子の為に買った小魚を少しだけ・・・はい、どうぞ」
にゃは、ありがとー!
「君には飼い主さんはいないのね」
かいぬし?
それなぁに?
「うーん・・・君のことをすごく可愛がってくれて、君に毎日ご飯をくれる人のことよ」
ママのこと?
「ママとは違うかな。ママじゃないけどママみたいな人」
ふぅん。そんな人みたことないよ。
「そっか。探してみるといいわ。あなたの飼い主さんになってくれる人を」
よく分かんないや。
おねーさんは、アタシのかいぬしじゃないの?
「そうね、なってあげたいんだけどね。私はもうすぐ地底に引っ越さなきゃいけないの。君にはちょっぴり辛い場所なんだ」
なんだ~。
じゃあどんな人がアタシのかいぬしなの?
「そうねぇ。ご飯をくれるとかだけで決めちゃ駄目よ。君のことをちゃんと可愛がってくれる人じゃないと」
むつかしー。
「ふふっ、そうかもね。でもいい飼い主さんに出会えたら、きっと幸せになれるわよ。じゃあ、私はもう行くわね」
うん!ありがと~。
かいぬしかぁ。
ごはんくれる人をさがすついでにさがしてみよっと。
*************************
おや、いいにおいがするぞ?
こっちだ!
あの人だ!
ふさふさのしっぽがたくさんあるおねーさん!
食べものちょーだいっ!
にゃぁん
「あら仔猫さん、こんにちわ」
おねーさん、こんにちわ!
さっそくですが、その手にもってるものをくださいなっ。
「よく鳴く仔猫さんね。・・・お腹でもすいてるのかしら」
ごめーさつ!
「今持ってるのはこの油揚げくらいだけど・・・ごめんね、これはあなたにはあげられないのよ」
けっちぃこと言わないでちょーだい!ちょーだい!
「欲しいの?うーん・・・ダメ!やっぱりこれはダメ!ごめんね!!」
え~!
逃げないでよおねーさん!
・・・行っちゃった・・・。
あの人はアタシのかいぬしだったんだろうか・・・んなわけないか。
けっちぃ人はきっとちがう~。
べつの人をさがそっと。
*************************
だ~れか~だ~れか~ い~ないっかな~。
あ、あんなところにリュックをせおったおねーさん見つけた!
そのリュックの中にはどんなごちそーが入っているのですかっ!
にゃ~お
「ん?クロちゃん、お腹でもすいたのかい?」
クロちゃんってゆーな!
でもおなかはすきました。
「困ったな・・・今リュックに入ってるのは・・・」
おっ!リュックを下ろしてあけている!
この人は何かくれるんだ!
何?何をくれるの?
「これ・・・食べる?」
きゅーり・・・。
「食べたいならお腹一杯食べていいよ」
リュックいっぱいのきゅーり・・・。
おねーさん、きゅーり好きなんだね。
でもアタシはキライだよっ。
ぷいっ。
「あれ、行っちゃった。やっぱりきゅうりは無理か・・・」
食べもののシュミがあう人でないと、かいぬしになるのはむつかしー。
あの人もたぶんアタシのかいぬしじゃないや。
アタシのかいぬしどこぉ?
*************************
広い竹やぶだなぁ・・・。
まよっちゃった。
アタシはここで何も食べられないまま死んでいくのだろーか。
だれかいませんかー?
竹やぶから出してくれる人か、ごはんをくれる人~。
もしくはかいぬしでもいいですよ~。
「あら、仔猫ね」
ビクッ!!
びっくりしたぁ。
長くてクシャクシャな耳のおねーさん、いつからそこにいたの?
「ごめんなさい、驚かせちゃったわね。仔猫さん、お名前は?」
名前はまだない。
でもクロじゃないことだけはたしか。
クロって呼ぶなよ?ぜったいだぞ?
「そう、クロちゃんって言うの」
ふにゃあ・・・。
「クロちゃん、お腹すいてる?」
・・・ふにゃ?
すいてます!
クロちゃんじゃないけどおなかはすいてます!
「クロって名前は気に入ったけど、お腹は減ってない感じね」
ちが~う!!
アタシは食べものがほしーの!
おなかすいたの!
ちょっとくるぶしをなめてやろう。
「きゃはは、くすぐったい!ちょっとやめてよ、分かったから!」
ほー。
では何が分かったとゆーのか見せてもらいましょーか。
食べものちょーだいっ。
にゃーご
「あ、そうだ、おむすび食べる?」
つうじた!!
食べます!食べます!
「じゃあお師匠様と一緒に食べようか。おいで」
ええ、ついて行きますとも。
おねーさんがアタシのかいぬしなのかな?
「ホラ、いたわよ。あれが私のお師匠様。お師匠様~、お昼にしませんか?」
「あらもうそんな時間?うどんげ、薬草は見つかったの?」
「ああ、まあ、そこそこは・・・。それよりお昼なんですけど、この子と一緒に食べちゃダメですか?」
背の高いおねーさん、こんにちわ!
いっしょにごはんを食べましょう!
にゃおん
「うどんげ!!」
ビクッ!!
いきなり大きい声ださないでよもぉ。
「ウサギ以外の動物を拾ってくるなっていつも言ってるでしょう!」
「別に飼う訳じゃないですよ、おむすびをこの子に・・・」
「一回あげたら懐いちゃって、どこまでもついて来るのよ!!ネコなんか飼ったって薬の材料にくらいしか・・・。・・・ふむ、薬の材料ね」
さいならっ!!
「あ、逃げた!」
「お師匠様、クロちゃんは薬の材料じゃありません!」
「でもうどんげ、動物の内臓は薬の材料としてはとても貴重なものなのよ」
こわぁ。
どーきょ人がいる人はちょっとこわいなぁ。
あの人たちもアタシのかいぬしじゃなさそう。
*************************
あ~あ。
アタシにかいぬしなんて本当にいるのかなぁ。
ママじゃないけどママみたいな人って、あのおねーさんは言ってた。
でも今まで会った人と言えば、自分の食べものを分けたくなくて逃げる人とか、きゅーりしかもってない人とか。
あげくのはてには、アタシをつぶしてくすりにしよーとする人とか・・・。
みんなママにはほどとおい。
あんなにやさしくてあったかいのはママだけだよ、やっぱり。
ママ、今どこで何してるのかな?
いつか会えるとは思うけど、早く会いたいな。
「あ、いたいた。仔猫さん、探したのよ?」
はにゃ?
おー、だれかと思えばふさふさのしっぽがたくさんあるおねーさん。
食べものをもってるのにくれなかった、けっちぃおねーさんじゃないですかっ。
「煮干しを持ってきてあげたから、これをお食べ」
へ?くれるの?いいの?
けっちぃのに?
じゃあ食べちゃうねっ。
「さっきはごめんね。油揚げはあなたの体に悪いからあげられないのよ」
そーなのかー。
けっちぃからじゃなかったんだね。
やさしいからだったんだね。
うたがってごめんね。
にぼしおいしー。
「やっぱり仔猫は可愛いわねぇ。・・・ちょっと抱っこしてみていい?」
にゃ?
にゃあ・・・
おねーさんのうでの中・・・すっごくあったかい・・・。
ずっとここでぬくぬくしていたい・・・。
おねーさん。
やさしくて、あったかくて。
ママみたい。
ママじゃないけど、ママみたいな人。
おねーさんがアタシのかいぬしだね。
まちがいないや。
「仔猫さん、温かいね。ずっと抱っこしていたいな・・・そうだ、あなた名前はある?」
ないよ。
どうせクロって呼ぶんでしょ?
でもいいや、おねーさんはアタシのかいぬしだもん。
「そうだなぁ・・・橙!」
へ?
ちぇん?
それアタシの名前?
クロじゃなくて?
「抱っこしてると、お日様を抱いてるみたいにぽかぽかだから。お日様の色の橙」
ちぇん・・・おひさまの色・・・。
うん、いい!!
おねーさん、アタシその名前すごく好きだよっ!
にゃ~ぁん
「ふふっ、そう。気に入ってくれたの。じゃあ橙、今日から私達は家族よ」
うん!かぞく!
アタシ、にぼし好き!
ちぇんって名前も好き!
おねーさんのこともだぁい好き!!
*************************
ねぇ、ママ
アタシすごい人を見つけたよ
ママじゃないけど、ママみたいなの
やさしくて、あったかいの
アタシのかいぬしなんだって
にぼしたくさんくれたの
アタシのことをクロって呼ばないの
ちぇんって名前もくれたの
おひさまの色なんだって
アタシね、かいぬし大好きになったよ
ママと同じくらい大好き
だから
ママと会えなくてさびしいけど
これからはきっとへーきだよ
ねぇ、ママ
・・・死んじゃったの?
了
ママのまっ黒いふさふさの毛にくるまれてるとしあわせだなぁ。
やねの上はおひさまもポカポカできもちいい。
もう一ねむりしようっと。
でも何だかやねの下がさわがしいな。
え?あれ、ママどこ行くの?
逃げなさいって何?どういうこと?ねぇ、ママ!!
「奥さん!捕まえましたよ!」
「ああ、それよその猫!黒猫なんて嫌だわ縁起でもない。仔猫もいませんでした?」
「見あたりませんねぇ・・・でも仔猫ならどうせ一匹では生きていけませんから、心配いりませんよ」
「あらそう?じゃあその野猫、ちゃんと処理しといて下さいね。保健所の人に来てもらって良かったわ。ほんっと猫が黒いなんて気持ち悪い」
んにゃ?
ふぁ~あ・・・んーーっ・・・。
またあのときの夢かぁ。
なんで黒いってだけでいじめられるんだろう。
アタシわるいことしてないのに。
ママもわるいことしてなかったのに。
・・・ママ、元気にしてるかなぁ。
会いたいなぁ。
まあいいや、おなかすいた。
でもねずみもすずめも速くてつかまえられないし、まただれかに食べものをもらおう。
っていっても、アタシは「にゃー」しか言えないけどね。
かわいくおねだりするとやさしい人は何かくれるのだ。
だれかいないかなぁ。
*************************
あ、あのおねーさんはやさしそう。
何かくださいなっ。
にゃあ
「あら、クロちゃん可愛いわね。お腹が空いたの?」
むぅ。
おなかはすいたけど「クロ」って呼ばれるのはイヤなの。
でもみんなアタシのことを勝手に「クロ」って呼ぶ。
アタシの名前は・・・ないけど・・・クロなんて名前じゃないもん。
「ふぅん。クロって呼ばれるのは嫌なのね。ごめんね」
へ?
このおねーさん、何でそのことを知ってるんだろう?
「私には君の考えてる事が分かるのよ」
ふえぇ、すごいや。
じゃあ、何かくださいなっ。
「ふふっ、はいはい。じゃあウチの子の為に買った小魚を少しだけ・・・はい、どうぞ」
にゃは、ありがとー!
「君には飼い主さんはいないのね」
かいぬし?
それなぁに?
「うーん・・・君のことをすごく可愛がってくれて、君に毎日ご飯をくれる人のことよ」
ママのこと?
「ママとは違うかな。ママじゃないけどママみたいな人」
ふぅん。そんな人みたことないよ。
「そっか。探してみるといいわ。あなたの飼い主さんになってくれる人を」
よく分かんないや。
おねーさんは、アタシのかいぬしじゃないの?
「そうね、なってあげたいんだけどね。私はもうすぐ地底に引っ越さなきゃいけないの。君にはちょっぴり辛い場所なんだ」
なんだ~。
じゃあどんな人がアタシのかいぬしなの?
「そうねぇ。ご飯をくれるとかだけで決めちゃ駄目よ。君のことをちゃんと可愛がってくれる人じゃないと」
むつかしー。
「ふふっ、そうかもね。でもいい飼い主さんに出会えたら、きっと幸せになれるわよ。じゃあ、私はもう行くわね」
うん!ありがと~。
かいぬしかぁ。
ごはんくれる人をさがすついでにさがしてみよっと。
*************************
おや、いいにおいがするぞ?
こっちだ!
あの人だ!
ふさふさのしっぽがたくさんあるおねーさん!
食べものちょーだいっ!
にゃぁん
「あら仔猫さん、こんにちわ」
おねーさん、こんにちわ!
さっそくですが、その手にもってるものをくださいなっ。
「よく鳴く仔猫さんね。・・・お腹でもすいてるのかしら」
ごめーさつ!
「今持ってるのはこの油揚げくらいだけど・・・ごめんね、これはあなたにはあげられないのよ」
けっちぃこと言わないでちょーだい!ちょーだい!
「欲しいの?うーん・・・ダメ!やっぱりこれはダメ!ごめんね!!」
え~!
逃げないでよおねーさん!
・・・行っちゃった・・・。
あの人はアタシのかいぬしだったんだろうか・・・んなわけないか。
けっちぃ人はきっとちがう~。
べつの人をさがそっと。
*************************
だ~れか~だ~れか~ い~ないっかな~。
あ、あんなところにリュックをせおったおねーさん見つけた!
そのリュックの中にはどんなごちそーが入っているのですかっ!
にゃ~お
「ん?クロちゃん、お腹でもすいたのかい?」
クロちゃんってゆーな!
でもおなかはすきました。
「困ったな・・・今リュックに入ってるのは・・・」
おっ!リュックを下ろしてあけている!
この人は何かくれるんだ!
何?何をくれるの?
「これ・・・食べる?」
きゅーり・・・。
「食べたいならお腹一杯食べていいよ」
リュックいっぱいのきゅーり・・・。
おねーさん、きゅーり好きなんだね。
でもアタシはキライだよっ。
ぷいっ。
「あれ、行っちゃった。やっぱりきゅうりは無理か・・・」
食べもののシュミがあう人でないと、かいぬしになるのはむつかしー。
あの人もたぶんアタシのかいぬしじゃないや。
アタシのかいぬしどこぉ?
*************************
広い竹やぶだなぁ・・・。
まよっちゃった。
アタシはここで何も食べられないまま死んでいくのだろーか。
だれかいませんかー?
竹やぶから出してくれる人か、ごはんをくれる人~。
もしくはかいぬしでもいいですよ~。
「あら、仔猫ね」
ビクッ!!
びっくりしたぁ。
長くてクシャクシャな耳のおねーさん、いつからそこにいたの?
「ごめんなさい、驚かせちゃったわね。仔猫さん、お名前は?」
名前はまだない。
でもクロじゃないことだけはたしか。
クロって呼ぶなよ?ぜったいだぞ?
「そう、クロちゃんって言うの」
ふにゃあ・・・。
「クロちゃん、お腹すいてる?」
・・・ふにゃ?
すいてます!
クロちゃんじゃないけどおなかはすいてます!
「クロって名前は気に入ったけど、お腹は減ってない感じね」
ちが~う!!
アタシは食べものがほしーの!
おなかすいたの!
ちょっとくるぶしをなめてやろう。
「きゃはは、くすぐったい!ちょっとやめてよ、分かったから!」
ほー。
では何が分かったとゆーのか見せてもらいましょーか。
食べものちょーだいっ。
にゃーご
「あ、そうだ、おむすび食べる?」
つうじた!!
食べます!食べます!
「じゃあお師匠様と一緒に食べようか。おいで」
ええ、ついて行きますとも。
おねーさんがアタシのかいぬしなのかな?
「ホラ、いたわよ。あれが私のお師匠様。お師匠様~、お昼にしませんか?」
「あらもうそんな時間?うどんげ、薬草は見つかったの?」
「ああ、まあ、そこそこは・・・。それよりお昼なんですけど、この子と一緒に食べちゃダメですか?」
背の高いおねーさん、こんにちわ!
いっしょにごはんを食べましょう!
にゃおん
「うどんげ!!」
ビクッ!!
いきなり大きい声ださないでよもぉ。
「ウサギ以外の動物を拾ってくるなっていつも言ってるでしょう!」
「別に飼う訳じゃないですよ、おむすびをこの子に・・・」
「一回あげたら懐いちゃって、どこまでもついて来るのよ!!ネコなんか飼ったって薬の材料にくらいしか・・・。・・・ふむ、薬の材料ね」
さいならっ!!
「あ、逃げた!」
「お師匠様、クロちゃんは薬の材料じゃありません!」
「でもうどんげ、動物の内臓は薬の材料としてはとても貴重なものなのよ」
こわぁ。
どーきょ人がいる人はちょっとこわいなぁ。
あの人たちもアタシのかいぬしじゃなさそう。
*************************
あ~あ。
アタシにかいぬしなんて本当にいるのかなぁ。
ママじゃないけどママみたいな人って、あのおねーさんは言ってた。
でも今まで会った人と言えば、自分の食べものを分けたくなくて逃げる人とか、きゅーりしかもってない人とか。
あげくのはてには、アタシをつぶしてくすりにしよーとする人とか・・・。
みんなママにはほどとおい。
あんなにやさしくてあったかいのはママだけだよ、やっぱり。
ママ、今どこで何してるのかな?
いつか会えるとは思うけど、早く会いたいな。
「あ、いたいた。仔猫さん、探したのよ?」
はにゃ?
おー、だれかと思えばふさふさのしっぽがたくさんあるおねーさん。
食べものをもってるのにくれなかった、けっちぃおねーさんじゃないですかっ。
「煮干しを持ってきてあげたから、これをお食べ」
へ?くれるの?いいの?
けっちぃのに?
じゃあ食べちゃうねっ。
「さっきはごめんね。油揚げはあなたの体に悪いからあげられないのよ」
そーなのかー。
けっちぃからじゃなかったんだね。
やさしいからだったんだね。
うたがってごめんね。
にぼしおいしー。
「やっぱり仔猫は可愛いわねぇ。・・・ちょっと抱っこしてみていい?」
にゃ?
にゃあ・・・
おねーさんのうでの中・・・すっごくあったかい・・・。
ずっとここでぬくぬくしていたい・・・。
おねーさん。
やさしくて、あったかくて。
ママみたい。
ママじゃないけど、ママみたいな人。
おねーさんがアタシのかいぬしだね。
まちがいないや。
「仔猫さん、温かいね。ずっと抱っこしていたいな・・・そうだ、あなた名前はある?」
ないよ。
どうせクロって呼ぶんでしょ?
でもいいや、おねーさんはアタシのかいぬしだもん。
「そうだなぁ・・・橙!」
へ?
ちぇん?
それアタシの名前?
クロじゃなくて?
「抱っこしてると、お日様を抱いてるみたいにぽかぽかだから。お日様の色の橙」
ちぇん・・・おひさまの色・・・。
うん、いい!!
おねーさん、アタシその名前すごく好きだよっ!
にゃ~ぁん
「ふふっ、そう。気に入ってくれたの。じゃあ橙、今日から私達は家族よ」
うん!かぞく!
アタシ、にぼし好き!
ちぇんって名前も好き!
おねーさんのこともだぁい好き!!
*************************
ねぇ、ママ
アタシすごい人を見つけたよ
ママじゃないけど、ママみたいなの
やさしくて、あったかいの
アタシのかいぬしなんだって
にぼしたくさんくれたの
アタシのことをクロって呼ばないの
ちぇんって名前もくれたの
おひさまの色なんだって
アタシね、かいぬし大好きになったよ
ママと同じくらい大好き
だから
ママと会えなくてさびしいけど
これからはきっとへーきだよ
ねぇ、ママ
・・・死んじゃったの?
了
仔猫の一人称に強く心を揺さぶられました。
それがわからない奥様は俄か決定。
真っ先に生き胆を連想する永琳先生は外道決定。
ああ、実家にいるミャーちゃんのうしろあたまをクリクリしてぇ。