夜ももう遅い時間である。
そんな時間に突然そんな事を言われて一輪は戸惑った。
だが、もしかしたら自分の聞き間違いかもしれない。
今は夜更けで眠くなってる、だから意識がハッキリしていないため聞き間違ったのかもしれない。
何と聞き間違うか思いつかなかったが、一輪は念のためぬえに確認した。
「ごめんぬえ、よく聞こえなかったからもう一回言ってもらえる?」
「……だからね、一輪に私のお姉様になってほしいの」
一輪の問いかけにぬえは少し言いづらそうにしながら言った。
そんな風に頬を染めて言うぬえと言われた言葉が聞き間違いじゃない事に一輪は頭を抱えた。
何でこうなった?
一輪は考えた。
明日も早いから、さぁ寝ようと思っていた矢先だった。
『相談したい事があるの』とぬえが突然部屋を訪ねてきた。
その声は何か不安を含んだ様な声であったため寝ようとしていたが
思わずぬえを部屋に招きいれ話を聞いてみた。
以上。
ぬえの百合色発言までの経緯を簡単に思い返して一輪は再び頭をかかえた。
何でこうなったのか全く解らない。
そんな一輪を心配する様にぬえは言う。
「駄目かな……、駄目ならお姉ちゃんでもいいよ?」
ぬえは妥協案を出してきた。
しかし、それは言い方が変わっただけで意味は全く同じである。
「……いや、駄目って言うか何で私に言うかな?村紗じゃ駄目なの?」
ぬえは村紗と仲良いからそういうのは村紗に頼めばいいのだ。
それに『お姉様』が欲しいのならセーラー服だし『聖様がみてる』とかいけそうではないか?
眠いせいか変な事を考える一輪の前でぬえは首を横に振る。
「村紗はだって……、何か違うの、それに言いづらいよ」
頬を僅かに染めるぬえを見て一輪は思った。
ああ、本当にぬえは村紗が好きなんだな、とそしてこうも思った。
眠いから惚気は他所でやれ!!と。
でもソレを決して口にはしない。
「……そもそもなんでお姉ちゃんが欲しいのよ?」
一番の問題はココだ。
どうして突然姉が欲しくなったのだろうか?
その理由を最初に聞いておくべきだった。
眠いのもあるが、ぬえのアレな発言に混乱して聞きそびれていた。
一輪の問いにぬえは唇を尖らせて拗ねる様に言った。
「……だって私だけいないんだもん」
「?」
「友達は二人共お姉ちゃんいるのに私だけいないんだもん」
ああ、そういう事か、一輪は理解した。
最近ぬえには二人程よく一緒に遊ぶ子達がいる。
三人合わせて『EX三人娘』なんて呼ばれている。
単純にぬえは仲間はずれが嫌なんだ。
でも
「別にいなくてもいいんじゃない?」
特に困る事はないだろう。
姉がいないから仲間はずれとかそんな事ないだろうし
「……」
しかし、ぬえは納得いかない様に唇を尖らせている。
そんなぬえを見て一輪は頭を掻く。
どうしょう面倒くさい、早く寝たい。
引き受ければぬえも満足して今日の安眠は約束されるだろう。
だがもしも断れば、今日から夜な夜な得体の知れない何かの泣き声に悩まされる事になりそうだ。
でも、自分にだって引き受けたくない理由がある。
「…………」
今日と明日以降の安眠を守るために一輪は妙案を思いついた。
そうだ他の身内を売ろう!
「あ、じゃあナズーリンに頼んだら、しっかりしてるし頼れるお姉ちゃんって感じじゃない?」
村紗が駄目なので一先ずナズーリンを生贄にしてみた。
しかしぬえは首を横に振る。
「ナズは小さいしドッチかって言うと妹系だと思う」
ぬえの言葉に一輪は納得する、確かに妹系な気がする。
でも他の二人の姉も同じような物じゃないだろうか?
巷では『れみりゃ』とか『小5ロリ』とか呼ばれているはずだが?
「じゃあ、星は?毘沙門天の弟子ってカッコいいんじゃない?」
特にカリスマカリスマ五月蠅い吸血鬼には間違いなく対抗できる。
しかしぬえはまた首を横に振った。
そして苦虫を噛み潰した様な顔をしながら……
「本気で言ってるのソレ?」
「……ゴメン」
言った自分が言うのもアレだが、ないわ、カリスマ全然ないわ。
なくし物多くてナズーリンを困らせているイメージしかない。
情けない姿しか思いつかない。
駄目だわ、毘沙門天の代理(笑)とかで浸透していそうだ。
「だから一輪がお姉ちゃんになってくれれば万事解決なんだよ」
「…………」
確かにそんな気もする。
でもねそんな事になったら笑われるの知ってるんだ。
私が浮く事知ってるんだ。
他の二人のお姉ちゃんとかさ、一桁の奴らと並べられる底辺の奴とかさ
「めっちゃ浮くじゃん、めっちゃ笑われるに決まってんじゃん……」
「一輪?」
「どうせ私は地味で人気ないよ、それなのにさ、私にお姉ちゃんになってとかさ
何イジメ?ねぇイジメなの!?」
一輪はぬえの肩を掴んで叫ぶ。
その一輪の気迫に気をされながらぬえは何とか落ち着かせようとする。
「一輪落ちついて」
その一言で一輪はハッと我に返った。
「……ゴメン」
「え?あ、いや……私も無理言ってゴメン」
妙な空気になってしまった。
こんな時聖ならいい案をパッと出してくれるんだろうな、と考えて一輪は気が付いた
「あ、姐さんならちょうどいいんじゃない?」
何で忘れていたんだろう?
ピッタリではないか?
強くて信頼があって頼りになって、…………人気もあって
「えー?」
しかしぬえは嫌そうだった。
「何よ何が不満なの?」
聖程立派な人なんてそうそういない。
文句をつける所なんて少しもないと思う。
「だってさ、聖はお姉ちゃんって言うよりもおば」
ぬえの台詞が終る前に突然部屋の灯りが消えた。
「え、何!?」
暑いので部屋の窓は開けていた。
しかし入ってくるのはそよ風程度の微風だ、灯りを消すほどの力はないはずだ。
暗闇の中で慌てながら手探りで一輪は何とか灯りを灯す。
「ふぅービックリした、大丈夫だったぬえ?」
突然真っ暗になって自分と同じ様にビックリしたであろうぬえに声をかけるが
肝心のぬえの姿がそこにはなかった。
「…………あー、私は何も見ていないし聞いていません、おやすみなさい」
誰もいない空間でそう言って一輪は灯りを消した。
ぬえの事は多少なりとも心配だったが、巻き込まれたくは無い。
真っ暗な闇の中、天井の方から聖の声で『おやすみ一輪』と聞こえた気がしたが、きっと気のせいだ。
そしてコレは勘でしかない事だが、きっと明日になるとぬえの姉は聖になっている気がした。
タグの意味を理解した。怖ぇぇえぇええ!
姐さんはおばあちゃんなんかじゃないよ!おばちゃn(
ならば
俺=ぬえのお義兄さん
これで万事解決じゃないか
骨は任せた!
聖でも優しいからいいじゃんw妥協も必要だろw
大体な、一輪に頼んだのだって妥協した結k(ドグシャ
「名前が八で始まる御三方」と「とある幽霊やとある聖人」の間には何かしら壁があると思ってます。
ぐはぁ・・・
聖をお姉様と呼んでいるシーンを余裕で幻視した
どこもおかしくはないな
『みてる』の方がいいのでは?と思ってたがそんな事は無かった
ロータス・ギガンティアに毘沙門天様のご加護があります様に
思わず悪寒が・・・。
タグにホラーを追加すべき。
し、仕方ぬぇっ! 当って砕けうらめしやーっ!