「さて、今日も今日とて橙の日だ」
青い空、白い雲。
抜けるような晴天の日には愛猫のペッティングと古来から相場が決まっている。
古の教えに従って今日も一日橙を撫でくりまわそう。
紫様から何か用事を言いつけられていた気もするが、橙の日なのだから仕方がない。
「今日は川の向こうでピクニックとしゃれこむか」
時刻は朝の八時半。橙はまだ寝ているのだろう。
「寝ぼすけさんめ。私が起してやらないといつまでも寝ているんだからな」
そろそろ起してやるか。そうだ。今日は猫じゃらしでくすぐって起してやろう。
こちょこちょと鼻先をくすぐる猫じゃらしに、可愛くくしゃみをして目を覚ます橙。
「良い。実に良いぞ」
そうと決まればとっとと橙の部屋へ向かうとしよう。
部屋に常備してある猫じゃらしをダース単位で手にし、いそいそと廊下に出た。
「随分嬉しそうね。藍」
橙のくしゃみを想像し、細胞単位でウキウキしながら廊下を歩いていると、目の前の空間からニョッキリ首が湧き出してきた。
「紫様、おはようございます。今朝は随分とお早いのですね」
「おはよう藍。突然で悪いのだけれど、ちょっと貴方に話があるの。時間はいいかしら」
「話、ですか?」
いつもとろんとしている紫様の目が今は真剣そのものだ。めったにない早起きといい、重要な話なのだろうか。
「わかりました。では居間でお話しましょう。お茶を淹れてきますので紫様は先に居間で待っていてください」
久々に見たシリアスな紫様の頼みだ。無碍には出来ない。
橙を起すのは後回しにして紫様と二人、ちゃぶ台を挟んで向き合った。
「あなた最近、橙に入れ込みすぎじゃなくて?」
紫様は開口一番、渋い顔でそう言った。
「そう、でしょうか」
「可愛い式が出来て嬉しいのは分かるわ。けど貴方、橙にかまけて他の事がおろそかになっているじゃない」
「そ、そんな! 私は紫様の式として、しっかりお役に立っているつもりです!」
思わず身を乗り出した。
「そうかしら? 今も橙の部屋に向かっていたのではなくて? 今日は来客があるから準備をしておいてと頼んだでしょう。もう日が昇って随分経つのに、掃除にも料理にも手を付けていないじゃない」
「で、ですが、私は紫様を第一に考え、日夜貢献と研鑽を重ねています。どうか今日までの働き振りを御一顧下さい!」
「そういう台詞は鼻から猫じゃらしを抜いてから言いなさい」
「……」
橙を喜ばせてやろうと盛大に鼻に突っ込んだ猫じゃらしを無言で抜き取る。
「へぷしっ」
抜き取った拍子に出たくしゃみに反応し、猫じゃらしの穂が燃え上がった。仕込んだギミックが作動したのだ。
「貴方…それ鼻に突っ込んだまま炎上させるつもりだったの……?」
「はあ……、その通りですが」
流石に際どい試みだったろうか。
パチパチと音を立てて燃える猫じゃらしを呆然と見つめ、紫様がため息をついた。
「もういいわ……。貴方の中では 橙>鼻腔 であるということが良く分かりました」
何を言ってるんだこのスキマは。当然ではないか。鼻の中の平穏など橙のためならいくらでも差し出せる。
「そんな猫まっしぐらな貴方のために、今日はその道で名を馳せたお方をお招きしたわ」
「その道、とは?」
「ネコイラズ研究の第一人者であられる紅魔館のパチュリー先生よ。…先生、どうぞお入り下さい」
「うわ、もう来てるんですかっ」
スッと障子が開き、眠そうな目をした少女がパジャマのまま居間に入ってきた。
「先生。ご覧の通りです。うちの式の血迷いっぷりはご理解頂けたと思います」
「見てたんですか? ああっ、障子に穴がっ」
この穴から覗いてたのか。こわっ。
「ええ、酷いものね。うちの侍従長だってそこまでの錯乱は三日に一度よ」
三日に一度、燃え盛る猫じゃらしを鼻に突っ込む侍従長の采配する館を想像する。
「うはぁ……」
館ごと燃えてしまったほうがいい。
とすると先程の私の面構えも相当なGHQクライシスだったに違いない。
紫様もさぞ驚いたことだろう。そんな天晴れな幻想天皇が真顔で弁舌爽やかに詰め寄ったのだから。
過去の狂態を振り返り、僅かに紫様の心情を慮った。
「先生、藍は治るでしょうか……?」
末期一歩手前の微妙な病状の妻を案じる、五十路の枯れかけた中年男性のように紫様が尋ねた。
「任せなさい。……と言いたい所だけど、さっきの惨状を見せられると確約は出来かねるわね」
「そんな……藍は、藍はもうダメなんですかっ?」
ダメとか言われてる。なんだその悲哀っぷりは。
「全力は尽くすわ。まずは藍さん、貴方の猫度をチェックしてみましょうか」
「猫度、ですか?」
「ええ。猫に対する同調の度合いよ。九十六点満点で、数字が高いほど猫との親和性も高くなる」
「なるほど。先生、何点以内なら完治の見込みがあるんでしょうか」
すっかり病人扱いだ。
「そうね。六十点以内なら安心していいわ。けどそれ以上となると後遺症が残るかもしれない」
「六十点……。分かりました先生。検査をお願いします」
本人を置いてトントン拍子に話が進む。やるのか? 猫度とやらのチェックを。
大体においてこのネグリジェの治療を受けるなんて言って無いのだが。
だがまあ紫様は私を心配してこの寝巻き娘を呼んだのだ。そっぽを向いて追い帰すわけにもいくまい。
それに燃える猫じゃらしを鼻に装填することの危険性は十分理解した。
二度とかような蛮行に及ばぬよう、ある程度の落ち着きは必要かもしれない。
「まあ、それじゃ検査くらいは……」
「藍も納得したようね。先生、この場で出来るのでしたら始めてください」
紫様の声にネグリジェが頷く。
「ええ、質問形式の簡単なものよ。ここで十分できるわ。本来なら二人きりで行うものだけど……まあ紫ならいいでしょう」
「ありがとうございます。哀れな藍をどうかお願いします、先生」
随分下がったなあ。私の株。
「それじゃ始めるわ。質問に正直に答えて頂戴」
「ああ、分かった」
「質問一、『我輩は猫である』といえば夏目漱石の代表作ですが、彼のその他の作品を一つ挙げてください」
「『我輩も猫である』」
「……そんな猫ばっかりいるか」
信じらんねー、といった顔つきで見られる。
「まあいいわ…。質問二、山寺の和尚さんが猫を紙袋に詰め込んで蹴りまわしています。それを見た貴方はどうしますか」
「クサレ和尚の喉掻っ切って棺袋に詰め込んで蹴りまわす」
「……そうすると思ったわ」
「好戦的な式神ね。質問三、駅前で靴磨きを生業としているおじさんが数人並んでいます。その中に一人猫を連れた靴磨きがいます。藍さん、貴方はどうしますか?」
「猫を連れた靴磨きに靴を磨かせる」
「まあそうするでしょうね。貴方なら」
「……フリをして靴磨きの鼻に妖回針を突っ込み、猫を小脇に抱えて走り出す」
「……」
猫 IS MINE は基礎中の基礎だ。
「質問四、波止場でタバコをふかすニヒルな未成年の猫がいます。どうしますか」
「タバコを取り上げて叱りつける」
「偉いわ藍。それでこそいつもの貴方よ」
「ええ。私の子が産めなくなりますからね」
「…先生は雌猫だなんて言ってないでしょ。大体貴方も女性じゃないの」
「猫好きに性差なんて、紫様の肌年齢並に些細な問題ですよ」
「ら、藍! 肌年齢の事は言わないで頂戴!」
「これは失礼」
紫様大慌て。
「ちょっと落ち着きなさい紫。…質問五、引き出しからネコ型ロボットが出てきました。貴方の歪んだ欲望を叶えるアイテムを多数所持しているそうです。どうしますか」
「アイテムを根こそぎ奪って追い返す」
「あら意外ね」
「アレはちっとも可愛くないので」
「……」
あんなん猫じゃねえ。
「質問六、十三種十三匹の動物達がハーフマラソンをした結果、猫が最下位となり干支に加わる事が出来ませんでした。貴方がその場に居合わせたとしたらどうしますか?」
「分不相応な地位に着いた畜生の中から連番で二匹を選定。鼻に先割れスプーンを突っ込んで追い払った後、猫と狐をノミネートさせる」
「藍……貴方鼻に恨みでもあるの?」
「ちゃっかり猫の隣に自分を配置するあたり、底知れぬ執着を感じるわね。…質問七、おなかを空かせた猫が家に迷い込んできました。どうしますか?」
「十分な食事と睡眠を与え、好きなだけマヨヒガに滞在させる」
「そうよ藍。それが人情よ」
「質問八、おなかを空かせたスキマ妖怪が家に迷い込んできました。どうしますか?」
「残り物のチャーハンでも食わせて寝る」
「ひどいっ」
泣き伏す紫様。
ふん。たまには食料でも調達してこいってんだ。毎日毎日惰眠と昼行灯の境界をウロウロしやがって。
「藍さん、後でちゃんとフォローなさいな……。質問九、おなかを空かせたオッサンが家に迷い込んできました。どうしますか」
「身包み剥いで雪の中に叩き込む」
「血も涙もないわね。それじゃ質問十、最後の質問だけど、…ちょっと紫、いいかげん泣き止みなさい」
「ううっ。だって藍が、藍がっ。昔はあんなに可愛い式だったのにっ」
「落ち着きなさい紫。雪の中に全裸で放り出されるオッサンに比べれば破格の待遇じゃない」
「うっ……ぐすっ…そ、そうね。極寒の放置プレイよりは冷めたチャーハンの方がいいわ」
比較対象になるのだろうか、それは。
「そうでしょ。じゃあ最後の質問、貴方の大切な本をネズミが持っていってしまいました。なのに猫はネズミなど見向きもせずに幼い吸血鬼と戯れています。貴方はどうしますか?」
「吸血鬼をシンデレラケージに監禁して猫の愛を取り戻す」
「……本はどうするのよ」
「春本なんぞネズミにくれてやるわ」
「失礼ねっ! 魔導書よ!」
「? あんたの話だったのか?」
「……ふん。検査は終わりよ」
つんと横を向くネグリジェ。
失礼なリアクションだ。
「せ、先生。藍の猫度は……何点なんでしょうか」
「今計算しているわ。……紫、藍さん。気を確かに聞いて。藍さんの猫度は……九十一点よ」
「ああっ……」
くらりと紫様がちゃぶ台に顔を伏せる。
そんなにショックなのか。私と猫とのバッチリの相性が。
というか十問九十六点満点で九十一点ってなんだ。一問ごとに点数が違うのか?
「ある質問に対する解答と他の質問に対する解答を照らし合わせて、総合的に判断するの。相乗して点数が上がることも、逆にマイナスになることもあるわ。Aに対する解答がαで五点、Bへの解答がβで五点だとしても、αとβ二つが解答ボードに並んだ事で更に十五点追加されることもある、ということ」
「なるほど。む、ネグリジェ、貴殿読心の心得があるのか」
「あなたモノローグの殆どを口にしてたわよ」
「むぅ。それは失礼した」
色々とヤバイ台詞も混じっていた気もするが、まあいいだろう。
「さてと、貴方の絶望的な数値も出た事だし、そろそろ治療に移りましょうか」
「先生っ! 藍を、藍をどうかっ! かつて禅寺に棲む妖蝶と楽しげに戯れていた頃の藍をどうか取り戻して下さいっ!」
ぐったりとちゃぶ台に伏せて虚ろな目をしていた紫様が、治療の単語に反応して唾を飛ばした。
「ありゃ戯れてたんじゃなくて弾幕から必死に逃げてたんですよ。生後六ヶ月の憑きたてほやほやの式にファンタズムスペルを持ち出す紫様の常識を疑いながら」
思い出したら腹が立ってきた。
茶請けのピーナッツを紫様の鼻にねじ込む。
「ちょっと! 何するの藍!」
ふん。柿の種とピーナッツの境界でもがき苦しむがいい。
ぷい、と横を向いて柿の種を頬張る。
「先生、お見苦しい所を見せてすみません。…これでも昔は素直な子だったんです」
「気にしてないわ紫。早速治療を始めるから、貴方は鼻のピーナッツを何とかして頂戴」
「はい…。よろしくお願いします」
深々と頭を下げる紫様。
やれやれ。折角高得点を弾き出したというのに治療ときた。
仕方ない。これ以上紫様の心労を増やしてホンマモンの寝たきりになられても困る。
適当に治療とやらを受けてネグリジェにお帰り願おう。
「さあ藍、貴方もお願いするのよ。ほら頭を下げて」
私の頭を掴んでちゃぶ台にぐいぐい押し付ける紫様。
「分かりましたよ。…よろしく頼む。ネグリジェ」
「藍! 先生とおっしゃい!」
「……よろしくネグリジェ先生」
「藍!」
「いいのよ紫。名前なんて何だって。貴方もうちの門番を見てれば分かる日が来るわ。それじゃ藍さん、始めるわよ」
「ああ」
ごそごそとウサギのアップリケのついたカバンを漁るネグリジェ先生を眺めつつ橙を想う。
すまんな橙。今朝は起しに行ってやれなそうだ。そして珍妙なチェックの挙句治療とやらを受ける私を許しておくれ。決してお前への愛が損なわれる事などないのだから。
「ブツブツうるさいわね。それと、橙なら今日はいないわよ。同じ二ボスのお友達のところに遊びに行ったわ」
「なんと。夜雀と氷精の二人か。あの二人なら営利誘拐の危険は低いが……ああ、私がいなくて大丈夫だろうか。転んで泣いてなどいないだろうか。おなかを空かせていないだろうか。あああ心配だ心配だ万一橙に何かあったらあのガキども白玉楼の階段から突き落としてくれるぞ…」
「私は貴方が心配よ。藍」
「同感ね。猫好き以前の問題が山積みよ」
うるさいスキマとネグリジェだ。
橙に何かあったら小童どもと一緒に狐狗狸さんの契約でマカオに売り飛ばしてやる。
「さて、それで具体的に治療とは何をするんだ」
「安心なさい。手は打ってあるわ。さっき言ったうちの侍従長、前に猫度を測ったことがあるんだけどね、とても低いのよ。藍さんの三分の一もないわ」
「ほう。侍従長ね」
三日に一度、燃える猫じゃらしを鼻に突っ込んでご満悦の侍従長とやらだ。
「彼女の生活を模倣する事で、藍さんの猫度も低下するに違いないわ」
そういうものだろうか。
「既に彼女は呼んである。もうそろそろ到着するんじゃないかしら」
「なに!?」
噂のメイドインファイアーがやって来るだと?
身体を張ったヨゴレ系のジャグラーを勝手に思い浮かべる。些か肉付きのいい十返舎一九が一輪車に乗って、脳裏で朗らかに手を振りはじめた。
「フォォ…」
なんだか楽しくなってきた。そんな飛び切りの若手芸人がやってくるなら相応の出迎えが必要だろう。
「では秘蔵の茶を用意しよう。失礼があってはいけないからな」
「あら藍。その気になってくれたのね」
ヘソを曲げて芸の冴えが失われても困る。
橙と二人でコッソリ楽しもうとへそくりで買った高級茶葉を持ち出した。
と、その時玄関で物音がした。
「失礼するわ」
キタッ!
前代未聞の訪問コスプレパフォーマーだ。
最近の若手は勢いが違う。初っ端からキメてくれるに違いない。
既に頭の中では『オリーブの首飾り』が鳴り響いている。
ああ、一体どんな登場シーンで度肝を抜いてくれるのか。胸躍らせて玄関に走る。
「あら久しぶりね八雲藍。パチュリー様が厄介になってるそうだけど、いるかしら?」
「……なんだその凡庸極まりない挨拶は。貴様芸人の矜持を忘れたか? 恥を知れ。そしてパチンコ屋で笑顔の練習からやり直して来い」
「……」
「……」
「……ぎゅわぁぁぁぁ! ちょっ、おまっ、死ぬ死ぬ死んじゃうっ!」
睨み合ったと思った瞬間、私のコメカミにナイフが突き立っていた。
何だこいつは! 客に刃物振り上げるのか!
「ちょっと貴方達、三和土で何を大暴れしているの」
「ネ、ネグリジェ先生っ! ダメッ! この芸人分かってないっ! チェンジチェンジ!」
「…パチュリー様、私をからかうために呼んだのでしょうか……?」
「…違うわ咲夜。そこでゴロゴロ転がって喚いている狐の人生相談よ。何があったか知らないけれどナイフをしまって頂戴」
苦々しい顔で私のコメカミからナイフを抜くメイド服。
くそぅ。なんてことしやがる。式神じゃなかったら昇天してたぞ。
ひりひりと痛むコメカミを押さえて睨みつける。
「む、何だ咲夜じゃないか」
よく見れば覚えのある顔だ。
いつかの長い冬に出会ったメイドだった。
「何だ、とはご挨拶ね。まあ笑顔がどうとか錯乱されるよりはマシだけれど」
「あ、ああ。すまんな。日に三度、鼻腔から猫じゃらしの生える侍従長だか奇術師だかがやってくる、とこちらのネグリジェ先生がおっしゃるので、ついな」
「パチュリー様……?」
「ちょ、そんなこと言ってないでしょっ! 咲夜っ! ナイフは、ナイフは嫌っ!」
逃げ惑うネグリジェ先生。なかなかどうして機敏な動きだ。
と、そこに紫様がするりと割り込んだ。
「先生、落ち着いてください。…咲夜さん、今日は遠いところ御足労ありがとうございます」
やんわりと場を鎮め、咲夜に頭を下げる紫様。
シメるところはシメる。こういうところは流石である。
「……まあいいわ。貴方もお久しぶりね八雲紫。少し疲れているんじゃない? 顔色が今ひとつよ」
「ああ、紫様は最近悩み事が肌に出る年頃でね」
「藍っ! 余計な事言わないの!」
「へーい」
あさってを向いて生返事。
「……貴方の式、前からこうだったっけ? 以前はもっと忠実な使い魔だった気がするんだけど」
「それで貴方を呼んだのよ咲夜」
「ええ、咲夜さん。貴方の力を貸していただきたいのです。とりあえずお上がり下さい。藍、お茶を沸かしているのでしょう? 丸まって拗ねてないで、皆に淹れてきて頂戴」
私を残してぞろぞろと居間に入っていく三人。
仕方ない。ジャグラーじゃ無かったのは残念だが、別段咲夜が嫌なわけじゃない。茶くらい淹れてやろう。
それによく考えれば来訪者は私が生活を真似る相手だ。無意味に刺激的な輩が飛び込んでくるよりは瀟洒なメイドがやって来たほうが遥かにありがたい。
ならば結果オーライということか。
「ふむ」
高級茶葉をそっとしまい、ごく普通の茶を淹れて居間に向かった。
「……というわけよ。咲夜、貴方の猫度の低さを見込んでのお願いよ」
「はあ。猫度って、いつかのアレですか? 人を勝手に呼びつけて問答無用で襲い掛かってきた挙句の妄言なんで良く覚えていませんが」
「ええ。そうよ」
しれっと応えるネグリジェ先生。大物だ。
「貴方の異様に低い猫度はきっと、生活の端々に影響を与え、また逆に日々の営みからの影響を受けているはず。藍さんにはしばらく咲夜の生活を見習って貰います。おそらく数週間のうちに効果が表れると思うわ」
「…分かった」
「それじゃ最初に二人の生活の乖離を認識してもらいましょう。二人とも、朝起きてまずすることは何?」
「いつも同じって訳じゃないけど、身支度の後でお嬢様のお食事を作るわね」
「三人分の朝餉の用意だな」
「嘘よっ。最近私の分が無いじゃないのっ」
「紫様起きるの遅いんですよ。手付かずの朝食が橙の昼食に化けたって、そりゃあ当然の流れです」
バタバタとスキマの上で暴れる紫様をにべもなく突き放す。
「…それじゃ食事の支度の後は何を?」
「お嬢様と朝食をとって、メイド達の一日のスケジュール管理かしらね。たまにグータラな知識人の棲家の掃除もしますけど」
「橙と食事をしてから結界までひとっ走りだ。見回りと簡単な補修しか出来ないが、うちの食っちゃ寝妖怪様はちっとも動きませんからね」
「「……」」
電光石火で目をそらす紫様とネグリジェ先生。紫様はスキマへ、ネグリジェ先生は妄想の奥地へ逃げ込もうとするが、咲夜と二人で首根っこをがっしと掴む。
「別に怒ってなどいませんパチュリー様。今後生活態度を改めていただければ結構ですので、話を続けてください」
「そ、そうね。たまにはラジオ体操でもしようかしらね」
威厳ねえなあ。ネグリジェ先生。
「それじゃその後、二人は何をして過ごしているの?」
「れみりゃ様を甘やかすか、レミリア様に甘えるか、ね」
「橙と散歩だ。あいつの好きな菓子を食べながらな」
「んまーッ! 私に隠れて買い食いっ!? どうして!? 私がねだったアイスは買ってくれなかったじゃないのっ!」
「あなた自分の式神にアイスをねだって断られたの……?」
咲夜が口元を手で押さえて目を丸くする。
オモロい話を聞いたぜ、お嬢様に教えてやろう。そんな顔だ。
咎めはしない。私だって立場が違えば間違いなくそうする。
「はいはい落ち着きなさいね紫。…それで、そのあとは?」
「お嬢様のお相手や館の雑事よ。侵入者が無い限りね。食事や入浴を済ませてお嬢様とひとしきり愛を営んだら読書でもして寝るわ。次の日も早いもの」
「家事に追われた後、風呂や飯の合間に橙にペッティングを試みる。漸く起きだしてきた紫様の頬をつねって就寝ってところか」
「…ふむ」
なにやら考え出すネグリジェ先生。具体的な方針を検討しているのだろうか。
ちなみに紫様はすっかりヘソを曲げてスキマに頭を突っ込んでしまった。蛍光灯の真下から尻だけこちらに出ているので、居心地悪いことこの上ない。
「貴方達、聞いた限りでは殆ど変わらない生活をしてるのね…」
「そのようね」
「確かに」
テリトリーの管理にナマケモノの世話。果ては愛でるモノのベクトルまで類似している。
「正直藍さんが咲夜を真似るポイントが見当たらないわ」
「ふむ」
「けど藍さんと咲夜では大きな違いがある。それは……愛する主人の存在よ」
愛する主人、という言葉が出た途端、スキマから突き出ていた尻がピクリと動き、そのすぐ下の空間から紫様の頭が現れた。
気持ち悪っ。
「主人!? 愛する主人!? ねえ、そうおっしゃいましたっ?」
紫様おおはしゃぎ。
「ええ、そうよ紫。いいこと? 咲夜はレミィを変態的に盲愛している。そしてレミィも咲夜にべったり。毎晩毎晩思いつく限りのプレイを楽しんでいるわ。…それに比べて藍さんの主人たる貴方はどう? 聞けば一日の殆どを寝て過ごしているようじゃない。藍さんは貴方に甘えたくても甘えられないの。分かる? 紫、藍さんは己の快楽のために日夜骨太な改革を試みる逞しいテンコーだけれど、それでも貴方の式なのよ。藍さんが弱さを見せられるのは貴方しかいないの。…なのに貴方はスキマで寝こけるわ、おやつをねだるわ、挙句の果てに拗ねてスキマに引き篭もる有様。藍さんが猫に走るのも無理ないわ。一人身の寂しいOLが猫を飼って寂しさを紛らわせるのと一緒なのよ」
咲夜にゲンコツを喰らいつつ熱弁を振うネグリジェ先生。
「そ、そうだったの藍。ごめんなさいね気の利かないスキマで……」
「いやいやいや、何言ってるんだネグリジェ先生。息抜きを知らないキャリアウーマンと私を一緒にしないでくれ。そもそもなんだ橙を代替物みたいに。ちょっとひとっ走り橙に謝ってこい」
「橙さんを侮辱するつもりは無いわ。それに貴方の橙さんへの想いを否定する気もない。けど貴方も気付いているのでしょう? 自分の中の満たされない想いに。スキマの中の桃源郷への溢れんばかりの渇望を」
「ちょっとパチュリー先生、人のスキマを風俗街みたいに言わないで下さい」
「紫。藍さんが冷たい、と貴方が泣きついてきたように、藍さんも心の底で貴方を求めていたのよ」
むぅ。
そうなのだろうか。私の中の満たされない想い。無いとも言い切れない感情だが、それは紫様に対するものなのだろうか。
「八雲藍。私には貴方の気持ちは分からないけれど、素直に行動した方が良いこともあるわよ」
「咲夜。……そう、かもな」
「自覚したようね藍さん。それじゃ始めましょうか。失われた師弟愛復興記念ときめきアカプルコ猫離れ大作戦を」
「…ああ、よろしく頼む」
絶望的なネーミングセンスのネグリジェ先生に頭を下げた。
「それで、その…なんとかスキマ離れ作戦ってのは何をすればいいんだ」
「全然趣旨が違うじゃないっ!」
「ぐええ」
しょんぼりと、しかしどこか嬉しそうにスキマから這い出し、私の首に抱きついていた紫様がチョークスリーパーに移行する。
「ろ、ロープ! ロープ!」
「やめなさい紫。十中八九照れ隠しよ」
「ホントッ!?」
「痛い痛い痛いっ! 捥げるわっ」
狐の関節の仕組みなんぞ知った事かと言わんばかりに、人様の首を捻じ曲げて無理矢理正面を向かせる紫様は、本当に嬉しそうだった。
私が紫様を求めていたかどうかはともかく、紫様がこんなにも喜んでくれるのなら、ネグリジェ先生の戯言に付き合うのも悪くないかもしれない。
「そうね、とりあえずタイトルどおり、失われた師弟の絆を取り戻してもらうわ。それにより心の充足を得た藍さんの、一歩向こうの愛猫精神はおとなしくなる。式と式の式、正常な主従関係と保護愛を取り戻した藍さんは、可愛い式と優しい御主人様に囲まれて安らかに眠りにつくでしょう」
「いやいやまだ死なないから」×2
紫様と二人でぺしーんとネグリジェ先生の頭をはたいた。
「ふふっ」
なんとなくくすぐったくて紫様と二人笑いあう。
ああ、久しぶりだ。この感じ。
思えばこんな些細な一体感すら忘れていた。
「…もう、攻撃的な親子ね」
頭を押さえながらネグリジェ先生がくすくすと笑う。
柔らかい空気。
礼を言おうネグリジェ先生。貴方の…
「親子だと!? この青瓢箪! どっちだ!? どっちが親だ! ああ!? このヤロウ、私がこの憑依荼吉尼天の実親に相応しい年齢だと、そういうつもりか!? ちくしょう! そこのメイド水道水持って来い!」
「紫様紫様! いい話! いい話の流れでしょ今は! 折角の雪解けの季節にどうしてスタンピードするんですかっ!」
「あ、ああ、ごめんなさい藍。年齢を匂わせる台詞が出るとつい……」
はあはあと息をついてネグリジェ先生の首を離す紫様。
ネグリジェ先生は泡を吹いてぐったりと電動回転座椅子にもたれ掛かっている。
「ど、どうしましょう。紫様が魔女殺しをっ!」
「ああ、いいわよ放っておいて。いつもの事だし、すぐに復活するわ」
狂乱の中涼しい顔で茶をすすっていた咲夜が事も無げに言い放ち、回転座椅子のスイッチを入れた。
うぃーん
「ヒィ」
背もたれに後頭部を乗せ白目を剥いたネグリジェ先生が、ぱっくりと口を開けたまま秒速二十五度の緩やかなペースで回転する。
その公開処刑と阿弥陀如来とを同時に想起させる回転ショーは、右へ左へと時折回転方向を気紛れに変えつつ、アルカイックスマイルとは程遠い凄惨な顔つきとなったネグリジェ先生を全方位にアピールしはじめた。
怖っ!
「お、おい咲夜、いいのか? こんなグルグル回したらただでさえ危なげな脳とかが……」
「平気よ。紅魔館の住人はこの程度日常茶飯事よ」
紅魔館ってスゲエなあ。
東京タワー蝋人形館特設展のようなネグリジェ先生を見つめ、改めて世界の広さを思い知る。
「パチュリー様はいいから、さっき言っていたなんとかときめき仏像展とやらを進めておいたら?」
「そ、そうだな。お前が大丈夫と言うならそうなんだろう」
ネグリジェ先生の作戦名は誰も覚えていなかった。
「二人で買い物でも行って来たら? デパートとかないの? この辺り」
「そんな気の利いたものがあるか。売れないボクシングジムみたいなスーパーマーケットが一軒あるだけだ」
「スーパーね……。ま、いいんじゃない。夕飯の材料でも買ってきなさいよ。二人で行くってことに意味があるんでしょう?」
「ふむ。そうしますか紫様」
「ええ、そうね。献立を考えながらゆっくり買い物を楽しみましょう」
「ごゆっくり。私はパチュリー様の看病でもしているわ。楽しんでらっしゃいな」
今だ回転を続けるネグリジェ先生を見向きもせずに言い放つ咲夜。
このメイドも本物だ。
「頼んだ。それじゃ行きましょう紫様」
「そうね。…ねえ藍、今日はアイスを買ってもいいかしら……?」
「またあの高いアイスですか? …仕方ないですね。一個だけですよ?」
「ふふっ。ええ。二人で食べながら帰りましょう」
「わ、ちょっと、腕組まなくても歩けるでしょうっ。…もう」
じわりと胸に広がる暖かさ。微かなノスタルジーに彩られた面映い感情を楽しみつつ、紫様と二人、仲の良い姉妹のように笑いあって家を出た。
回り続ける酸鼻の極みから目を逸らして。
◇
「……それで、ウキウキ手を繋いで出て行ったのに、どうして御主人様だけ先に帰ってきてメソメソ泣いているのよ」
見れば涙で湯飲みがいっぱいになっていた。
「このスキマ、臭いモンばっか食いたがるんスよ」
「ひどいっ! チーズフォンデュが食べたいって言っただけじゃないっ」
「私がチーズ嫌いなの知ってるでしょ紫様。しかも納豆だの粕漬けだのコアなモンばっかチョイスして。橙が嫌がるでしょ。そんなんだから足が…」
「足がなによっ!」
「いえ別に」
湯飲みに溜まった涙を流しに捨てる。
「ううっ……おいしいのに…おいしいのに」
泣きながらカニカマボコのスティックを頬張る紫様。その哀れな様は咲夜の同情をあまり引いてはいないようだった。
「それで、結局何を買ってきたのよ。…捻りの無い名前の店ね」
がさがさとマヨヒガマートのビニール袋を漁る咲夜。
その横で景気良く回転しているネグリジェ先生の様子は出かける前となんら変わるところは無く、咲夜の言う看病とやらが施されたかどうかの判断すら難しい。
ホントに治るのかコレ。
「えーと、なになに、鰯に鯖に、烏賊に鰹節にマタタビに、これ…は八雲紫の食べているカニカマボコの袋ね。あとは猫缶ばっかり」
「ずるいっ! 猫缶ばっかり四十個も買って! 私にはっ!? 私の分は無いのっ!?」
「ありますよ紫様。ほらスキマ缶」
「ただの空き缶じゃないっ!」
わっと泣き伏す紫様。
やれやれ泣いてばかりだ。
「全然ダメね。何よこれは。猫用の食料ばかりじゃない」
「うわ。ネグリジェ先生。生きてたんですか」
数秒前まで涅槃で回転運動を続けていたネグリジェ先生が、何事も無かったかのように会話に参加してきた。
回転前よりも心なし顔色が良いところが恐ろしい。
「ちっとも猫離れできていないようね。困ったものだわ」
「主人への思いやりも下降の一途を辿っていますわ」
やれやれと柿の種を頬張りつつテレビを眺め、ため息をつく紅魔館の二人。
やる気ねえなあ。
「どうしたものかしらね。咲夜、何か案は無い?」
「そうですね。童心に返って遊んできたらどうです? 二人仲睦まじく」
「それはいいわね。…と、いうことよ二人とも。遊んでらっしゃい」
かったるそうに首だけこちらに向けてネグリジェ先生が言う。
「いや遊べと言われてもな。一体何をすればいいのやら」
「幼い頃の遊戯でもすれば良いじゃないの。きっと絆の回復に繋がるわ」
たった今買ってきた烏賊を七輪で炙ってかぶりつくネグリジェ先生。
ブランデーをお猪口で楽しむ咲夜に烏賊をおすそ分けし、代価にブランデーを要求している。
覇気のない発言といい、なにしに来たんだこの人は。
「幼い頃の遊戯ねえ。紫様、なにかありましたっけ?」
「そうねえ。貴方よくストレートとカーブの夢郷で遊んでいたわね」
それも決死の弾幕ファイトだ。
「あ、藍。そういえば遊園地が出来たじゃない。あれはどうかしら?」
ぽん、と手を叩く紫様。
「ああ、マヨヒガランドですか」
「また安直なネーミングね」
「経営者がスーパーと一緒なんだよ。エーリンだかメーリンだかいうフンドシの似合う青年で」
「…それはコーリンよ」
そうだったか。まあどうでもよかった。
「それじゃ、騙されてる気もしますが行ってみますか。マヨヒガランド」
「ええ。最新の絶叫マシンと可愛らしいキャラクターが待ってるわ」
「詳しそうですね紫様。現地での行動はお任せしますよ」
「任せて頂戴。必ずや貴方の色々と後ろめたい欲求を満たしてみせるわ」
「それは楽しみです」
最近のテーマパークは薄汚れたニーズにも応えてくれるらしい。
少し興味が湧いてきた。
「じゃあちょっと行ってくるが、留守番頼む。烏賊でも食ってくつろいでいてくれ」
言われずとも我が家のようなくつろぎっぷりの二人にあえて言ってみる。
「ええ、行ってらっしゃい二人とも。あ、ちょっとパチュリー様、まだレイズしますってば」
「楽しんでらっしゃい。…はいはい。咲夜は大勝負好きね。どうせブラフでしょうけど」
猫缶をチップにポーカーをしているメイドと知識人を置いて、鄙びた漁村のカラオケボックスのような冴えないネーミングの遊園地に向かった。
◇
「……あんまり聞く気も無くなってきたけど、紫のこの有様は何よ」
紫様はぴかぴか光る電飾の付いたヘアバンドをしたままオイオイ泣いている。
「聞いてっ。酷いのよ藍ったら! 私のこと無視してどこかへ行っちゃうの!」
「いい年こいたスキマにメリーゴーランドの上からデッカイ声で名前を叫ばれたら、そりゃ他人のふりもしますよ」
「ううっ…ぐすっ……。あんなに寂しい思いをしたのは初めてよっ」
「しかも紫様、調子に乗ってマスコットキャラに抱きついた挙句、頭の被り物外しちゃうし。全く、何が素顔拝見ですか。身体だけファンシーな着ぐるみに身を包んだバイトのオッサンの哀れな顔、見ましたか? 気の毒に、夢裏切られた子供達に石投げられてたじゃないですか」
「アレは傑作だったわね」
「確信犯ですか」
困ったスキマだ。
「どうやら信頼の溝は埋まっていないようね」
「信頼の溝は年齢の溝ですよ」
「ら、藍っ! 年は関係ないでしょっ」
「そうかもしれませんね」
そっぽを向く。
「困ったものね。猫断ち熟年ロマンス紀行がちっとも進まない」
「せ、先生っ! 削除してくださいっ。その猫断ちとロマンスの間っ」
命名した本人も覚えてないじゃないか。この珍奇なミッションの元の名前。
「それじゃ最後の手段よ」
「まだやるんですかネグリジェ先生」
「当然よ。依頼された仕事はキッチリこなすわ」
白衣の似合いそうな凛々しい目つきできっぱりと言う。
焼きイカ咥えて賭け事に興じたり、スプラッタ寸前で回転していた人と同一人物とはとても思えない頼もしさだった。
「これは奥の手だけれど、仕方ないわね。紫も藍さんも、ちっとも協調しないのだし」
「このスキマが色々とゴネるんですよ」
「なによっ。貴方だってコッソリテンコーしてるくせにっ」
「なっ、テンコーは関係ないでしょう! このスキマッ、靴下洗えっ」
「なんですってっ。貴方こそパンツくらい履きなさいっ」
「なにおーっ」
「なによーっ」
このスキマ言わせておけばっ。
「パチュリー様、止めないのですか? 相当に見苦しいレベルに達していますよ」
「ええ、いいのよ。一度思いっきり本音を言い合ったほうがスッキリするわ」
「どちらも日頃から遠慮なく本音と本能を叩きつけてると思いますが」
「…それもそうね。それじゃ少し方向を変えましょうか。ほら紫、藍さんも、頬と頬をくっ付けてボディブローの応酬はやめなさい」
「くっ。このスキマ寝てばかりいるくせに、体重の乗ったいいボディブロー持ってやがる」
「藍! 体重のことは言わないでっ」
「コンプレックスの塊ね。貴方」
ボディの乱打をやめて片膝をつく私達を尻目に咲夜が呟いた。
「はいはい、喧嘩しないの。これから貴方達には最後の策を実行してもらいます」
「ほう。最後か」
「ええ。最後にして最強よ。二人には襲い来る危機を共に乗り越えてもらうわ。吊り橋理論ね」
「危険に対する興奮と恋とを脳が取り違える、とかいうアレか」
「そう。アレよ。私の敬愛するスポーツ刈りの無軌道なSWAT隊員も、時速八十マイルの有料バスの床下とブッ壊れた地下鉄の中で、免停中の大学生相手に実践しているわ」
あまり詳しく窺いたくないシチュエーションだ。
「実践するのは構わないが、理論の説明をしてからじゃ効果が薄いんじゃないのか? それは」
「……うるさいわね。十二神将の宴のくせに」
わけわからん。
「細かいことを気にしたらダメよ。とにかく二人で苦難を乗り越えなさい」
「何処にあるんだ。その苦難は」
「そうね……。それじゃ咲夜。貴方ちょっと二人に弾幕でも叩き込んであげて」
「えー?」
「えーじゃないでしょ。ほら、お酒ばっかり飲んでないで少しは役に立ちなさい」
「仕方ないですねえ」
「紫と藍さんは咲夜の弾幕をかわして頂戴。二人三脚で」
「えー? 二人三脚って足と足を縛るアレですかあ?」
「そうよ」
「このスキマ足洗ってないんスよ」
「失礼ねっ! 洗ってるわよ!」
にゅ、と生足を突き出してくる紫様。なかなかの美脚だった。
「いいから。ほらこれで縛って」
回転座椅子とコンセントを繋いでいた延長コードを差し出される。
「…一度だけですよ」
やれやれ仕方のない事だ。十分な長さのコードで紫様の右足と自分の左足を縛り付けた。
◇
「それじゃいくわよ」
とっとと終わらせて烏賊でも食おう。そう言わんばかりの覇気の無さで咲夜がナイフを振りかぶった。
「ああ、ネグリジェ先生の策だ。これっぽっちも期待してないからちゃっちゃと済ませよう」
左半身にべったりと紫様をくっ付けて構える。
うっとりするほどやる気の無い弾幕をかわしたところで脳が興奮するわけも無い。ましてやその振れ幅ゼロの電気信号を脳が恋心に錯覚するなど、どう考えてもありえない。
まあいい。適当にやり過ごした後で紫様と仲良くなった振りをしてネグリジェ先生を満足させよう。
肩を組んで唄でも歌えば勝手に成果ありと見做して上機嫌で帰っていくだろう。
そろそろ橙も帰ってくるはずだ。夕飯の用意をしなくてはいけない。
「始めてくれ、咲夜」
「分かったわ。せーの…」
――極意 デフレーションワールド
「うぉぉぉい! いきなりラストワードかよ!」
ナイフを投げ放つ瞬間から咲夜の目の色が変わっていた。指に挟んだナイフの数は両手合わせて三十を超え、腕を振るうたび新たな刃が装填される。
「マテマテマテ二人三脚だぞこっちはぁ!」
滑らかな仕草で氷のマシンガンのように弾幕を展開する咲夜。五体満足としてもかわしきれるかどうか。
ド鈍い紫様を侍らせた状態で、はたしてこの窮地から生還出来るだろうか。
「…だが」
極意デフレーションワールド。初見での致死率は九割を超えるであろう銀の魔弾は完全なる時の支配を受け、揺らぎ無い法則に従って襲い来る。故に法則の解明と神域の反射神経があれば、ナイフの軌道から逃げる事は可能である。
寧ろ咲夜が常用する、手を離れた後も変幻自在のナイフ捌きこそ今は辛い。臨機応変な回避を要求される弾幕は、二人三脚プレイには劇的に向いていない。とすれば、ブレトンウッズ体制のような固定型のスペルを選んだのは咲夜の手心か。
「紫様、この弾幕のパターンはご存知ですね? 一度止まった時が動き出してからの反応では絶対に間に合いません。時間操作直前からの回避行動が必要です」
「ええ大丈夫。何度も見たスペルだわ」
「最初のストップが来ます。…行きますよ! ――三、二、一!」
ずしゃぁ
「なにやってんですかスキマ様ッ! どうしてそっちに行くんですっ! 右側の方が避け易いでしょっ!」
右方向への回避は左側へ回り込む紫様の動きに相殺され、縛った足を軸にして二人揃ってブッ倒れた。
「右側には貴方がいるでしょ藍! 邪魔でそっち行けないわよ! 貴方が左に動きなさいよ!」
「私の左にはアンタがいるんだぁぁ!」
チームワークの欠片も無い。倒れたお陰でナイフはかわせたが、すぐに第二波がやってくる。
「ほら次が来るわよ藍! さっさと立って、左に避けるわよ!」
「はいはい、左ですね。その次は右ですよ紫様。交互に避けましょう」
「分かったわ。…タイムストップよ。――三、二、一!」
ずしゃぁ
「スキマァァァ!」
「こ、腰が痛くてっ…」
「だからさっさと『整骨院マヨヒガ』に行けって、口を酸っぱくして言ってたでしょっ!」
「だ、だってっ。あの整体師さんフンドシ一張なんですものっ」
回避の瞬間、腰を押えてしゃがみこんだ紫様に圧し掛かるようにスッ転んだ私。ふわりと舞った九尾の端をナイフが掠めた。
「このスキマッ、ゆあきんっ! どうしてもっと軽やかに動けないんですかっ。つまみ食いする時の素早さを見せてくださいよっ」
「なっ、ゆ、ゆあきんっ!? どういう意味よっ」
「タイプミスですよっ」
「嘘おっしゃい! 悪意が感じられたわっ」
このスキマもう我慢ならねー。テンコとテンコーの境界で悶絶させてくれる。
「四十肩!」
「桃色カリフラワー!」
「ぬぬぬ私の何処が桃色ですかっ」
「四十の半分も生きてないわよっ」
「嘘つけっ、三桁は生きたでしょっ。慧音に聞いてもいいんですよっ」
「いやっ! 歴史の公開はいやっ!」
「あーあーあー。パチュリー様どうするんですかアレ」
「どうしようもないわね。もういいわ。報酬を頂いて帰りましょう」
「報酬ですか? 後払いの約束を?」
「無粋な事は聞かないで咲夜。…聞けばマヨヒガの物を持ち帰れば幸福になれるそうじゃないの」
「…なるほど。ウサギの足みたいなもんですね。あわよくば根こそぎ持っていこうと目を光らせていた、と」
「ウサギの足を狩りまわるよりいいでしょう。ほら、咲夜も手伝って頂戴」
「そうですね。それじゃ指輪に腕時計に、あらあら場違いなペーパーナイフがあるじゃない。これも頂き、と」
「テレビにコタツに回転座椅子に……」
「パチュリー様、それは既に幸せの小物探しというより剛毅な物取りですわ」
「そういう咲夜こそ金目の物ばかり狙っているようじゃない?」
「ふふふ。当然の対価ですわ」
「ええそうね。ゴッソリ頂いていきましょう」
「いいかげん認めたらどうですっ。紫様は足が……! ……ん?」
咲夜とネグリジェ先生がニコニコと手を振っている。何だ? 裏庭のワライダケでも食べたか?
二人は一頻り手を振って満足げに頷くと、大荷物を載せたリヤカーに手をかけた。
む? あのリヤカーは納屋にあったものだ。その上の荷物は……うちの家具一式じゃねえか。
テレビにコタツに冷蔵庫。大型生活必需品がギッシリだ。
「おまえらぁぁぁぁ!」
なんて大胆な犯罪だ。我が物顔でくつろいだ挙句に家財強奪なんて、良心が僅かにでもあれば思いつきもしない。
拳と拳を軽快にぶつけ合い、それを合図にリヤカーを引いてすさまじい勢いで走り出す変則紅魔組。
「ちょ、お前ら待てぇぇぇぇ!」
「足が何よっ! ちょっと藍! 逃げる気!?」
「紫様っ。そんな場合ではありません! あの悪魔の狗ども、うちの財産を奪って逃走中です!」
「何を言っているの藍。パチュリー先生や咲夜さんに限ってそんなことあるわけ無いでしょう。ねえ、先生。……あら? 先生? せんせー?」
「あいつらに限って強烈な罪を犯すんですよ! 私は追いかけますから、紫様は盗まれた物のリストを作っておいてください!」
「え、ええ…」
「それでは後ほどっ! お前ら待てやぁぁ!」
ずしゃぁ
「だあああ! このための二人三脚プレイかぁぁ!」
解けねー!
ただの延長コードの癖になんて強靭な拘束力だ。まずい。このままでは逃げられてしまう。
「解いている暇はありません! 紫様っ。このまま追いますよ!」
「わ、分かったわ藍」
お約束のように息が合わず、盛大につんのめるが気にしてなどいられない。
何度もスッ転びつつ二人三脚で必死に追いかける。二分ほど悪戦苦闘したが、一度タイミングを掴むと後はすんなりと歩を合わせることが出来、一度は見えなくなった紅魔組二人になんとか追いついてきた。
「待てお前らっ。そんな豪快な物取りがあるかぁ!」
「ちっ。追いついてきましたわ。どうしますパチュリー様? エターナルミークでリタイアしてもらいますか?」
「待って咲夜。……よく追いついてきたわ紫、藍さん」
「やってくれたなネグリジェッ! すぐにとっ捕まえて蝋人形館に並べてやるからなっ!」
「その前に隣を見なさい藍さん。一糸乱れぬ足捌きで貴方と辛苦を共にしている紫の姿をよく御覧なさい……それが絆よ。それが和よ。おめでとう、貴方達はついに師弟の繋がりを取り戻したの。藍さん、もう紫との間になんのしこりもないでしょう? 重度の猫依存もきっと治まっているはずよ」
「ネ、ネグリジェ先生…まさかそのために盗人を演じて……?」
こくり、と女神のような慈愛を湛え、ネグリジェ先生が頷く。
「分かってくれたようね。…さあ、もう二人三脚はいいわ。お疲れ様二人とも。足を止めて、ゆっくり休みなさい」
「止めるかぼけぇ! ガラガラリヤカー引きずって爆走しながら言われてもちっとも心を打たんわっ! そっちこそ足を止めろっ」
「チッ。咲夜、説得は失敗よ。あのテンコー聞く耳持たないわ。ギアを上げましょう」
「了解しましたわパチュリー様。思いつきの妄言をブチ撒けて説得と言い切る今の貴方は素敵ですわよ」
「ありがとう咲夜。今の台詞、レミィには内緒にしておいてあげるわ」
「あら、構いませんよ。お嬢様との愛は永久に不変ですもの」
「ふふっ。言うじゃない」
くそっ。あいつらバケモノか。歪んだ会話に花を咲かせつつ速度を上げて、息切れ一つしやしねえ。
比べてこっちは足に力が入らなくなってきた。持てる根性を総動員してはいるが、膝が笑いそうになりやがる。
運動不足の紫様など八割方グロッキーだ。半ば私に引きずられるように足を動かしている。
「くぉぉ。あいつらぁぁぁ」
このまま取り逃がしてしまうのか。
紅魔館に辿り着かれたら終わりだ。鉄壁と名高い門番長を始め、防衛戦のエキスパートたる戦闘メイド達に阻まれ、八雲家生活用品一式は二度と返ってくる事はないだろう。
ふと、ガランとした家で無理に笑う橙を想像し胸が痛んだ。
「すまん橙! あいつらを信じた私がチルノ並に愚かだったっ!」
「そこまで言う事無いじゃないの」
「……おや?」
「むきゅー」
競艇ボートのような勢いでカッ飛んでいったはずのリヤカーは弧状の轍を作って停止し、その上で咲夜がぐったりしたネグリジェを膝枕していた。
「……何してるんだお前らは」
「パチュリー様ったら調子に乗って涅槃まで飛ばすんですもの」
「……そうか。死んだのか」
マヨヒガ史上稀に見る大胆なスティールボールランだったが、死者を罵倒する気にはなれない。
「いえ、喘息の発作を」
「なんじゃい! 紛らわしい事言うなメイドッ! こらネグリジェッ、この踊る大図書館! 何処の世界の知識人が電化製品担いで走り出すんだ!」
死者でないなら問題ない。存分に罵倒し、紫様の日傘でブン殴った。
「本当にねぇ。大型家財ばかりチョイスした時には吃驚したわ」
「お前もだ咲夜っ。エプロンのポケット貴金属でパンパンじゃねえか!」
「……ち」
悪びれもしない。
家までリヤカーを運ばせた後で、保護者に連絡する事にした。
「困るんですよ奥さん。酒かっくらってイカ食い散らかして、テレビ持ってさよならじゃ此方も通報しないわけにはねえ」
電話越しに平謝りのスカーレット婦人に嫌味を散々ブチ撒けて、二人を引き取りに来るよう告げた。
件の二人はふん縛って居間に転がしてある。
……はずなのだが何故か縄は解かれ、二人はまたしても烏賊をつまみにブランデーをちびちびやっている。
まあ妙な事を為出かすよりはマシなので放っておいた。
「けどこれで紫の気持ちも分かったでしょう? 藍さん。今日一日で二人のすれ違いは大分解消されたと思うんだけど、どうかしら」
「うるさいネグリジェ。座布団を枕にゴロゴロしている奴に、そんな尤もらしいこと言われても頷けんわ」
どうにかならんのか。このふてぶてしい知識人は。
「最後なんて相当なチームワークだったじゃないの」
「…あれはチームワークというのか?」
ヒラヒラしたメイド服に興味を持った橙を膝に乗せて、咲夜が適当な事を言う。
にゃろう、私の橙を。
料理中でなければすぐに飛んでいって引き剥がしてやるものを。
以前調理と橙のペッティングを同時にこなそうとして八雲家炎上の憂き目にあったので、料理中の橙いじりは自戒しているのだ。
「それでも紫を放って橙さんだけを可愛がる気はもう起きないでしょう?」
「……まあな。こんなに手のかかるスキマを放っとく訳にもいかないからな」
紫様は疲れて寝てしまった。
スキマと居間の境界で寝こける紫様は、寝言で私と橙を呼んでいる。
全く困った御主人様だ。
料理の手を止め、はだけた毛布をかけ直してやる。
仕方ない。明日からは規則正しい起床時間を条件に、もう少し労わってやるか。
目尻に涙を溜めて眠る紫様の頭を撫でてやる。
そこへ
「ごめんください、夜分失礼いたします。お電話いただいたスカーレットですが……」
「あっ。レミリア様だ!」
「ワーイ」
どうやら二人の迎えが来たようだ。
待ちわびた母を見つけた託児所の子供のように玄関に走るメイドとネグリジェ。
「オイ、キャラ違うだろお前ら! なんだワーイって! メイドッ、橙を放り出すな!」
なんなんだあの二人は。紅魔館はバケモノの巣窟だという噂はこういう意味なのか?
「貴方達、こちらのお宅に散々迷惑かけたそうじゃないの……。ちゃんと謝ってから失礼するのよ」
「ハイ、レミリア様」
「もう済んだわ。帰りましょうレミィ」
すっかり困り顔のスカーレット婦人に抱きついて甘える咲夜と、反省の欠片もないネグリジェ。
「お前ら毎日が楽しくて仕方ないだろう……」
「八雲さん、うちの子達がご迷惑をおかけしました」
深々と頭を下げるスカーレット婦人。
まだ若いのに礼儀正しい御婦人だ。
バスチーユ牢獄を襲撃する民衆のように無軌道な身内を持って苦労しているんだろう。
幼ささえ残す端正な顔を見て不憫に思う。面と向かって文句を言ってやろうと思っていたがその気も失せた。
「ああ、もういいさ。元はうちのスキマの依頼のようだし、そんなに恐縮しないでくれ」
「本当に申し訳ございませんでした。ほら貴方達も、ごめんなさいを言いなさい」
「ごめんなさい」
「ゴメンナサイ」
咲夜は猫を被って、ネグリジェは上の空で謝罪をを口にする。
こいつらは……。
本当に咲夜の猫度は低いのか? 今更ながらネグリジェの検査の精度を訝しむ。
「それでは八雲さん、後日もう一度お詫びに伺いますので、今日は失礼させていただきます」
「ああ、今度は貴方一人で来てくれ」
べったり甘える咲夜と涼しい顔のネグリジェを連れてスカーレット婦人は帰っていった。
やれやれ。何処にも苦労人はいるもんだ。
苦笑いをしてキッチンに戻る。
「藍さま。お姉ちゃんたち帰っちゃったの?」
「ああ。騒々しい奴らだったな、橙」
「でも優しかったよ。いっぱい撫でてくれたし、お魚もくれたの」
その魚は私が買ってきたものだ。
「…そうか。良かったな橙。それじゃ料理の続きをするか。橙も手伝ってくれ。今日は久々に紫様も一緒の夕餉だ」
「うん! 紫様の好きなお酒も出してあげようね」
「そうだな。たまにはいいだろう。ほら紫様、起きてください。そろそろ夕飯ですから、ちゃぶ台の上を片付けておいて下さい」
「んん……ふわぁぁあ。…あらいい匂いね」
「今日は紫様の好きなキノコのリゾットですよ」
「まあ珍しい。貴方あの匂いがダメなんじゃなかったの?」
「…ま、たまには」
「ふふ。パチュリー先生のおかげね」
「それはありません」
「あら……」
「藍さまーっ。お鍋ふいてるよーっ」
「おっと、今行く橙っ。紫様、ちゃぶ台の方お願いしますね」
「ええ、分かったわ藍」
急いでキッチンに走る。
暖簾をくぐり、ふと足を止めると、紅魔館のフリーファイターどもの顔を思い浮かべた。
「やれやれ、好き放題暴れる癖に仕事だけは果たしていくんだからな」
慌しい三人での食事も悪くない。
ちゃぶ台の上の雑貨を一纏めにスキマにブチ込む紫様を見つつ、鍋の前で大騒ぎの橙の頭をそっと撫でた。
――私はこんな日を夢想していたのかもしれないな。
口にするとしたり顔のネグリジェに勝ち誇られるような気がしたので、心の中だけでそっと呟いた。
ちなみにこの後、調子に乗ったスキマ妖怪が披露した日傘とオリゴ糖を用いたとっておきの宴会芸により、橙が恐怖のあまり三日ほど寝込んでしまい、スキマ妖怪はその株を著しく下げてしまうのだが
――それはまた別の話。
今この瞬間が色褪せることなど決してないのだった。
藍さま!ためぐち!ためぐち!
でもそれとは逆に何故かいじられっぱなしの紫さんが微妙に可愛かったりも(笑)
微妙な主従逆転も良いものですね、最後は無事八雲一家っぽくなってます・・・が・・・オリゴ糖が・・・(笑)
終始いい加減なネグリジェ先生。
終始反抗的なテンコー。
終始駄目っぽいゆあきん。
火を噴く猫じゃらしと、涅槃上で回転する先生はヤバイです。
疲れていながらも激しく笑わせていただきました。
次回もこんな傑作を期待しています。
紫さま情けないよ紫さま。
藍容赦ないよ藍。
以上。
……真面目に話しますと、恐ろしくツボ。
可愛がるではなく、ペッティングと言い切る藍が素敵杉。
劣等感の塊(年齢とかその他諸々)の紫さまが何か可愛い。
そして橙は無条件に可愛いというか変態の巣窟で真っ直ぐに育つその健気さに何故か涙が…。
あとこーりん、あんたなにやってんだ(笑)。
次回作も期待してますー。
…冗談にしても今時いろんな意味で寒すぎるぞ自分。いや、ファンというのは本当ですけれど。
まずタイトルで早くも腹痛起こしましたが(藤丸…)
もう、ゆあきんの余りの粗雑な扱われっぷりに涙と笑いが止まりません。
思わずゆあきんと寂しく肩を並べて一緒にカニカマボコ齧りたくなりました(馬鹿
なんかこう、マフラー編もうとしたらセーターになって逆ギレしてほっぽり出したら実はいい感じな出来でラッキー、のようなお得感でした。
紫様、主の威厳がまったくな(スキマ
藍が超真面目にキテレツな事かますところや
咲夜さんの完全に間違った意味で抜け目のないところとか
こういう弄り方大好きです。もう一回読み直してこよう。
こんなスキマ様と狐様待ってました!!
それこそ自分で書かないとないんかなぁって思うくらい……
キャラの設定もさることながら、話もいいっす。
終始笑いながら読ませていただきました……
ここまで自分のツボにピンポイントだった話にあったのは久しぶりでした。
ほんとにGJでした~!!!
ネグリジェ先生がつぼに・・・w
なんとも情けない紫様・・レミリア婦人に甘える二人・・・見てみたい・・
まあ狐の習性は猫に近いから猫度が高いのはあたりまえ、狗とは同族だから見た感じ似てるように見えますが、性格は正反対。
お嬢様のためなら例え火の中ベッドの上の咲夜を呼んでもお手本になりませんね(そう言う問題じゃない)
まともな奴が殆ど出てこないのに、それぞれのダメさの方向が書き分けられているのが凄いっす。
「お前ら毎日が楽しくて仕方ないだろう……」の下りで、柴田亜美チックにデフォルメされたネグリジェ&テンコーが連想されました。
相当な手練とお見受けしたが、如何?
しかしテーマパーク作るなんてコーリンはすごいなぁ。(でも人来るのか気になります。
とにかく面白かったです♪
次も頑張ってください。
GJです
このシュール感がたまりませんね。
まさにグッドジョブ。
ちょっと気になって猫度テストなどやってみたり。
1、『我輩は猫である』しか知りません
2、和尚を抹殺して猫ゲット!
3、オッサンなぞ知らん。猫まっしぐら
4、タバコを取り上げてお説教。その後更正させて猫ゲット
5、ポケット強奪の後本体はジャンク屋へGO
6、事前にウサギあたりを鍋にぶち込む裏工作れっつごー
7、即座にゲットは基本です
8、食費が悲惨なことになりそうなので博麗神社にお持ち帰りいただくか
9、折り詰めにしてそーなのかーに持って帰らせようかな
10、猫とロリータ吸血鬼、両方まとめてゲットだぜ!
・・・後遺症決定だな私・・・
君には期待している
紫>藍という固定観念が見事覆されました。
ザ・下克上!!
ダメっぷりといい拗ねてるところといい藍様にいじめられて泣いているところといいああもう。
そして妙に強気な藍様がカッコイイです、色々と。
橙>鼻腔は当然なのですか。
後半まで常に笑わせていただきました、いや素敵です。
俺、明日から十返舎一九を普通の目で見れねぇよ……。
また、芸人論に関しては同意。
ヨゴレ芸人とは、恥を捨てることこそが唯一の誇りなのです。
紫様がカワイ過ぎです!!
八雲SSではほぼ九割近くオチ担当の藍様もいい感じにほのぼので終わってます!
てか、藍と紫が仲いい話大好きなんですよ!特に紫がイジられるパターンが!
本当に最高だ!!
素敵過ぎる
素敵すぎです。
東方爆笑中。
そしてレミリアに甘える二人に一体何が!?
「ワーイ」って・・・
存分に笑わせてもらいました。
常識人のレミリア様、妙に反抗的な藍も面白かったです。
よくよく見れば真人間はレミリア様だけじゃないか!
ゆかりんの株の低さに土を盛ってやりたくなりました。
哀という名の花が咲く土を。
笑えます、笑え過ぎます、最ッ高ゥ――ッッでした!!
今後もまた、この様な面白い作品を期待しています。
この続編か同レベルの次回作、早めにお待ちしとります。
参った、あまりのことに魂が白玉楼に突っ込んでいた!
妖夢に斬り離される処だった‥‥。
さておき。
ゆかりんに実に容赦ないてんこーが素敵。
火種な猫じゃらしは即刻入手、狩ってでも。
パチュリーと咲夜の際限ない暴走が無敵。
アルカイックSは脳内で超α波として消化。
おかしい、私はこの面子は射程外だったはずだ。
ともかく、こちそうさま。
堪能させて頂きました。
グレート
アンタ!脳内に素敵フレーズ製造機を持ってますね!
気付いたら話が終わっていた、というステキ現象が発生しました。
軽快なストーリー進行。極自然すぎるギャグ。納得してしまう壊れっぷり。
なんかもう……GoodJob!!!! Caved!!!!(ん?
申し訳ありませんが点数評価は一人一度がルールだと思いますので、管理人様に二度目のコメントの削除をお願いしました。
お気持ちは一度目のコメントだけで十分伝わりましたので。いやホントに。
楽しんで頂けたのならなによりです。
この度はご迷惑、そしてご面倒をおかけしました。
二度目の点数を入れてしまったのは、私がルールをしっかり理解していなかった為です。
今後はこのようなミスは絶対にいたしません。申し訳ありませんでした。
そして、冬扇様と管理人様の迅速な対処に、本当に感謝いたします。ありがとうございました。
次回作、期待しています。それでは。
藍と紫の会話がもう最高でした。
なんというか、言葉遊びが素晴らしいです。全てのネタが理解できない
ことを悔しく思うくらい。
始終楽しめました。
このテンポでこのテンション。最高です!!
やりたい放題だった紅魔二人もスカーレット婦人が来た瞬間甘える所とかもうねwww
藍と紫はこれくらいの関係でいいんですよね。
散々やってオチはしっかりしているw
おもしろかったですw
何この奇跡なタイミングw
ちなみに時速は50マイルでしたよ