「幽々子様~、幽々子様~、どこですか~?」
いったいどこに行かれたのだろうか。幽々子様が勝手にどこかに消えてしまうのはいつものことであり、本来ならそのことを気にも留めずにいつもの仕事をこなしつつ幽々子様の途方もないお願いを聞くのがいつものの日課である。しかし今回はいつもと勝手が違う。
「幽々子様~、お昼ご飯ですよう~」
そう幽々子様はどこかに出かけていても必ず食事時になると白玉楼の茶の間に必ず座って茶碗をたたいている。そのことに例外はなく、この前も博霊神社にお茶をしに出てったにもかかわらず昼食時になると戻ってきて茶碗をたたき、そしてまた神社にお茶をしにいった。食事に関しては人一倍いや亡霊一倍うるさい幽々子様が今日は昼食に顔を出していない。
「幽々子様どこに行ったのでしょうか・・・。まさか!あまりにお腹が空いて二百由旬の庭で遭難しているのでは!?」
そして私は半霊一倍心配性だった。
「幽々子様~、どこですか~!今日の昼食は兎汁ですよう!」
そのんなこんなで幅二百由旬もある庭を五周しても見つからず、結局探してないのは西行妖の付近だけとなった。しかしこのあたりはこの前の事件以来、幽々子様は近づいていないはず、私は期待せずにその妖怪桜に向かった。
そして幽々子様はそこにいた。西行妖を見上げているようだ。
「幽々子様探しましたよ。さっ、食事の時間です」
しかし幽々子様は返事をしない。
「幽々子様?」
そして私は幽々子様に近づき声をかけようとしてその横顔を見て固まってしまった。
私は桜を見ている。西行妖。この冥界で一番大きくそして決して満開になることのない桜。春が近づいて庭にある他の桜は咲き始めているというのにこの桜は蕾ひとつ膨らんですらいない、ここに来た巫女が枯れていると言ったが確かにそう見える、前に幻想郷にある春を集めてこの桜を咲かせようと思ったこともあった。しかしそれでもこの桜は咲かなかった。後で紫にこのことを話すと少し言い難そうに
「あの桜はね、あなた自身なのよ」
といった。そのときはさすがにわからなかったが今ではなんとなくわかる気がする。私がここに存在している限りこの桜は咲くことはないだろうと。ではなぜあの時この桜を咲かせようと思ったのだろうか。いつもの気まぐれといえば気まぐれなのだがどうもそれだけでは納得しない。そしてどうしてあの巫女との戦いで最後に手加減をしてしまったのだろうか。すべてがふに落ちないまるですべてがそうなるように仕向けられているようにすら思えた。そうまるで運命のように。
「ふふっ」
そこまで考えて思わず苦笑してしまった。この私の存在そのものが運命を否定しているようなものだということを思い出してしまった。
そのとき私の横に妖夢が立っているのに気がついた。妖夢は私の顔を見てどこか呆けている。いつも私がお願いをすると大抵こんな顔をするがどうやらいつもと少し雰囲気が違う。どこか遠くを見るようなそれでいて近くのものを把握しているような不思議な表情であった。
その顔にどこか覚えがあった。それは妖夢が初めてこの西行妖を見たときの表情であった。そしてその日は・・・・。
そのことを思い出したときに私はすべての疑問が飲み込めたのであった。
「ふふっ」
今度は苦笑ではなく、狐に化かされたようなそれでいて清清しい気分の笑いだった。
「妖夢・・・」
私の庭師はしばらく呆けていたがすぐ気を取り直した。
「あ、はい!幽々子様!」
「食事の時間でしょ、すぐ行くわ」
「はあ~。あのお嬢様?」
「な~に?」
「何をお考えに?」
「ふふっ。この前のことを思い出していたのよ」
「そうですか・・。あの、お嬢様?」
食事を取るために白玉楼に戻ろうとするのを妖夢の声が止めた。いつもは主人に逆らわないことをモットーにしている彼女にしては珍しい。
「な~に?」
妖夢は暫く口ごもっていたが意を付いてたずねた。
「どうして、西行妖を咲かせようとしたのですか?」
目を見張った。この庭師はどこか抜けているが時折核心を突いてくる。だからできるだけそっけなく答えた。
「さ~?忘れたわ」
「そうですか・・・」
私の嘘に気づかずに後についてくる庭師の純粋さに思わず微笑みたくなる。
本当のことを言うつもりは毛頭なかった、このことは私が墓の下まで持って行こう、もう墓の下だけど。
初めて妖夢が西行妖を見た日、それは私と妖夢が初め出会った日、そのとき妖夢は私にこう言ったの
「幽々子様、この桜咲かないの?」
咲かないわ。
「どうして?」
さあ?ずっとそうだったから。
「・・・・この桜が咲くのを見てみたいな」
どうして?
「だってこの桜が咲いたら、きっと幽々子様みたいに綺麗だもん」
あなたに会えたそれだけで運命というものを信じていいかもしれないわね。
いったいどこに行かれたのだろうか。幽々子様が勝手にどこかに消えてしまうのはいつものことであり、本来ならそのことを気にも留めずにいつもの仕事をこなしつつ幽々子様の途方もないお願いを聞くのがいつものの日課である。しかし今回はいつもと勝手が違う。
「幽々子様~、お昼ご飯ですよう~」
そう幽々子様はどこかに出かけていても必ず食事時になると白玉楼の茶の間に必ず座って茶碗をたたいている。そのことに例外はなく、この前も博霊神社にお茶をしに出てったにもかかわらず昼食時になると戻ってきて茶碗をたたき、そしてまた神社にお茶をしにいった。食事に関しては人一倍いや亡霊一倍うるさい幽々子様が今日は昼食に顔を出していない。
「幽々子様どこに行ったのでしょうか・・・。まさか!あまりにお腹が空いて二百由旬の庭で遭難しているのでは!?」
そして私は半霊一倍心配性だった。
「幽々子様~、どこですか~!今日の昼食は兎汁ですよう!」
そのんなこんなで幅二百由旬もある庭を五周しても見つからず、結局探してないのは西行妖の付近だけとなった。しかしこのあたりはこの前の事件以来、幽々子様は近づいていないはず、私は期待せずにその妖怪桜に向かった。
そして幽々子様はそこにいた。西行妖を見上げているようだ。
「幽々子様探しましたよ。さっ、食事の時間です」
しかし幽々子様は返事をしない。
「幽々子様?」
そして私は幽々子様に近づき声をかけようとしてその横顔を見て固まってしまった。
私は桜を見ている。西行妖。この冥界で一番大きくそして決して満開になることのない桜。春が近づいて庭にある他の桜は咲き始めているというのにこの桜は蕾ひとつ膨らんですらいない、ここに来た巫女が枯れていると言ったが確かにそう見える、前に幻想郷にある春を集めてこの桜を咲かせようと思ったこともあった。しかしそれでもこの桜は咲かなかった。後で紫にこのことを話すと少し言い難そうに
「あの桜はね、あなた自身なのよ」
といった。そのときはさすがにわからなかったが今ではなんとなくわかる気がする。私がここに存在している限りこの桜は咲くことはないだろうと。ではなぜあの時この桜を咲かせようと思ったのだろうか。いつもの気まぐれといえば気まぐれなのだがどうもそれだけでは納得しない。そしてどうしてあの巫女との戦いで最後に手加減をしてしまったのだろうか。すべてがふに落ちないまるですべてがそうなるように仕向けられているようにすら思えた。そうまるで運命のように。
「ふふっ」
そこまで考えて思わず苦笑してしまった。この私の存在そのものが運命を否定しているようなものだということを思い出してしまった。
そのとき私の横に妖夢が立っているのに気がついた。妖夢は私の顔を見てどこか呆けている。いつも私がお願いをすると大抵こんな顔をするがどうやらいつもと少し雰囲気が違う。どこか遠くを見るようなそれでいて近くのものを把握しているような不思議な表情であった。
その顔にどこか覚えがあった。それは妖夢が初めてこの西行妖を見たときの表情であった。そしてその日は・・・・。
そのことを思い出したときに私はすべての疑問が飲み込めたのであった。
「ふふっ」
今度は苦笑ではなく、狐に化かされたようなそれでいて清清しい気分の笑いだった。
「妖夢・・・」
私の庭師はしばらく呆けていたがすぐ気を取り直した。
「あ、はい!幽々子様!」
「食事の時間でしょ、すぐ行くわ」
「はあ~。あのお嬢様?」
「な~に?」
「何をお考えに?」
「ふふっ。この前のことを思い出していたのよ」
「そうですか・・。あの、お嬢様?」
食事を取るために白玉楼に戻ろうとするのを妖夢の声が止めた。いつもは主人に逆らわないことをモットーにしている彼女にしては珍しい。
「な~に?」
妖夢は暫く口ごもっていたが意を付いてたずねた。
「どうして、西行妖を咲かせようとしたのですか?」
目を見張った。この庭師はどこか抜けているが時折核心を突いてくる。だからできるだけそっけなく答えた。
「さ~?忘れたわ」
「そうですか・・・」
私の嘘に気づかずに後についてくる庭師の純粋さに思わず微笑みたくなる。
本当のことを言うつもりは毛頭なかった、このことは私が墓の下まで持って行こう、もう墓の下だけど。
初めて妖夢が西行妖を見た日、それは私と妖夢が初め出会った日、そのとき妖夢は私にこう言ったの
「幽々子様、この桜咲かないの?」
咲かないわ。
「どうして?」
さあ?ずっとそうだったから。
「・・・・この桜が咲くのを見てみたいな」
どうして?
「だってこの桜が咲いたら、きっと幽々子様みたいに綺麗だもん」
あなたに会えたそれだけで運命というものを信じていいかもしれないわね。