Coolier - 新生・東方創想話

東方雀鬼録(2)

2005/03/23 03:56:25
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<人間卓>


「よし、始めるぜ」
東家 魔理沙

「宜しくお願いします」
南家 妖夢

「別に、そんなに畏まるような物じゃないでしょ」
西家 咲夜

「あっちの連中みたいなのも困るけどね……あれ?」
北家 霊夢

「どうした? 鳩喰らった豆鉄砲みたいな顔して」
「どんな顔よそれ」
「例えだ。気にするな」
意味不明な事を言いつつ、魔理沙が牌を切り出す。
初心者麻雀、開始である。



「あ、それロン。人和……だっけ?」



「「「なんですとぉーーーーーーーー!!!!」」」

開始数秒で、早くも崩壊の危機を迎えていたが。







<妖怪卓>

東二局

紫&幽々子の堂々過ぎたイカサマはレミリアに見咎められた為に、改めて洗牌からのやり直しとなった。
「罰符取られないだけ有難いと思いなさいよ」
「「はぁ~い」」
まるで気の無い返事。
懲りるどころか、次なる算段を練っていると見るのが妥当か。

そんな中、アリスは送られてきた映像を脳内で整理する。
それぞれの角度は完全。手牌のすべてが把握できるアングルであるが、いかんせん距離が遠い。
字牌はともかく、筒子や索子の正確な判別は難しいかもしれない。
これ以上接近させる事は不可能。現状でもギリギリの距離だ。
また、この通しに必要以上に頼るのも好ましいとは言いがたかった。
人形からの映像と、アリス自身が見ている映像は混在し得ない為、
どうしても他家から見て不自然な動きに映ってしまうのだ。
他に手を打つ必要があるかもしれない。そう総括して、アリスは視点を自らへと戻した。


八順目
「リーチ」
点棒を叩きつけるレミリア。
すかさずアリスはその手牌を探りにかかる。
と、言っても、表面上は自分の山を難しい顔で睨み付けているだけなのだが、
何せ相手が相手である。一瞬の隙も見せてはならない。
気合が人形にも伝わったのか、レミリアの待ちははっきりとアリスへと伝わった。

「怖いわね」
そう言いながら幽々子はど真ん中を切る。微塵の躊躇も無い。
レミリアは動かない。
続いてアリスも迷わず八萬を切る。
待ちが分かっているので、堂々たるものである。
無論、レミリアは動かない。
紫、一瞬の推敲の後に西切り。初牌である。
ここで、紫が通していないことをアリスは確信した。
レミリアの手は三萬、西のシャボ待ちであったからだ。
「(スキマ妖怪、恐るるに足らず……ね)」

「ツモ」
「へっ?」
思わずアリスが間の抜けた声を上げる。
それもその筈。レミリアは紫からロンせずに、ツモ上がりしたのだから。
「ふふ、リーチ、一発、面前……」
ゆっくりと開かれた裏ドラは……南。
「ドラ3。6000オールよ」

「……どうして?」
訳が分からない。
高めになるような手でも無いのに、紫の西をスルーする必要があったのか?
無いだろう。しかもレミリアは親だ。
単に見逃しただけというのも考えにくい。
「別に、なんとなくツモれるような気がしただけよ」
レミリアは悪びれた風もなく、しれっと言ってのけた。

「むー……」
点棒を払いつつ、幽々子は今のツモについて考えを巡らせていた。
積み込んだ形跡も、細工した経緯も無く、純然たる手前での上がり。
それは間違い無いだろう。
すると、考えられるのは、イカサマ以前のもの。
もっと大きな視点から……。
「(……まさか……)」




東二局 一本場

四順目
この局も、レミリアの思い通りに動いていた。
既にテンパイしているのだが、あえてヤミテンである。
そこに何らかの意図が含まれているのか……知っているのはレミリア本人だけ。
この回のツモも、牌をロクに確認もせず、無造作に切り捨てた。

「ろーん! イーペイコータンピ~ン!」
そこに、紫が心底楽しそうに宣言した。

振り込んだレミリアは、ただ呆然としていた。
レミリアが行使していたのは『運命を操る程度の能力』
前の局も、単に「自分がツモれる運命」を探し、引き寄せたに過ぎない。
無論、毎度そんな都合の良い運命が転がっている訳でも無いので、必勝と呼べるものではない。
が、勝率を飛躍的に高めるものであることは間違いない。
しかも、この能力はイカサマだと断定されるような材料が存在しない。
非常にギャンブル向きの能力であると言えよう。
だが、今の結果は妙だ。
レミリアは紫に振り込む運命など引き寄せてはいない。
即ち、この能力に干渉している者がいるという結論になる。
そんな事が出来る奴……。
紫の線は薄い。
あの無邪気な喜びようが演技とも思え……とても思えるが、それだと前局の振込みが説明できない。
アリスも無いだろう。
こそこそと何か企んではいるようだが、運命に干渉できるような能力の持ち主ではない。
すると……。
そこでレミリアの視点が下家に集中される。
「あら、何か?」
「……」
西行寺幽々子。
その能力は……『死を操る程度の能力』
「……まさか、ね」





<人間卓>

東二局

人和ショックが抜け切らないのか、ややぎこちなく場は進んでいた。
流石に今度は地和も人和も出る事は無い。

十一巡目
「……よし、今回は頂いたぜ」
じっくりと考えた末に、魔理沙がリーチをかける。
それを受けての妖夢の手が止まる。
10秒、20秒、30秒……。
長い。
普段の一直線っぷりはどこへ行ってしまったのかと言いたくなる熟考っぷりだ。
しかし、誰も妖夢を急かしたりはしない。
嗚呼麗しき友情……と言うより、皆、自分の事で精一杯なだけなのだが。

一分後。意を決して動く妖夢。
「……これだっ!」
スパーンと気持ち良い音を立てて牌が切られた。

「残念。ロンだぜ」
「うぇっ!?」
ニヤニヤと笑いながら牌を倒す魔理沙。
しかし、点数計算をまだ理解してないのか、手を弄くりつつ
ああでもないこうでもないとぶつぶつと考え込んでしまう。
それを見た藍は、仕方ないといった態で、魔理沙の手牌を見た。

「ダァホッ!」
罵声と共に、藍が魔理沙の脳天をハリセンで引っ叩いた。
「ぬわっ! 何だ何だ!」
「お前は私の説明を聞いていたのかっ!」
「聞いてたっての。ほれ、良く見ろ。リーチ一発三色同順ドラ2だろ」
確かに魔理沙の言う通りではある。
しかし…しかしだ。
「私は手牌を21枚も持てと言った覚えは無いんだが?」
「あれ、そうだっけか」
超絶なる多牌である。
「それに妖夢。お前も手牌を見ておかしいとは思わないのか?」
「え、そうですか? ……確かに少し足りないかも」
「少しどころじゃない! なんで鳴いてもいないのに7つしか牌が無いんだ!」
こちらは圧倒的なまでの少牌。
そして、それに突っ込む事のできなかった咲夜と霊夢。
前途は多難である。
結局、この局は「無かったことにしよう」という意見の一致をもって終わりを告げた。




東二局 一本場

「(……大体分かったわ)」
咲夜は心の中で呟く。
ルールは大体理解したものの、実際の場の流れを把握するまでは動くべきでは無い、と考えていたのだ。
が、それもここまで。
後は全力をもって叩き潰すのみ。

七順目。
「あ、それポン」
霊夢が東を鳴く。
「(時よ……止まれ!)」
その僅かなタイムラグの隙に、咲夜は能力を発動させた。
瞬間、自分を除いたすべての物が動きを止める。
そして、その間に、堂々と手牌と場の牌をすり替えて行く。
1つ、2つ、3つ、4つ……何の躊躇も無い。
再び時が歩みを進め始めた頃には、殆どの牌を入れ替える事に成功していた。
その間、実に2秒。

「ロンよ、平和、タンヤオ、ドラ1」
「……へ?」
放銃した霊夢が、信じられないといった表情で咲夜を見る。
咲夜の態度には何ら不自然な点は表れていない。
「(ふふ……麻雀なんてこの程度ね)」
一人、心の中でほくそ笑む。
あえて安い手にした辺りが実に瀟洒だ……と、自分で思う始末だ。

「……これって、どう見てもフリテンよね?」
「そうだな。大体、頭が三元牌で平和もタンヤオも無い。役無しでダブルチョンボだな」
「……やれやれ、ね」


悦に入っていた咲夜が、我に返った時には、既に場は次の局へ進んでいた。
言うまでもなく、手元の点棒は豪快に減っている。
今回のは遠慮なくチョンボ扱いとなったようだ。
「え? な、何があったの?」
「何が、じゃないでしょ。早く切ってよ」
「あとな。時間止めるんならもう少し目立たないようにやったほうがいいぞ。
 余りにも堂々とやるから別の用件かと思ったじゃないか」
魔理沙の止めの台詞を受けて、咲夜はその場に崩れ落ちる。
力の抜けた手から牌をこぼしつつ……。
「ロン。七対子、ドラ2」
さらに追い討ちのオマケが付いた。
咲夜、早くも残り400点。


教訓  素人はイカサマに手を出すな。






<妖怪卓>

東三局

「……少し咲夜は鍛えなおす必要がありそうね」
そんな事を言いつつも、レミリアは意識を運命操作に集中させていた。
先ほどの疑念を振り払うかのように。
冷静かつ、素早く、自らに有利な運命を探り、そして引き寄せる。

果たして配牌は己の導き出した答えそのものであった。


九順目。
レミリア、イーシャンテン。
ここまではすべて予定通りに来ている。
珍しく幽々子もまったく鳴いて来なかった。
そして、このツモでテンパイ。これも予定通りの出来事。
「(少し考えすぎていたようね)」
そう結論付けると、レミリアはリーチ棒を取り出し、場へと叩きつけた。


しかし、数順して、自らの迂闊さに気が付くことになる。
「(何故ツモれないの……!?)」

1223345678 東東東

レミリアの手はこれである。
258筒の3面待ち。
捨て牌からして、染めている事はバレバレであり、振り込むような迂闊な輩はこの場には存在しないだろう。
だが、そんな事は関係ない。ツモれば良いだけの話だ。
鳴いてツモ順を変える手も有り得ない。
誰も鳴かない事そのものが運命に組み込まれているのだから。
にも関わらずツモれない。
紫とアリスは既にベタ降りの様子だが、そんな中一人、異彩を放つのが幽々子。
この局面にも関わらず、筒子を次々と切り出してくる。
「うーん……この辺り怖そうね」
そんな台詞と共に切られる牌だが、その中に当たり牌は含まれていない。
結局、誰も何も出来ぬまま流局となった。

「テンパイ」  
「……テンパイ」
「テンパイ」
「ノーテン」
ノーテンの幽々子が、罰符を払うべく点箱を漁り始めた時を見計らい、
レミリアが強引に幽々子の手牌をひっくり返した。
そこに見えるのは2筒2枚と5、8筒が3枚ずつ。
残りはてんでバラバラであった。
「……素敵な手牌ね」
「あら、それはどうも」
ここでようやくレミリアは確信した。
(こいつは……私の手を殺せる!)


「(危ない所だったわね……)」
幽々子は密かに胸を撫で下ろしていた。
レミリアが推測した通り、幽々子は運命さえも死に誘う事ができる。
が、あくまでもそれは、不自然に操られた運命限定の事。
それに、例え殺したところで、また新たな可能性が生まれるだけである。
存在するすべての可能性を殺すなど、神でもなくては出来はしない。
故に、今の一局も、危険極まりない賭けであった。
もし、レミリアが運命操作を止め、平で打っていたなら。
もし、アリスや紫が降りなかったら。
それだけの事で目論見は頓挫していたのだ。
しかし、この賭けに勝った事は、幽々子にとっては非常に大きい。
今、レミリアは明らかに疑心暗鬼に陥っている。
自分の手は全部殺される……そのように考えていてもおかしくはない。
実際の所は、お互いの能力が相殺されて五分になっただけであるのに。
その心理的な隙……そこを突くのが幽々子の狙いである。


「(どうしたものかしら……)」
アリスはそのやり取りを見て、一人思案に耽っていた。
ただのイカサマならまだいい。いくらでも対抗策はある。
しかし、だ。
彼女らを見る限り、どうも運命やら死やら物騒な物まで飛び交っている節がある。
流石にそこまで大袈裟なものになると話は別だ。
アリスに出来るのはあくまでも魔法を使う程度の能力……それも最近は人形を操る事に特化している。
果たしてそれで、この化け物どもに対抗し得るのか。
「アレを……使う時が来るかもしれないわね」
その呟きに気付く者はいない。



「その優しい手が~♪
 鳴かれツモられ消えていく~♪」
何故か紫はご機嫌だった。





東三局 一本場
 
幽々子の目から見て、レミリアは明らかに意気消沈していた。
打牌にもまったく力が感じられない。
その間にも幽々子は食いまくりで着々と手を進めていく。

八巡目
すでに裸単騎状態の幽々子。
そこでレミリアが初牌の発切り。
「(あらあら……紅い悪魔と言ってもこの程度だったのかしら)」
幽々子は、扇で口元を隠しつつ、静かに勝利を確信した。
「ロン、小三元トイトイ白中、跳満よ」

「フフフ……」
しかし、直撃を受けた筈のレミリアは、余裕の笑みを漏らしている。
「……何がおかしいの?」
「おかしいのはあんたよ。よく見てみなさい。それのどこが発なの?」
「へ? どこをどう見ても発じゃ……」
レミリアの指先にあったのは……北。
「長いこと亡霊やりすぎたせいで視力も退化してしまったのかしら?」
500年生きてる奴に言われたく無い。と言い返そうと思ったが、
それを言うと紫の立場が無くなるので止めておいた。
「……ん?」
ふと、レミリアの背中から生えている羽の形が少しおかしい事に気付く。
傍目には分からない程度のものではあったが、確かに極僅かだけその羽は欠けていた。
「……やったわね」
「ふふ……」
幽々子の刺すような視線をレミリアは軽く受け流す。
程なく、天井付近に漂っていた米粒のように細分化した蝙蝠が、
レミリアの羽へと集まり、そして同化した。
要するに、使い魔による偽装という、単純極まりないイカサマだったのだ。
しかし、それを幽々子が追求する事は出来ない。
イカサマは、その場で気付かなかった方が悪いのだから。


それからの数局は、目も当てられない醜い争いが続いた。
幽々子が逆大三元爆弾により、レミリアの手を殺す。
レミリアが1筒増殖により、幽々子の手を操る。
ちなみに、紫もアリスもとっくに二人のイカサマには気が付いているのだが、
何故かまったく突っ込もうとしないため、争いはエスカレートする一方だった。






<人間卓>

「ロン! えーと、リーチ、平和、ドラ1」
「かぁ~、また当たっちまったか」

人間卓は、何時の間にか南三局まで進行していた。
意外にもトップは妖夢。一直線打法が初心者相手には有効に働いていたようだ。
差無くここまで一度も振込んでいない霊夢が続く。
それとは対照的に放銃の多い魔理沙が三位。
もっとも、ここまでは殆ど差は無い。
問題は生ける屍の咲夜。
残りの点は僅かに2400。
幸いにも一度も振り込んでおらず、ハコは免れているが、もはや勝ち目は皆無に等しい。
ともあれ、一応麻雀らしい展開になっているとは言えた。



オーラス
「……なーきだすまえにぎゅーっとだきしめてー……」
どこかで聞いたことのあるような曲を一人歌いながらノロノロと理牌する咲夜。
やる気ゼロである。
だが、手牌を確認したその瞬間、咲夜は目覚めた。

八九九九九11789(7)(8)発

「(これは……行ける!)」
配牌で既にイーシャンテン、しかもドラは9萬である。
そして、掴んだ最初のツモは…7萬。
これで数え役満の可能性すら浮上した事になる。
咲夜は叫び出したい衝動を堪えつつ、高々と宣言した。
「リーチ!」
後は運にすべてを託すのみ。

「カン」
直後、霊夢が暗カンする。
その牌は無常にも9索であった。
暗カンではチャンカンも出来ない……そしてジュンチャンも三色も消えた。
おまけに開けられたカンドラは発。踏んだり蹴ったりである。

「……ぶれいくーぶれいくーあなたのまちのー……かいたいかいたいー……」
もはや咲夜は魂が抜け切って輪廻転生を終えた後、再び戻ってきたかの様子である。
ただ機械的な動きでツモ切りを繰り返すのみ。
しかし六順目で6索をツモると、ため息を付きながら投げやりに倒牌した。
無論、感慨など無い。
「おお、やるじゃないかメイド長……っておい、何だこりゃ」
「凄い……」
何故か言葉を失う一同。
「……何よいったい」
ノロノロと顔を上げると、三人がドラを指さしていた。

ドラ  八 白  
裏ドラ 9 八

「……」
「あちゃー……カンしなければ良かったわ」

ダブルリーチ、面前、ドラ10。
数え役満、成立である。

結果オーライ。そんな言葉が咲夜の脳裏を過る。
「……麻雀って本当に面白いわね」
それは本音であろう。
予期せぬ咲夜の大逆転をもって、この半荘は終了となった。



人間卓 最終結果

一位 咲夜  34400 
二位 妖夢  28200
三位 霊夢  20100 
ケツ 魔理沙 18300





<妖怪卓>

南二局

「うー……うー……うー……」
「ふー……ふー……ふー……」
双方息が荒い。
互いに決め手を欠く為か、諍いはまったく沈静化の様子を見せないでいた。

「うー……ふー……ふかー……」
鼻息荒く、レミリアが配牌を見る。
何も書かれていない純白の牌がズラリと並んでいた。
見目麗しき白一色の完成だ。

「はー……ふー……うぐぅ……」
みょんな呻きを上げつつ、幽々子が手牌を確認する。
……いや、それは牌ですら無かった。
この色合いと滲み出る出汁……まごうことなき高野豆腐である。

「「ふ……ふふふふふふふふふふ」」
二人は同時に笑い出した。
その禍々しさと言ったら、偶然通りがかったチルノが失禁して失神する程である。
「……少し中座させてもらうわよ」
「……奇遇ね。私も少し用事が出来たわ」
返事を待つ事なく立ち上がるレミリアと幽々子。
そのまま視線を合わせる事なく、境内へと出て行ってしまった。

程なく、境内から轟音、爆音、破裂音、怒声、絶叫とありとあらゆる騒音が鳴り響き始める。
「いいの?」
「良いんじゃないの。溜め込むと酷い事になりそうだし」
「もう十分酷い事になってると思うけど……」



『消し飛べ! この詐欺亡霊!』
『砕け散りさない! このイカサマ吸血鬼』



「あら、お帰りなさい」
「……うわぁ……」
数分後。戻ってきた二人を前に、思わず声を上げるアリス。
美しかったレミリアの羽は、散々に毟られて骨しか残っておらず、腕も片方千切れかかっている。
幽々子に至っては腹に風穴が空いている。
にも関わらず、彼女らは何事も無かったかのように席に着いた。
出すものを出し切って……もとい、溜め込んだストレスを発散し切ったのか、
その表情は割と晴れやかであった。

「「さぁ、続きよ」」

ちなみに、この時の争いにチルノが巻き込まれていた事には誰も気が付かなかったそうな。






「もう一回だ。今度は負けない!」
妖夢が意気込んで卓に着く。
逆転でトップを奪われたのが悔しいのだろう。
しかし、それを嗜めるかのように藍が声をかけた。
「まぁ、待て、向こうはまだ終わってないようだし、少し休憩しよう」
「でも……」
「麻雀は熱くなったら負けだぞ……もっとも、麻雀に限った事でも無いが」
「……はい」
思い当たる節があるのか、妖夢は素直に藍の言に従うことにした。


雀卓を離れ、再び宴会モードへと戻った四人。
とは言え、彼女らの嗜好に合っていたのだろうか、話題は専ら麻雀関連であった。
「そういや、こないだ香霖堂からかっぱらってきた本に麻雀関係の奴があったな。
 その時は何が書いてあるのかサッパリだったんだが……」
魔理沙がそんな事を言いつつ、スカートの中をまさぐる。
「……スカートは本を入れる場所じゃないわよ?」
「お、あった、これこれ」
咲夜の突っ込みを無視すると、一冊の本を取り出した。
それは本と呼ぶにはやや薄く、装調そのものもいたって簡素な物だった。
「……何か怪しげねぇ」
「まぁ、香霖の探してきた本だしな」


『ぶぇーーーっくしゅ!! ……うん……風邪だな。間違いない』


「えーと何々…麻雀とは基本的に金銭を媒体としたギャンブルの一種であるが
 いくつかの例外も存在する」
「例外……?」
「その中でも特異なのが『脱衣麻雀』である……なんだそりゃ?」


魔理沙のその言葉は、この場に新たな波乱を呼び起こす事になった。


どうも、YDSです。
第二話お届けします。

いくつか補足をば。
・図解での牌の表記ですが、一が萬子、1が筒子、(1)が索子としておきます。
 作中では1萬、2筒などと表記していますのでご注意を。 
・ここでの人和は満貫扱いです。
・人間卓と妖怪卓は基本的に同じルールです。
・キャラの能力については、俺設定全開です。ご容赦を……

前回のあとがきで「麻雀を知らない人にも楽しめるよう」と書きましたが、
何故か麻雀色がますます濃くなっています、不思議でなりません。

……精進します……。

!(役の不整合をいくつか修正)
!(再び役を修正、指摘ありがとうございます)
YDS
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コメント



0.3710簡易評価
3.70名前が無い程度の能力削除
白一色と高野豆腐は笑わせていただきました。
4.無評価七死削除
ぶわはははははははははっw! やっぱり妖怪大戦争に発展しかけてるしw。
でも両者の消耗具合を見る限り、このまま両家総力をあげての源平合戦にまで発展する事はなさそうですが。

それにしても、レミリアVS幽々子が自己能力MAXでガチしまくる話って実はあんまりない、というかこんな席でもなけりゃ書けないシチュだったのかもしれませんね。 
個人的に、この二人には弾幕だけでなく、もっといろんな事で競ってもらいたいと思っていたので、こういう展開大好きです。

さあて妖怪卓はもとより脱マン持ち出してきた人間卓もカオスの急上昇してきましたし、恐らく余力たっぷりだろう紫とアリスが何時動くのか? この局、東方だからこそ面白いw。
8.80名前が無い程度の能力削除
今回のマージャンの話は面白かったです。
次回を楽しみにしています。
9.70めるぽ削除
駆け引きそのものもおもしろかったです。
高野豆腐で吹きました。
10.80紫音削除
・・・妖怪組・・・ダメすぎるぞおまいら・・・(っ_T)
あー、笑いすぎて腹痛いです・・・

そして人間卓もどーなることやら。続きも楽しみにしてますよ。
12.80名前が無い程度の能力削除
麻雀には詳しくないですが、打ってる面々(特に妖怪組み)がお馬鹿すぎて大爆笑。高野豆腐ってなんだ高野豆腐って(笑)。派手な動きを見せないゆかりんが不気味。

あと心がブレイクしかけたり、起死回生して喜色満面になったりの咲夜さん萌え。
13.80しん削除
麻雀は詳しくないですが、面白い……
アリスが「通し」とかやりだすし、幽々子、レミリアの張り合いも激化。
通しを諦めたアリスの奥の手、沈黙を守る紫の動向も…
人間卓に禁断のワードが出てきたのも期待大ですね!
15.100シゲル削除
実際、運命操作強い気が。。
しかもなぜ咲夜さんがあの歌を。(少し笑いました♪
しかし妖怪組みある意味強いですね、少し大戦して見たいですね。(笑
最後のキーワードがどう影響するのか楽しみですね♪
29.70ABYSS削除
いやー面白かった。
麻雀は嗜む程度で詳しくは無いのですが半端にわかる分面白かったです。

個人的には一戦目から人和した霊夢がナイス。
さすが楽園の素敵な巫女!(どこか讃え方が違う)

あと数え役満は爽快ですよねードラ爆だ。
いやいや、次回も楽しみです。

……脱衣、するのだろうか(ドキドキ)
34.90東方が大好きな程度の能力削除
脱衣マージャンになるの
面白そう
37.100てーる削除
牌が・・牌が・・w

やっぱりこういう結果になっちゃいますねw
お二人のマジ喧嘩ってあんまり無いのでよかったw
38.無評価人妖の類削除
魑魅魍魎どもが比喩的意味の魑魅魍魎になってますね。

て言うかぎりぎりしたイカサマ合戦かと思ったら高野豆腐までエスカレートとは……。
麻雀分からない人間が悶え苦しめる作品には感服です。
42.100名前を隠す程度の能力削除
いやなんつーか麻雀知らない身でも充分楽しめましたよw
続き期待してますよ♪
43.無評価名前が無い程度の能力削除
 裸単騎の発待ちであたったのに「小三元トイトイ発中」とはこれいかに。白じゃなかろうか。
44.無評価名前が無い程度の能力削除
書き忘れ。ついでに↓は倍満じゃなかろうかね。
45.無評価名前が無い程度の能力削除
↓は、すまん、勘違い。3レスも使って馬鹿やりました。
50.80aki削除
レミリアと幽々子がよかったです。
「うー……ふー……ふかー……」がツボでした。
まったく動いていない(ように見える)紫がどう動くのか楽しみです。
53.70なまえはまだ無い削除
笑わせていただきましたー!
妖怪卓の方は、目どころか色々あてられない
状態になってきてますな(笑)

しかし、白一色とは・・・
ドラや裏ドラも白だったりとか(ぉ
67.無評価名前が無い程度の能力削除
鋪銑悵!(゚@~)
101.100名前が無い程度の能力削除
ゆゆ様とレミリアに笑ったw
103.70名前が無い程度の能力削除
咲夜www
107.80名前が無い程度の能力削除
登場人物はおろかコメントにまで何も反応の無いチルノに俺が泣いた。
119.70名前が無い程度の能力削除
ドラ10って…w白一色とか綺麗すぎる