もしもし私マエリベリー・ハーンさん。今、親友の宇佐見蓮子と秘封倶楽部……通称MMR(Masochism Mary and Renko)を主宰しているの。
私達秘封倶楽部……通称MMR(Muchimuchi Mary and Renko)は、メンバーは二人だけど良くあるただのUFOサークル。SFサークルだけど、普通みたいにノストラダムスの大予言やチュパカブラとかは好きじゃないの。周りからはまともなチャネリングした事ない不良サークル、とか思われてるけど…実はね。
今日は夏休み明け最初の秘封倶楽部の会合があるわ。
もうすぐ私の大切な相棒――親友の宇佐見蓮子が、MMR(Maji Mary and Renko)の秘密基地兼会合場所でもあるこの喫茶店にやってくる予定。
ま、もう待ち合わせの時間には五分近く遅れてしまっているのだけれど。
あ、ほら、来た。あそこに立ってる、山高帽をかぶった黒髪の女の子が蓮子なのよ。
蓮子は一番奥のテーブルに座っている私を見つけると、やけに慌てた様子で駆け寄ってきたの。
そして、開口一番こう言ったわ。
「メリー、人類は滅亡するわ!」
「なっ、なんだって――――――!!!!」
私の大声に、アイスコーフィーが入っていたグラスが音を立てて割れたの。
まったく薄いガラスはこれだからダメなのよ、もう。
「じっ、人類が滅亡……!? 本当なの蓮子……!?」
蓮子は額に滲んだ脂汗を拭うこともせずに一枚の写真を手渡してきたわ。あぁ、せっかくのブラウスがコーヒーまみれね。
「これを見て、メリー」
不鮮明な写真には、ポッチリという感じで、真っ黒な闇夜の中に二つ、白い点が浮かび上がっていたわ。
「これは……」私が震える手で白い点を指さすと、蓮子は大きく頷いて、そして言ったの。
「真ん中に写っているのが未確認飛行物体、通称UFO。そしてその隣の白い点がたった今ついたアイスコーフィーのミルクの飛沫なのよ!」
「なっ、なんだって――――――!!!!」
突然、店のマスターが大声を出したの。
店に飾ってある昔のジャズ奏者の写真立が割れて、床に落ちて甲高い音を立てたのを覚えているわ。
「こっ、これがアイスコーフィーのミルクの飛沫……!? 冗談でしょう……?!」
何かの間違いであってくれ。そう願いながら、私は蓮子を見たわ。
蓮子はかさかさに乾いた唇を舌先で濡らしながら、静かに首を横に振ったわ。――まるで聞き分けのない子どもの我侭を諌める母親のように。
「でっ、でも、こんな写真を一体どこで……?!」
「……これから私が何を言っても、驚かないで。決して叫んだりしてはダメ。わかった?」
私はどうにか頷く。
それを見た蓮子はぐっと顔を歪め、そして言ったわ。
「これは私がたった今、海外のウェブサイトから勝手に印刷して持ってきたのよ!」
「なっ、なんだって――――――!!!!」
急に店の外の歩道を犬の散歩していたおじさんが窓に張り付いてそう叫んだの。
額を叩きつけられた喫茶店の窓ガラスが割れて、向かいの席に座っていたカップルに散弾となって振り注ぐ。その光景は皮肉にも、私が見てきたどの光景よりも美しいものだったわ。
私はついに越えてはならない一線を越えてしまった親友の顔を、信じられない思いで見つめていた。
「そんな……海外のウェブサイトからなんて……!」
「……メリー。落ち着いて。事実を明らかにするためには必要だったのよ」
「Googleの検索対象を『すべての言語』に設定したのね……?! なんてことを、蓮子……!」
「UFOの存在は米国政府によって巧妙に隠蔽されているわ。こうでもしなければ、この特ダネは入手できなかった」
そのとき、机の上に置いた私の携帯電話が派手な音を立てて着信音を奏で始めたわ。
思わずビクッと体が震える。なんだ、電話か……。
ほっとして電話に手を伸ばそうとした瞬間、蓮子の手が鋭く動いて私の手を払った。
「出てはダメ! 米国政府に逆探知されるわ!」
『なっ、なんだって――――――!!!!』
……私の携帯の着信メロディーが、絶妙のタイミングで相槌を打った。音量最大。携帯が壊れてしまいそう。
私が「まさか……」と蓮子を見ると、蓮子は蒼白の顔で頷き、「……私が出てみるわ」と呟いて私の携帯を手に取る。
「……誰だ?」
蓮子が電話口に言う。私は祈るような気持ちで、蓮子の次の言葉を待った。
しばらくして、蓮子はすうと息を吸った。そして小さな声で、しかし決然と、こう言った。
「……白……。ええ、純白です。それがなにか?」
蓮子はそれだけ呟いて、電話を切ったの。
私が目で問うと、蓮子は張り詰めていた糸が切れたかのように、がっくりと椅子にもたれかかった。
「……よかった、米国政府じゃなかったわ。パンツの色を聞かれただけだった」
「パンツの色を……?!」
「本当に危なかい綱渡りだったわ。これがペンタゴンだったら一発で消されていたわね」
「蓮子、それで、あなた……答えてしまったの? その……パンツの色を?」
「犠牲は不可避だったのよ。犠牲なくして成果はない。パンツの色の一色や二色、安いものだわ」
私はなにか言おうとしたけど、すぐに口を閉じた。
蓮子の目は憔悴してはいたけれど、光を失ってはいなかったから。
その目には弱いのよ。いつも私はもっと自分を大事にしろとか、ヤケを起こすなとか言いたくなるんだけれど、その目に宿る光を見るといつも何も言えなくなる。惚れた弱み……ってヤツなのかしら。
蓮子は唇を硬く引き結ぶと、「もう後戻りはできない」と低く言ったの。
「とにかく……メリー、この写真には途轍もない価値があるわ。おそらくこれを公開してしまったら、米国政府が転覆するどころの騒ぎじゃなくなる」
「ひっくり返るわね。人類の歴史――世界そのものが」
私が先回りして言うと、蓮子はゆっくりと頷いた。
私たちは現に見てしまった。人類史のターニングポイントになるであろう驚愕の事実の一端を――。
「でっ、でも蓮子……。この写真の実在がすることで、確かにもはやUFOが実在するということを疑う余地はなくなった思う。だけどどうして、この写真だけで人類が滅亡するとわかるの?」
「そんなこと、わかりきったことじゃない」
蓮子は一呼吸置いてから、言った。
「宇宙人が仕掛けてくる地球侵攻作戦によって人類は滅亡するのよ!」
『全ては秘書がやったことです――――――!!!!』
そのとき、喫茶店のテレビに映っていた国会中継からそんな絶叫が聞こえた。
後に知ったことだけど、発言の主は時の総理大臣だったらしいわ。この発言が後に「なんだってー解散」として歴史に記憶されることになるとは、このときは想像だにしていなかったけれど。
「まさか……宇宙人が地球侵攻を……?!」
「有り得ない話じゃないわ。この惑星には水があり、酸素があり、太陽光があり、何よりも人類のような知的生命体が生きている。観察対象として、そして侵略対象として、これ以上の惑星は考えられないと言っていいわ」
「そんな馬鹿な……!」
私が思わず身を乗り出した、ちょうどそのときだったかしら。
私は何者かに肩をトントンと叩かれ、反射的に後ろを振り返った。
そこには天を衝く様な大柄の男が、超然と立ち尽くしていたの。
一瞬にして、私の思考回路はショートしてしまった。
男はがっしりと組み上がった体躯を黒いスーツに包み、黒いネクタイとサングラスで完全武装の有様。
どう見ても外国人にしか見えないその男……間違いようがない。メン・イン・ブラック――アメリカでまことしやかにその実在が囁かれる、未確認飛行物体の謎を解き明かそうとする者たちに容赦ない鉄槌を振るうことで有名な閨の存在――に違いなかった。
男は無言で、じっとこちらを見下ろしていた。私の体は純粋な恐怖に震え、もうアイスコーフィーで咽を湿らせることも出来なかった。
「あの、なにか……?」
先に沈黙に耐え切れなくなったのは、私だった。
男はへの字に曲がった口をぐっと開き、それからサングラスに手を掛け、それをゆっくり外したわ。
サングラスに隠されていた青い瞳が視界に飛び込んでくる。
その光景を目の当たりにした私は目を見開いて、呆然と呟いた。
「マレンコフおじさん……」
「オゥ、メリーサン。ロングタイムノースィー。リメンバーパールハーヴァー」
マレンコフおじさんは、顔中を皺だらけにして笑いかけてきた。
私とマレンコフおじさんは、それから久しぶりに近況を報告し合った。
マレンコフおじさんはよく笑い、よく泣き、よく怒った。そして最後に私の手を取って「ココニ住ンデル。ファッキンジャップゴーホーム」と呟きながら私の手にボールペンでサラサラと日本語で住所を書き、店を出て行ったの。
マレンコフおじさんが店の外に出ると、どっと疲れが噴き出してきた。私は気がつくと、テーブルに突っ伏して荒い息を吐いていたの。
「……知り合い?」
「ヴィクトル・イマントビッチ・マレンコフおじさん。元スペツナズで今は日本で葬儀屋に勤めてるの」
「そう言えばメリーって外人なのよね……危なかった……。本物のメン・イン・ブラックだったら即座に連行されてたわ……」
「よかった……今の、聞かれなかったわよね?」
ようやく息が整ってきた私は、顔中に滲み出た脂汗を拭いつつ、言った。
私はそこでやっと想像してみる気になった。何って、この写真と、まもなく宇宙人が地球に侵攻してくると知った人類の未来を。
きっと大混乱が起こって、世界は宇宙人の侵攻を待たずして破滅してしまうに違いない。
破滅の契機となる情報を公開する度胸が、今の私にあるかといえば……Noだった。
「でっ……でも蓮子……。こっ、これはただ単に、宇宙人が人類を偵察に来たってだけかもしれないじゃない……?」
私は精一杯の軽口を叩きながら、ぎこちなく笑ってみた。
蓮子は無言のままだった。私は絶望的な気分のまま、続けた。
「そっ、そうよ。きっとそうなんだわ。もしかしたら侵攻が目的なんじゃなくて、ピクニックに来たかもしれないじゃない……?」
「……」
「実際、こんなことを公表してしまったら、世界がひっくり返っちゃうわ。私たちも顔を上げて表を歩けなくなる。そうなったら、一体MMR(higoMokkosu Mary and Renko)はどこで活動すればいいのかしら?」
「……」
「物事はポジティヴに捉えるべきじゃない? 彼らも仮に知的生命体なら、きっと人類を邪険に扱ったりはしないはずよ……。そして地球の美しさ、人類の高潔さに見惚れた宇宙人たちは、そのうち人類と友好的な関係を結ぼうとするかも……」
「……」
私の言葉の最後は、尻すぼみになっていた。
無言になった私に、蓮子は静かに、けれど確かな怒りを孕んだ声で、言った。
「メリー、あなたはいつもそう。私がどんなに危険を予知しようとしても、そんなことが起こるはずないって、そんな悲観的になるもんじゃないって、いつも本気で向き合おうとしない。UFOはこうして、現実に存在しているというのに」
「蓮子……」
「私、つらいのよ。あなたが宇宙人にキャトルミューティレーションされていやらしい器具であちこち検められたり、大事なところに変なものを埋め込まれたりするのが。想像しただけで、いやらしくていやらしくて、悲しくなるのよっ……!」
「蓮子、蓮子」
「私はどうなっても構わない。けど、あなたが傷つけられたり、つらい思いをするのは耐えられない。世界がひっくり返っても構わない。百億の同胞に恨まれたって構わない。けれど、あなたが……他の誰でもない、あなたが……宇宙人に苦しめられるぐらいなら、私は――!」
「もういい、蓮子! もういいのよ!」
私はそこで身を乗り出して強引に蓮子の唇を奪った。柔らかで、少し甘酸っぱかったかな。
たっぷり一分ほどキスすると、私たちは唇を離した。
「……わかった。蓮子の気持ちはもう、わかったから……」
「……本当に?」
「本当よ。蓮子が望むなら、私は反対しないわ。政府だって、宇宙人だって、へっちゃらよ」
「メリー……」
「私はあなたの相棒でしょう? 相棒がその気なら、とことん付き合うのが相棒の務めじゃない」
「メリーっ!」
「蓮子……あぁ蓮子!」
私たちはお互いの背中に手を回し、誰に引き剥がされても離れないぐらいに強く、抱き締め合った。
宇宙人が侵攻してきても、政府がやってきても。
誰も二人を引き離すことはできない。そう確かめるように。
テーブルを挟んで向かい合っていたはずだから本当は抱き締め合えるはずないんだけれど、そこは愛の力ってヤツかしら。
⑨⑨⑨⑨⑨⑨⑨⑨⑨⑨⑨⑨⑨⑨⑨⑨⑨⑨⑨⑨⑨⑨⑨⑨⑨⑨⑨⑨⑨⑨⑨⑨⑨⑨⑨
「蓮子、光線銃の調整が終わったわ」
「んお? ありがとうメリー。で、出力は?」
「バッチリよ。一撃で山一つぐらいなら吹き飛ばせるはずだわ」
「なるほど。そりゃバッチリね」
あの日から一ヶ月。私は蓮子の部屋に泊り込んで、対宇宙人用の兵器を開発していた。
蓮子は物理学のプロだし、それもその気になれば飛び級できるぐらいの天才肌だ。蓮子の驚異的な発想力と頑張りによって、今ではたった二人で米軍と渡り合えるぐらいの戦力がこの一室に揃いつつある。
次元破壊爆弾にオキシジェンデストロイヤー。月光蝶システム、S2機関、そして緋想の剣、などなど……。
この光線銃も、蓮子が三日寝ないで作り上げた剣呑なシロモノなの。
「……いつ来るのかな、宇宙人」
私がアイスコーフィーをコップに注いでいると、蓮子が光線銃を構えながらぽつりと呟いたの。
私は少し考えてから、思いつきで言ってみた。
「明日、かもね」
「明日かぁ。それじゃ、明日までにコイツの調整を終わらせとかなきゃな」
蓮子は銀色の水鉄砲という形の光線銃を肩に担ぐ。その銃口を素早く左右させてから、浅くため息をついて苦笑する。
このところ、蓮子は徹夜続きだった。黒くつややかだった髪はぱさぱさになっているし、目の周りにもクマが目立つようになってきている。
ずいぶん痩せたなぁ。そう思うと、私は胸をぎゅっと締め付けられるような痛みを感じた。
「れーんこ?」
「何? メリー」
蓮子はぽかんとしている。私はアイスコーフィーのグラスをテーブルに置いて、蓮子を正面から抱き締めた。
「無理しすぎておばあちゃんになったらイヤよ、蓮子?」
「……君を置いて一人で老けはしないよ、お姫様」
「そう言ってくれるとありがたいわ、王子様」
私たちはそれから名残惜しそうに体を離して、えへへと照れ笑いをした。
こんな甘ったるい時間を過ごせるのは、きっと今だけだ。あと一週間、あと一日、もしかしたらこの瞬間にも、宇宙人は攻め入ってくるかもしれない。
それでも、私たち秘封倶楽部は戦わずして滅びはしない。
私たちは存在し続け、この星に生き続ける。
そう、今日こそがまさに、私たち秘封倶楽部(MMR:Masuraoburi Mary and Renko))の独立記念日なのだから――。
『はい、次はこちらの写真ですね』
不意に、つけっぱなしになっていたテレビから、そんな声が聞こえた。
何気なく抱き合いながら見ると、どこか見たことのある写真のフリップを持った女性リポーターが、神経質そうな赤い髪の女と一緒に映っていた。
『この写真はアメリカのとあるウェブサイトから入手したもので、UFOを捉えた貴重な写真として世界中で話題を集めています。どうでしょう、岡崎教授』
岡崎、と呼ばれた女教授が、興味なさそうな顔で白い点をボールペンで指した。
『あぁ、この写真ですか。この写真は私が試しにフォトショップで合成して私のFaceBookにアップした奴です。こっちが私が合成した点ですね』
『ははぁ、そうなんですか。それではこちらの白い点は?』
『これはアイスコーフィー飲んでたときに飛んだミルクの飛沫ですね』
「なっ、なんだって――――――!!!!」
月光蝶システムが発動したに違いない
そして人類は滅びるのだ
おや、この内容、どっかで、さっき書き込
忘れないとメン・イン・ブラックが来ますよ
やけにコーフィーが目につくと思ったら、ジョーンズさんですかー?!
しかししょうもないなw
とりあえず冷静にちゅっちゅだ
ちゅっちゅさえすれば何もかもがちゅっちゅ通りに…
マヤ文明とインカ帝国の文明が宇宙人の侵略を防ぐために新型ウィルスをばら撒いた結果人類が滅亡する!
そうか!分かったぞ!
全てゴルゴムの仕業だ!!
待て、これは孔明の罠だ!
長持唄孝とキバヤシの作者が一緒だと・・・
突っ込みどころと秘封ちゅっちゅが多すぎて人類は滅亡する!
落ちはあのCMですかwwwwwwwwwwwwwwwww
ちゅっちゅしないと人類が滅亡するだと!?
そうか、ならば蓮メリちゅっちゅだ!
えっと・・・その・・・な、なんだってー!
いいぶっ飛び具合でした
つまり全てはアリスがやったんだよ!!!
アイスコーフィーのミルクの飛沫がついたのも乾巧ってやつの仕業なんだ。
………………な、なんだってー!!
木星までの文明がオシャカだぞ、月の都も消えてしまう。
適当に書いた日記が、あんな大騒ぎされて。
だめだ、このノリにはついていけない
テンポが非常に好みで楽しかったですw
面白かったですw
higoMokkosu Mary and Renkoは強引すぎw
いや、ほんとになんですかこれwwwww
凄い笑った、楽しかったです。
アメリカじゃなくてソ連じゃねえかwww何がリメンバーパールハーヴァーだwwww
異変、異変だこれww
テンションMAXなギャグとか
めっちゃ好きです。