*1走れメロスのパロディになります。
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*2作品集122『悪魔のわがままな人形遣い』の設定をほんの少しだけ引っ張ってます。
でも、アリスがレミリアをレミィと呼ぶことだけ押さえておけば、後は読んでなくても問題ありません。
フランドールは激怒した。必ず、かの色欲放蕩の姉を更生させねばならぬと決意した。
フランに運命はわからぬ。フランは、姉の恋人である。姉を想い、花嫁修業をして暮らしてきた。
だから浮気に対しては、人一倍敏感であった。
きょう未明フランは地下室を出発し、図書館を越え廊下を歩き、館の4階にやって来た。
フランには父も、母も無い。500の、どうしようもない姉の2人暮らし・・・・・・だった。
この姉は、そこら中の少女に、手当たり次第に手を出していた。その上誰とも別れる様子が無い。
フランは、それゆえ、姉の動向を監視しに、はるばる4階までやって来たのだ。
先ず、妖精メイドから情報を集め、それから廊下をぶらぶら歩いた。
フランには親友がいた。古明地こいしである。今はこの紅魔館の食堂で食事をしている。
今朝方まで一緒に遊んでて、食事をしたら帰るらしい。
歩いているうちにフランは、館の様子を怪しく思った。なんか桃色である。
まだ夜明け前なので、ひっそりしているのは当たり前だが、けれどもそのせいばかりでは無く、館全体が妙に怪しい。
敏感なフランは、事情を察した。しばらく歩くと人形遣いに逢ったので、何があったのか、強く問いただした。
人形遣いは、頬を染め、あたりをはばかる低声で、わずかに答えた。
「レミィがね、激しかったの」
「・・・・・・」
「月が紅いから、というのよ。今夜は三日月なのにね」
「一緒にいたのはあなただけ?」
「いいえ、はじめは咲夜を。それから、パチュリーを。最後に私だったわ」
「なんてこと。相変わらず節操無しね」
「そうね、節操無しね。でも、それでこそレミィなのよ」
聞いて、フランは激怒した。「もう我慢できない!」
フランは直情的な少女であった。そのままの勢いで姉の寝室に突っ込んだ。
「何の用かしらフラン」
レミリア・スカーレットは静かに、けれども威厳を以って問いつめた。
その姉の顔は、疲労の色があり、今夜が如何な夜であったかを偲ばせる。
「お姉様、浮気は許さないわ」
「浮気?」
姉は、憫笑した。
「私は浮気なんてしてないわよ」
「嘘よ!」
「嘘じゃないわ。なぜ姉を疑うの。なんの証拠も無いのに」
フランは足もとに視線を落とし瞬時に考えた。人形遣いも魔女もメイドも、姉の前では無実を証言するだろう。
姉の浮気を証明するには、心でも読めないと、追い詰めることはできない。
「お姉様、外出許可をちょうだい」
「ダメよ。あなたを外に出したら、何するか分からないもの」
「何もしないし、明日の夜明けまでには帰ってくるわ。約束する」
「逃がした小鳥はそうそう帰ってこないものよ」
「いいえ。帰ってくるわ。私は約束を守るもの。そんなに私が信じられないのならば、
いいわ。こいしを置いて行くわ。もし私が明日の夜明けまでに帰ってこなかったら、こいしを好きにしなさい」
それを聞いて姉は、そっとほくそ笑んだ。生意気なことを言う。
どうせ外に出たら、浮かれて約束なんて忘れるに決まっている。ここは願いを聞いてやり、外に出してやるのも面白い。
そうして明日の夜明けにこいしちゃんを愛でて、その後フランを捕らえ、お仕置きするのも悪くない。
「その願い、聞いてあげるわ。こいしちゃんを呼んできなさい。明日の夜明けまでに帰ってくるのよ。
少しでも遅れたら、こいしちゃんは好きにさせてもらうわ。なんならちょっと遅れてきなさい。
そうしたら、2人まとめて可愛がってあげるから」
フランは口惜しく、地団駄踏んだ。
こいしはすぐに姉の寝室に召された。姉の、頭の天辺からつま先までを舐め回すような視線に、
身の危険を感じたこいしは、事情を説明する前に逃げ出したが、あっさりと姉に捕まった。
「お姉様、明日の夜明けまでは手を出してはだめよ」
「わかってるわ。明日の夜明けまでね。太陽が一片でも見えたら、こいしちゃんは私のものよ」
「お姉さん! ちょっと! 放してください!」
こしいは必死にもがいていたが、熟練した姉の手から逃れられるはずも無く、程なくして抵抗をやめた。
フランは、すぐに出発した。初夏、燦々と太陽が輝いていた。
フランはその朝、日傘を手に急ぎに急いで、地霊殿に到着したのは、その日の夕方。
地底の住民たちも仕事を終わらせ家路についている。こいしの姉、古明地さとりも仕事を終わらせ一息ついていた。
よろよろ飛んでくるフランの、疲労困憊の姿を見つけて驚いた。事情を聞いてくる。
「時間が無いの。第三の目を貸して」
「貸してと言われて、おいそれと貸せるものではありません」
さとりは強情だった。
フランは想像した。
こいしが、頬を赤くし、「お姉ちゃん、私、好きな人が・・・・・・」
想像しきる前に、さとりは頭から伸びたコードを引きちぎった。
それを受け取ると、フランは、今来た方向に引き返した。
地霊殿を出て、旧都を過ぎ、そろそろ地底も半ばに到達した頃、フランは、はたと、とまった。
見よ、前方の川を。猛勢一挙に橋を破壊し、どうどうと響きをあげる激流が、木端微塵に橋桁を跳ね飛ばしていた。
吸血鬼は流水を渡れない。フランは茫然と、立ちすくんだ。あたりを見渡したが、渡れそうな場所は無い。
「止まってなんていられないわ。道が無ければ作ればいいのよ」
フランは、レーヴァテインを川に叩きつける。数秒川底が見えるが、すぐに濁流に飲まれてしまう。
こんなところで諦めてはいられない。夜明けまでに帰らなければ、こいしは姉の毒牙にかかるだろう。
何度も何度も叩きつける。それでも道は開けない。
「おいおい、なんの騒ぎだ」
陽気な声がした。フランが振り返ると、頭に一本角を生やした鬼が、杯片手に興味深そうに見ていた。
フランは、藁にも縋る思いで事情を話す。
「なるほど。それなら、もう一度川を割ってくれないか。向こう岸まで運んでやろう」
フランは、レーヴァテインを叩きつける。
鬼は、フランを抱え、一歩、二歩、三歩で川底を歩き、濁流に飲まれる前に対岸までたどり着いた。
橋を直すという鬼に礼を述べて、フランは先を急いだ。一刻といえども、無駄には出来ない。
地底だからわからないが、すでに月も高く上ってしまっているだろう。
ぜいぜい荒い息をしながら飛び続け、飛びきって地上に出たが、
スペルの連続使用で魔力も枯渇し、ついに、がくりと地面に落ちた。
もはや蝿蚊ほどにも飛ぶ事もできない。草むらにごろりと転がった。
身体疲労すれば、精神もやられる。もうどうでもいいという根性が、心の隅に巣食った。
私は、よくよく不幸な妹ね。私は、きっとお仕置きされる。こいしもお姉様の愛人になる。
運命を操るお姉様を更生させるなんて、初めから出来なかったのかもしれない。
こいし、許して。あなたは私を待っているんでしょ。不安にかられながら待っているんでしょ。
私は飛んだよ。こいしを騙すつもりは無かったよ。信じて!
お姉様はきっとこいしを幸せにしてくれるよ。咲夜も、パチュリーも、人形遣いも、幸せそうだから。
心配しないで、私も一緒よ、2人で一緒にお姉様のものになりましょう。うふふ・・・・・・
ふと耳に、水の流れる音が聞こえた。そっと頭をもたげ、息を呑んで耳をすました。
よろよろと起き上がって、見ると、岩の裂け目から、清水が湧き出ているのである。
水を両手で掬って、一口飲んだ。夢から覚めたような気がした。
飛べる。行こう。わずかながら希望が生まれた。空には満点の星が輝いていた。
日の出までには、まだ間がある。こいしが私を待っている。
いまはただその一事だ。飛べ! フラン。
私は信頼されている。先刻の、あの天使の囁きは、あれは夢だ。悪い夢だ。
ああ、月が沈む。ずんずん沈む。待って。
妖怪妖精押しのけ、跳ねとばし、フランは紅い風のように飛んだ。
少しずつ沈んでゆく月の、何倍も早く飛んだ。
見える。はるか向うに小さく紅魔館の時計塔が見える。
「妹様!」 威勢のいい声が、風と共に聞えた。
「誰?」 フランは飛びながら尋ねた。
「美鈴です。もう、無駄です。飛ぶのはやめて下さい」
「まだよ。まだ夜は明けないわ」
「そういうではなくて、とにかくもう意味が無いのです」
「まだ月も沈んでいないわ」
「やめて下さい。飛ぶのをやめて下さい。これ以上進んでも妹様が傷つくだけです」
「私がどうなろうと問題ないわ。私の命すら問題ではない。邪魔をしないで美鈴」
「ああ、ならばもう止めません。間に合う間に合わないの話ではないのですが、
もうお止めいたしません。どうぞご自分のやりたいようにやって下さい。」
まだ夜は明けぬ。最後の死力を尽くして、フランは飛んだ。
月は地平線に没し、東から一片の光が見えはじめた時、フランは疾風のごとく姉の部屋に突入した。間に合った。
「そこまでよ!」
こいしの顎を持ち上げ、今まさに唇を奪おうとしていたレミリアは動きを止める。
「こいし」
フランは眼に涙を浮かべて言った。
「私を殴って。力いっぱいに殴って。私は、途中で一度、悪い夢を見たの。
もしこいしが殴ってくれないと、友達でいる資格が無いの。だから殴って」
こいしは、すべてを察した様子で、しかし首を横に振った。横に振ってから優しく微笑み、
「フランいいの。だって私、フランが戻ってこなければいいな、って思ってたんだから」
フランは、錆び付いた時計のように、首を姉に振った。
「お姉様、こいしには手をだすなって、あれほど言っておいたわよね」
「ええ、だから手は出してないわ。ずっとお話してただけで、ねっ、こいしちゃん」
「そうだよ、フラン。あとレミリアさん、こいしちゃん、はやめてよ。こいしって呼んで」
「ごめんなさい。今から一人前のレディになるのに、失礼だったわね。こいし」
フランは手をきゅっと握る。哀れ、右手の第三の目は握り潰される。
だがいらぬ。もうこんなものいらぬ。証拠など、証明など、初めから必要なかったのだ。
「お姉様、それは詭弁よ」
フランは激怒した。
必ず、この救いようの無いバカを力いっぱい殴らねばならぬと決意した。
フランは浮気を許さない。姉はフランのものである。姉が生まれた瞬間から、そう決まっているのだ。
「覚悟はいい?」
「是非も無し」
胸を張るレミリアに、フランの、容赦ないアッパーが、炸裂した。
天井を突き抜けて飛んでいくレミリア。身動きせず受けたのは、天晴れであるか、愚かであるか。
フランは、にやりと笑ってこいしを見る。こいしも、負けないぐらいににやりと笑う。
「一応聞くけど、諦める気、ある?」
「無いよ。ぜんぜん無いよ。フラン」
「今からはライバル同士ね。こいし」
硬く握手をする2人。あれも一つの友情か。物陰から様子を伺っていた、紅美鈴はひそかに呟いた。
「妖怪500年、下天の内をくらぶれば、夢幻の如くなり」
ゆっくりと太陽が昇る。
屋根から、頭だけ生えているレミリアは、世の儚さを歌っていた。
なんだか原型を留めていない気がする。
地味にフランちゃんも酷くて、やっぱこいつら姉妹ですね。
そしてフランドールの服は破けて真っ裸なんですね、わかります。
もしかして、美鈴も…!?
欲望に忠実で今を全力で楽しむ姿こそお嬢様の魅力なのです
こっちはまるで原形をとどめずぶっ飛んだなぁw
妹様の独占欲の強さは半端じゃないぜ!
ナイスカリスマ!