Coolier - 新生・東方創想話

ある夏日の享楽

2010/08/04 19:49:59
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ある夏日の享楽








ミーン、ミーン………シャワシャワシャワ


遠くからも近くからも聞こえてくるセミの合唱。
うるさいとは思うがなぜかこれを聞かないと夏と感じない。
空は快晴。
遠くの方には入道雲が山の形をしていた。夏真っ盛りである。




「暑い」
そう呟いたのは紅魔館の門番、紅美鈴。彼女は門を背にし、地面に座っている。
地面には太陽と木によってつくられた、大きな木陰が広がっていた。
大人数が入れるだろうという大きさの木陰は比較的長身な彼女をすっぽりと覆っている。

毎日門に立つことを欠かせない彼女だが、偶に……いや、高確率でこのように座りながら門を見張っている。これは半ば身内からは公認されているのだが、メイド長からは見栄えが悪いということから時々お仕置きされることもあった。
けれど彼女は口が達者なせいか、最終的にはメイド長が丸く収められているのが現状だ。お仕置きなんて少ない、少ない。

「暑いなぁ。もう少し休んでもいいのにな~……太陽さんは真面目だね~」
美鈴は襟元をパタパタと動かして風で熱を冷まそうとしている。今日は無風のせいか、彼女は全然涼しさを感じれていないのだ。
時刻は午後二時ごろ。最も暑く感じる時間帯だ。彼女の額には玉のような汗が浮かび、それが首筋を伝って襟を濡らしていく。美鈴はふーっと自分の腕に息を吹きかけると、浮かび上がっている汗のお陰でわずかな涼しさを感じ、嬉しそうに微笑む。

「めーりーん…………」
「暑いよ~~」
自分を呼ぶ声が聞こえたので、その方向に顔を向けると前の方からよく知る三人の姿があった。

「めーりーん………」
「こんにちは~……」
「日陰~」
紅魔館の前にある霧の湖でよく遊んでいる、チルノ、大妖精、ルーミアである。まるでシャボン玉のようにふわふわと浮かびながら飛んできた彼女たちもこの暑さに参っているのか、顔色はあまり良くない。

「こんにちは。暑いね、今日も」
「うん、あたいもう死ぬかと思った」
そう言いながらチルノは美鈴の左隣に座る。いつもならチルノの周りからは冷気が漏れているので涼しく感じるのだが、今日は暑さに参っているお陰で漏れ出す冷気の量は少ない。美鈴としては残念に思えたのだが、話し相手が出来たので良しとした。

「チルノちゃん、流石にそれは言いすぎだよ。でも確かに今日は暑いよね~」
大妖精もチルノと同様に美鈴の右隣に座り込む。パタパタと手を動かしながらこちらも涼しさを得ようとしていた。

「う~、日陰は涼しいよ~」
二人に遅れてやってきたルーミアは彼女たちの前に寝転がって木陰を堪能している。妖怪とは言え、一応少女のなりをしているのだからみっともないと思われる。しかし、座り込んでいる三人は暑さに参っているので、注意するのも面倒で誰も咎めない。

「チルノちゃんたち、今日はどうしたの?」
「うん、湖にいてもなんか暑いから…」
「ここなら、美鈴さんとお話が出来ますからね」
「日陰が欲しかった~」
三人が笑いながら楽しそうに話す。美鈴もそうですか、とここに遊びに来てくれた彼女たちに感謝しながら笑っていた。
美鈴は先ほどまで暑さに負けて、しまらない顔で空を見ていたが、今は顔に余裕ができてきた。暑さはまだ続くが、それを紛らわしていてくれるチルノたちの存在が嬉しく感じていた。

「あ、そういえばさぁ……」
「うん、何?」
チルノが美鈴に声を掛ける。振り向いた美鈴は突然起き上がったチルノを見ていると、

「この前、聞きに来た妖怪ってどうなったの?たしかこん位大きかったんでしょ?」
そういってチルノは自分の両手を目一杯に広げて大きさを表した。
それを聞いた美鈴はああ、と頷いた。チルノが何のことを話しているのか分かったらしい。

「ああ、そのことね。もう解決したよ」
「ええ、そうなんですか?じゃあ、妖怪って前、美鈴さんが教えてくれたくらいの大きさだったんですか?」
大妖精は若干怖がりながらも、話に食いついてきた。


先日、この先にある霧の湖で一人の太公望が行方不明になったという、事件があった。紅魔館付近での事件ということもあり、美鈴はレミリアに調査を命じられた。そのとき、目撃情報が欲しくて美鈴はこの二人に聞いたのだ。
大きさは分からなかったのだが人間を食べたとなるとかなりの大きさだと予想した美鈴は、ジェスチャーをしながら彼女たちに聞いたのだ。


「まあ、その通りですね。でも安心してください!霊夢さんが解決してくれましたから」
「そうですか。良かった~」
大妖精はほっとした。湖が彼女たちの遊び場なので危ないという憂いがなくなったからである。
因みに、事件を解決したのは霊夢と美鈴である。自分の名前を出すのが恥ずかしかった美鈴はわざと自分の名前は言わなかったのだ。

「うん?なんかチルノは不服そうだね?」
地面を寝転がっていたルーミアはチルノの顔が不満に彩られていくのに気がついた。

「あったりまえじゃん!!せっかくあたいが解決してやろうと思ったのに」
ぶつぶつと不平を洩らすチルノにルーミアはそれを見て笑いながら転がっていた。

「むー、何が可笑しいのさ、ルーミア?」
「あははは、だってチルノってば美鈴にも勝ててないじゃん。なのに事件解決だって無理だよ~」
そう言ってルーミアはまた笑い始めた。対するチルノはその事が言い返せずむきーっと怒り始める。そしてチルノとルーミアの取っ組み合いが始まったのだ。
大妖精は二人を宥めようと慌てるだけで何も出来ずにいる。そんな光景を美鈴は苦笑しながら見ていた。

(要するにルーミアの中では私<霊夢の力関係ってなっているのね)
美鈴は人知れずため息をついた。














結局、二人の取っ組み合いは引き分けで終わった。ルーミアはまた地面の上で寝転がり、チルノは自分でつくった自分の親指くらいの大きさの氷を舐めていた。慌てていた大妖精は今は壁に寄りかかって目を瞑っている。
美鈴の方は完全に眠っていた。職務放棄の真っ最中である。
とそこへ一本のナイフが美鈴の頭めがけて飛んできた。危険を察知した彼女は目を開けてそれを払い落とす。

「はあ~………これで五連敗ね」
「正確には六連敗ですよ、咲夜さん」
そこにはさきほど、ナイフを投げた十六夜咲夜が立っていた。座っている美鈴に腕を組みながら咲夜はため息をつく。

「いい身分ね、美鈴。木陰で眠りこけて、三人と喋っているなんてね」
「おや、見ていたんですか?」
あからさまな棘を含みながら話す咲夜に美鈴はおどけながら返答を返す。大抵のものなら居心地を悪く感じ、立ち去るのだが、

「「「………………」」」
三人は一瞥した後、またもとの行動に移る。要するに彼女たちはこの光景に慣れてしまっているのだ。

「ふぅ、私ってそんなに威厳がないのかしら……」
「いえ、そんなことないですよ。ほら、見てください。私の足なんか震えてますよ」
「それは変な体勢で寝ていたから足が痙攣しただけでしょうが!!!」
咲夜は頭をがしがしとかき始める。こうすると頭皮に悪いのだがこうせずにはいられなかったのだ。

「まあまあ、落ち着いてください。今日は暑いんで勘弁してください」
「それを言うなら今日『も』よ!いつも暑いわ!」
「そうなんですよね、今日『も』なんですよね……」
そう言って美鈴は立ち上がった。お尻に付いた砂埃を周りの人に付かない様に払いながら背を伸ばした。そして咲夜の顔をじっと見つめる。

「な、何よ?」
見つめてくる美鈴にその気がなくても咲夜はテレを感じ、思わず顔を引く。なおも見つめてくる美鈴は咲夜の顔の側面を両手で挟んだ。

「え、ちょっ!?」
「だから、休みましょう!」
「はあっ?」
咲夜は呆けた。突然、顔を捕まえられたと思ったら休めと言ってきたのだ。あまりのことに咲夜は一瞬思考が止まってしまった。

「ルーミアちゃん、もうちょっと前に出て、チルノちゃんの方にね」
「ん~~」
美鈴は呆ける咲夜をそのままにルーミアに指示した。言われたルーミアは歩服前進しながらチルノのそばまで来て落ち着く。チルノは動くルーミアを見ながらも、一瞥しただけで相変らず氷を舐めていた。

「よし、これで場所が出来ましたね」
「ちょ、ちょっと?何するつもりなのよ、貴方は?」
「だから、休みましょうって言っているんです」
そう言って美鈴は両手を咲夜の肩において後ろの方に倒れかかる。隣に座っていたチルノや大妖精にぶつからないように座り込み壁に寄りかかった。そしてそれと連動するように捕まえられていた咲夜も倒れてきた。今は美鈴に寄りかかるように地面に座り込んでいる。

「いきなり何するのよ?」
「暑いですからね、咲夜さんも少しぐらいサボったって怒られませんよ」
「だからっていきなり倒れるのはどうかと思うわ」
「まあ、それはサプライズってことで、ね♪」
美鈴は笑いながら両手を合掌しながら謝る。咲夜はそれを呆れたようにため息をついてから、お尻を動かし座りなおす。胡坐をかいている美鈴の足の上にお尻を乗せ、背中を美鈴に預ける。

「お嬢様に怒られたら貴方のせいだからね。かどわかされましたってね」
「承知♪」
咲夜はゆっくりと呼吸しながら目を瞑る。美鈴は彼女がリラックスできるようにこの体勢を維持することに努める。

(一体私の足はいつまで持つでしょうかね)
美鈴は咲夜がずり落ちないように彼女の肩を後ろから抱きしめた。














「あら、今日は団体ね」
門の方から声が聞こえたので美鈴とチルノは振り向いた。残りの三人は静かな息をしながら眠っているので反応していない。

「こんにちは、パチュリー様、小悪魔さん」
「なんだかピクニックでもやってるようね」
「なんだか楽しそうです!」
美鈴たちに声を掛けたのは図書館の主で美鈴の封印を解いてくれたパチュリー=ノーレッジとその従者、小悪魔である。彼女たちは美鈴たちの傍まで近づいた。木陰に入ってきたパチュリーはしゃがみこみ美鈴の顔をじっと覗く。

「どうかしました?」
「暑いわ」
「夏ですからね」
彼女の言わんとしている事が分かり、美鈴は自分の持っていたタオルを地面に敷く。パチュリーはありがとう、と言ってそこに座る。木陰の地面が意外と冷えていたことに彼女は満足していた。

「こあ、貴方も座ったらどう?」
「あ、では、失礼します」
主に声を掛けられた小悪魔も自分の持っていたハンカチを地面に敷いて座る。
計七人が座っても(一人は寝転がっている)木陰はまだスペースに若干余裕があった。
でも時間が進むにつれてスペースに余裕はなくなってくる。
紅魔館は東に建っているので、夕方は西日になり門から太陽が沈んでいくのが見える。そのため、徐々に木陰の範囲は狭くなるのだ。

「いつからこうしているのかしら?」
「そうですね、大体二時ごろでしょうか」
「相変らずね」
パチュリーは静かに微笑みながら美鈴ほうに顔を向ける。言われた美鈴はテレながら自分の頬をぽりぽりとかいていた。
一言二言で会話が途切れてしまうが、彼女たちに気まずさはない。これが美鈴とパチュリーのコミュニケーションだった。

腰を落ち着けているパチュリーと小悪魔のところにチルノが近づく。何かとパチュリーが見ていると、

「ん……」
そう言って、チルノはパチュリーたちに手を差し出す。そこに乗っていたのは先ほどチルノが舐めていた氷の塊だった。

「くれるの?」
「ん。暑そうだから」
パチュリーの服装は白を基調としているので熱が篭りにくいが、それでも額や首には汗が見られた。チルノは暑いのに、ここに来ている彼女たちが気になって、気を利かして氷を作ったのだ。

「ありがとう、チルノ」
「ありがとうございます」
「うん…」
チルノは恥ずかしそうにしながら、もといた美鈴の隣に戻っていった。
パチュリーたちはせっかくの氷を解けないうちに、口の中に放り込む。氷の冷たさが口いっぱいに広がった。それを気持ちよさそうに舌で転がす二人の顔は嬉しさで満ちていた。










「そういえば、二人はどうしてここに来たんですか?」
氷の涼しさを堪能していた二人が食べ終わる頃をみて、美鈴は思っていた疑問を尋ねた。
病弱なパチュリーは普段外に出ることはない。外に出るときは大抵、何かがある時だからだ。だから今回も何かあるのだろうと思って、美鈴は尋ねたのである。

「そうね、単に貴方の様子が見たかったからかしら」
「私の?」
美鈴は自分を指差し、パチュリーはそのことにコクンと頷く。

「いつも暑い中、門に立っているからね。一応貴方の主だからどうしているかなと思ってね」
「わざわざありがとうございます。まあ、見ての通りだらけていますよ」
「そのようね」
くすくすと笑うパチュリーに美鈴もつられて笑う。近くの小悪魔やチルノも笑っている。

「安心したわ。貴方がそうやって笑っていられるのなら私は十分だわ」
「大丈夫です。貴方に心配をかけるほど落ちぶれていませんから」
「なら、いい加減立って仕事したらどう?そうしてもらえると私の心労も減るのだけれど、ね」
うっ、と美鈴は返答を詰まらせた。言い返せずにたじろぐ美鈴にパチュリーはまた可笑しそうに笑った。

(これからはもっと立っていなきゃ。目標は二時間)
志の低い目標が美鈴の中に芽生えた瞬間であった。















日も沈もうとする夕方。目の前には人間の何十倍もの大きさの夕日が門に座り込んでいる彼女たちを照らしていた。
時刻は五時頃ということもあり、眠っていた咲夜、大妖精、ルーミアも目を覚ましていた。ルーミアはまだ寝転がってはいるが残りは座りながら夕日をみていた。

「まだ暑いですね」
「夏ですからね」
美鈴は手を動かして風を仰ぐ。答えた小悪魔も同じように涼しさを求めていた。

「まさか、二時間も眠ってしまうなんて……」
「まあ、良いんじゃない。あなたは普段から働きすぎなのよ」
長い休憩を取っていたことにちょっと後悔する咲夜にパチュリーはそっとフォローをする。
とはいえ、いつの間にか持ってきた本に目を向けながら話しているのであまり真剣みが出ていなかった。

「チルノ、氷」
「ほい」
「あ、私も」
こちらもまだ暑さにへばっているルーミアはチルノに氷を催促している。大妖精も同じなのだろう。

「やっぱり外は暑いなあ」
「ですよね~」
フランが門に寄りかかりながら頭をこつんと門に預ける。美鈴は首に流れる汗を手で拭いながら暑さにため息をついた。

「……………ん?」
美鈴はふと聞きなれない声が聞こえたので門の方に目を向けた。同時に美鈴以外の六人も目を向けた。

「うん?どうしたの、みんな?」
「あの……何時からいらっしゃいました?」
「え、今さっきだよ」
そういわれて全員が目を丸くした。そこにいたのはフランドール=スカーレット。絶対外出禁止で地下室在住の彼女が外に出てきたことに、特に紅魔館関係者は開いた口がふさがらない状態でいた。

「え、妹様?なんで?」
「あ、咲夜!だめだよ、こんな所にいちゃ。お姉さま探してたよ」
フランは楽しそうに咲夜に近づく。本気で注意しているわけではないが、その事がここで休憩していた咲夜の心を沈ませる。そんな咲夜はフランに謝ろうと立ち上がろうとした。しかし、

「申し訳ありません。実は、私が働きすぎな咲夜さんを休ませる為に、無理やり休憩させました。罰を与えるならどうか私に与えてください」
美鈴は咲夜が対応するよりも先にフランに謝った。確かに美鈴が咲夜の代わりに責任をとるとはいったが、あらためて彼女がとった行動に咲夜は驚き、たのもしさも感じた。
そんな美鈴の様子を見ていたフランは

「へ~、めーりんが休ませたんだ。意外だな~……でも、それでいいと思うよ。咲夜、働きすぎだもん。これくらいでお姉さまが怒るはずが無いわ」
美鈴の取った行動に驚きながらもそれを良しと見ていた。フランも咲夜については心配していたからである。
とりあえず、この場はフランの黙認ということで事なきを得た。周りに居たパチュリーたちもほっと胸をなでおろしていた。













「でも私も呼んで欲しかったなぁ」
「申し訳ありません。妹様は日の光を苦手としていますので、日中に呼ぶのもいかがなものかと」
「まぁ、そうだよね。実際今だってまぶしいし」
吸血鬼は日光に弱い。吸血鬼のフランは自分の持っていた日傘を前に傾けて自分に日光が当たらないようにする。一番門に近いところに腰掛けているフランは木陰に入れず傘の影で過ごしていた。
それを見かねた美鈴はルーミアにフランに闇を作るように頼んだ。
門から比較的離れたところの木陰で寝そべっていた、ルーミアは美鈴の言うとおりにフランの元にまで近づきその場で闇を発生させた。
フランは日光がさえぎられたことに嬉しくなり、ルーミアのことを珍しそうに見ながらお礼を言った。

「うわぁ!これ、良いな!ありがとう、貴方」
「どういたしまして」
お礼を言うフランにルーミアは照れくさそうに言葉を返す。ルーミアはその場に落ち着き、今度は座りながらフランと話していた。

「案外、良いコンビになれそうね」
「確かに」
咲夜と美鈴は嬉しそうに話しているフランを見て口元を緩ませる。嬉しい気持ちが共感できるひと時であった。
その時、ふと美鈴はある疑問が頭の中をよぎった。

「ねえ、ルーミアちゃん。貴方、ここに来る時どうして闇を作ってこなかったの?」
質問されたルーミアは驚いたような顔で美鈴を見る。その様な顔をする彼女を見て、あれ、何か変なことを聞いたかな、と美鈴は戸惑っていた。
ルーミアは何も答えずじっと上を仰いでいる。そしてしばらくして、

「ああ、あれね。私、暑くて闇を出すのも忘れてたみたい」
出さなかった理由をやっと思い出したというルーミアの答えは間の抜けた答えで美鈴を笑わせた。どうやらこの闇っ娘は暑さで頭がやられていたらしい。彼女らしいなと美鈴は笑っていた。

「もうルーミアしっかりしなよ。あんたが闇を出していればヘロヘロにならずにここまで来れたのに…」
「まぁまぁ、チルノちゃん。過ぎたものは仕方ないって」
「う~、面目ない……」
炎天下の飛行は氷精にとっては危険なことで、チルノが怒るのも無理は無い。そしてそれをなだめる大妖精もいつもどおり。ルーミアは申し訳なさそうに後頭部を掻いている。
そして周りの反応はというと、そのやり取りを見て可笑しそうに笑う小悪魔とフランドール。パチュリーも興味深そうに本とチルノたちを交互に見、まだ美鈴の膝の上に座っている咲夜は呆れたように肩をすくめている。そして美鈴はこんなやり取りを毎日見られる平穏と職業に幸せを感じていた。









夏の厳しい暑さも夕方を境に落ち着きだした。太陽の光は名残惜しそうに沈む前に強烈に輝いている。その光から木陰と闇は彼女たちを守るように包んでくれている。八人の彼女たちは誰からもここから立ち去ろうとせず、今の享楽を味わいながらなおも談笑を続けていた。

























おまけ


「どこ?どこなの、みんな?」
紅魔館の主、レミリア=スカーレットは館内を小走りで探索していた。

「咲夜~、パチェ~、フラン~みんなどこなの?」
レミリアは昼食後、しばらくしてから暇つぶしがてらに図書館に行ったのだが誰も居なかった。その内戻ってくるだろうと勝手に本を読んでいたが戻ってくる気配が無かった。
仕方なく咲夜を呼んで探させようとしたが彼女も居なくなっていた。
嫌な予感がレミリアの中にあった。そこで急ぎ、地下室に行くもそこにも妹のフランも居なくなっていた。

フランがこんなに日差しが厳しい今日に限って外に出て行くはずが無いと思っていたレミリアはみんなが行方不明になったと思い込み、今に至っている。

「お願いだから、誰でもいいから出てきてよ~」
レミリアは上へ下へと縦横無尽に駆け回るも誰も見つからなかった。なぜなら気づけばたくさん居たはずの妖精たちも見当たらないでいたからだ。そのことが余計に焦りを生みだし、彼女の小走りがだんだんと早くなってくる。

「みんな、みんな、みんな~!!!」
ビュンと一陣のつむじ風が起こるくらいのスピードでレミリアは廊下を走り回った。





妖精たちがひょっこりと柱やドアから出てくる。影に隠れていた彼女たちはものすごいスピードで駆け抜けていくレミリアの目には入らずにいた。彼女たちはこの状況を楽しんでいた。
もちろんレミリアが探しているみんなが外で話しているのは知っている。けれどそれを敢えてレミリアに知らせずに様子を見ることにした。その方が面白いからだと思ったからだ。そうしてクスクスと笑いながら妖精たちはまた隠れだす。彼女のスピードが上がっている為、妖精たちのテンポも上げなければいけなかったからだ。
こうして紅魔館の今日の一日は終わっていった。



fin
美鈴の周りには自然と人が集まります。
まるで博麗神社のように………なぜなら彼女はみんなに愛されているからだ。
そんな風に思っていただければ良いなと思いながら創りました。
アクアリウム
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コメント



0.1500簡易評価
2.80タルタルガ削除
初めて読ませて頂きました。創想話に足を運ぶのも初めてなのですが(´∀`;)
紅魔館の何気ない一日が美鈴を中心にゆったりと進んでいく様が目に浮かぶような文章でした。
行間の取り方も読みやすいような構成で良かったと思います。
初めてのレビューなので上手く書けないでいますが、良い物を読ませて頂きました。ありがとうございます。
5.100名前が無い程度の能力削除
炎天下での門番ってかなりきつそうですよね。
18.無評価アクアリウム削除
返信です。
>タルタルガ氏
 読みやすい、と言う感想はいつ頂いてもうれしいですね。
 これからもそう言ってもらえるように頑張っていきます。

>5氏
 そうですね、実際やったことないからわからないですが、暑いんでしょうね~……