/*注意*/
この物語は、オリジナルキャラクタの視点から描かれています。
オリキャラなんてイラネ、な人はブラウザバックをお願いします。
―先生―
人里にある小高い丘。
そこに、子どもたちの笑い声が響き渡っている。
その子どもたちの中心には一人の女性――上白沢慧音がいた。
彼女は里で寺子屋を営んでおり、周りの子どもたちはその生徒というわけだ。
この日は天気がよく、野外で写生をすることになった。
そして、今はその休憩時間であり、少年少女が思いのままにはしゃいでいた。
「俺は…何でここにいるんだろうな……」
そう呟くのは、寺子屋の生徒だった少年だ。
彼の呟きは風に乗ることはなく――いや、そもそも彼の身体にさえ風がぶつかることはない。
そう、彼はすでにこの世の者ではなくなっていた。
思い返してみると、俺はロクでもない生徒だった。
授業は真面目に聞かないし、成績はいつもビリで、暇があれば悪戯の方法を考えていた。
宿題を忘れては頭突きをされ、居眠りをしては白墨を投げられた。
いつだったか忘れたが、「お前ほど手のかかるやつは見たことがない」と言われたこともあった。
そうやっていつも怒られていたが、俺はそんな先生が好きだった。
好きだからこそ、そうやって気を引こうとしていたのかもしれない。
俺の両親は放任主義で、怒られるということがなかった。
そんな俺が、いや、そんな俺だからこそ、先生のことが好きになったのかもしれない。
初めこそ鬱陶しいと感じていたが、その真剣な目にいつしか愛情を感じていたのだ。
この人は俺を見てくれている――その実感がとても嬉しかったのを、今でも覚えている。
「こらー!あまり遠くに行くんじゃなーい!」
慧音の声が響いた。
どうやら、生徒の一人が飛ばされた帽子を追って魔法の森の近くまで行っていたようだ。
彼は慧音が走って行くのを眺めていた。
ある日の夜、俺は魔法の森へ入った。
そこは妖怪や瘴気のせいで立ち入り禁止とされている場所だったが、俺は気にすることがなかった。
珍しい虫やキノコを見つけたり、光る苔を観察したりと、まるで飽きることがなかった。
ここは大人たちの手の届かない、格好の遊び場だったのだ。
だが、夜にここを訪れるのは初めてだった。
わざわざ夜に訪れた目的はただ一つ、”夜にしか光らない花”を手に入れることだった。
俺は昼間、白黒の女が先生と話しているのを盗み聞きしていた。
別にやましいことはなかったが、何となく気恥ずかしい気がして隠れてしまったのだ。
そこで聞いたのが、その花の存在だ。
白黒が得意げに話すと、先生は興味深そうに相槌を打っていた。
俺はその瞬間に閃き、その晩にそれを決行することにした。
花の特徴を聞いた俺は、それがどこにあるかすぐに分かった。
だが、その花は摘み取ったら半刻ほどで光らなくなってしまうらしい。
つまり、先生に光っている花を見せるには夜の森に入るしかないということだ。
慧音が生徒を連れて戻ってきた。
どうやら帽子も無事なようだ。
その目はどこまでも優しい。
だが、どこか哀しさを隠しているようにも見えた。
俺は知らなかった。
夜の森がこんなにも危険だということを。
いや、知っていたが、それでもその誘惑と興奮を断ち切ることができなかった。
頭の中は先生が喜ぶ顔で一杯になっていたのだ。
目的の花を見つけるのにはそう苦労しなかった。
ここはもはや庭であり、例え夜になっても目的の場所を見失うことはなかった。
だが、俺は夜の森を甘く見ていた。
後ろに何かの気配を感じ、振り返った瞬間に横腹へと衝撃が走った。
吹っ飛ばされた痛みに顔をしかめつつ目を凝らすと、赤い目を光らせた犬――妖犬が3匹いた。
俺は死を覚悟した。
だが、いやに落ち着いていて、恐怖を感じなかった。
『明日から先生に会えなくなる』
その事実だけが、俺の心にはっきりと映し出された。
だが、俺の意識はそこで無くなってしまった。
今思えば、そのときに強く頭を打った気がする。
微かに覚えているのは右腕の熱さと、誰かの怒声だった。
「みんな、帰るぞー!」
慧音の声が響き渡ると、あちこちに散らばっていた生徒が集合していく。
彼はその様子を懐かしそうに、羨ましそうに見ている。
だが、誰も彼に気付くことはない。
一度だけ魔法の森を振り返った後、慧音は生徒を連れて寺小屋へと戻っていった。
俺は、もう二度とその手に触れることができない
怒られることも、頭突きをされることもない
それがひどく悲しい
もう一度会いたい
会って話したい
そのときはきっと、ちゃんと勉強するから
もう一度 先生の教え子にしてくれますか?
この物語は、オリジナルキャラクタの視点から描かれています。
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―先生―
人里にある小高い丘。
そこに、子どもたちの笑い声が響き渡っている。
その子どもたちの中心には一人の女性――上白沢慧音がいた。
彼女は里で寺子屋を営んでおり、周りの子どもたちはその生徒というわけだ。
この日は天気がよく、野外で写生をすることになった。
そして、今はその休憩時間であり、少年少女が思いのままにはしゃいでいた。
「俺は…何でここにいるんだろうな……」
そう呟くのは、寺子屋の生徒だった少年だ。
彼の呟きは風に乗ることはなく――いや、そもそも彼の身体にさえ風がぶつかることはない。
そう、彼はすでにこの世の者ではなくなっていた。
思い返してみると、俺はロクでもない生徒だった。
授業は真面目に聞かないし、成績はいつもビリで、暇があれば悪戯の方法を考えていた。
宿題を忘れては頭突きをされ、居眠りをしては白墨を投げられた。
いつだったか忘れたが、「お前ほど手のかかるやつは見たことがない」と言われたこともあった。
そうやっていつも怒られていたが、俺はそんな先生が好きだった。
好きだからこそ、そうやって気を引こうとしていたのかもしれない。
俺の両親は放任主義で、怒られるということがなかった。
そんな俺が、いや、そんな俺だからこそ、先生のことが好きになったのかもしれない。
初めこそ鬱陶しいと感じていたが、その真剣な目にいつしか愛情を感じていたのだ。
この人は俺を見てくれている――その実感がとても嬉しかったのを、今でも覚えている。
「こらー!あまり遠くに行くんじゃなーい!」
慧音の声が響いた。
どうやら、生徒の一人が飛ばされた帽子を追って魔法の森の近くまで行っていたようだ。
彼は慧音が走って行くのを眺めていた。
ある日の夜、俺は魔法の森へ入った。
そこは妖怪や瘴気のせいで立ち入り禁止とされている場所だったが、俺は気にすることがなかった。
珍しい虫やキノコを見つけたり、光る苔を観察したりと、まるで飽きることがなかった。
ここは大人たちの手の届かない、格好の遊び場だったのだ。
だが、夜にここを訪れるのは初めてだった。
わざわざ夜に訪れた目的はただ一つ、”夜にしか光らない花”を手に入れることだった。
俺は昼間、白黒の女が先生と話しているのを盗み聞きしていた。
別にやましいことはなかったが、何となく気恥ずかしい気がして隠れてしまったのだ。
そこで聞いたのが、その花の存在だ。
白黒が得意げに話すと、先生は興味深そうに相槌を打っていた。
俺はその瞬間に閃き、その晩にそれを決行することにした。
花の特徴を聞いた俺は、それがどこにあるかすぐに分かった。
だが、その花は摘み取ったら半刻ほどで光らなくなってしまうらしい。
つまり、先生に光っている花を見せるには夜の森に入るしかないということだ。
慧音が生徒を連れて戻ってきた。
どうやら帽子も無事なようだ。
その目はどこまでも優しい。
だが、どこか哀しさを隠しているようにも見えた。
俺は知らなかった。
夜の森がこんなにも危険だということを。
いや、知っていたが、それでもその誘惑と興奮を断ち切ることができなかった。
頭の中は先生が喜ぶ顔で一杯になっていたのだ。
目的の花を見つけるのにはそう苦労しなかった。
ここはもはや庭であり、例え夜になっても目的の場所を見失うことはなかった。
だが、俺は夜の森を甘く見ていた。
後ろに何かの気配を感じ、振り返った瞬間に横腹へと衝撃が走った。
吹っ飛ばされた痛みに顔をしかめつつ目を凝らすと、赤い目を光らせた犬――妖犬が3匹いた。
俺は死を覚悟した。
だが、いやに落ち着いていて、恐怖を感じなかった。
『明日から先生に会えなくなる』
その事実だけが、俺の心にはっきりと映し出された。
だが、俺の意識はそこで無くなってしまった。
今思えば、そのときに強く頭を打った気がする。
微かに覚えているのは右腕の熱さと、誰かの怒声だった。
「みんな、帰るぞー!」
慧音の声が響き渡ると、あちこちに散らばっていた生徒が集合していく。
彼はその様子を懐かしそうに、羨ましそうに見ている。
だが、誰も彼に気付くことはない。
一度だけ魔法の森を振り返った後、慧音は生徒を連れて寺小屋へと戻っていった。
俺は、もう二度とその手に触れることができない
怒られることも、頭突きをされることもない
それがひどく悲しい
もう一度会いたい
会って話したい
そのときはきっと、ちゃんと勉強するから
もう一度 先生の教え子にしてくれますか?