此処は幻想郷。
鬼、妖怪、吸血鬼、人間…。
様々な種族の、様々な者が共存して住んでいる、まるで楽園のような郷。
そんな幻想郷の地底の深く、とても深い場所。
其処に、地霊殿と呼ばれる場所があった。
地上で蔑みを受け、そして地中深くへ閉じ込められた者達が住む場所。
地上の妖怪は其処に入る事を許されず、其処へ入れる者は人間だけであった。
そんな地霊殿に、1人の少年が住んでいた。
感情を殺し、誰にも会おうとせず、基本言葉を発さない。
過去に、とても深い傷のある少年であった。
服装はとても簡易に、黒い半そでのシャツ一枚と、緩くなったジーパン。
幻想郷とは違う、人間界に住み。
ただの人間であったはずの彼は、ある日突然能力に目覚めた。
『願えば叶う程度の能力』
何かを考え、何かを思い。
そしてそれを実行したいと思えば、即座にその願いが叶えられる能力。
ただし、その代価として、少年の一番大切な物が、1つ失われる。
代価で失われた物は、二度と取り戻す事ができない。
少年は一度、旅行からの帰り道で飛行機の事故に遭った。
墜落していく飛行機に乗っていた少年は、その瞬間願った。
『生き延びたい』
その瞬間、辺りを眩い光が包んだ。
そして飛行機はコントロールを取り戻し、無事に航行を続けたのだ。
少年が家に帰ると、家には誰もいなかった。
何時間、何日たっても、少年の家族は帰ってこなかった。
『少年の一番大切な物が、1つ失われる。』
少年は一番大切だった家族を失ったのだ。
そしてそれからも、気付かないうちに願ってしまった物がどんどん叶っていく。
少年の大切な物がどんどん消えていった。
少年は遂に塞ぎ込み、殆ど家から出ず、誰ともコミュニケーションをとろうと思わなかった。
そんな生活が2年続いたある日、空から声が聞こえた。
『幻想郷へいらっしゃい。』
何か、希望のようなものを抱いた少年は、その声の通り幻想郷へと入った。
幻想入り。
だが、幻想郷に来てからも少年は殆ど話すことはなかった。
そして、自らの意志で深い地底へと入っていった。
そして、今に至る。
「…。」
何も話さず、少年は俯いていた。
ずっと隅に座り、食事の時間の際のみ、皆が集まっている場所へ向かう。
それぐらいしか、基本誰とも会わない。
そんな少年を、いつも気にしている少女がいた。
「…ねぇねぇ、いつも此処にいるよね?」
食事も終わり、少年はまた元いた場所に戻っていた。
そしてそんな少年に、『少女』は意を決して話しかけた。
「…。」
「ねぇー。」
「…。」
「無視しないでよー!!」
少女のそんな言葉に、少年は渋々少女の方を向いた。
大きな烏のような羽。赤い結晶のような物がついた服。
手には制御棒が取り付けられていて、なんだかとても強そうに見えた。
そんな少年を見て、少女はぱぁっと表情を明るくした。
「あっ、やっと振り向いてくれた!」
「…何?」
久しぶりに言葉を発した。
とても簡単な言葉だったけれど。
「だから、いつも其処にいるよねって。」
「…別にいいだろ。」
素っ気無い返事を繰り返し、少年は早く話を終わらせるつもりだった。
誰ともコミュニケーションをとりたくないから。
大切な物にしたくないから。
「むぅ…。」
頬を膨らませ、少女は少年を見ていた。
何処か悔しそうな、そんな表情で。
「…もういいだろ。早くどっか行けよ。」
「…君がそういうなら、もういなくなった方がよさそうだね…。」
少し悲しそうな顔をしながら、少女は後ろを向いた。
歩き出そうとしたその時、少女は声を上げた。
「…ね、名前教えてよっ!私の名前は霊烏路空!君は?」
少年は溜息を吐いた。
もう早く何処かへ行ってほしい。
だが少女は多分名前を聞くまで帰らないであろう。
仕方なく、少年は名前を告げることにした。
「斉藤晃。もういいか?さっさと消えてくれよ。」
「アキラ…かぁ。うんわかった、またね!」
空はにこりと笑いながら、晃の傍から離れていった。
そして空が遠くへ離れた後、晃は大きな溜息を吐いた。
「…はぁ。」
その溜息には、何か色々な感情が詰め込まれている感じがした。
その翌日。
食事が終わった後、空はまた晃のところへ出向いた。
晃は昨日と同じところにいた。
「あっきらくーん!!」
「…またか。」
晃は遠くを見つめて、溜息を吐いた。
もう来ないで欲しい。あまり話をしたくない。
また現れた少女に、晃は正直うんざりしていた。
「またそんなとこにいる…。たまには外に出ようとか思わないの?」
「…興味ない。」
ぼそりとそう言い放つ。
そんな言葉を聞いて、空はむっとした表情になる。
そして、晃の手を掴み、無理やり立ち上がらせる。
「うわっ。」
「ほら、ちょっと歩こうよ!
最近地霊殿にさんぽこーすとか言うのができたんだって!
…さんぽこーすってなに?」
「…。」
晃は頭を抱えた。
あぁ、あれか。何かと思えば。
こいつ馬鹿なんだ。
「散歩ってのは…歩く事だよ。
歩きながら風景とかを楽しんで、楽しんで歩く事。」
「へぇー…頭いいんだね!」
空の純粋な気持ちを感じた。
しかし何故だか少年は、その気持ちを受けてぐっと胸を締め付けられていた。
「これくらい当然だよ。…なぁ、もういいだろ?」
少年は俯きながら、空の手を払った。
その瞬間、空は悲しそうな顔をして、一言
「え…?」
とだけ呟いた。
どうして。
晃は思った。
どうしてそんな悲しそうな顔をする。
どうしてそんな俺に関わる。
どうしてそんなに純粋に近付けるんだ。
「迷惑なんだよ。1人でいさせてくれないか?
…俺の傍に居たら、お前も消えちまうぞ。」
一直線に、空の目を見ながら告げた。
その目線は鋭く、そして何よりも怒りのようなものが込められていた。
「あ…その…ごめんなさい…。」
「…早く消えろ。」
そう言って、少年は空から目を逸らした。
空はそのままだっと駆け出し、その場を後にした。
晃は、拳を握りしめていた。
誰かと触れ合いたい。自分自身の心がそう言っている。
だが、その気持ちを押さえつけ、晃は1人で過ごしている。
「…俺は、大切な物を作っちゃいけないんだ。」
ぼそり。
晃はそう呟いた。
鬼、妖怪、吸血鬼、人間…。
様々な種族の、様々な者が共存して住んでいる、まるで楽園のような郷。
そんな幻想郷の地底の深く、とても深い場所。
其処に、地霊殿と呼ばれる場所があった。
地上で蔑みを受け、そして地中深くへ閉じ込められた者達が住む場所。
地上の妖怪は其処に入る事を許されず、其処へ入れる者は人間だけであった。
そんな地霊殿に、1人の少年が住んでいた。
感情を殺し、誰にも会おうとせず、基本言葉を発さない。
過去に、とても深い傷のある少年であった。
服装はとても簡易に、黒い半そでのシャツ一枚と、緩くなったジーパン。
幻想郷とは違う、人間界に住み。
ただの人間であったはずの彼は、ある日突然能力に目覚めた。
『願えば叶う程度の能力』
何かを考え、何かを思い。
そしてそれを実行したいと思えば、即座にその願いが叶えられる能力。
ただし、その代価として、少年の一番大切な物が、1つ失われる。
代価で失われた物は、二度と取り戻す事ができない。
少年は一度、旅行からの帰り道で飛行機の事故に遭った。
墜落していく飛行機に乗っていた少年は、その瞬間願った。
『生き延びたい』
その瞬間、辺りを眩い光が包んだ。
そして飛行機はコントロールを取り戻し、無事に航行を続けたのだ。
少年が家に帰ると、家には誰もいなかった。
何時間、何日たっても、少年の家族は帰ってこなかった。
『少年の一番大切な物が、1つ失われる。』
少年は一番大切だった家族を失ったのだ。
そしてそれからも、気付かないうちに願ってしまった物がどんどん叶っていく。
少年の大切な物がどんどん消えていった。
少年は遂に塞ぎ込み、殆ど家から出ず、誰ともコミュニケーションをとろうと思わなかった。
そんな生活が2年続いたある日、空から声が聞こえた。
『幻想郷へいらっしゃい。』
何か、希望のようなものを抱いた少年は、その声の通り幻想郷へと入った。
幻想入り。
だが、幻想郷に来てからも少年は殆ど話すことはなかった。
そして、自らの意志で深い地底へと入っていった。
そして、今に至る。
「…。」
何も話さず、少年は俯いていた。
ずっと隅に座り、食事の時間の際のみ、皆が集まっている場所へ向かう。
それぐらいしか、基本誰とも会わない。
そんな少年を、いつも気にしている少女がいた。
「…ねぇねぇ、いつも此処にいるよね?」
食事も終わり、少年はまた元いた場所に戻っていた。
そしてそんな少年に、『少女』は意を決して話しかけた。
「…。」
「ねぇー。」
「…。」
「無視しないでよー!!」
少女のそんな言葉に、少年は渋々少女の方を向いた。
大きな烏のような羽。赤い結晶のような物がついた服。
手には制御棒が取り付けられていて、なんだかとても強そうに見えた。
そんな少年を見て、少女はぱぁっと表情を明るくした。
「あっ、やっと振り向いてくれた!」
「…何?」
久しぶりに言葉を発した。
とても簡単な言葉だったけれど。
「だから、いつも其処にいるよねって。」
「…別にいいだろ。」
素っ気無い返事を繰り返し、少年は早く話を終わらせるつもりだった。
誰ともコミュニケーションをとりたくないから。
大切な物にしたくないから。
「むぅ…。」
頬を膨らませ、少女は少年を見ていた。
何処か悔しそうな、そんな表情で。
「…もういいだろ。早くどっか行けよ。」
「…君がそういうなら、もういなくなった方がよさそうだね…。」
少し悲しそうな顔をしながら、少女は後ろを向いた。
歩き出そうとしたその時、少女は声を上げた。
「…ね、名前教えてよっ!私の名前は霊烏路空!君は?」
少年は溜息を吐いた。
もう早く何処かへ行ってほしい。
だが少女は多分名前を聞くまで帰らないであろう。
仕方なく、少年は名前を告げることにした。
「斉藤晃。もういいか?さっさと消えてくれよ。」
「アキラ…かぁ。うんわかった、またね!」
空はにこりと笑いながら、晃の傍から離れていった。
そして空が遠くへ離れた後、晃は大きな溜息を吐いた。
「…はぁ。」
その溜息には、何か色々な感情が詰め込まれている感じがした。
その翌日。
食事が終わった後、空はまた晃のところへ出向いた。
晃は昨日と同じところにいた。
「あっきらくーん!!」
「…またか。」
晃は遠くを見つめて、溜息を吐いた。
もう来ないで欲しい。あまり話をしたくない。
また現れた少女に、晃は正直うんざりしていた。
「またそんなとこにいる…。たまには外に出ようとか思わないの?」
「…興味ない。」
ぼそりとそう言い放つ。
そんな言葉を聞いて、空はむっとした表情になる。
そして、晃の手を掴み、無理やり立ち上がらせる。
「うわっ。」
「ほら、ちょっと歩こうよ!
最近地霊殿にさんぽこーすとか言うのができたんだって!
…さんぽこーすってなに?」
「…。」
晃は頭を抱えた。
あぁ、あれか。何かと思えば。
こいつ馬鹿なんだ。
「散歩ってのは…歩く事だよ。
歩きながら風景とかを楽しんで、楽しんで歩く事。」
「へぇー…頭いいんだね!」
空の純粋な気持ちを感じた。
しかし何故だか少年は、その気持ちを受けてぐっと胸を締め付けられていた。
「これくらい当然だよ。…なぁ、もういいだろ?」
少年は俯きながら、空の手を払った。
その瞬間、空は悲しそうな顔をして、一言
「え…?」
とだけ呟いた。
どうして。
晃は思った。
どうしてそんな悲しそうな顔をする。
どうしてそんな俺に関わる。
どうしてそんなに純粋に近付けるんだ。
「迷惑なんだよ。1人でいさせてくれないか?
…俺の傍に居たら、お前も消えちまうぞ。」
一直線に、空の目を見ながら告げた。
その目線は鋭く、そして何よりも怒りのようなものが込められていた。
「あ…その…ごめんなさい…。」
「…早く消えろ。」
そう言って、少年は空から目を逸らした。
空はそのままだっと駆け出し、その場を後にした。
晃は、拳を握りしめていた。
誰かと触れ合いたい。自分自身の心がそう言っている。
だが、その気持ちを押さえつけ、晃は1人で過ごしている。
「…俺は、大切な物を作っちゃいけないんだ。」
ぼそり。
晃はそう呟いた。
とりあえず続きを楽しみにして待ってます。
ぜひとも完結させてみてください。楽しみにしております。
頑張ってください。
その辺をどうにかして払拭したいと思います!!
やっぱり少し短いですかね…。
了解です、もう少し頑張って伸ばします!
お二方とも有難う御座いましたー!
これからの展開に期待です。